現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風

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第29話 初依頼完了

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さて、採取の続きしますか。
鑑定で確認して、見た事もない薬草をどんどん採取していく。
すると、背後で声が聞こえた。

「わ~~なに、ここ。これ、キハダ草だ。オトハ草もこんなにある。こっちはミントとレモンバームね。ハーブティーにすると良い香りなのよね」

実に楽しそうに採取してるふりを続ける女性エルフだが心ここにあらずといった様子だ。

何か事情を抱えているのがまるわかりなのだが、相手が話さない以上、こちらから踏み込めない。

あれからどれくらい時間が経っただろう。
めぼしいものは採り尽くして、一息つく。
すると「ぐぅぅぅぅぅぅ」っと大きな腹の音が聞こえた。

音の方角を見ると、お腹を抱え真っ赤な顔をしてるエルフがいる。
俺はストレージから串焼きとまだ開けていないペットボトルのお茶を取り出した。
匂いにつられて俺を凝視している。

「食べるか?」
「食べてもいいの?」

このエルフは質問を質問で返すのが好きらしい。

「ああ、やるよ。俺は昼に食べたから」

串焼きとお茶のペットボトルをエルフに渡す。
勢いよく串焼きの齧り付いている。
そして、胸につかえたのか、ペットボトルを開けようとして四苦八苦している。

「これは、こう回して開けるんだ」

キャップを開けてあげるとお茶をごくごくと美味しそうに飲み始めた。

「はあ~~苦しかった。でもこのお茶美味しいわね」
「それなら良かったよ」
「あっ……ごめんなさい、全部飲んじゃった」
「いいよ。俺は水があるから」

「それで、何でここにいるんだ?」
「さっきもそれ聞いたと思うけど?」
「俺は本当に薬草採取だよ。冒険者ギルドの依頼でここに採りに来たんだ」
「こんな危険な大森林に?普通、こんなとこ来れないわよ」
「その言葉すっかりお前に返すからな」

少し考え込むエルフ。
そして、淡々と話し始めた。

「あなたは、私を危険から助けてくれた。お腹が空いていた私に串焼きとお茶をくれたわ。私、あなたを信用することにしたわ。
私は妹を探しているの。私と妹はエルフの村の外で人間に騙されて拉致されたのよ。妹と村の外でベリーを採っていたの。そこに人間が来てそのベリーにとても合う王都のお菓子があるよって言われて、止めてあった馬車までついて行ったのだけど、それが嘘で、私と妹を奴隷商人に売り渡すって脅されたわ。2人とも気絶させられて目を覚ましたら馬車が魔獣に襲われてたの。チャンスだと思った私は妹を起こして逃げたんだけど、妹が逃げ遅れて追いかけて来た人間に捕まっちゃったのよ。
それでも妹を助けようと馬車の後を追ったのだけど、追いつけなくて、近道を選んで大森林を抜けようと思ったの。そしたら、たくさん魔獣がいるから木をつたいながら逃げてあなたに助けられたのよ」

一気に話し終えたエルフ女性は「ふう~~」と、息を吐いた。
しかし、こいつお人好しすぎないか?
今時の子供でもそんな見えすいた嘘で他人についていかないだろう?

「そうだったんだ」
「それであなたはどうして平気な顔してこんな危険なところにいるの?」

これ、妹を助けないとマズいよな。
そうしないとこのエルフは、無茶をして大森林を抜けようとするだろうし、結果はどうなるか目に見えてる。
1度助けた者が無惨に殺されでもしたら、俺が助けた労力は無駄になる。
仕方ない。

少しだけ話すか……

『そうですね。マスターに任せます』

「俺には移動手段があるから大森林の中でも平気なんだよ。俺の能力を誰にも言わないと約束するなら妹を助ける手助けをしてもいい」

「本当に?騙してないわよね」

「疑うのならお菓子欲しさについて行くな。初めから疑っていれば悪い人間に騙されなくて済んだんだ。少しは反省しろ!」

「う~~酷い」

『さすが、マスター。鬼畜の鑑ですね』

(おい!真っ当な意見だ)

乗りかかった船だし、採取も終わったから早く帰らないと。

「おい、お前。乗ってた馬車はどんな馬車だったんだ?」
「お前じゃないわ。エルラン村のキキとミミの娘ララよ」
「じゃあ、ララ、乗ってた馬車はどんな馬車だったんだ?」
「私が名乗ったのよ。あなたも名乗りなさいよ」

(会話が噛み合わねー)

「俺は駆け出しの木級ランク冒険者だ。それで乗ってた馬車の特徴は?」
「駆け出しの木級ランク冒険者ですって?信じられないわ」

(あ~~こいつ、俺の言う事ちゃんと聞いてるのか?それともわざと?)

もう帰ろうかな……

『エルフ族は、高慢な態度の人が多い傾向ですが、人の話を聞かない系は珍しいです。マスターやりましたね、珍獣ゲットです』

もういい、帰ろうかな?

そう思い腰をあげると、

「え~~と、商人用の馬車だったわ。幌は、黄ばんだ白。馬は珍しいタイプで茶色だったけど眉間に白い筋が入ってるの。もう一頭の馬は茶色だけど足先が白かったわ」

今更かよ……まあ、良いけど……
荷台の方は特徴ないけど馬で探せば見つかるか?

千里眼を発動して、大森林に沿って探し出す。
いない……少し範囲を広げてみるか……

「ねえ、急に黙り込んでどうしたの?」
「ねえ、何で名前教えてくれないの?」
「ねえ、どうしてそんなに怖い顔してるの?」
「ねえ、どうして……」

「あ~~っ!悪いが少し黙っててくれ。俺には遠くから妹が乗ってた馬車を見つける能力があるんだ。今、それで探してるから少し大人しくしててくれ」

「すごーーい。そんな能力があるんだあ」
「それってどうやるの?」
「そういえば、あんたの名前を聞いてないわ」
「ねえ、どうして……」

「あ~~もう、煩いっての!頼むから黙っててくれよ。妹を探すの俺にとっては何の得もないんだし、それでも探してるんだから少しくらい黙っててくれ」

「う~~酷い。でも、わかった。名前を教えてくれたら黙ってる」

そんなに名前が大事なの?

「俺はケンイチロウだ。言いにくかったらケンでいい」

そう言って俺は真剣になって探し始める。
エルフ女子は、その間に聞こえないような小さな声で「ケンっていうんだあ。もし、妹を見つけてくれたらお嫁さんになってあげるよ。それなら、ケンに損はないわよね」と、つぶやいていたが、その時、俺は千里眼に意識を集中して……いた!

「見つけた。ここから南西方向。馬車の馬が一致した」

「えっ、本当に?」

「今更、嘘をついてどうする。いくぞ!」
「でも、どうやって……」

【影収納】

影収納でエルフ女子を収納する。

「えっ、ここどこ?暗いし、怖い」
「俺の声が聞こえるか?」
「聞こえるけど、どうなってるの?」
「俺の影に収納した。これから移動する」
「えっ、どういうこと?」

【影渡り】

千里眼で確認した地点に移動する。
馬車の進行方向300メートル先だ。

このまま、影から行くか……

俺は影から馬車に近づきその荷台に忍び込む。
中には5、6人の小さな子供が縛られていた。

「ララ、見えるか?」
「えっ、あっ、ルル」

エルフの女の子が1人いる。
その子がルルらしい。

「ルル!ルル!お姉ちゃんだよ~~」

影の中の声は術者の俺しか聞こえない。
他にも連れ去られた子がいたみたいだな。

『馬車ごと影に収納して兵士の元に送ったらどうですか?』

「わかった。それでどこが信用できる?」

『……聖王国ミストラルの王都でしょうか?この国の首都ですし、兵士もたくさんいます』

「場所がわからないんだが?」

『今、マスターの頭の中に座標を送りました。これで移動できるはずです』

「わかった。【影収納】」

影の中から馬車ごと収納する。

「うわ~~なんだこれは!」
「どうなってんだ。畜生!」

拉致犯の怒号が聞こえるが全て無視。
おまけに【スタン】をかけて気絶させておく。

座標通りに移動して馬車を影収納から放出する。

立派なお城みたいなところだったけど、ここなら兵士もたくさんいるだろう。
その際、ララの妹ルルだけ影収納に入れ直す。

影の中で「ルル!ルル!」「えっ、ララお姉ちゃん!?」って再会できたらしい。
そのまま、俺は登録した冒険者ギルドの路地裏に移動した。


◇◇◇


路地裏でララとルルを影から出した俺は、2人を連れて猪熊亭までやってきた。
ろくな食事も取ってないだろうと思って、クマ耳の亭主に食事の用意をお願いした。
能力のことは誰にも言うなと念を押す。

俺は、その間に、冒険者ギルドに向かう。
今日の依頼達成の報告の為だ。

この時間は、依頼を受けた人達が帰ってきてるので、朝と同じような混雑ぶりだ。
いつもの受付嬢の前には、長い列ができている。

「マジかよ。こんなとこ入れないよ」

人混みの嫌いな俺はギルドの入り口で立ちすくんでいた。

「おい、小僧、邪魔だ。そんなとこに突っ立ってるなよ。退け!」

いかにも冒険者といった風情の人達が、俺を突き飛ばして中に入って行く。

「おおーー、冒険者って本当に荒っぽいんだ」

突き飛ばされたというのに、俺は妙なところに感心していた。

『マスター、そこは邪魔なのはおめえらだぜ!と、言い返す場面では?』

そんな事したら面倒なことになるじゃないか。
そんなのゴメンだ。

『チッ! ヘタレですネ』

(舌打ちなんかするな!)

仕方ない。
我慢して並んでおこう。

俺はいつのも受付嬢の前にできている列の最後尾に並んだ。

う~~何か目眩するし、早く自分の番にならないかな……

『マスター、普通の人間の数十倍の精神力を持っているのに、何と情けない……』

(それを言うな!苦手なものは苦手なんだよ)

『では、明日の空いてる時に来れば良いのでは?』

(せっかくここまで並んだのにやめるのは何か嫌だ)

『あ、そろそろマスターの番ですよ』

エイシスの言うように連れも一緒に並んでいたようで一気に自分の番が近づいた。
パーティーなら代表者だけが並べばいいんだよ。全く!

『八つ当たりですか?マスター、本当に情けないです……』

とうとう自分の番がやってきた。
受付嬢に家具職人のジョージさんからの依頼完了届を提出する。

「やはり、ケンイチロウ様に任せて正解でした。また、お願いしますね」

俺は騙されないからな。
そんなあざとい笑顔になんて。

『マスター、このメスはきっとマスターの事を気に入ってるのだと思いますが?』

それは無い!断言できる。
女性のそういう優しさや笑顔は、きっと裏があるに決まってる。

俺は、受付でもらった銀貨2枚をポケットに入れてギルドを出た。

あっ……薬草を買い取ってもらうの忘れた。

『どこまでいってもマスターは、残念ですね』

エイシスの呆れた声がいつまでも脳内に残った。




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