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第11話 飯じゃ!
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「頼む、待ってくれ。身体が持たん。」
ガウラは、アーゲラの声の主の言葉とその行動に困惑していた。
わざわざ攻撃を当たりにくる意味はないし、人質にするのも良いだろう、そしてそれを敢えてやらない理由はない。ならば本当に目的はなんなのだろう。
悔しいがこのまま攻防を続けても勝てるかどうか怪しい、ならばとガウラは声の主に目的を尋ねることにした。
「目的はなんだ。」
「飯を食わせてやりたいんじゃ。」
アーゲラの声の主が見せる優しい笑顔は、怪異だからというだけでより不気味に見える。
「代わりの人間を用意しろということか?」
「違うこの子の飯だ。一緒に食おう。心が限界なんじゃ。」
"この子のために"怪異が言うその言葉には、裏を感じざるを得ない。
「何のためにお前が気を遣う?」
「後でいいじゃろそんなこと!とりあえず飯を食わせたいんじゃ。良いと言え。」
ガウラは少し考えた後、声の主の言うことを聞くことにした。
「わかった。良いだろう。」
ガウラはアーゲラの声の主を完全に信用したわけではない、むしろ疑いが深くなったともいえる。しかし、すぐに戦いになるわけでは無いなら悔しいが好都合と言える。ガウラは己の弱さを噛みしめながら声の主の提案を承諾した。
「本当か!おぬし良い奴じゃな!よし!」
声の主はそういうとエノコの元へ向かおうとした。
「待て、どこに行く。」
「おなごの元じゃよ。アーゲラのことをすごく心配してくれておったからの、飯に誘わねばならんじゃろ。」
ガウラは声の主の言動に理解できない様子だ。留めておけるわけではないが、自由に動かれるのは厄介だ。「私が呼んでくるから待っていろ」と伝えようとすると
「まあいい、だが私が」
「別にいいじゃろ、どこにも行かんわ」
「あ!おい!そういう問題じゃないんだよ。」
アーゲラの声の主は、ガウラの制止を振り切ってエノコの元に向かった。ガウラも後を追う。
「おなご!飯じゃ!一緒に食おうぞ!」
声の主はエノコの目の前に降り立ち、両手を広げてそう言った。
「え?あ、あうん。」
つい数秒前まで、死んでしまうかもしれないと思っていた仲間からの言葉。疲弊していることも相まってただただ同意した。声の主はその様子を感じエノコを心配した。
「なんだ、疲れておるのか?腹は減っておらぬか?」
エノコは”一応あなたのせいなんだけどな。”と思いつつも、ただただ心配されているこの状況が可笑しくて心配しているのがあほらしく思えた。
「ふふ、ちょっとね。」
「め、飯は食えるか?」
「大丈夫よ。」
「そうか、それなら安心じゃな!」
エノコは、視界に入ったガウラの姿に「目を見ればわかるさ、さあ、瞼を開いてみたらどうだ、怪異。」という言葉を思い出した。
口調も違うことからおそらく本当なのだろう。しかし、エノコはちゃんと自分の目で確かめたくなった。
「ねえ。」
「ん?なんじゃ?」
「目、見せて。」
「うっ…」
アーゲラの声の主から発せられた声とのけ反る姿勢は、理由はわからないがよほど見せるのが嫌なんだろうなと感じ、強さを持ちながら怖がる声の主の様子に可愛く思えた。
「ふふ、大丈夫、優しいのはわかってるから。確かめたいの」
「わ、わかった…。」
声の主は、渋々瞼を開いた。
「ほんとだ。」
黒い眼球と真っ赤な瞳が露になる。口調はアーゲラのモノではなかった。しかし、あまりにも優しい言葉を聞いていたため、エノコは怪異ではないのではないかとも思っており、その異形の様相には正直驚いた。
「ねえ」
「ぅう。今度はなんじゃ?」
質問攻めのせいか、声の主は少したじろいだ。
「彼、アーゲラの様子はどう?」
「大丈夫じゃよ。ちょっと疲れただけじゃ。」
声の主は優しくそう呟いた。
「そう。良かった。」
エノコも優しく微笑む。
「ごはん、食べよっか。」
「そうじゃな!」
二人は笑顔でそう言った。
ガウラは、アーゲラの声の主の言葉とその行動に困惑していた。
わざわざ攻撃を当たりにくる意味はないし、人質にするのも良いだろう、そしてそれを敢えてやらない理由はない。ならば本当に目的はなんなのだろう。
悔しいがこのまま攻防を続けても勝てるかどうか怪しい、ならばとガウラは声の主に目的を尋ねることにした。
「目的はなんだ。」
「飯を食わせてやりたいんじゃ。」
アーゲラの声の主が見せる優しい笑顔は、怪異だからというだけでより不気味に見える。
「代わりの人間を用意しろということか?」
「違うこの子の飯だ。一緒に食おう。心が限界なんじゃ。」
"この子のために"怪異が言うその言葉には、裏を感じざるを得ない。
「何のためにお前が気を遣う?」
「後でいいじゃろそんなこと!とりあえず飯を食わせたいんじゃ。良いと言え。」
ガウラは少し考えた後、声の主の言うことを聞くことにした。
「わかった。良いだろう。」
ガウラはアーゲラの声の主を完全に信用したわけではない、むしろ疑いが深くなったともいえる。しかし、すぐに戦いになるわけでは無いなら悔しいが好都合と言える。ガウラは己の弱さを噛みしめながら声の主の提案を承諾した。
「本当か!おぬし良い奴じゃな!よし!」
声の主はそういうとエノコの元へ向かおうとした。
「待て、どこに行く。」
「おなごの元じゃよ。アーゲラのことをすごく心配してくれておったからの、飯に誘わねばならんじゃろ。」
ガウラは声の主の言動に理解できない様子だ。留めておけるわけではないが、自由に動かれるのは厄介だ。「私が呼んでくるから待っていろ」と伝えようとすると
「まあいい、だが私が」
「別にいいじゃろ、どこにも行かんわ」
「あ!おい!そういう問題じゃないんだよ。」
アーゲラの声の主は、ガウラの制止を振り切ってエノコの元に向かった。ガウラも後を追う。
「おなご!飯じゃ!一緒に食おうぞ!」
声の主はエノコの目の前に降り立ち、両手を広げてそう言った。
「え?あ、あうん。」
つい数秒前まで、死んでしまうかもしれないと思っていた仲間からの言葉。疲弊していることも相まってただただ同意した。声の主はその様子を感じエノコを心配した。
「なんだ、疲れておるのか?腹は減っておらぬか?」
エノコは”一応あなたのせいなんだけどな。”と思いつつも、ただただ心配されているこの状況が可笑しくて心配しているのがあほらしく思えた。
「ふふ、ちょっとね。」
「め、飯は食えるか?」
「大丈夫よ。」
「そうか、それなら安心じゃな!」
エノコは、視界に入ったガウラの姿に「目を見ればわかるさ、さあ、瞼を開いてみたらどうだ、怪異。」という言葉を思い出した。
口調も違うことからおそらく本当なのだろう。しかし、エノコはちゃんと自分の目で確かめたくなった。
「ねえ。」
「ん?なんじゃ?」
「目、見せて。」
「うっ…」
アーゲラの声の主から発せられた声とのけ反る姿勢は、理由はわからないがよほど見せるのが嫌なんだろうなと感じ、強さを持ちながら怖がる声の主の様子に可愛く思えた。
「ふふ、大丈夫、優しいのはわかってるから。確かめたいの」
「わ、わかった…。」
声の主は、渋々瞼を開いた。
「ほんとだ。」
黒い眼球と真っ赤な瞳が露になる。口調はアーゲラのモノではなかった。しかし、あまりにも優しい言葉を聞いていたため、エノコは怪異ではないのではないかとも思っており、その異形の様相には正直驚いた。
「ねえ」
「ぅう。今度はなんじゃ?」
質問攻めのせいか、声の主は少したじろいだ。
「彼、アーゲラの様子はどう?」
「大丈夫じゃよ。ちょっと疲れただけじゃ。」
声の主は優しくそう呟いた。
「そう。良かった。」
エノコも優しく微笑む。
「ごはん、食べよっか。」
「そうじゃな!」
二人は笑顔でそう言った。
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