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Rebellion
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妹達と母親が一緒に出掛けており、留守番を頼まれた千歳は居間のソファーに座りテレビを観ながらくつろいでいた。時折携帯を覗いては紗奈からのメッセージに返信している。
突如インターホンの音が鳴ったので千歳はソファーから立ち上がり玄関の扉を開ける、するとそこには千歳の父である玄信が立っており、なにやら慌てている様子だ。
「千歳、すぐ支度してくれ!有間のご隠居が・・・!」
あまり見た事がない父親の慌てように千歳も慌てて外出の支度を済ませ、信玄の運転する車に乗り込む。
ーーーーー
ーーー
ー
有間の屋敷に着いた千歳と玄信は先日会合を行った広間の前に立ち、襖を静かに開けるとそこには布団で横になっている有間のご隠居とその前で座っている千尋の父親、道雪がいた。
「どうだ?ご隠居の具合は。」
「あぁ、とりあえず落ち着いて今はご覧の通り眠っているよ。」
玄信の問いに道雪が答え、千歳は部屋を見渡すが千尋と千尋の許嫁である美琴の姿がない。
「おじさん、あの・・・千尋はどこに?それに、なんでご隠居が倒れたんですか?」
道雪が有間のご隠居の方を見て一瞬言い淀むが、寝息をたてている様子を見て再び千歳の方を向く。
「千尋が、やったんだよ」
「え・・・」
千歳は自分の耳を疑った、車の中で有間のご隠居が傷を負って倒れたということを聞いただけでも驚いたというのに、その傷を負わせたのは自分の親友である千尋だと言うのだ。
困惑している千歳を見ながらも、千尋の父親は話をはじめる。
「朝方、私とご隠居は『話がある』と千尋に呼び出されたんだよ」
・・・・・
・・・
・
千尋の父親と有間のご隠居が広間に入ると、真ん中にあるテーブルの片側に千尋と美琴、そして少し間を空けて魁が座っていた。
「なんじゃ魁、お前までおったのか」
「おはようございます、ご隠居。千尋さんと榊さんだけではなんとも難儀な話でございまして、私もご同席させていただいております」
魁は広間に入ってきた二人に向かってそう言いながら深々と頭を下げる。
「難儀な話?いったいなんでしょう」
「はい。この度、有間の建て直しのため有間様には千尋さんに家督を譲っていただきたいのです」
何も知らない道雪に問いかけられ魁は頭を上げると淡々とした口調で話し始める、『建て直し』という言葉に道雪と万歳の両名は違和感を覚える。
「家督はもちろん私が隠居する際に千尋に譲るつもりです。まだ千尋も美琴ちゃんも高校生で、この先の大学などでもまだ学ぶことがあるでしょうし」
道雪の言葉に隣の万歳も小さく頷く、道雪はさらに言葉を続ける。
「なにより、気になったのは『建て直し』という言葉ですが・・・」
「・・・有間はあろうことか、長門と和解してしまいました。結果、長門 千歳のような軟弱な男が千尋さんと親しくなるようになってしまった。私はこれが耐え難いのです」
そう言いながら魁は膝の上で拳を握りしめている、それが相当珍しく向かいに座る道雪と万歳は一瞬戸惑う。
我に戻った魁は『失礼』と拳を解きメガネをクイッと指で押し、また話し始める。
「そこで千尋さんに家督を譲っていただき、千尋さんにも長門 千歳との友好関係を絶っていただこうと」
「なっ・・・!?」
思わず身を乗り出そうとした道雪を万歳が制止する、そして万歳は視線を魁から千尋に向ける。
「魁の方に座っている、ということはお前も同意したんじゃな?千尋よ」
問いかけられた千尋は視線を合わせず黙っている。
「儂はもう隠居した身、家の方針にとやかくは言わん。だが将来、お前の向く方が家の向く方だ。自分が納得する方を向くがよい」
「祖父さん、俺は・・・」
万歳の言葉に千尋は一瞬美琴の顔を見つめると、すぐに万歳とまっすぐ視線を合わせる。
「有間だけのためじゃない、美琴さんのためでもあるんだ」
迷いのない表情と声色で発せられた千尋の言葉に、万歳はただ『そうか』と一言だけつぶやく。
「美琴ちゃんも、この計画には同意したのかい?」
千尋の父親に問いかけられ、美琴もまっすぐ視線を合わせ言葉を発する。
「こんな半人前の私を認めてくださってるのはほんとにありがたいことです。ですが私は千尋の、有間の当主の妻として相応しくあるために自分に厳しくしなければならないんです」
「今までもじゅうぶんにやってくれているのに、まだ自分に厳しく・・・と?」
美琴は小さく頷く、道雪は小さくため息をついたあと魁の方を見る。
「魁さん、あなた達の言い分はわかりました。有間のことを考えてくれているのも」
「では・・・」
魁がなにか発言しようとしているのを、千尋の父親が遮る。
「だが、そんな自ら周りを敵に回すような方針は『現当主』として認めるわけにはいきません!」
道雪の言葉に唖然とする魁に対し、万歳は『ふん』と口角を上げニヤリと笑った。
「千尋さんに家督を譲るつもりはないと?」
「家督は譲ります、だがそれは今じゃない。たしかに強くあることは大事です、だがそれは敵を倒すためではなく愛する者を守るためだ。そうだな?千尋」
父親の問いかけに『あぁ』と返事をしながら美琴の顔を見る千尋、魁が『ふーっ』と呆れたようなため息をつきメガネを外しハンカチでレンズを拭く。
「交渉は決裂・・・ですか」
「アナタの考え方には同意できない、それだけです」
『そうですか』と小さく笑いながら魁がメガネをかけ直すと、厳しめの声色で千尋に声をかける。
「千尋さん、今の通り交渉は決裂しました。我らの方針に歯向かう敵は始末しなければなりません!」
その言葉に千尋はバッとこわばった表情で魁の方を見る、魁はメガネをクイッと指で押し淡々と話す。
「あなたの愛する榊さんのためでもあります、できますね?」
千尋は美琴の顔を一瞬見て苦悶の表情を浮かべ、立ち上がると父親と祖父の方を向く。
「親父、祖父さん。ごめん、俺と美琴さんだけでも、新しい有間をつくるよ。」
千尋の宣言に魁は笑顔で拍手している。
「素晴らしい!強くあるために弱きを捨てる!これこそ真なる有間です!」
そう言いながら『ククク』と声こそ控えめだが表情を思い切り捻じり笑う魁が指を『パチン』と鳴らすと、襖から黒服の男たちが広間になだれ込む。
「な、なんじゃこいつらは!?」
「私の考えに同意し、協力を申し出てくれた者達です。万が一あなた方がこちらに同意しなかった場合は粛清をと考えていましたので」
黒服の男たちは皆どす黒いオーラを纏っている、どうやら普通の人間ではないらしい。
騒ぎを聞きつけた有間の使用人たちやご隠居の部下たちも駆けつけるが、あまりに人数差がありすぎた。
魁のかけ声で戦闘になるとあっという間に囲まれ、使用人たちや千尋の父親はまずご隠居を守りながら屋敷を脱出するために敵陣を強行突破していたが、途中でご隠居は千尋の雷の纏った拳を脇腹に受け、傷を負ってしまった。
その様子を見た魁は部下たちを止めると『鬼恐山にて待つ』と一言だけ放ち、千尋と美琴、部下たちを連れて有間の屋敷から去っていった。
・・・・・
・・・
・
「これが、こうなったことの経緯だ。」
「そんなことが・・・」
千歳は当事者である千尋の父親の話でも半ば信じられずにいた、子供の頃から仲良く遊んでいた幼馴染みで親友と言っても差し支えない関係だった千尋が、その自分との友好を絶つという選択をしたからだ。
「なにより私が想像だにしなかったのは、千尋がご隠居に攻撃したことだった。まさか千尋の覚悟がそれほどだったとは・・・」
道雪は頭を抱えている、言葉は厳しくも真実を語り自らも事を成してきた、千尋は自身の祖父を尊敬していたはずだ。
「うぅ・・・」
有間のご隠居が唸り出した。
「違う・・・」
そう言いながら有間のご隠居が目を覚まし痛がりながら起き上がる、道雪が水をコップに注ぎ万歳に手渡すと万歳は水をひと口飲み込みひとつ息を吐く。
「ご隠居、『違う』と言うのは?」
「・・・千尋は・・・」
有間のご隠居が水の入ったコップを握りしめ、じっと見つめる。
そして静かにこう言った。
「千尋は、儂を守ったんじゃ」
突如インターホンの音が鳴ったので千歳はソファーから立ち上がり玄関の扉を開ける、するとそこには千歳の父である玄信が立っており、なにやら慌てている様子だ。
「千歳、すぐ支度してくれ!有間のご隠居が・・・!」
あまり見た事がない父親の慌てように千歳も慌てて外出の支度を済ませ、信玄の運転する車に乗り込む。
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有間の屋敷に着いた千歳と玄信は先日会合を行った広間の前に立ち、襖を静かに開けるとそこには布団で横になっている有間のご隠居とその前で座っている千尋の父親、道雪がいた。
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玄信の問いに道雪が答え、千歳は部屋を見渡すが千尋と千尋の許嫁である美琴の姿がない。
「おじさん、あの・・・千尋はどこに?それに、なんでご隠居が倒れたんですか?」
道雪が有間のご隠居の方を見て一瞬言い淀むが、寝息をたてている様子を見て再び千歳の方を向く。
「千尋が、やったんだよ」
「え・・・」
千歳は自分の耳を疑った、車の中で有間のご隠居が傷を負って倒れたということを聞いただけでも驚いたというのに、その傷を負わせたのは自分の親友である千尋だと言うのだ。
困惑している千歳を見ながらも、千尋の父親は話をはじめる。
「朝方、私とご隠居は『話がある』と千尋に呼び出されたんだよ」
・・・・・
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千尋の父親と有間のご隠居が広間に入ると、真ん中にあるテーブルの片側に千尋と美琴、そして少し間を空けて魁が座っていた。
「なんじゃ魁、お前までおったのか」
「おはようございます、ご隠居。千尋さんと榊さんだけではなんとも難儀な話でございまして、私もご同席させていただいております」
魁は広間に入ってきた二人に向かってそう言いながら深々と頭を下げる。
「難儀な話?いったいなんでしょう」
「はい。この度、有間の建て直しのため有間様には千尋さんに家督を譲っていただきたいのです」
何も知らない道雪に問いかけられ魁は頭を上げると淡々とした口調で話し始める、『建て直し』という言葉に道雪と万歳の両名は違和感を覚える。
「家督はもちろん私が隠居する際に千尋に譲るつもりです。まだ千尋も美琴ちゃんも高校生で、この先の大学などでもまだ学ぶことがあるでしょうし」
道雪の言葉に隣の万歳も小さく頷く、道雪はさらに言葉を続ける。
「なにより、気になったのは『建て直し』という言葉ですが・・・」
「・・・有間はあろうことか、長門と和解してしまいました。結果、長門 千歳のような軟弱な男が千尋さんと親しくなるようになってしまった。私はこれが耐え難いのです」
そう言いながら魁は膝の上で拳を握りしめている、それが相当珍しく向かいに座る道雪と万歳は一瞬戸惑う。
我に戻った魁は『失礼』と拳を解きメガネをクイッと指で押し、また話し始める。
「そこで千尋さんに家督を譲っていただき、千尋さんにも長門 千歳との友好関係を絶っていただこうと」
「なっ・・・!?」
思わず身を乗り出そうとした道雪を万歳が制止する、そして万歳は視線を魁から千尋に向ける。
「魁の方に座っている、ということはお前も同意したんじゃな?千尋よ」
問いかけられた千尋は視線を合わせず黙っている。
「儂はもう隠居した身、家の方針にとやかくは言わん。だが将来、お前の向く方が家の向く方だ。自分が納得する方を向くがよい」
「祖父さん、俺は・・・」
万歳の言葉に千尋は一瞬美琴の顔を見つめると、すぐに万歳とまっすぐ視線を合わせる。
「有間だけのためじゃない、美琴さんのためでもあるんだ」
迷いのない表情と声色で発せられた千尋の言葉に、万歳はただ『そうか』と一言だけつぶやく。
「美琴ちゃんも、この計画には同意したのかい?」
千尋の父親に問いかけられ、美琴もまっすぐ視線を合わせ言葉を発する。
「こんな半人前の私を認めてくださってるのはほんとにありがたいことです。ですが私は千尋の、有間の当主の妻として相応しくあるために自分に厳しくしなければならないんです」
「今までもじゅうぶんにやってくれているのに、まだ自分に厳しく・・・と?」
美琴は小さく頷く、道雪は小さくため息をついたあと魁の方を見る。
「魁さん、あなた達の言い分はわかりました。有間のことを考えてくれているのも」
「では・・・」
魁がなにか発言しようとしているのを、千尋の父親が遮る。
「だが、そんな自ら周りを敵に回すような方針は『現当主』として認めるわけにはいきません!」
道雪の言葉に唖然とする魁に対し、万歳は『ふん』と口角を上げニヤリと笑った。
「千尋さんに家督を譲るつもりはないと?」
「家督は譲ります、だがそれは今じゃない。たしかに強くあることは大事です、だがそれは敵を倒すためではなく愛する者を守るためだ。そうだな?千尋」
父親の問いかけに『あぁ』と返事をしながら美琴の顔を見る千尋、魁が『ふーっ』と呆れたようなため息をつきメガネを外しハンカチでレンズを拭く。
「交渉は決裂・・・ですか」
「アナタの考え方には同意できない、それだけです」
『そうですか』と小さく笑いながら魁がメガネをかけ直すと、厳しめの声色で千尋に声をかける。
「千尋さん、今の通り交渉は決裂しました。我らの方針に歯向かう敵は始末しなければなりません!」
その言葉に千尋はバッとこわばった表情で魁の方を見る、魁はメガネをクイッと指で押し淡々と話す。
「あなたの愛する榊さんのためでもあります、できますね?」
千尋は美琴の顔を一瞬見て苦悶の表情を浮かべ、立ち上がると父親と祖父の方を向く。
「親父、祖父さん。ごめん、俺と美琴さんだけでも、新しい有間をつくるよ。」
千尋の宣言に魁は笑顔で拍手している。
「素晴らしい!強くあるために弱きを捨てる!これこそ真なる有間です!」
そう言いながら『ククク』と声こそ控えめだが表情を思い切り捻じり笑う魁が指を『パチン』と鳴らすと、襖から黒服の男たちが広間になだれ込む。
「な、なんじゃこいつらは!?」
「私の考えに同意し、協力を申し出てくれた者達です。万が一あなた方がこちらに同意しなかった場合は粛清をと考えていましたので」
黒服の男たちは皆どす黒いオーラを纏っている、どうやら普通の人間ではないらしい。
騒ぎを聞きつけた有間の使用人たちやご隠居の部下たちも駆けつけるが、あまりに人数差がありすぎた。
魁のかけ声で戦闘になるとあっという間に囲まれ、使用人たちや千尋の父親はまずご隠居を守りながら屋敷を脱出するために敵陣を強行突破していたが、途中でご隠居は千尋の雷の纏った拳を脇腹に受け、傷を負ってしまった。
その様子を見た魁は部下たちを止めると『鬼恐山にて待つ』と一言だけ放ち、千尋と美琴、部下たちを連れて有間の屋敷から去っていった。
・・・・・
・・・
・
「これが、こうなったことの経緯だ。」
「そんなことが・・・」
千歳は当事者である千尋の父親の話でも半ば信じられずにいた、子供の頃から仲良く遊んでいた幼馴染みで親友と言っても差し支えない関係だった千尋が、その自分との友好を絶つという選択をしたからだ。
「なにより私が想像だにしなかったのは、千尋がご隠居に攻撃したことだった。まさか千尋の覚悟がそれほどだったとは・・・」
道雪は頭を抱えている、言葉は厳しくも真実を語り自らも事を成してきた、千尋は自身の祖父を尊敬していたはずだ。
「うぅ・・・」
有間のご隠居が唸り出した。
「違う・・・」
そう言いながら有間のご隠居が目を覚まし痛がりながら起き上がる、道雪が水をコップに注ぎ万歳に手渡すと万歳は水をひと口飲み込みひとつ息を吐く。
「ご隠居、『違う』と言うのは?」
「・・・千尋は・・・」
有間のご隠居が水の入ったコップを握りしめ、じっと見つめる。
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「千尋は、儂を守ったんじゃ」
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