Starlog ー星の記憶ー

八城七夜

文字の大きさ
75 / 93

Serious game

しおりを挟む
「「りゅう そう!!」」

 叫び声と共に龍脈の渦が炸裂すると千歳ちとせとナガトの二人は龍装を身に纏った。千歳の背後には黒い龍が姿を現し、ナガトは白いシャツに黒いスーツ、そして黒いネクタイというまるでおぼろたちのような服装に変化した。

 二人は刀を構えると瞬く間に姿を消し、次の瞬間にはお互いの刃と刃がぶつかり合っていた。鍔迫り合いをしながら千歳の影を写さない霊写たまうつしの眼とナガトの星映ほしうつしの眼、漆黒と白銀の眼差しが交差する。

「なんだ、丸腰で来たからなんのつもりかと思ったが・・・ちゃんと真剣あるじゃないか。」

「龍装しないと出てきてくれなくてね。」

 軽く言葉を交わすと二人は後方へ跳び、刀の刀身に龍脈を集中させて構える。

「「断風たちかぜ───!!」」

 同時に振り下ろされた二対の刀から黒と白の斬撃が飛翔する、二人は自身に向けて放たれた斬撃の軌道を見切り躱しながら距離を詰めると剣戟の音を響かせながら二人の刃が激しく幾度もぶつかり合う。

 千歳は身体に纏った龍脈で身体能力を強化すると大地を蹴りナガトの背後へ瞬時に回り込み刀を振り薙ぐ。後ろを振り返ったナガトは身を仰け反らせて躱し、千歳は刀を鞘に納めるとナガトの腕をとっ掴み身体を回転させて勢いよく投げ飛ばす。

 千歳は刀を抜いて構えると刀身に黒い龍脈を集中させる、すると背後の黒い龍も同じように構えた剣に黒い影を纏わせた。そして千歳が刀を振り下ろすとそれに合わせて黒い龍も剣を振り下ろし、二つの断風が放たれると異なる軌跡を描きながら飛翔した斬撃はナガトに直撃する。黒い斬撃が柱のようにの渦を巻きナガトが呑まれていったのを見ても千歳は気を緩めなかった。

「なるほど、たしかに前よりは強くなってるな───」

 黒い渦の中からナガトの声が木霊し、渦が龍脈の粒子となって霧散すると阿修羅アシュラを発現したナガトが無傷でその場に立っていた。

(デカい、まるで神性体質しんせいたいしつだ・・・)

 以前の戦いで見た時よりも巨大でナガトを覆うように具現化している阿修羅を見た千歳は息を呑んだ、同時にナガトも千歳の纏っている龍装にどこか不気味さを感じていた。

 龍装とは使用する者が思い描く龍脈の鎧を身に纏うもの、ゆえにダンテやナガトのように服装が変化するという者がほとんどなのだが千歳の龍装は服装が変わらず、刀と共に黒い影の龍が現れる。黒い龍は千歳の動きに合わせて攻撃したり、千歳への攻撃を防御するといったまるで意志をもっているかのような動きを見せていた。

(同じ人間の龍装でここまで違いがあるとはね。)

 ナガトは刀を抜かずに阿修羅が手に剣を握り薙ぎ払うと白銀色の斬撃が放たれる。千歳は咄嗟に回避すると衝撃と風圧を振り切って駆け出し、ナガトとの距離を詰めようとするが阿修羅に阻まれる。千歳は秋水の刃を指でなぞり、阿修羅の持つ巨大な剣に匹敵するほどの長い刀身を龍脈で練成した。

 そして千歳が刀を振り下ろすと阿修羅が龍脈の刃を阻み押し合いになり、そこへ黒い龍が阿修羅に向けて剣を振るう。阿修羅が黒い龍の刃を防ぐとその隙を見て千歳は刀を鞘に納め、龍脈の身体強化で一気にナガトと距離を詰める。

 "長門流剣術・居合───影違かげたがい"

 千歳はすれ違いざまに居合斬りを繰り出し駆け抜けた、そして暫しの沈黙のあとナガトが口を開く。

「その技は───俺も知ってる。」

 次の瞬間、千歳が膝をつく、倒れないように刀を杖がわりにしているが身体には傷を負っており、龍装も解けてしまっている。

「千歳、祖父さんに剣術習ってたのは御前だけじゃない。」

 そしてナガトは何事も無かったかのように振り向くとカチンッという鍔鳴りを響かせながらいつの間にか抜いていた刀を鞘に納める。ナガトも元いた世界で剣術道場の師範をしている祖父から剣術の指南を受けていた、居合斬りを見切ったナガトは瞬時に抜刀すると刃を防ぎながら千歳の身体を袈裟斬りにした。

「わかってはいたつもりだけど、自分を斬るっていうのはあまり気分いいものではないな。」

 そうつぶやきナガトは阿修羅を解く、そして心做しか虚しさを帯びたため息をもらした。

─────
───


 袈裟斬りにされた身体の痛みを必死に耐えながら千歳は深呼吸をする、しかし呼吸すらままならず口からは血と一緒にか弱い空気の音が漏れる。

 なぜか思考は落ち着いており解けてしまった龍装を発現しようとするが、身体に走る激痛に龍脈を練ることが出来ない。

"─────"

 声が聞こえる、龍脈の修行をはじめる前の影を纏った時に聞こえていたあの声が。以前と同じように耳を傾けようとすれば意識が遠のいていく、こんな時に気を失うわけにはいかない。必死に意識を保とうとするが呼びかけてくるその声の穏やかで優しい響きに千歳の意識は水の中に沈んでいくように暗闇へと堕ちていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

Chivalry - 異国のサムライ達 -

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ファンタジー
シヴァリー(Chivalry)、それは主に騎士道を指し、時に武士道としても使われる言葉である。騎士道と武士道、両者はどこか似ている。強い精神をその根底に感じる。だが、士道は魔法使いが支配する世界でも通用するのだろうか? これは魔法というものが絶対的な価値を持つ理不尽な世界で、士道を歩んだ者達の物語であり、その中でもアランという男の生き様に主眼を置いた大器晩成なる物語である。(他サイトとの重複投稿です。また、画像は全て配布サイトの規約に従って使用しています)

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...