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番外編
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隣を歩いていた体が止まる。なんだ? と思っているうちに、ねぇ、と肩に手を置かれた。
「あれ、俺だよね?」
「あ、ほんとだ。そういえば今日から広告掲載が始まるって載ってたな」
「え、そうだっけ? 忘れてた」
ホームと線路の向こうにある大きな看板。そこには、炭酸水を豪快にあおる明がいた。
オシャレなモノクロ写真の隅には、炭酸水の商品名が書かれている。
「え、てか本人じゃん……やば」
「えぇー、今さら?」
看板と隣の明を交互に見ては興奮する俺に、可笑しそうな笑い声が返ってきた。
「あ、そうだ、成海くん写真撮ってくれない?」
差し出されたスマートフォンを俺は反射的に受け取る。遅れて、え? と聞き返した時には、明は看板をバックに立っていた。あまり乱れていない髪を手で整える。
「え、撮るの俺でいいの?」
「うん、上手く撮ってね」
かけていたサングラスをはずした明は、看板の写真と同じように首を反らした。右手を持ち上げ、ペットボトルをあおっている真似をする。
駅のホームにはちらほらと人がいるけど、端の方で話す俺たちのことは誰も気にとめてなかった。
けれど素顔を晒す明に、俺はハラハラとする。早く撮らなきゃと急いでカメラを起動した。
「じゃあ撮るぞー」
「うん」
小さなシャッター音とともに、明が切り取られる。いつもプロに撮られている明を自分が撮るのは不思議で、少し恥ずかしい。
明は嬉しそうに笑いながら、俺からスマートフォンを受け取った。
「ありがと、成海くん」
「おー……俺も撮ろ」
明が写真チェックをしている横で、俺もスマートフォンを構えた。看板にカメラを向け、角度を調整し、一瞬息を止める。
今だ、とタップする寸前、画面の端に明が映り込んできた。あ、と短く声を出す。
「入っちゃった。ダメだった?」
「いや、逆にありがたい……壁紙にしようかな」
「えー、じゃあふたりで撮ろうよ!」
ほら、と手招きをし、俺を誘う明。本格的な撮影はしたのに、そういえばふたりで写真を撮ったことはなかった。
嬉しさと照れ、少しの緊張を抱きながら看板を背に、明の隣に立つ。すると自然に、大きな手で肩を引き寄せられた。
腕をのばした明が、いくよ、と合図し、内カメラの画面をタップする。
「うわぁ、なんか恋人っぽい」
「え? あ、たしかに」
「成海くんに送っておくね」
「さんきゅ。俺も一応さっきの写真、明にも送るな」
メッセージアプリの通知音が鳴り、さっそく明から写真が送られてくる。そこにはモノクロの明、優しい笑みを浮かべる明、緊張しながらもはにかむ俺が映っていた。
冷房の効いた涼しい部屋でスマートフォンを弄る俺に、隣の体がのしかかってくる。しばらく静かだった空間に、明の甘えるような声が落ちた。
「成海くん、何見てるの? ……あ、俺だ」
「んー、うん」
俺の体に寄りかかる明は、かまって欲しいと全身で伝えてくる。なんか本当に明の恋人になったんだなと実感して、不意に首が熱くなった。
しかし明は気づかなかったようで、隣から俺のスマートフォンを覗き込んでいる。
「さっきの写真、投稿したんだな」
「うん。なんかいつもより、いいねが多いよね?」
「あ、ほんとだ」
明のSNSには、さっき撮ったばかりの写真が投稿されていた。明に頼まれて撮った一枚と、俺が構えていたところに映り込んできた一枚だ。
明が言う通り、投稿したばかりだというのに、リアクションの伸び方がいつもより大きかった。
何が普段と違うのだろうかと、コメント欄をタップする。
たくさんの中の一部を見ただけで、すぐに理由がわかった。
『二枚目のAKIの表情、珍しくない?』
『こんなにオフショっぽい写真初めて』
『誰が撮ったんだろう。プライベートだよね?』
見慣れてきていた、年相応な笑顔。明の恋人である俺には当たり前でも、AKIのファンには珍しいものだ。それを理解すると、俺は静かにスマートフォンを置いた。
「ていうか、俺、成海くんのアカウント知らないよ? 俺もフォローしたい」
「まずいだろ、どう考えても」
「えぇー……え、どうしたの? 顔、真っ赤だよ」
「どうもしてない」
「よくわかんないけど勃っちゃった」
「は?」
たしかに顔が熱い自覚はあった。寄りかかっていた明が俺の顔を覗き込んでくる。
恥ずかしくて視線を外した俺に、明はさらに顔を近づかせた。
「恥ずかしがる成海くんを、もっとよく見せて」
「っ、ん」
囁かれた艶っぽい声が、俺の身動きを封じる。すぐに俺の唇は、スイッチが入ったらしい明に食べられてしまった。
「あれ、俺だよね?」
「あ、ほんとだ。そういえば今日から広告掲載が始まるって載ってたな」
「え、そうだっけ? 忘れてた」
ホームと線路の向こうにある大きな看板。そこには、炭酸水を豪快にあおる明がいた。
オシャレなモノクロ写真の隅には、炭酸水の商品名が書かれている。
「え、てか本人じゃん……やば」
「えぇー、今さら?」
看板と隣の明を交互に見ては興奮する俺に、可笑しそうな笑い声が返ってきた。
「あ、そうだ、成海くん写真撮ってくれない?」
差し出されたスマートフォンを俺は反射的に受け取る。遅れて、え? と聞き返した時には、明は看板をバックに立っていた。あまり乱れていない髪を手で整える。
「え、撮るの俺でいいの?」
「うん、上手く撮ってね」
かけていたサングラスをはずした明は、看板の写真と同じように首を反らした。右手を持ち上げ、ペットボトルをあおっている真似をする。
駅のホームにはちらほらと人がいるけど、端の方で話す俺たちのことは誰も気にとめてなかった。
けれど素顔を晒す明に、俺はハラハラとする。早く撮らなきゃと急いでカメラを起動した。
「じゃあ撮るぞー」
「うん」
小さなシャッター音とともに、明が切り取られる。いつもプロに撮られている明を自分が撮るのは不思議で、少し恥ずかしい。
明は嬉しそうに笑いながら、俺からスマートフォンを受け取った。
「ありがと、成海くん」
「おー……俺も撮ろ」
明が写真チェックをしている横で、俺もスマートフォンを構えた。看板にカメラを向け、角度を調整し、一瞬息を止める。
今だ、とタップする寸前、画面の端に明が映り込んできた。あ、と短く声を出す。
「入っちゃった。ダメだった?」
「いや、逆にありがたい……壁紙にしようかな」
「えー、じゃあふたりで撮ろうよ!」
ほら、と手招きをし、俺を誘う明。本格的な撮影はしたのに、そういえばふたりで写真を撮ったことはなかった。
嬉しさと照れ、少しの緊張を抱きながら看板を背に、明の隣に立つ。すると自然に、大きな手で肩を引き寄せられた。
腕をのばした明が、いくよ、と合図し、内カメラの画面をタップする。
「うわぁ、なんか恋人っぽい」
「え? あ、たしかに」
「成海くんに送っておくね」
「さんきゅ。俺も一応さっきの写真、明にも送るな」
メッセージアプリの通知音が鳴り、さっそく明から写真が送られてくる。そこにはモノクロの明、優しい笑みを浮かべる明、緊張しながらもはにかむ俺が映っていた。
冷房の効いた涼しい部屋でスマートフォンを弄る俺に、隣の体がのしかかってくる。しばらく静かだった空間に、明の甘えるような声が落ちた。
「成海くん、何見てるの? ……あ、俺だ」
「んー、うん」
俺の体に寄りかかる明は、かまって欲しいと全身で伝えてくる。なんか本当に明の恋人になったんだなと実感して、不意に首が熱くなった。
しかし明は気づかなかったようで、隣から俺のスマートフォンを覗き込んでいる。
「さっきの写真、投稿したんだな」
「うん。なんかいつもより、いいねが多いよね?」
「あ、ほんとだ」
明のSNSには、さっき撮ったばかりの写真が投稿されていた。明に頼まれて撮った一枚と、俺が構えていたところに映り込んできた一枚だ。
明が言う通り、投稿したばかりだというのに、リアクションの伸び方がいつもより大きかった。
何が普段と違うのだろうかと、コメント欄をタップする。
たくさんの中の一部を見ただけで、すぐに理由がわかった。
『二枚目のAKIの表情、珍しくない?』
『こんなにオフショっぽい写真初めて』
『誰が撮ったんだろう。プライベートだよね?』
見慣れてきていた、年相応な笑顔。明の恋人である俺には当たり前でも、AKIのファンには珍しいものだ。それを理解すると、俺は静かにスマートフォンを置いた。
「ていうか、俺、成海くんのアカウント知らないよ? 俺もフォローしたい」
「まずいだろ、どう考えても」
「えぇー……え、どうしたの? 顔、真っ赤だよ」
「どうもしてない」
「よくわかんないけど勃っちゃった」
「は?」
たしかに顔が熱い自覚はあった。寄りかかっていた明が俺の顔を覗き込んでくる。
恥ずかしくて視線を外した俺に、明はさらに顔を近づかせた。
「恥ずかしがる成海くんを、もっとよく見せて」
「っ、ん」
囁かれた艶っぽい声が、俺の身動きを封じる。すぐに俺の唇は、スイッチが入ったらしい明に食べられてしまった。
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