異世界犯罪対策課

プロローグ

異世界犯罪

　十五年前、都内某所で誰もが耳を疑うような怪事件が起きた。高校生二百四十名、教職員二十七名。平日にとある高校の生徒と教員全員が行方不明となったのだ。この衝撃的なニュースは日本を駆け巡り、世界中を驚かせた。
　警察と家族は行方不明者を血眼になって捜索。だが、事件を解明するような痕跡を、何一つ見つけることができなかった。警察は、まるで生徒達が突然別の世界に瞬間移動したかのようだと困惑。
　この事件はマスコミを賑わせるには十分すぎるほどであり、報道が過熱するに連れ、テロリストによる誘拐、カルト教団による洗脳、神隠しなど様々な憶測が飛び交った。
　事件発生から約一ヶ月後、捜索に疲れが出始めていた時。高校の校庭に生徒、教職員達が突然現れたのだ。精神的に衰弱している者もいたが、全員無事に帰ってきた。
　だが、その場に居たのは彼らだけではない。見たことない服装を着た西洋系の集団もいた。警察はこの謎の集団が今回の事件に関連があると、すぐに事情聴取。だが、彼らの口から出た言葉は、警察を更に深く混乱させた。
　聴取の際、彼らの第一声はこうだ。
　我々は異世界から来た。
　聴取を担当した刑事達は絶句。そんな刑事達を尻目に、彼ら異世界人は話を続けた。
　世界は無数に存在する。その異世界のいくつかは他の世界に行き来する術を持っており、こちらの世界の人間を誘拐している。誘拐の目的は労働力の確保や魔法や薬物の実験など様々だ。こちらの世界は他の世界が存在していることに気づいていない。だから、異世界人による犯罪とわからず都合が良いのだ。だが、異なる世界への横暴を許さない存在がいる。それが我々だ。我々はこれ以上彼ら同胞が罪を重ねないよう、彼らの犯罪を阻止すべく各世界から集まった。今回の事件はとある異世界の者が起こしたものであり、我々が誘拐された子供達を奪還した。
　最初、警察や世間は彼らの言葉を信じなかった、信じられなかった。彼らは妄想に取り憑かれた、哀れな集団なのだと。中にはそいつらこそが今回の事件の首謀者であると、糾弾する者もいた。
　だが、異世界人を名乗る彼らの言葉が本当であると、すぐに証明された。彼らは奇跡を起こす魔法や、明らかにこちらの世界とは異なる技術・道具を見せてきたのだ。
　間も無くして日本政府は異世界が存在すると宣言。そして、異世界人による犯罪防止や異世界の関連が疑われる未解決事件を担当する部署、異世界犯罪対策課が警察に新設された。