Starlog ー星の記憶ー

八城七夜

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Scientist

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突如として現れた男の行動にかいは侮蔑の眼差しを向けていた。

「いきなり現れてなにを仕出かすかと思いきや、見苦しいにも程があるぞ。」

「みっともねぇことしてんのは百も承知です、ですがアイツに・・・開賀千晶ひらがちあきに負けたままなのは御免ごめんなんすッ!」

男に反論され魁が怒号を発しそうになり、おぼろがそれを制止する。

「開賀千晶との実力差がわからない程、キミは莫迦ばかではないはずだ。なにか策があるのかい?鬼頭。」

朧に問われ鬼頭と呼ばれている男は黙ってしまう、策なんてものは最初から無いのだ。あるとしても『最初から本気でる。』くらいのものである。そんな様子の鬼頭に朧と魁の両名は呆れていた。

「策なら私が準備しよう。」

すると突然、誰かの声がした。千晶はその声に聞き覚えがあり自分の耳を疑いながら声の方を向く。そこには眼鏡をかけ白衣を着た男が立っており、その姿を見た千晶はわなわなと震えていた。

「なんで・・・こんな所にいるんだよ。親父!!!」

白衣の男は10年前に行方をくらましていた千晶の父親、開賀ひらが すすむであった。


「御前は・・・千晶か?大きくなったもんだな。」

進は自分に向かって怒鳴り声を上げる少年が自分の息子だと気づき少し驚いた表情を見せたがすぐに元の気だるそうな表情へと戻り、白衣のポケットから棒付きキャンディを取り出すと包装紙を取り除き口に咥え舐め始める。

「人間、策があるなんて言ってたが本当に鬼頭があの開賀千晶にかなうほどのものになるのか?」

「私のことは"博士"と呼んでもらいたいね。それに、そういうのは"愚問"と言うんだよ、魁。」


魁の問い詰めに進はそう言いながら自信ありげにニッと笑った。

「研究と試行錯誤、人間が遠い道のりの果てにたどり着いた成果を"奇跡"と呼ぶ。その"奇跡"をのが『科学』という学問さ。そして私はその科学の専門家、さ。時間さえもらえればね。」

進の言葉にイザナミは興味ありげな態度を見せ、進に問いかける。

「お前、"時間"というのはどれくらい必要だ?」

「そうだな・・・1ヶ月は欲しいところだね。」


進の答えを聞いたイザナミはニヤリと笑みを浮かべ『よし』と楽しげに声を上げた。

「いいだろう、"科学者"とやら。このわっぱのことはお前に任せる。」

そう言うとイザナミは目の前で跪き頭を垂れている鬼頭に始めて目を向けた。

「開賀千晶の相手はお前だ、童。」

伊邪奈美命イザナミノミコト、感謝します!」

イザナミの言葉に鬼頭は深々と頭を下げ、そそくさとイザナミの視界から姿を消す。

そしてイザナミは誰もいない空間に手をかざし、裂け目を創り出すと千歳たちの方を向く。

「猶予は1ヶ月、再びこの地にて会おうじゃないか。せいぜい足掻いて見せろ、人間。」

楽しげな笑顔を見せイザナミは裂け目の向こう側へと消えていき、それに着いていくように天翁たちや鬼頭も裂け目に入っていく。しかし進だけは息子である千晶のもとへと歩み寄る。

「母さんは元気か?千晶。」

「・・・あぁ、今でも親父の帰りを待ってる。10年も前からな。」

千晶の言葉にピクっと眉を動かし、進は『そうか』と呟きながら眼鏡を指でクイッと押すと千歳の方を向く。

「今でも変わらず千晶の友達でいてくれて感謝しているよ。・・・これからもよろしく頼む。」

そう言って進は千歳たちに背を向けて歩き出し、イザナミの作り出した裂け目の向こう側へと姿を消した。

空間の裂け目が閉じると千歳が霊写しの眼で周りを見渡すが朝には張られていた結界も消えていた、千歳は気が抜けてその場へ崩れるように座り込んだ。

そこへダンテが歩み寄り声をかける。

「千歳、明後日から修行だ。キミは強くなれる、ナガトにも負けない程にな。」

「・・・わかりました。」

ダンテは千歳の肩を手でポンと叩きその場から立ち去る、千歳もダンテの一言で己を奮い立たせた。
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