34 / 93
Reunion
しおりを挟む
手足を捉えていた砂が解け、男は崩れ落ちるように倒れた。少年は次に朧を睨み、杖を向ける。
「アンタの方は話がわかりそうな感じだがどうする。戦うか?」
そう言いながら少年は朧の周囲をおびただしい量の砂で囲う、少年の合図ひとつで砂はあっという間に朧を呑み込むだろう。
「・・・やめておきましょう、そもそも私は長門さんと争いに来たわけではない。」
「賢明だな。」
そう言って少年が杖を下げると、砂も風と共に吹き飛んでいく。
「あなたのその魔力、ただの岩の魔力ではありませんね?」
「・・・へぇ。」
朧の言葉に少年は感嘆の声をあげる。人が扱う魔力には属性があることは千歳も知っている、千歳は風の属性、千尋は雷の属性というふうに。少年が魔力でやってみせたことといえば、岩の壁を作ったり砂で相手を拘束したり砂嵐を起こす。そして先程のように空中に巨大な岩のピラミッドを創造したり、どう考えてみても少年の魔力の属性は『岩』のはずなのだが。
「なんにせよ、私たちはこれにて退かせていただきます。これ以上の無益な戦いは避けたいのでね。」
そう言って朧が空間に手をかざすと、空間に裂け目が現れる。天翁が鬼恐山から立ち去った時に使用したものと同じである。
朧はその裂け目に男を放り投げ、裂け目の入口に手をかけると千歳と少年の方へ振り向く。
「少年、名は?」
「開賀 千晶だ。」
名を聞かれ、少しも警戒すること無く名乗る少年に朧は笑みを浮かべる。
「憶えておきましょう、開賀千晶。同胞の命を取らずに逃してくれたこと、心より感謝を。そして・・・。」
次に朧は千歳の目を真っ直ぐ見つめる。
「長門さん、今日は良い返事が聞けず残念です。ですが気が変わればいつでもお呼びください。いつかあなたと同志になれることを願っています。」
そう言うと朧は一礼し、空間の裂け目へと消えていく。千歳が霊写しの眼で周りを見ると、朧が張っていた人避けの結界も消えていた。
危機が去った事に安堵し、気が抜けた千歳は霊写しを解いた瞬間強い倦怠感に襲われ座り込む。その隣に紗奈も座り心配そうな表情で千歳の背中を優しくさする。千晶は杖を振り、戦いで荒れた場所を魔力で修復していた。
ーーーーー
ーーー
ー
公園の修復が終わると千晶が杖を握り潰し砂へと還しながら千歳と紗奈の前に歩み寄る、すると千歳は息を切らしながら立ち上がり千晶と向かい合う。
「御前、ほんとうに千晶か?」
「・・・あぁ。10年ぶりくらいだな、千歳。」
次の瞬間、千歳の左手が千晶の服の胸ぐらを掴む。その手は弱々しく震えていたが千晶はその手を払いのけることはしなかった。突然の光景に紗奈が慌てて千歳に駆け寄る。
「ち、ちぃちゃん!?なにをして・・・」
「いいんだ椎名さん。千歳や千尋、千悟には俺を殴る権利がある。」
千晶はそう言いながら千歳の目を真っ直ぐ見つめる、千歳は右手を握り締めその拳を構える。
「遠慮はするなよ?千歳。」
「・・・はぁ。」
数秒見つめ合い、千歳は俯いてひとつため息をつくと胸ぐらを掴んでいた左手を離し、握りしめていた右手の拳も緩める。
「・・・どこ行ってたんだよ、10年も。」
そして両手をだらんと下ろし千晶に問いかける、自分たちの知らない空白の10年を。
「アンタの方は話がわかりそうな感じだがどうする。戦うか?」
そう言いながら少年は朧の周囲をおびただしい量の砂で囲う、少年の合図ひとつで砂はあっという間に朧を呑み込むだろう。
「・・・やめておきましょう、そもそも私は長門さんと争いに来たわけではない。」
「賢明だな。」
そう言って少年が杖を下げると、砂も風と共に吹き飛んでいく。
「あなたのその魔力、ただの岩の魔力ではありませんね?」
「・・・へぇ。」
朧の言葉に少年は感嘆の声をあげる。人が扱う魔力には属性があることは千歳も知っている、千歳は風の属性、千尋は雷の属性というふうに。少年が魔力でやってみせたことといえば、岩の壁を作ったり砂で相手を拘束したり砂嵐を起こす。そして先程のように空中に巨大な岩のピラミッドを創造したり、どう考えてみても少年の魔力の属性は『岩』のはずなのだが。
「なんにせよ、私たちはこれにて退かせていただきます。これ以上の無益な戦いは避けたいのでね。」
そう言って朧が空間に手をかざすと、空間に裂け目が現れる。天翁が鬼恐山から立ち去った時に使用したものと同じである。
朧はその裂け目に男を放り投げ、裂け目の入口に手をかけると千歳と少年の方へ振り向く。
「少年、名は?」
「開賀 千晶だ。」
名を聞かれ、少しも警戒すること無く名乗る少年に朧は笑みを浮かべる。
「憶えておきましょう、開賀千晶。同胞の命を取らずに逃してくれたこと、心より感謝を。そして・・・。」
次に朧は千歳の目を真っ直ぐ見つめる。
「長門さん、今日は良い返事が聞けず残念です。ですが気が変わればいつでもお呼びください。いつかあなたと同志になれることを願っています。」
そう言うと朧は一礼し、空間の裂け目へと消えていく。千歳が霊写しの眼で周りを見ると、朧が張っていた人避けの結界も消えていた。
危機が去った事に安堵し、気が抜けた千歳は霊写しを解いた瞬間強い倦怠感に襲われ座り込む。その隣に紗奈も座り心配そうな表情で千歳の背中を優しくさする。千晶は杖を振り、戦いで荒れた場所を魔力で修復していた。
ーーーーー
ーーー
ー
公園の修復が終わると千晶が杖を握り潰し砂へと還しながら千歳と紗奈の前に歩み寄る、すると千歳は息を切らしながら立ち上がり千晶と向かい合う。
「御前、ほんとうに千晶か?」
「・・・あぁ。10年ぶりくらいだな、千歳。」
次の瞬間、千歳の左手が千晶の服の胸ぐらを掴む。その手は弱々しく震えていたが千晶はその手を払いのけることはしなかった。突然の光景に紗奈が慌てて千歳に駆け寄る。
「ち、ちぃちゃん!?なにをして・・・」
「いいんだ椎名さん。千歳や千尋、千悟には俺を殴る権利がある。」
千晶はそう言いながら千歳の目を真っ直ぐ見つめる、千歳は右手を握り締めその拳を構える。
「遠慮はするなよ?千歳。」
「・・・はぁ。」
数秒見つめ合い、千歳は俯いてひとつため息をつくと胸ぐらを掴んでいた左手を離し、握りしめていた右手の拳も緩める。
「・・・どこ行ってたんだよ、10年も。」
そして両手をだらんと下ろし千晶に問いかける、自分たちの知らない空白の10年を。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
Chivalry - 異国のサムライ達 -
稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ファンタジー
シヴァリー(Chivalry)、それは主に騎士道を指し、時に武士道としても使われる言葉である。騎士道と武士道、両者はどこか似ている。強い精神をその根底に感じる。だが、士道は魔法使いが支配する世界でも通用するのだろうか?
これは魔法というものが絶対的な価値を持つ理不尽な世界で、士道を歩んだ者達の物語であり、その中でもアランという男の生き様に主眼を置いた大器晩成なる物語である。(他サイトとの重複投稿です。また、画像は全て配布サイトの規約に従って使用しています)
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる