58 / 71
第ニ章
閑話 ストーカー・アイドル 連城 萌
しおりを挟む私こと連城 萌の朝は早い……
「おねえちゃん、私のハンカチ知らない? 」
「なあ、俺の靴下、片っぽないんだけど」
「びえぇぇ~~ん。拓人兄がぶったーー! 」
「おねぇちゃん、琴美のオムツ変えないとーー」
ボロい安アパートの一室で、騒がしい中で朝食を作っている連城 萌は、その下に5人の幼い兄弟がいた。
小学6年生になる 連城 桜
小学4年生の連城 大輔
小学1年生の連城 拓人
5歳になる連城 杏
生まれて8ヶ月の連城 琴美
そして今、兄弟達の朝食を用意している私、連城 萌 中学3年だ。
連城家は、半年前、両親が離婚して子供達は母親と一緒に暮らしている。
父親は、事業に失敗して多額の借金を負い離婚届を置いて何処かに行ってしまった。
住んでいた家は担保に取られて借金は大幅に減ったが、まだ返済は残っている。
本来は、父親が返さなければならない借金だ。
だが、母親が連帯保証人になっていた為、父親が蒸発しても借金はなくならなかった。
そんな母親は、昼も夜も働きづめなので家庭の事は私が主にこなしていた。
「姉ちゃん、給食費口座から引き落とされなかったんだってさ」
「えっ、本当? 桜、なんで言わないの? 」
「桜姉ちゃんは言いづらかったんだよ。だから、俺が言ってるんだ」
「大輔、わかったわ。で、いつまでなの? 」
「早くお願いしますって袋を渡された。3人分……」
「そう、何とかするわね」
一人当たり1ヶ月、4300円
三人だと12900円か……
財布を見ると、中身は千円札が6枚と小銭しか入っていなかった。
これは家計費だし使えないよね ……
お給料、前借りするしかないか……
アイドルをしている連城 萌は事務所から月に15万円の給料が支払われていた。
レッスン代などが引かれると手元には8万円ぐらいしか残らない。
もっと、有名になれば……
しかし、私より歌と踊りの上手な可愛い女の子はたくさんいる。
そんな事を考えながら朝食を弟達に食べさせて私も学校に行く用意をする。
中学3年の私は、来年は高校生だ。
私の通う私立の女子校は、中高一貫校なのでエスカレート式に上がれるから受験の心配はない。
その分レッスンに力を入れられる。
もっと、練習して上手くならないと……
そこそこ売れるようにはなったけど、それは私のスタイルと顔だけだ。
歌が特別上手なわけではないし、ダンスも同じこと。
容姿も武器になるのは知っている。
だけど、それだけでは私の夢は叶えられない。
そう、私はハリウッド映画に主演女優として出るのが夢。
私の脚本による私主演の映画。
目指すはレッド・カーペット。
ロサンゼルス郊外の高台の豪華な家に家族みんなが平和に暮らすこと。
それが、私の夢だ。
その夢の為に、霞 景樹が必要だったのに……
初めて会ったのは、六本木の焼肉屋さん。
マネージャーに連れられて、家族の事を相談してた時、あの柚木 麗華さんと一緒に現れたモサイ男。
将来、私のスポンサーになってくれるような人は、日頃からチェックしている。
麗華さんは、その中でも理想な人だ。
女性だし、家柄もいいし、それに美人だ。
仕事柄、お金持ちの人に会う機会は多い。
でも、大人の男性はイヤラシイ目でジロジロ見てくるし、身体目当てなのが一目瞭然だ。
そんな人がスポンサーになってしまえば、将来の汚点になり兼ねない。
今は、どこで暴露されるかわからない時代だ。
築きあげたものが一瞬で無くなってしまう。
だから、業界の人もパス。
噂は直ぐに広まっっちゃうからね。
だから、身体目当ての大人の男性はパス。
お金持ちの美人なお姉様を捕まえるのがベストな選択。
そんな中で、霞 景樹が現れた。
年齢も私と同じくらい?
少し年上かもしれない。
同じ年頃の男性なら彼氏として付き合っていたという言い訳も通る。
誰かの愛人より、世間体はいいはずだ。
純愛だしね……えへへへ。
それに、あのモサイ男ならわたしの言うことを聞きそうだし、利用できる。
何たって、私はアイドルなのだから……
「おねえちゃん、早くしないと間に合わないよ」
「そうだったわ」
私は、みんなも用意をして、妹の杏と琴美を保育園に預けて学校に行く。
お母さんは、夜勤明けで朝9時には帰ってくるはず。
借金返済の為に、夜勤を多くこなしている私の母親は、看護士をしている。
女性にしてはお給料が良いみたいだが、借金で大半が消えてしまう。
「取り敢えず、給食費を何とかしないと……」
私の頭の中は、給食費の事でいっぱいだった。
◇
学校に着いて席に座ると、仲の良い友達が話しかけてきた。
「ねぇ、萌知ってる? 」
「何を? 」
「今週の土日に、蒼山川学園の文化祭があるんだって」
「そうなんだ。えっ、本当に? 」
「うん、萌も行く? 」
「う~~ん、ちょっとまだ予定がわかんないかな」
「そっかーー大変だね。アイドルも」
「まあね~~」
今週の土曜日か……
その日は夕方5時までにスタジオ入りすれば問題なはず。
時間は、あるわ。
ここで、霞 景樹を落とす。
それから、私の下僕となって貢いでもらうのよ。
まあ、その代わりに私の胸くらいならお触りしてもOKよ。
胸だけだから!
まあ、取り敢えずは、給食費よね……
時は過ぎて、放課後……
学校帰りの私は、まず、今夜のおかずを調達しなければならない。
近所のスーパーで牛乳の安売りがあるはず。
それに、そこは他と比べて野菜が安い。
「今日は、クリームシチューにしよう」
私は買い物を済ませて家に帰る途中、泣きべそをかいている小学6年生の桜と出会った。
「桜、どうしたの? 」
「おねえちゃん、お財布落としちゃったよ~~」
「えっ、お財布を? どうして? 」
「だって、おねえちゃん大変そうだから代わりに夕食の買い物に行こうと……」
「そっか、桜は優しいね。じゃあ、交番の届けておこう。見つかるかもしれないよ」
「本当? 」
私は、桜と一緒に交番に届けた。
その財布は、食費が入ってる我が家では貴重なものだ。
「見つかったら連絡する」と警察官の人に言われて家に帰る。
桜は、仕切りに「ごめんなさい」と謝っていた。
アパートに着くと、不審な男が家の中を伺うかのようにウロウロしている。
「誰? 不審者? 」
「おねぇちゃん、怖いよ~~」
「大丈夫。おねえちゃんがついてるから! 」
私は、勇気を振り絞ってその男に声をかけた。
「そこで、何してるの! 警察呼ぶわよ」
男は、私の怒鳴り声でこちらを見た。
その男は、あの霞 景樹だった。
「あの~~財布が道に落ちてたのですけど、住所が書いてあったので持ってきたのですが……」
「えっ……! 」
「おねえちゃん、あの財布だよ」
霞 景樹は、持っていた財布を妹の桜に手渡した。
「どうしてあんたがここにいるのよ! 」
私は思わず声が大きくなっていた。
「どうしても、と言われても仕事の下見できました。来週から配る地域が増えたので……」
配る? 何を?
「まあ、いいわ。お礼を言っておくわ」
「別に、お礼を言われ程でもありません。この近くに用があったついでですから」
霞 景樹、もしかして、私をストーカーして……
「おねえちゃん。中に入ってお茶を飲んでってもらおうよ」
「そうね……えっ、それはマズイわ」
そう答える間に、桜は家に霞 景樹を招き入れてしまった。
「はあ~~どうするのよ! 私! 」
でも、あいつは私の事を気づいてないようだった。
もしかしたら、誤魔化せるか……
デパートで私の顔を見たのは一瞬だし、アイドルとしての私をあいつは知らなかったし……
「よしっ、いけそうね」
財布を届けてもらったお礼はしないといけない。
お金を渡せる余裕はないしお茶ぐらいはご馳走してもおかしくないわ。
家の前で何度もシュミレーションをこなして、決心した私は家の中に入った。
でも、そこで意外な光景を目にした。
「え~~と、何してるのかしら? 」
「わかりません。何故かこうなってしまって……」
霞 景樹の膝の上には5歳の妹杏が腰掛け、その傍らにはゲームをしながら寄りかかる弟の拓人。桜はお茶の用意をしていて、弟の大輔は宿題を教わっていた。
「あ、姉ちゃん。この人、姉ちゃんの彼氏だろう? 」
宿題をしていた大輔が突然変な事を言い出した。
「ち、ちがうわよ! 何言ってるのかしら。大輔は! 」
「姉ちゃん、顔真っ赤にしてら~~」
「こらっ!拓人、言っていいことと悪い事があるんだからね! 」
「わーーい、姉ちゃんが怒ったーー! 」
私をからかってふざけている大輔と拓人。
それを見ながらニコニコしてる霞 景樹 。
みんな気に入らない!
「おねえちゃん、これ、霞さんが使ってくれってくれたの」
桜は、茶封筒を私に見せた。
中身を確認すると一万円札が3枚入っている。
「どういう事? 何でお金が? 」
「大輔が給食費が払えないんだって言ったらバッグからそれを出してきて使ってくれって渡されたのよ」
大輔めーー!!
「ちょっと、あんた! これ、もらう理由がないんだけど? 」
「あげたんじゃありません。落としたんです」
「はい!? どういう事なの? 」
「この家に落としたのですが、桜さんが拾ってくれたのでお礼に渡しただけです」
「何言ってるの? 私の家が貧乏だからって馬鹿にしてるの? 」
「そんな事はないです。実は、高価な指輪を買わなくても良くなったので使い道がないんです。だから、落としました」
指輪……もしかして、デパートで私に買ってあげれなかったからなの……
私、気づかれてた……
「そ、そうなの? そういう事なの? 」
「そうです」
「へ~~少しは、私を認めたんだあ。へ~~」
「はあ……」
なんだ。そういう事なのね。
霞 景樹は、もう私にメロメロって事かしら……
「わかったわ。これは預かっておくわ」
「そうして下さい」
その日の夕食、霞 景樹は、私の作ったクリームシチューを食べて上手いと言って帰っていった。
まあ、現金は予想外だったけど、これはありがたく使わせてもらうわ。
私の手作りのシチューを食べたのだから、これじゃあ、足りないけどね……
見てなさい。霞 景樹。
貴方をもっとメロメロにさせちゃうんだから……
◆
「しかし、賑やかな家だったな……なんか懐かしいような気がする」
夕食をご馳走になった後、朝刊配達の順路を確認して帰路につく俺は、あの上から目線の女子と何処かで会った気がした。
興味のない年頃の女子は、みんな同じ顔に見える。
「あの言い方、ストーカー・アイドルに似てたけど、気のせいだよね……」
俺は、コンビニに立ち寄って陽奈と瑠奈にアイスを買って帰るのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる