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2章

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 体育祭も終わり、夏本番。三年生が引退した部活は二年生が中心となる。優心からは暁くんが野球部の部長になったという事を聞いた。副部長には優汰くん。新チームで挑む新人戦ではよりチームがまとまり相手を寄せ付けないくらい迫力があって強かった。私は全試合、蒼と応援にいった。そして県大会も勝ち進んでいき、もうち一歩で全国だったが惜しくも負けてしまった。原因は暁くんの暴投の多さと、それによるチームの覇気がなくなってしまったことだった。整列後人一倍責任を感じていたみたいで泣いていた。こんな時に力になってあげられない自分が悔しくて目尻が熱くなった。

 秋の文化祭も終わり冬が近づき暗くなるのが早くなった。外の部活は中練に切り替わり、野球部の声や他の部活の声、吹奏楽部の音が校内に響き渡って放課後がより賑やかになった。蒼も同学年が主体となったから前よりも助っ人を頼まれることが多くなり、放課後は一緒にいることが少なくなった。でも、いつも一緒に帰っているため、私は教室で部活が終わるまで待っていた。そんなある日
「蒼遅いなーいつもなら終わってる時間なんだけど。」
蒼が来る時間になっても蒼は来なくて教室で一人待っていると野球の練習着を着た暁くんが入ってきた。
「あ、暁くん、部活お疲れ様。何しに来たの?」
「おー、うん、忘れ物取りにきた。りんは蒼待ちか?蒼ならバスケ部の次の大会が近いからってまだやってたぞ。大丈夫か?」
「あ、そうなんだ。あ、そんなこと言ってたかも、あ!今日遅くなるから先帰っててって言われてたんだ!」
「じゃあ、帰る?もし、1人だったらもう暗いから送ってくよ。てか、送らせて?なんか、このごろ忙しくてまともに話せてないから少し話さない?」
暁くんが少し照れながらそんなことを言うもんだから断れるわけもなく私達は教室を後にして外に出た。暁くんは帰りながらいろいろ話してくれた。部活のこと、学校生活のこと、お笑い番組のこと。何気ないことを話していてもとっても楽しかった。
「あ、ここで大丈夫だよ。送ってくれてありがと。気をつけてね。」
「あー、うん。わかった。、、、あのさ、もし良かったらまた、一緒に帰らないか?あ、いやならいいんだ、蒼と帰らない日とか都合が合う日に。」
野球の帽子を深くかぶりうつむきながらいった。
私も今日の帰りは楽しくてこうやってまた話したいと思っていた。じゃっ、そうゆう事でーっといって暁くんは走っていった。私は暁くんの姿が見えなくなるまで外で見送っていた。
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