先輩のことが大大大好きな俺となんだかんだ全部許してくれる先輩

りちょ

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1話

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黒崎夕希
大学3年生 178センチ 童顔
最近の流行り よく広告で流れてくるパズルゲームをやってみること

綾瀬健太
大学2年生 173センチ 目元がハッキリ
最近の流行り 自販機の珍しいスープ系を見かけたら買って飲んでみること
--------



うはははは!と品のない笑い声が響いた。俺はうんざりしてしまって、ついあからさまに顔を顰めてしまう。
まだ時刻は21時を回った頃。終電を言い訳に帰るには早い時間なので、げっそりした気分で誰のものかもわからない、机に置かれたばかりのハイボールに口をつけた。

「綾瀬、お前流石に顔に出過ぎだよ」

のんびりした口調で話しかけてきたのは、1個上の先輩の黒崎だ。中途半端に残った酒を一つのグラスにまとめて、さっき運ばれてきたばかりのハイボールを自分の前に寄せながら、俺を見て笑っている。相変わらずよく飲むなあと空になったグラスを眺めて思った。酔っているのか、ほんの少し頬が赤かった。

今日は排球サークルの打ち上げで、一年生から四年生までのメンバーがほとんど揃った貴重な機会の飲み会だった。なんだか青春が期待できそうな字面だが、残念ながら我がサークルには男しかいない為、特に楽しみもないのが現状である。

去年の春頃、大量のチラシをほとんど押し付けられるようにもらいながら校内をふらついていた俺に、「すげー量の勧誘ビラだね、怖かったでしょ?」と声をかけ、ジュースを奢り、少しの世間話と楽に取れる単位の話を教えていつの間にか俺を排球サークルに加入させたのが黒崎だった。
元々何かしらのサークルには入るつもりだったし、自分に良くしてくれる気さくな先輩が誘ってくれたのがちょっと嬉しくて加入を決めたのだが、一年後同じような手段で黒崎さんが新入生を数名確保してきた場面を見て、自分もまんまと""排球サークル流の勧誘""に乗っていただけだったと理解し、軽く落ち込む羽目になった。
「うちはビラじゃなくてナンパでメンバー増やしてるからね」と別の先輩がケラケラ笑っていたのを覚えている。

そんなサークルだが、男しかいないのは意外にも気が楽で良かった。程よく真面目に練習もしつつ、サボる時はサボり、思いつきで花火をしたりスイカ割りをしたり、女の子がいないから空気がギクシャクする事も無くて楽しいサークルだ。
そんな良いメンバーでの飲み会なのに、何で俺がこんなに嫌な顔をしているかというと、その原因はサークル長の酔い方にある。

「神田さん飲み過ぎっすよ。水もらってきたんで飲んでください」
「おー!ありがとうな、柏木!チュー!」

嫌な理由はまさにこれだ。
サークル長でもある神田が酔うとキス魔になるという点さえなければ、もっと楽しいはずなのだ。

この人も、別に酒さえ入らなければいい先輩だった。年齢関係なく分け隔てなく接してくれて、話しやすくって優しくて、でもまとめるところはピシッとまとめてくれる、理想の先輩だ。おまけに成績も良い。ついでに顔も悪くない。
なのに酔うと誰彼かまわずキスをしかけてくる迷惑人に早変わりだ。普段の行いが良い分、誰も文句を言えないから余計に良くない。

神田がこうなってからの飲み会は本当に酷い。女の子が居なくてよかったとまで俺は思っている。

こうなったら俺たち後輩がする行動は一つ、なるべく彼から距離を取ることだった。
ちなみに、上手く視界に入らないよう、体勢を低くしてゆっくり自然にその島を離れろ、サー長の近くの唐揚げはもう諦めろ、と俺に上手く撒くコツを教えてくれたのも黒崎だった。
こんな風に黒崎はよく俺を捕まえてあれこれ教えて楽しんでいるので、俺は意外と気に入られてるんじゃないのか?とこっそり思っている。

今日も習った通りに、ちょうど斜め前に座ってわいわいやっている神田に見つからないよう上手く目を逸らし、体勢を低く保ったままゆっくり移動する。隣に座っていた黒崎の裾も軽く引っ張って、さっさと離れましょうと合図を送る。
いつもは黒崎が「綾瀬!逃げろ逃げろ!」と小声で言って俺を突っついて逃すのだが、なぜか今日はぼんやりキス魔の犯行を眺めている。「本当に捕まりますよ」と小声で言って伝えると、うーんと腑抜けた返事が返ってきた。

「なんか俺もしたくなってきたかも」
「何言ってんすか?」

突然黒崎が振り返ったと思ったら、俺の肩に腕を回した。

「綾瀬チューしていい?」
「は?」
「綾ちゃ~ん」

初めてのパターンだった。

急に顔を寄せられて、俺は変に緊張して固まってしまった。ふわっと鼻先をくすぐった匂いが柑橘系の香水の香りで、香水なんて使ってるなんて今まで知らなかったせいで、変に心臓が跳ねた。

「黒崎さん何してるんすか?!ねえ!ちょっと!ばか!?」
「ん~……」

いよいよ止まらなくなった黒崎が俺に抱きついて顔を寄せてくる。
慌てて突き飛ばそうとする前に、唇を塞がれた。それもおふざけの軽いやつでは無い、もうちょっと親密な感じの、ぴったりと唇を重ねるキスだった。

「ンーーーッ!!!!」

何度か唇を啄まれて上唇を軽く吸われる。混乱した俺がついうっかり緩ませた口元に、にゅるりと舌が入り込んでくる。酒の匂いと生暖かい舌の感触に身体が跳ねた。
この人どういうつもりだ。ここまでやる人は今までもいなかっただろ。
肩を押してどうにか引き剥がそうとするも、身長で負けている俺はのしかかるように体重をかけられると何もできなくなる。周りに目をやって助けを求めたが、潰れた先輩や後輩の介抱に忙しいか、面白がっているかのどちらかで期待はできない。

ほとんど押し倒されているような体制で、好き勝手口の中をしゃぶられる。ぬるぬると動く舌が器用に動いて俺の舌ごと絡め取ったかと思えば、そのままぢゅうっとキツく吸われて、指先までじんと痺れた。
なんだこれ、なんだこれ!何されてんだ俺!?なんだこの人、本当にどういうつもり!?
混乱したまま呼吸を忘れていた俺が苦しくなって背中をドンドン叩くと、やっと黒崎が離れた。

「ッあんた何のつもりすか!?」
「あははは」

手の甲で口元を拭いながら俺が怒っても、黒崎はヘラヘラ笑うだけだった。こういう時って最悪キスが発生したとしても可愛いやつで終わるだろ、なんで俺この人にエロいキスされたんだよ。
中途半端に酒が入っていた俺は訳がわからなくなってぐるぐる考えていたが、その原因である黒崎はもう気にしていないと言った様子で次は同期相手にちょっかいをかけるのに離れて行った。

「綾瀬どうした?顔真っ赤だけど…」

しばらくしてから同期に声をかけられ、俺は慌ててパシンと両頬を引っ叩いた。乾いた音がよく響くほどの力でぶったせいで、頬がジリジリと痛む。
少し引き気味のそいつにごめんごめん、酔ったっぽいわと謝って、席を外してトイレに逃げて、鍵を閉めてから深く息を吐き、鏡の中の自分と睨めっこをした。思いっきり引っ叩いた頬は少し腫れていたが、それとは関係のない耳や目元、首筋も赤い。これが酒のせいじゃない事は自分が一番分かっていた。

「あ"~~~~!!本当、何なんだよ!!!」

腹の底から声が出る。
今のが、俺のファーストキスだった。
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