恋愛小説集 永遠の恋なんてないよ

蔵野依心

文字の大きさ
1 / 5

珈琲

しおりを挟む
 スターバックスのホワイト・モカばかり飲むひとだった。なにかにつけてスタバ行こ! だし、飲むものはハイカロリーだし、食べるものはケーキ一択だった。
 一緒にいたら太ると何回も言って、そのたびにもっと太った方が良いよと。
 そういうデリカシーのなさがなんかいやだった。いやだな、と思いながら、長いこと一緒にいた。

 今、付き合っている七尾さんは、コーヒーはブラックしか飲まない。
 家にお邪魔したり、きてもらったりするたびに、かれは美味しいコーヒーを淹れてくれる。そのうち私もいろいろ揃えて、でも淹れるのは七尾さんの方が上手くて、その腕前にいつもあまえている。
「南さんもブラック派で嬉しいな」
と、付き合うことになる前、七尾さんが言って、私は甘いのも好きだけれど、それは隠した。ブラックだって好きだし、七尾さんが淹れるのが美味しくて飲んでいるのもほんとう。
 でもたまに。期間限定のカスタムが出ているとか、そういうのを知ると、久しぶりにスターバックスいこうかな、とちょっと思う。七尾さんはスターバックスのブラックは好みじゃないようで、デートでは小洒落た個人経営っぽいカフェがほとんどだから。
 ひとりで、と。思うたび、いかない。
 意地になっているのかもしれない。

 スタバのホワイト・モカが好きで、ケーキが好きで、なのに太らなくて。
 デリカシーがなくて、いやだな、と思いながら、それでも一緒にいた。
 すごくすごく好きなひとだった。

 あなたじゃなくても良いと思いたい、ただ、それだけ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た

しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。 学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。 彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。 そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

処理中です...