この世界の裏側で誰かが何かをしている〜最強のモブと自重出来ない美少女双子妹〜

涼月 風

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第三章

第60話 チャぺルの調査

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『お・は・よ・う・ございます。今、私はドアの前にいます。この鍵でここを開けますと……』

『ボコッ』

「痛い、お兄、何すんの?」

「寝起きドッキリの真似をするな!普通にドアを開けて入ればいいだろう」

 俺達は、学園のチャペルに来ている。
 今は、午前2時。
 泣く子も黙る丑三時。

 学園長の依頼を果たすべく夜中に学園に入り込み、チャペルに侵入しようとしてたら、ついてきた陽奈がふざけたところだ。

 瑠奈は、『怖いです』と言って俺の左手を抱き込んでいる。
 幸せそうな顔をしているのは何故?

「瑠奈、何が怖いんだ。霊とか邪鬼とかいつも見てるだろう?」
「私が怖いのは兄様の愛が私から離れてしまう事です」

「…………」

 沈黙が周囲を包んでいると、

「私は右手借りるね」

 右腕まで陽奈に取られた。
 これでは、思うように動けない。

「なあ、瑠奈も陽奈も帰ってもいいぞ。明日辛いだろう?」
「わははは、お兄、もう今日だよ」

 ベタなボケするな!陽奈……

「瑠奈は何か忙しそうにパソコン見てただろう?帰っていいんだぞ」
「大丈夫です。見てたのはYouTubeですから」
「そうなんだ。因みに何の動画なの?」
「汚れた100円をひたすら磨いて鏡面仕上げにする動画です」
「……それ、面白いの?」
「はい、とっても」

 お兄ちゃんは、妹の趣味をとやかく言うつもりはない。
 ちょっとだけ瑠奈の将来が心配になっただけだ。

 さて、調査をしなければ。

 チャペルの周りは異常が無かった。
『眠り病』と言われる女性と二人が倒れていた場所も同じだ。
 あとは、このチャペルの中だけなのだが、鍵は職員室から拝借してきた。
 学園長の許可があるのだから問題ないだろう、ということにしておく。

「陽奈、解錠を頼む」
「はっ!いよいよですね。ここを開けると美女があられもない姿で寝ている……」

『ボコッ』

「痛いよ。お兄」
「それやっても、もうツッコまないからな」
「そうなの?ノリ悪いなあ、お兄は」

 たかが、チャペルのドアを開けるのに、前置きが長すぎる。

 俺は、陽奈がなかなか鍵を開けようとしないので鍵を取り上げて自分で開ける。

『ガチャガチャ……ギーー』

 ドアをゆっくり開けると……

「あっ!お兄」
「言いたい事は、わかった」
「キャーー!」

 瑠奈、ここぞとばかりに引っ付くな!

 そう、そこには小太りのおっさんがいた。

「お兄、おっさん、デブのおっさんがいる」
「頭がハゲてます。怖いです」

 瑠奈、ハゲが怖いのか?

「キモい」
「汗かいてる」

 妹達に、好き勝手に言われてるハゲデブおっさんの幽霊は、しゃがんで床に指でイジイジと何かを書きだしてしまった。

「陽奈も瑠奈も亡くなってるおっさんを虐めちゃダメだろう。すっかりいじけちゃったじゃないか」

「お兄、このおっさんが犯人?」
「いや、どう見ても違うだろう」
「ハゲが、ハゲがああああ」

「瑠奈、あんまりおっさんを虐めるな」

「失礼しました。ですが、兄様も歳を取ったらこうなるのかな、と思うと……」
「おい、決めつけるんじゃない。俺は、歳をとってもフサフサだ」

 だと思う……

「陽奈、おっさんを突っつくな。可哀想だろう?」

 おっさん幽霊は俺が庇ったので、熱い視線を向けてくる。
 そんなおっさんと俺を見比べて陽奈は、

「おっさんずLOVEなの?お兄?」
「バカ言うな。もう、調査ができないだろう?行くぞ」

「おっさんはどうするの?消しちゃう?」

「無害そうだし、あとで静葉に頼むよ」
「むっ、あの女に頼るんですか?兄様」

 瑠奈、俺をつねるな!それと、おっさんをドシドシと踏みつけるな!

 瑠奈に踏まれて何故か嬉しそうな笑みを浮かべるおっさんをどうしたら良いのだろう……

「調査に来たんだ。おっさんはほっといて行くぞ」
「「は~~い」」

 換気が充分ではないのか、少しカビ臭い。
 俺達は夜目が効くので灯りは必要ないが、ステンドグラスから射し込む月明かりで教会内は、程よく見渡せる。

 俺達が椅子の並んだ間を進むと壇上の両脇に扉が見えてきた。

「お兄、あっちに扉があるよ」
「そうだな、行ってみるか」

 まず、壇上の右側の扉を開ける。

『ギギーー』

 そこは、執務室みたいで10畳ぐらいの部屋の中央にテーブルが置かれていた。

「何もないね」
「つまらないです」

 何も無い方が良いと思うのだが……

「今度は、左側ね」

 俺達が進行を変えると、目の前にさっきのおっさんがいた。
 何故か、瑠奈の方を向いて両手をさすり上司のご機嫌をとってるような姿勢をしてた。

「瑠奈、好かれたみたいだぞ」
「え~~こんなハゲデブおっさんに好かれても~~」

 と言いながらボコボコと蹴りを浴びせている。
 気持ちよさそうにのけぞるおっさん……

「消すか!!」

「それがいいと思う」

 陽奈は、愛刀のひとつ『新月』を取り出して、おっさに向ける。
 口をパクパクしながら許しを請うおっさんを見てるとなんか悲しくなってきた。

「陽奈、それぐらいで勘弁してやろう」
「えーーおっさん斬りたかったのに~~」
「刀が汚れるぞ」
「それはやだ」

 陽奈は納得したようだ。
 愛刀を鞘にしまっている。

 気を取り直して、今度は右側の扉に向かう。
 すると、扉の前におっさんが立ち塞がった。
 ジェスチャーで入ってはダメだとアピールしている。

「お兄、この扉の向こうに原因がありそうだね」
「世界規模で起きている『眠り病』の解決の糸口が見つかるのは幸いです」

 瑠奈は、立ち塞がるおっさんに回し蹴りを喰らわして、おっさんを吹き飛ばす。

 そして、扉が陽奈の手で開けられた。

『ギギーー』

 構造は、右側の部屋と同じだ。
 しかし、床には何やら色とりどりの布切れが散乱していた。

「これって……」

 俺は、妹達と眼を合わせた。

 その時、慌てた様子でおっさんがやってきた。
 一生懸命、その布切れをかき集めている。

「このおっさんが集めたみたいね」
「女性の敵です。万死に値します」
「うん、煩悩の塊だね」

 おっさんの事をどこか憎めない可哀想な幽霊と思ってたいたが、ただの変態さんだったようだ。

「瑠奈、やってしまいなさい」
「はい」

 瑠奈は、鞭を取り出した。

 おっさんは、何故か期待をしてる眼をしてる。

『バシッツ!』

 瑠奈の鞭がおっさんを両断し床に打ち付けられた。
 舞い上がる女性の下着とともにおっさんは消えていくのだった。





 教会やその周辺を調べたが、成果は全く無かった。
 あえて言うなら、これで学園女子の下着が盗まれなくなった事ぐらいだ。

「また、振り出しですね」

 瑠奈は残念そうに俺に抱きつく。
 何で?

「ああ、場所は関係ないのかもしれないな」

「それって、倒れた人に何か共通点があるって事?」
「そうかもしれないね」

 陽奈は、いつの間にか側によってきたネズミをかまっていた。

「お兄、ネズさんが倒れた瞬間を見てたって?」
「そうなのか?」

 取ってつけたような偶然だな……

「うん、なんか写真を撮ってたらしいよ。チャペルの前で」

 うむ、写真か……そう言えば、ここであいつが踊り狂ってたっけ……

「ここは、人気スポットなのですよ。ドンスタ映えするそうなんです」

「はい!? そのドンスタ映えって何?」
「人気の写真アプリです。投稿してみんなに見てもらえるんですよ」

 また、アプリか……

「さて、帰るか?鍵は後で返却すればいいや」

「「は~~い」」

 俺達は、誰もいない学園をゆっくり進みながら歩く。
 違う。ゆっくりとしか歩けない。
 原因は陽奈と瑠奈が引っ付いているからだ。

「あ~~明日も学校か~~」

「兄様、学校が嫌いなのですか?」
「虐められてるの?」

「そう言うわけではないけどね」

 相変わらず男友達はできない。
 変わりに面倒な女子達が寄り付いてくる。

 俺は静かに過ごしたいだけなのだが……

「モブの道は険しいな~~」

「また、お兄が変な事言ってる」
「兄様の存在が、既に神なのですから無理な願望は諦めが肝心です」

 まずは、この妹二人から離れないとダメそうだ。
 でも、それは決して叶う事はないと俺は自覚していた。

 俺達は『霞の者』だから……






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