『向量操作』で世界を覆す

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到着

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俺は今、ルミナを抱っこして空を飛んでいる。

何故かって?

その理由を話すのに時は少し遡る。



ルミナが俺の娘になる宣言をした後。

俺はルミナと焚火の火を消したり、そこら中の魔物の死骸から魔石を抜き取ったりしていた。

魔石を抜き取るのはルミナにはスプラッタ過ぎてさせられないから俺が全部やっている。

抜き取った魔石は全部アイテムボックスにしまう。

「おとーさん、どうやって王都に行くの?」

ルミナが疑問に思ったのか俺に聞いてくる。

「そうだな……、歩いていくと時間がかかるし空を飛んで行こうと思う」

「?、おとーさんは飛べるの?」

「飛んだことはないけど多分できるよ」

後片付けが全て終わったのを確認する。

「ルミナ、こっちにおいで」

「はいなの」

俺はルミナをこっちに呼ぶ。

「なにするの?」

「こうするんだ、よっと!」

俺はルミナの背中と膝裏に、それぞれ右腕と左腕を回し、ルミナを抱っこして持ち上げる。

「わぁ!高いの!」

「そっか、でももっと高くなるから舌を噛まないように口を閉じててくれ。あと、しっかり捕まるように」

「分かったの」

俺にそう言われルミナは口を閉じて両手を俺の首に回す。

(それじゃあナビ、始めるぞ)

『了解です、マスター』

空を飛ぶためにはいろいろ準備が必要だ。

今回は空を飛ぶために重力を利用する。

俺にかかっている重力の向きを誘導リードを使って俺の正面に変えることによって自分の体を前方に引っ張られるようにする。

さらに俺の体全体にかかっている重力を誘導リードを使って一点に集中して束ねることによって強力なものにする。

そうすることによって俺の体の一部にかけられた強力な重力が俺の体の一部を高速で引っ張り、俺の体の一部がさらに俺の体全体を同じ速さで引っ張る。

これで飛行の方法は完成だ。

あとはナビにこの一連の流れを瞬時に行うように指示する。

俺じゃあまだ流石にそこまでできないからな。

『マスター、準備が完了しました。いつでも実行可能です』

(わかった)

「よし、それじゃあいくか」

俺は一呼吸して反射リフレクションを展開した後、地面を思いっきり蹴って、高速移動する際の応用の誘導リードで斜め上に高く跳躍する。

(ナビ!今だ!)

『はい』

俺がそう指示しナビが実行する。

すると体が急に加速し、自分の体が前方に動き始めた。

「おお!?」

「すごいの!空を飛んでるの!」

なんとか成功したようで俺の体は思った通りに空を飛んでいる。

時間が経つごとに重力加速度によって加速しているので本当は空気抵抗が来るんだが、それは反射リフレクションを使って空気抵抗によってかかる負荷を反射し、反射した負荷でさらに後から来る空気抵抗による負荷を相殺することを繰り返していることによって解決している。

だけど、この方法は魔力を常に消費するので永遠にはできない。

なので王都に着けるかが心配だ。



というのが飛んでいる理由だ。

正直ルミナの前で格好つけたかったというのもある。

この方法は本当は体を引っ張ってるのだが、感覚としては背中を押されてる感じだった。

最初は魔力が足りるかどうか心配だったが、どうやら杞憂に終わりそうだ。

「ルミナ、方向はこっちであってるか?」

「大丈夫なの、あってるの」

ルミナに方向を確認するのも忘れない。

今の飛行速度はナビの計算だと時速300kmは余裕で超えているという話だ。

道理でさっきから遠くの景色が移動してるわけだ。

多分この分ならもうすぐ着くだろう。

(ナビ、後どれぐらいで王都に着く?)

『おそらく5分程かと』

(早いな、もう着くのか)

『加速し続けているため当然かと』

その後、ナビの予想通りに5分後に王都が見えてきた。

「すごくおっきいの!」

「そうだな。これから着地するから口を閉じてて」

「はいなの」

ルミナが口を閉じたのを確認して俺は着地の準備を行う。

着地の方法は地面に着地した際にくる反動を反射リフレクションで反射する。

だがそのままにすると高速で飛行してた際の運動エネルギーが地面に向けて反射されてかなりの規模の衝撃波が出てしまうので誘導リードを使ってエネルギーを衝撃波が出ないレベルまで分散するようにナビに頼む。

(ナビ、着地するからそっちは任せた)

『お任せください』

俺は再度ナビにお願したあと、着地準備に入る。

段々と検問所が近づいてきているが勢いそのままに俺は近くの地面に着地した。

本来、起きるはずの衝撃波は、エネルギーがナビの誘導リードによって分散されて起きなかった。

そのおかげで周りには衝撃波による被害は出てない。

着地の際の反動も反射したのでこっちにも負荷はなかった。

「ルミナ、大丈夫だったか?」

「全然へーきなの。それに楽しかったの」

「そっか、それならよかった」

「また今度お願いしてもいい?」

「いいぞ」

「やった!おとーさん、ありがとうなの!」

ルミナは喜んでいるみたいだ。

(空を飛んだ甲斐があったな)

「それじゃあ、王都に入ろうか」

「はいなの」

俺はルミナと手を繋ぎ王都に入ろうと……

「おいお前!そこで止まれ!」

……まだ入れないっぽい。
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