【完結】なかなか手を出してこないαを誘惑するΩの話

加賀ユカリ

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第一章

1.誘惑作戦

 αである高校2年生の真田陽太さなだようたとΩである高校1年生の佐竹琉生さたけるい

 二人は琉生の猛アプローチによって恋人になった。憧れの真田先輩との交際がスタートし、琉生にとっては夢のような毎日…のはずだった。しかし付き合い始めてから、琉生にはどうしても解決できない悩みがあった。

「先輩って、俺のこと本当に好きなのかな……?」

 そう呟く琉生の胸には、一向に発展しない二人の関係への不安が渦巻いていた。キスはおろか、手を繋いだ回数すら片手で数える程度である。いつも冷静で穏やかな先輩は、琉生からの愛情にはしっかり応じてくれるものの、どこか一歩引いているように見える。

(でも……このままじゃダメだ。何か変えなきゃ……)

「これは俺が行動を起こすしかない!」

 そんなことを考えながら、琉生は新たな決意を胸に秘めたのだった。

 目標はただひとつ──大好きな真田先輩に自分から手を出させること。そしてそのまま、先輩に自分を「番」にしてもらうことを。

 しかしこの計画が思いも寄らぬ出来事の連続を引き起こすことになるとは、まだ誰も知らない。

 ◇

 授業中、どういう作戦を実行するか考えながら窓の外をぼんやり眺めていると、ぽつぽつと雨粒が窓を叩き始めた。次第に音は激しくなり、クラスメイト達のざわめきが耳に入ってくる。

「うわ、めっちゃ降ってきた!」
「やばい、私傘忘れてたんだけど!」

 そんな声が耳に入った瞬間、琉生は閃いた。
 (これだ……!)

 一度決めるとすぐに実行する琉生は今日の放課後から計画を実行することに決めた。

 ◇
 琉生と真田の通うこの高校は、α、β、Ωの全性別が在籍している。しかしトラブルを避けるため基本的に性別ごとにクラスが分けられている。

 Ωとしてこの校内でαクラスに足を踏み入れることは滅多にない。それでも作戦のためだと自分に言い聞かせ、少し緊張しながら2年生のαクラスへ向かう。

 授業を終えて教室から出てくる上級生たち、琉生が廊下に立っているのを見て、いくつもの視線がこちらに集まっているのを感じる。明らかに驚いたような、興味深そうな目だ。

「Ωがここにいるなんて……」
「例の『α一族のΩ』か」

 そんな声が無意識のうちに耳に届いてくる。

 (……別に珍しくもなんともないだろ)

 そう小声で心の中で毒づきながらも、耐える。
 そうこうしているうちに、廊下の向こう側から慌ただしい足音が近づいてくるのが聞こえた。

「琉生!」

 勢いよく名前を呼ばれ、振り向くとそこには先輩──真田がいた。

「こんなところで何をしているんだ!」

 いつも穏やかな真田の、強い声色。思わず琉生は身体を固くする。

 次の瞬間、手首を掴まれ、そのまま引っ張られるように廊下を進む。真田の広い背中見ながら、琉生の胸の奥がきゅっと苦しくなった。

 こんな風に強く引っ張られるのは初めてで──もしかして本当に迷惑だったのかも。

 自分勝手な作戦なんて考えるんじゃなかったかな、と不安が頭をよぎる。琉生は一瞬足を止めたくなったが、先輩に引っ張られる手がそのまま離れなかった。
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