アテンションプリーズ!ガラポンの特賞は異世界でした!?~アオイ50歳。異世界でエンジョイしろと言われても…若くないので出来ません!~

三星

文字の大きさ
33 / 42
エルフの里~リイルーン~

28:アオイ、策に溺れる

しおりを挟む



******


―――バチィィ!バチバチッ!バチィ!!
 

 店長の座っていたソファに、現在はルティが腰掛けております。
 葉巻でも咥えようものなら、さながらマフィアのアンダーボス(若頭)そのものにしか思えないような雰囲気をビシバシと……彼の膝の上、横抱きで捕獲されてながら体感しております、実況のアオイです。
 腰回りを片手でがっちりホールドされているので、空気を読み、大人しくお口にチャック中です。


 対する店長は、自主的に床で正座をして、その周りをルティのあかい雷光が、まるで紅い鳥籠のように取り囲んでいる。これがホントの籠の鳥……ガクブル


「……で?消し炭になる前に、何か言い残したことはあるか?」


 言いわけはあるか?とか、弁明ではなく、物理的に「消す」のが前提なのDETHか!?


「……申し開きのしようもございません。どんな理由であれ、あなた様の大切なフィアンセのお手に触れてしまった事実に、変わりはないのですから……」


 ちょっと、ちょっと店長!どちらかと言えば、私が握手を求めたようなものじゃない?なんで、『フィアンセがいる人に手を出しちゃいました』みたいな……いや、出したけどさ、出したのは握手の手ですからっ!
 商談成立でも握手するじゃん!『今後とも宜しくお願いします』みたいなさ、そんなようなやつでしょうよ!


 いかんぞ、このままだと店長が時世のポエムを詠もうとしている雰囲気だ!もはや処刑台の囚人にしか見えない……
 

(あーどうしよう……本当の事情を言うと店長の秘密にしたいことがバレるし)
 
 
 自惚れと言われても、きっとこの激おこルティを鎮められるのは私しかいないのだろう。
 そして、私にはようやく得た、同志を守る使命がある。恥がなんじゃい!命より大切なものなんてないのだっ!


(アオイ、今こそ立ち上がれ!君は女優だ!!仮面をかぶるのよっ!!!)



「ル、ルティ?」
 
 今回も目薬なんて必要ないくらいビビッてるから、すでに目は潤んでる。白目にならない程度の上目づかいで、まずは様子見の一発を放つ。バキューン♡


「……なんです?『心配ない』と言っていたのに、結局心配した通りになりましたけど?」


 やーばーいー!!ヤダこの人、激おこなんてもんじゃないんじゃん?魔王だよっ!背景が綺麗な花から、おどろおどろしい、人喰い植物じゃん!!変幻自在の背景なの!?


「ち、違うよ……ルティが思っているようなことは1ミクロンもないよ?あれは、私から握手を求めて、それに店長さんが応じただけで……握手も、、、あれよ……無事採用してもらえたから、『ありがとうございます!宜しくお願いします!』って決意表明的な握手なんだよ!
 そういうの、この世界ではしてはいけないことだって私知らなかったし……」

「していけないことでは…ないですが、目を潤ませて見つめ合っていたじゃないですか」


 なんてこった!今回はそう簡単には許してくれそうもないかぁぁ……くっ、奥の手を投入するしかないのか!


「グスッ…せっかく、ルティにプリンの新作おやつ<プリン・ア・ラ・モード>を作ったのに。ズズッ、帰ったら私が食べさせてあげようって決めていたのに……」

「<ぷりん・あ・ら・もーど!?>なんですか、それ?……それにアオイが食べさせてくれるのですか?……しかし、それとこれとは……」


 フレー!フレー!もう一息!!最終奥義<お色気作戦>。できるのか私に!?


「そ、それに今日のお風呂で着る水着もルティが選んだやつにしようかな、とか……?
 あぁ、一緒に月を眺めたいなぁとか、ルティのことを一日中ずっと考えていた私の想いなんて、これっっっぽっちも届いていないなんて。私はただの不貞を働いた女に格下げされてしまったんだね」
「うっ。い、いえ、そんなことは……」

「グスッ、私が悪いんだよね……うん。残念だけど、しばらくは反省する為にアイさんの家で御厄介になろ…」
「わかりました!アオイの愛は十分わかりました!!」


 よっしゃ!!でもまだ油断はダメ。店長の無罪放免を聞くまでは!!


「本当?ホントに伝わってるの?じゃあ、店長さんは全っく関係ない、巻き込まれただけの被害者だから、あの魔法も解いてくれるよね?」


 ダメ押しの、思いっきりギューー!!
人前で嫌だけど、店長は瞳から光が消えてるから見えていない(多分)!


「ア、アオイから……!?ハァ、そうですね。店主、申し訳なかった」


 パチンッ!と指を鳴らすと、きれいさっぱり檻は消えてなくなった。店長、無事生還!!


「ふぁっ……」
 脱力する店長。足もしびれたよね?


 とりあえずは良かった、勝訴!勝訴!!やっと牢屋からの釈放!!ひゃっほう!!
 店長はようやく緊迫した雰囲気から解き放たれたせいか、放心状態だ。ごめんね店長、でも秘密はちゃんと守ったからね!


「アオイ、誤解だったとはいえ、そういった現場を目撃した私の心は一度死んだと言っても過言ではないと思うのですよね」
「あ、はい。それは、ごめんなさい」


 まぁ、気分は最高潮に上がっていたから、確かに普通とは違った雰囲気だったかもしれないなと猛省はする。
 でも、浮気心なんてしてないしさ、趣味仲間を得たってだけなのに……まぁそれを言えない時点で秘密の共有者とは言えるのか?なんて複雑!


「アオイに傷つけられた心は、アオイに癒して頂くことが一番の薬だと思うのですが」
「え?食べさせる事と、水着選ぶ以外にも必要ってこと?」


 えーーそりゃ多くないかなぁ?お客さんそれは困りますわー


「もしでしたら、水着はアオイが恥ずかしくないもので構いませんよ」
「ホント!?じゃあ、それと交換ってことで、私にできることなら何でもいいよ」


 正直、水着チョイスは一番嫌だったんだよね。封印してある、少々大人っぽい水着を選びそうだと思っていたからね。あれ本当にアイさん達が決めたのかなぁ?
 あとはなんだろ?(人前じゃない)キスとか、膝枕とか?それくらいなら、叶えられるよね。


「ええ、むしろアオイにしかできないことですよ。では交渉成立ですね、帰りましょう」
「え?うん…あの、お願いって何?帰ってから?あ、店長、お先に失礼しまーす!」

「店主、ではまた」


「……あ…は、い。また」


***


 そのまま即転移でルティの家へ戻り、プリン・ア・ラ・モードを食べさせて、ほぼ全快。
 ご機嫌うきうきウォッチだったルティに告げられた、お願いと言う名の刑罰は……口づけの部類ではあった、とだけ。しかし、それ以上は黙秘権を行使しますっ!
 ただ、告げられた時にスプーンを落としたよ私……カラーンってね

 その刑罰に対し、羞恥に羞恥を重ねながら…それでも耐えた私に『今後も、似たようなことがあったらお仕置きしますからね?』とキラッキラの笑顔で告げる鬼畜ぶり……この男に策は通じないと悟りを開きました。





 明日は店長を労ろう。おやつもジャンボプリン出したらいいかな?握手一つで消されかけた店長が一番の被害者だよね、はぁ。
 



<今日の教訓~心に刻むべきメモ>

・ 約束は主導権を握られたら終わり
・ お仕置きは内容をよく確認してから頷くこと
・ 恋人を怒らせたら危険




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...