クローバー

clover

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8話

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陽花と出会ってから1ヶ月くらいたった
朝。いつものように朝ごはんを食べていたときのことだ。
「陽花、どうした?全然たべてないじゃん。」
「うーーん。」
陽花はボーッとしている。
いつもならガツガツ食べているはずの朝ごはんも、今日は全く箸が進んでいないようだった。
「なんかボーッとしてるぞー。熱でもあんのか?」
「うーーん。」
「体調悪いか?」
「うーーん。」
「『うーーん。』しか言わないじゃねぇか。」
取り敢えず僕は体温計を持ってきた。
「ほら、陽花。これ脇にはさんで。」
「うーーん。」
陽花は動こうとしないので、僕が無理やり脇に体温計を突っ込んだ。
そしてしばらくして体温計が鳴った。
見てみると、
「38℃...。やっぱ熱あるじゃん。」
「うーーん。」 
「『うーーん。』じゃなくて、今日は学校も行けないな。家で寝ておくことだ。」
「うーーん。」
「じゃあ陽花。僕は学校行かないとだから。」
そういって陽花を布団に戻し、枕元に薬やら水やらをおいて学校へ行った。



帰り、急いで家にかえった。 
「はぁ、はぁ、ぅうーん...ぅう。」
帰ってきて一番最初に見聞きしたのは、陽花のとても苦しそうな姿だった。
「陽花?!」
僕は鞄を投げ捨てて急いで陽花の布団ー走る。
「どうした?しんどいのか?」
「美樹だぁ...おかえりぃ...」
「ただいま。ちょっと触るぞ?」
僕は陽花のおでこに手をやった。
「熱いなぁ。だいぶ熱上がってるみたいだ。」
「陽花。ちょっとまってて。」
そういって僕は急いで庭へ出て、かかりつけの病院に電話した。
「あの!友達が熱出しちゃって、とても苦しそうで...」
『あ、ごめんなさい。今大変混んでおりまして、早くても1時間待ちになってしまうんです。』
「そうですか...じゃあ待ちます。」
陽花は熱を出したが、同じくらい苦しい人が他にいると思うと、無理に通すことはできなかった。
そのまま石段に座り込んだ。
(そういえばあの花、最近元気ないな。なんでだろ。草引きとか水やりちゃんとやってるのに。)
ふと目の前のシロツメクサに目をやった。
「ぅう...はぁ、」
「陽花、大丈夫か?すぐ病院連れてってやるからな。」
「陽花、だい...じょう...ぶ。美樹だけで...行ってきて。」
「?!」
「バカか。陽花が熱出してんのになんで僕が病院行くんだよ!」
「ぅう。」
陽花はとても苦しそうだ。僕になにか出来ることはないのだろうか。
「陽花、なにかほしいものとかあるか?」
「...美樹。」
「なんだ??」
「ここに......いて。どこにも...いかないで。」
「ぁあ。いるよ。ずっとここにいるよ。心配すんな。」
そうして1時間、僕は陽花の布団から一歩も動かなかった。
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