Starlog ー星の記憶ー

八城七夜

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After School 2/2

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その後、若葉も一緒に行くことになりファミレスに向かおうと歩いていた。

「有間、これから昼か?」

校門の手前で千尋が声をかけられる、声の方を向くと3年生の赤いネクタイを締めた女子が立っていた。

「あ、美琴さん。そうです、これから友人と昼に・・・」

「有間、学校では苗字で呼ぶように」

千尋の言葉を遮り、厳しく注意をする女子。
彼女はこの高校の今年度の生徒会長になるであろう生徒であり、千尋の許嫁であるさかき 美琴みこと

「そうでした、放課後なので気が抜けてしまっていました。すみません。」

「気持ちはわかるが、帰宅して制服を脱ぐまでが学業だ。気をつけなさい」

厳しい言い方ではあるものの、千尋はそれに言い返すこともせず素直に言うことを聞いている。

「あ、榊先輩も昼まだでしたら一緒にどうですか?」

「私は帰宅してから昼を済ませ、書類を作成しなければならないんだ。私に気を遣わず友人たちと行ってきなさい」

この言葉には千尋はすぐに反論する。

「榊先輩は少し働きすぎです、俺も手伝いますよ」

「私はお前と違い平凡な人間だ、そういう人間は少しでも長く物事に時間をかけなければならないんだよ。」

「俺の生徒会での目標は榊先輩です、昼を一緒に済ませて一緒に作業すれば早く済みますし俺も学べることがあるんです」

千尋にそう言われ、美琴は腕を組み少し考えていると櫛田さんが美琴の前に歩み寄る。

「榊会長、私もご一緒させてもらっているので。是非ご一緒に」

櫛田さんは前年度の時に会計を務めており美琴や千尋にも真面目な仕事振りで信頼されていた。


「櫛田、君までいたのか。・・・わかった、生徒会の後輩にこうまで言われたら無下に断れないな。是非ご一緒させてくれ」

美琴が微笑みながらこう言うと、千尋は安堵の表情を浮かべながら葵にお礼を言う。

ーーーーー
ーーー


千歳たちはファミレスに着き案内されたテーブル席に座っていたが、千歳の隣には紗奈、前には紅葉というのが定番となっている。

なぜかといえば・・・

「お兄ちゃん、サラダ頼むの忘れないようにね」

「わかってるよ・・・」

「ちぃちゃん、味が偏ってる」

「この味好きなんだもん・・・」

千歳が濃い味のものばかりを頼んだりサラダを頼まなかったりと、とにかく食事のバランスが悪いためである。
昔から母親が注意している様子を見て紅葉もそれに倣い食事の際には千歳に注意をしている。
紗奈もいつの間にか食事の際には千歳の食事のバランスを気にするようになっていた。

「ふ、こうして見ると千歳先輩が子供で紅葉さんと椎名先輩が母親みたいですね」

若葉の言葉に紗奈と紅葉が恥ずかしそうにしているが、2人よりも千歳が恥ずかしそうにしている。

「あ、ていうか、若葉ちゃん同い年なんだから『さん』付けやめてよ」

青葉が若葉の言葉遣いに違和感を感じたのかそう言うと、『んー』と声をあげて少し考え。

「では私もお二人のことは『ちゃん』付けで呼びますね、千歳先輩もそう呼ばれてますし・・・あっ!」

ふと、なにかを思い出したかのような声をあげて若葉が千歳の方を向く。

「千歳先輩、まだ私名前で呼ばれてません!約束したじゃないですか、あの時、校舎裏で。」

「覚えてたのかよー・・・」

そのあとはムッとした表情の紗奈を千歳がなだめながら部活での千歳の様子などの話で盛り上がり、あっという間に時間が過ぎた。


店を出たあと千尋と美琴は書類の作成のために帰宅し、千悟は櫛田さんを喫茶店に誘い、意気投合した双子姉妹と若葉は1回帰宅し、着替えた後三人で遊びに行った。

残った千歳と紗奈は、紗奈が千歳を自分の部屋に誘いキャプテン・ドラゴンの劇場版のDVDを観ていた。

夕方になりDVDを観終わって静かになった部屋に、紗奈がカフェオレの入ったカップを2つ持って戻ってくると1つを千歳に渡す。

一口飲むとちょうど良い甘さに思わず息をひとつ吐く。

紗奈も少し口に入れ、コクンと飲み込むと横に座っている千歳の方をチラッと見ながら。

「橘さんとは、どういう関係なの?」

「え、どういうって・・・可愛い後輩だよ」

千歳が答えると紗奈は体を千歳の方へ向け、千歳の顔をじっと見つめる。

「好きなの?」

紗奈の問いかけに千歳は思わず声をあげる。

「いやいや!好きとは違うよ!なんていうか・・・もう1人の妹?みたいな感じ」

「そう・・・なんだ、そっか」

『よかった』と声には出せず唇だけ動かし、笑顔でカフェオレをまたひと口飲む。

千歳が窓を見るともう日が落ち始めていた、双子姉妹と若葉は今頃帰路に着いている頃だろうかと思っていると千歳の携帯が突然鳴り出す。

画面を見ると青葉の名前で着信がきている、千歳が電話に出るとすぐスピーカーモードに切り替わり青葉が小声で話しはじめる。

「おにぃ・・・?」

「あーうん、どうしたの?そんな小声で」

なにかを話そうとしているのだろうか、青葉の呼吸は乱れ、声も震えているようだ。

「おにぃ・・・あのね、えぇっと、助けに来て、お願い・・・」

「青葉ちゃん?今どこにいるの。」

「今、ショッピングモールの横の工事現場の所に隠れてるけど・・・さっきから誰かに追いかけられてて」

千歳がどんなやつに追いかけられてるか聞いても青葉は姿が見えないと答える、見えないのに後ろから足音がしたり木の枝が折れて落ちたりして不気味で逃げ惑っていたのだという。紅葉や若葉も一緒に逃げていて無事ではあるようだ。

「わかった、すぐに行くから。なんとか隠れてるんだよ、いいね?」

「うん・・・!おにぃ、電話切らないでいてくれる?」

千歳が『いいよ』と答えると電話の向こうで青葉が安堵のため息をつく、だが隣で紅葉が恐怖のあまり今にも泣きだしそうだという。

千歳の隣の紗奈も心配そうな表情をするが、千歳は『大丈夫』と言って迎えに行ってくると紗奈の家を出て自宅の部屋に戻る。

そして部屋のクローゼットにしまってある護身用の木刀を布に包み、部屋の窓から屋根の上に飛び移り影が視える左眼を開く。

(ショッピングモールの横の工事現場・・・)

昨日紗奈と一緒に映画を観にいったショッピングモール、その横にある大型建造物を建ててる途中の工事現場に意識を集中させると黒いモヤのような影が工事途中の建物を包んでおり、その中に赤い影と青い影、そして黄緑色の影が見える。


あそこか・・・!


と少し視点をずらすと、その3人の影に近づくどす黒い影も視認する、どうやらあれが青葉達を追いかけている者のようだ。

千歳はすぐに自分の左眼で足を見て両足に自分の影が纏ったことを視認すると、工事現場の影を一点に見つめながら屋根を蹴る。

するとそこには千歳の姿はなく、突風と風きり音だけが残った。
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