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第33話 鑑定持ち
しおりを挟むポーション作りは、正直言って楽しかった。
地道な作業だが、こういう仕事が俺には合っているのかも知れない。
出来上がったポーションの品質は、ロリ婆さんの作った物よりは劣るものの人族社会で流通しているポーションよりは良い物だと言われた。
『マスター、自分で鑑定してみればよいのでは?』
エイシスに言われて、鑑定という便利機能があったことを思い出す。
『マスター、相変わらずアホですね』
確かにそう言われても仕方がないが、アホはないんじゃないかな?
普通の一般人だったのだから、便利機能があっても早々使いこなせないぞ。
スマホだって全ての機能を使いこなしていない人も多いだろうし。
そのところをエイシスはわかってないよな。
そう思いながら【鑑定】を発動させる。
すると、
ーーーーー
低級ポーション(品質 良)
原材料 ヒポク草 オトハ草 魔力水
乾燥させたヒポク草とオトハ草を魔力水で煮込んだ物で体力回復と外傷に効果がある
作成者 御門賢一郎
ーーーーー
因みロリ婆さんが作ったポーションも鑑定してみた。
ーーーーー
低級ポーション(品質 最上級)
原材料 ヒポク草 オトハ草 魔力水
乾燥させたヒポク草とオトハ草を魔力水で煮込んだ物で体力回復と外傷に効果がある
作成者 エルラン村 長老 ハイエルフのナナ
ーーーーー
品質が最上級になっている。
ポーションを鑑定してる様子を見てロリ婆さんが驚いた様子で問いかけてきた。
「ケンよ、お主もしかして鑑定が使えるのか?」
「ええ、つかえますよ。ポーションでしたら名前、品質、必要な素材それと効能、あと作成者しかわかりませんが」
「それだけわかれば充分じゃ。ケンよ、お主に鑑定してもらいたい物がある。ルルとララはここで留守番しておれ。ケンこっちじゃ」
普通ならルルとララが一緒に行くと言いそうなものだが、ロリ婆さんの醸し出す雰囲気に呑まれて何も言い出さなかった。
ロリ婆さんにドナドナされた俺は、鑑定だけで何でそう驚いたのだろうと不思議に思う。
………
『マスター、この世界で鑑定持ちは少ないのです。ラノベとかでは有名なスキルですが、この世界で鑑定持ちは2名しかいません。しかもその内のひとりはカナディア皇国の皇王ですし、もうひとりはこの世界の賢者と言われている人だけですね』
「少なっ!ファンタジー世界なのにそれって普通なの?」
『冒険者ギルドにあるような簡易な判定機は、流通しています。中には、アーティファクトとして国や教会に保管されている貴重な判定機もありますが数は少ないです。もし、自由に鑑定が使えたら、マスターの世界で高校や大学入試なんてカンニングし放題ですし、カジノなどでイカサマして稼ぎまくれます。宝くじも当たりを引くことも当然出来ますし将来上がる株の銘柄もわかります。ということは学歴も経済的にも不自由はないでしょう。正直世界を掌握できますよ』
「確かに、ごくっ……」
『そういう訳で鑑定はどの世界でも貴重なスキルなのです。でもマスターはズルはダメですからね。大賢者としての資質が損なわれます。もし、意味もなくそのような行為に及ぶようならわかってますよね?マスター……』
「わかってるよ。処分するんだろう?そう言われると確かに鑑定は便利すぎるよな。そっち方面では使わないけど」
『わかっているのなら結構です』
………
エイシスの説明で鑑定持ちが少ないのはわかったが、魔法が一般的に存在する世界では鑑定がないと不便じゃないのかな?
そう思いながら世界樹とは反対の方角に連れていかれ、林の中をしばらく歩くと開けた場所に出た。
そこは綺麗な泉がある不思議な場所だった。
「ここは随分空気が澄んだ場所ですね」
「ああ、泉の中央にある小さな島に若木があるじゃろう。それが世界樹から取らさせてもらった枝木を植樹したものじゃ。それが泉の水とここら一帯を浄化しちょる」
高さ30センチ程の小さな若木が世界樹のひとつらしい。
………
『世界樹は世界にひとつだけが常識です。二本存在する事はありえません。このままですとこの世界の魔力の素であるマナが異常をきたすでしょう』
エイシスがそう脳内に話かけてきた。
「世界樹ってマナと関係あるの?」
『はあー、そう言えばマスターは無知でしたね。世界樹は世界のマナの調整機能です。マナが消費されて薄くなればマナを放出し、その逆にマナが濃くなれば吸収して一定に保つという非常に重要な役割を果たすと同時に強力な浄化作用をも持っています』
「え、凄いね。そんな便利機能があるんじゃ若木があっても別に構わないのでは?それよりもっと増やせば各々の木の負担が軽くなると思うんだけど?」
『そういう訳にはいきません。このまま若木が育てば、世代交代であそこに見える世界樹が枯れてしまいます。あの大きさだから現在のこの世界のマナの均衡が保たれているのです。この若木ではこの世界のマナを調整するのは難しいでしょう。若木が育つ数万年先なら問題ないでしょうが、その前にこの世界は崩壊します』
「え、それってマズイよね?」
「ええ、そこまでして若木をこの場所に植えた理由は知っていますが無茶なことをしたものです。これ以上は私から話すのは少し違うと思いますのでマスターがロリ婆さんに直接聞いて下さい』
………
エイシスはそう語りかけて沈黙した。
「世界樹の若木ですか」
「ああ、ケンよ。世界樹の事は知っておるか?」
「御伽話程度なら」
そういうことにしておこう……
「世界樹は世界にひとつしか存在してはならない。それは古から世界樹を護ってきたエルフ族の常識じゃ。しかし、こうしなければならない理由がある。勿論、反対意見もあった。だが、皆納得して今はこうしておる」
ロリ婆さんは、沈痛な面持ちでそう語りだした。
「余程の事情があるのですね?」
「ああ、この泉には神格を持った水の大精霊ウンディーネ様が鎮座しておられる。しかし、今は邪神の呪いを受けて眠ったままじゃ」
邪神の呪い!?異世界怖っ!
「そ、それで俺に何の用ですか?正直言って役に立つとは思えないのですが……」
「その呪いを解く解呪薬を作って何度も試したのじゃが、普通の解呪薬では効き目がなくてのう。それで鑑定持ちのケンに何の素材が足りないのか鑑定してもらいたかったのじゃよ」
そういうことか……
「わかりました。でもそのウンディーネ様は何処に?」
「泉そのものがウンディーネ様じゃ」
うん、ファンタジー世界だね。
俺の常識じゃ理解できない。
「じゃあ泉に鑑定してみます【鑑定】」
………
水の大精霊 ウンディーネ
約一万年前の神魔戦争の時、神の使者として悪魔族との戦いに参戦し神の勝利に導いた7大精霊のひと柱。
また、280年前に復活した邪神の討伐に多大な貢献をするも呪いにかかり現在休眠中。
………
「あれ、ウンディーネ様の情報しか表示されないぞ」
『鑑定で表示されている呪いの部分に更なる鑑定を試して下さい』
そういうこともできるんだ?
ウェブページにあるリンク先みたいな感じだ。
そして、呪いの部分に更なる鑑定をかける。
………
邪神の呪い
邪神ジャバウォックの崩御の時にかけられた呪い。
瘴気を産み出し身体を衰弱させて死に至らしめる。
解呪方法
いずれ復活する邪神ジャバウォックが自らその呪いを解くか特殊な解呪薬が必要。
……
「邪神ってまた復活するの?」
「どうじゃ、何か分かったか」
どうも声に出してたらしい。
ロリ婆さんがじっとこちらを見ていた。
「失礼しました。もう少しお待ち下さい」
集中して今度は特殊な解呪薬の部分に鑑定を重ねた。
………
特殊な解呪薬
邪神ジャバウォックによる呪いは強力で神をも死に至らしめる効果があるが次の素材で解呪薬を作成できる。
1 世界樹の実
2 七連草の花
3 水神若しくは神竜の涙
4 百合の花の根
5 濃度の高い魔力水
………
「わ、わかりました」
そう言うとロリ婆さんは、俺の胸ぐらを掴んだ。
「何の素材じゃ!何が必要なのじゃ!早く答えんか!」
「グエッ!ちょっと揺らさないで、お、落ち着いて下さい」
凄い力だ。
こんなちっこい身体なのに、どこにそんな力があるんだ?
「ああ、すまんかった。少し大人気なかったのう。それで、素材は何が必要なのじゃ」
「えーーと、まず世界樹の実、それと七連草の花。水神か神竜の涙と百合の花の根。それから濃度の高い魔力水だそうです」
鑑定結果を伝えるとロリ婆さんは、「ああーー!!」と、悲壮な声を出しながらその場に崩れ落ちたのだった。
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