誓いを君に

たがわリウ

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番外編

嫉妬

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 寝室の扉を開けるとオーウェンはベッドに腰かけていた。
 俺が部屋に入ってきても床に落とした視線は上げられることはなく、言葉も何もない。
 空気が嫌な感じにぴりついているのが肌でわかり、困惑しながらもオーウェンが座っている反対からベッドの上に乗る。

「ディランと何を話していたんだ?」

 顔をこちらに向けもせずに出された声はいつもより低い。
 居心地の悪さに意味もなくシーツを握った。

「……もしかして、怒ってる?」
「こんな時間に恋人がふたりきりになりたがったんだぞ。笑っておかえりは言えない」
「それって、妬いてるってこと?」

 俺の言葉を聞いたオーウェンは、ベッドの上に乗ると瞬く間に俺をベッドに組みしいた。
 ぎしりとベッドが音を鳴らして軋む。

「当然だろう」

 夜のなかで黄色い瞳が光のように浮かび俺を射ぬく。
 オーウェン自身が認めた嫉妬が浮かぶ視線を受けると、切ない痛みが胸に走った。

「俺だって、俺が知らないオーウェンの表情を引き出すあの人に、オーウェンに気軽に触る手に嫉妬したよ」

 謝ることはせず昼間に抱いた思いを口にすると、オーウェンは驚いたように口を閉ざした。
 俺が嫉妬していたなんて思っていなかったのだろう。

「そうだったのか……悪かった」
「俺もごめん、軽率だったよね」

 俺とディランの関係を心配することはないだろうが、こんな遅くにふたりきりになるのは確かに軽率な行動だった。
 お互いに謝罪をするとオーウェンは俺に覆いかぶさっていた体をどけようと動く。
 しかしそれを止めるために腕に手をのばした俺に、オーウェンは動きを止めた。

「ディランさんに、この世界の恋人たちはどのくらいの頻度で体を重ねるのか聞いてたんだ。オーウェンはあれから俺を抱こうとしないだろ? だから不安になって……俺、何か変だった? もうそんな気にならない?」
「ユキ……」

 オーウェンは驚きながらも眉を寄せた。
 それは顔を曇らせたわけではなく、何かを必死に耐えるみたいだった。

「そんなわけないだろう。本当は毎日だってユキのことを抱きたい」

 オーウェンは体を屈めると俺の首筋に顔を埋めた。
 吐き出される熱い息が肌に触れる。

「ユキの前に異世界から来た人物は控えめで奥ゆかしい人だったと聞いていたんだ。だからそういう行為を多くしたら同じ異世界からきたユキが嫌になってしまうかもしれないと我慢していた。それにユキの体に負担をかけたくもない」

 オーウェンの口から出る言葉は予想外なもので、今度はこちらが驚いて言葉を失う。
 オーウェンがそんなふうに考えて我慢していてくれたなんて。

「ユキが嫉妬してくれたのも、俺と体を重ねたいと思っていてくれたのも嬉しい」

 首筋に顔を埋めたまま喋っていたオーウェンが顔の向きを変えたかと思うと、首に柔らかな感触が押し付けられる。
 唇かと気づいたあとに、今度は舌が肌を撫でた。
 何度も執拗に首筋を舐めるオーウェンは左手を俺の体に滑らせる。
 腰から上がってきた手のひらは胸の上で動きを止めた。

「ユキ」

 切なげに呼ばれた名前に体の奥が疼く。
 胸に置かれたオーウェンの指が服の上から胸の突起を探し出すとぐりぐりと押した。

「んっ」

 俺が反応を見せるとさらに指の動きは大胆になる。
 押しつけられ、つまむように指で挟まれると鼻にかかった声がもれでてしまう。
 自分のあげる声に恥ずかしさを感じて熱が頬と首、耳の辺りに広がる。
 声を出してしまうのが恥ずかしくて手の甲を口に置いたが、直ぐにオーウェンの右手によってどかされてしまった。
 そして覆うもののなくなった口にキスが降ってくる。

「んぅ」

 唇を押し広げた舌が口内に入ってきて掻き乱す。
 布ずれの音しかしない静かな部屋で、舌が抜き差しされる音がやけにうるさく聞こえて恥ずかしさを煽った。
 口内を侵していた舌が出ていきオーウェンの顔が離れる。
 激しいキスで意識をぼんやりとした俺は、キスが終わったんだと理解した次の瞬間、弄られている方とは逆の胸の突起にぬるりとした感触が触れた。
 いつの間にか服はめくられていて素肌が晒されている。

「……っ」
「硬くなってきたな」

 ねっとりとした動きでオーウェンの舌が何度もそこを舐める。
 かと思えば口のなかに含まれて舌でつつかれ、唇でやわやわと挟まれると、下腹部の熱がいっきに大きさを増した。
 舌が動かされるたびにぴちゃぴちゃともれる音が頭に響いて、俺の意識をぐちゃぐちゃにする。

「あっ、ん……」

 ぷっくりと硬くなったそこを弄っていた指が肌にくっつけられながら今度は胸の下、腹を通り腰、そして熱の集まっているところへ行き着く。
 服のなかに侵入した手が下着の上からすでに十分たちあがったそれを撫で付けると思わず腰が震えた。

「ユキ、かわいい。俺の手で気持ちよくなっているところが好きすぎておかしくなりそうだ」
「ん、だってオーウェンの手、気持ち良いし……」
「俺もユキのすべてが気持ち良いと感じる」

 下着の上から触っている指は、まるで形をなぞるかのようにゆっくりと動かされる。
 その焦らすような刺激に物足りなさを感じて無意識に眉を寄せた。

「オーウェン、もっと、ちゃんと触って」

 埋めていた顔をあげ俺を見たオーウェンの瞳が大きな熱を宿すのがわかった。

「ユキは控えめなのか大胆なのかわからないな……」
「俺だってオーウェンとこういうことするの、好きなんだよ……うわ、恥ずかしい」

 口に出してから自分がどれだけ恥ずかしいことを言ったのか実感して、体が燃えるように火照る。
 煽るのが上手いなと言いながらオーウェンが切羽詰まったように下着に手をかけたため、腰を少し浮かせると、服も下着も取り払われた。

「もっと乱れてくれ」

 遮るもののなくなったそこにオーウェンの手が直接触れる。
 指で先端を刺激され、大きく上下に手が動かされるとどんどん熱が溜まっていく。

「っ、おーうぇん、もう、いいよ」
「だめだ」

 もういいと言っても手を離さないオーウェンは動きをやめるどころか速く、激しくする。
 俺はどうにか溢れそうな快感を逃がそうと、ぎゅっと目をつぶりシーツを握りしめた。
 繰り返される刺激に耐えるように喉をのけ反ると、そこに熱い唇が触れる。

「んっ、ん、おー、うぇん」
「もっと気持ち良くなってくれ」
「あっ、んんっ、でる、でるからっ」

 積み重なった快感が限界に達して頭で弾ける。
 オーウェンからの刺激によって硬く大きくなったそこから出たものがシーツとオーウェンの手を汚した。
 オーウェンの手を汚してしまったことに、申し訳なさと恥ずかしさが込み上げる。

「ごめん、汚しちゃった」
「俺の手でユキが気持ち良くなってくれて嬉しい」

 うっとりと俺を見つめるオーウェンは嬉しそうに小さく笑い、しかしどこか切なげに眉を下げた。

「俺もオーウェンに気持ち良くなってほしい」

 その一心で体を起こすとオーウェンの服と下着に手をかける。
 俺の意図を理解したオーウェンが腰を浮かせた瞬間に、俺がされたのと同じようにすべてを脱がせた。
 俺の気持ち良くなる姿を見て大きく硬くなっているオーウェンのものに体の奥が疼き、ごくりと喉がなる。
 体を屈めて顔を近づかせるとオーウェンは息を呑んだが、構わずに舌の先でつつくように舐めた。

「っ! ユキ」

 少し咎めるように、しかし期待を込めて名前が呼ばれる。
 それに応えるため先端から根本に向かって舌を這わせた。

「っ……はぁっ」

 オーウェンが俺で気持ち良くなっている。そのことがどこまでも嬉しい。
 もっと気持ち良くなってほしい。
 オーウェンもこんな気持ちなんだろうかと思いながら、今度は開いた口に含んでいった。

「ユキ、無理するな」

 根本までを飲み込むと口のなかで舌を動かして刺激する。
 心配そうに俺を見るオーウェンに無理なんかしてないと伝えようと頭を動かして、引いてはまた飲み込んでを繰り返す。
 そんな俺の頭に優しく手が置かれ、初めは撫でていた指が刺激に耐えるように髪を軽く掴む。

「はぁっ」

 オーウェンの顔に快感が滲んでいくことが嬉しくて動きを繰り返していると、髪を掴んでいた手が俺の動きを止めた。

「ユキ、もういい」
「ん……」

 本当は俺もオーウェンが果てるまでやりたかったが、急くような声に素直にそこから口を離す。
 オーウェンは俺を膝立ちにさせると、いつの間にか手にしていた瓶から滑りを良くするための液体を手にとり、今から解す部分にたっぷりと塗った。
 オーウェンの指がそこにあることも、ふとももを伝って落ちていく液体にも恥ずかしさが募る。

「大丈夫そうか?」
「うん、大丈夫」
「指を入れるぞ」

 俺の様子を見ながらゆっくり解すように指が入れられていく。
 少し痛みと異物感はあるが早くオーウェンが欲しいと思った。

「もういいよ、オーウェン」
「だめだ、なるべくユキに痛みがあってほしくない」

 静かな夜にくちゅくちゅと卑猥な音が広がっていく。
 差し入れられる指に焦れったさを感じて自然と腰が動いてしまった。

「んっ、はぁっ」

 どちらのものかわからない熱い息が吐き出される。
 順調に痛みが和らいでいく俺に、指の量が増やされた。

「あっ、あっ」
「痛くないか?」
「いたくないから、はやく」

 オーウェンはわざと焦らしているのかと感じてしまい、早くと急かしてみる。
 俺が本当に痛がってないことを確認したオーウェンは指を引き抜くと俺の腰に手を置き、ゆっくりと下に導いていった。

「入れるぞ」
「ん」

 俺の体を押し広げて、待っていたオーウェン自身が俺の中に入ってくる。
 すべてを飲み込んだ俺はひとつ大きく息を吐き出し、緩く上下に腰を動かした。

「相変わらずユキの中は熱いな」

 緩い刺激では物足りないと言いたげにオーウェンが下から突き上げるように腰を動かす。
 その度にぎしりとベッドが軋んだ。

「んっ、あぁっ、おーうぇんっ」
「ユキ、好きだ」

 好きだ、ユキ、好きだ、と繰り返されるオーウェンの熱く甘ったるい声と俺の喘ぐ声が混ざりあう。
 ずっとこうしていたいと思うのに、激しく突き上げられ、中が擦られると二度目の限界が近づいていく。

「あっ、もうっ」

 もうだめだ、そう思った次の瞬間我慢していたものが溢れる。
 俺の果てる姿を眺めながら、オーウェンも俺の中に熱を放った。

「やっぱり毎日でもしたいくらいだ」
「俺だってしたいけど、毎日は無理かも……」

 気持ち良いしオーウェンとの行為は好きだが結構な負担があるため素直にそう口にすると、オーウェンは残念そうに不服そうに眉を下げた。
 べとべとの体を拭きたいしシーツも替えたいけど、オーウェンと離れがたくて体勢をそのままに抱きつけば、俺の中にあるままのものが硬さを取り戻した気がしてオーウェンを見る。

「俺もユキに負担をかけたくないからあまり可愛いことをするな」
 眉を寄せたオーウェンに苦笑しながら、明日アドバイスをくれたディランにお礼を言おうと決めた。
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