足跡

秋(とき)

文字の大きさ
上 下
1 / 1

足跡

しおりを挟む
私はある夜夢を観た
それはとても懐かしく
そして 淋しい恋の夢

太陽の光に照らされて
白い波が輝いている
波打ち際には
どこまでも続く
ふたつの足跡

一羽のかもめが通りすぎ
その後を振り返ってみると
足跡はひとつになっていた

海の方をふと見ると
いつの間にか陽は沈みかけ
立ち上がる波と高い空を
染めている

なんだか急に苦しくなって
とめどなく涙がこぼれ落ちる

頬をつたって落ちた雫は
波ににじみ
すべてを消していく
それでも私はどこまでも
波打ち際を歩いている
たったひとつの
足跡をつけ続けながら
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。


処理中です...