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夢の形
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人間であれば、多くの人が「夢」を見るだろう。夢といっても寝ている間に見るほうではなく、将来の夢などの方だ。夢は人に希望を与えるし、それ自体が生き甲斐になることだってある、控えめに言って素晴らしいものだと思う。そんな夢が叶った時の人々の表情や感情には何事にも代えがたいエネルギーがある。
だが考えてみてほしい、叶えられなかった夢、捨てられてしまった夢はいったい何処に行くのだろうか?
男は今日も仕事場である工事現場で汗を流していた。それは今年30になる独身の男で、仕事ではたびたびやらかすミスに親方から怒鳴られ、家に帰っても特に趣味もないので、食べて寝るだけと、日々退屈な日常を過ごしていた。
「オラァ、サボってねぇでサクサク働け!」
親方の怒鳴り声が聞こえる。男は目当ての木材を担いで自分の場所に向かっていった。
「お前は何度失敗すれば学ぶんだ?」
親方の言葉が男の心に刺さる、男は今日も些細な、だが自分に非のあるミスをしていた。工事現場では些細なミスが文字通り命取りである。それだけに親方も自分等のことを思って厳しく接しているというのは分かっているつもりで入るのだが、やはり叱られるのはメンタルの弱い男にとってはくるものがあった。
その日の仕事も終えて、男はコンビニで買った缶ビールと適当なつまみを持って家に帰ってきた、「ただいま」と言い家に入っても、誰もいない部屋に自分の声だけが反響し、どこかむなしい気分になる。男はそのままリビングのソファーに腰かけてテレビを肴に缶ビールを呷る。やっているバラエティー番組では、ある芸能人Aが罰ゲームで、子供のころの作文を読まされていた。その作文は〔僕の将来の夢は、パイロットです。〕の一文で始まる、要約すると彼の小学生の頃の将来の夢がパイロットであると書かれたものだった
「将来の夢、ね」
男はぽつんと呟いた。そういえば昔は自分にも夢があったかな、などと思い出す。男は子供の頃、沢山の人に笑顔を届ける漫画家になりたいと思っていた。しかし、甘美な夢とは裏腹に現実は非常なものだった。彼の作品を見たある人は言った、「内容はいいけど面白くないね。」またある人は言った、「才能がないね。」。彼はこのよう彼らの言葉に傷つき、ついには漫画を描くのを辞めてしまった。
男はAの話を聞き続けるのが辛くなりチャンネルを変えた。
次のチャンネルでやっていたのは野球少年たちが、プロ選手に技を教わるという番組だった、少年たちの夢を追うキラキラした目がとても眩しくて、また夢をあきらめた罪悪感に耐えられず、男はまたしてもチャンネルを変えた。
変えた先のチャンネルでは丁度、サッカーの世界選手権がやっていた。そういえばそろそろそんな時期だっけなどと思いながらしばらくは自国を応援しながら楽しんで見ていたが、自国のチームのFWの選手が相手ゴールに強烈な一発を叩き込んだ時、ふと思ってしまった。
「彼らは...夢をかなえた人間...自分とは違って、才能のあった人間なんだよな。」
そう思うとこれも見るのがつらくなり、ついに彼はテレビを見るのを止めてしまった。
彼はソファーに寝転がり考える。彼らのことが羨ましい。夢をかなえて華々しい舞台にいて、順風満帆の生活をして。それに対して自分の生活はどうだ?才能のせいで夢を諦めてからはなにも手につかず、ただなあなあに学生生活を過ごし、挙句にはやりたくもない仕事をして毎日のように怒鳴られて、家に帰っても楽しいことなんか一つもなくって...。
男はいっそ死んでしまおうかと思った。どうせ親も親戚もいない孤独の身、楽しいこともなしに生きているんじゃ、意味もないか、と。
「あぁ、もぅ!」
彼は、死のうかなど我ながら馬鹿なことを考えたと思い、缶ビールを1缶一気に呷った。
いつもなら酒に溺れてしまえば嫌なことなんて忘れてしまうはずなのに、今日に限ってなぜか酔えば酔うほど考えが後ろ向きになってしまう。男はもう考えるのも嫌になりベッドにごろりと寝転がった。
「こんな時は寝てしまうのが一番だ。」
そうつぶやき、男は意識を沈ませていくのだった。
気が付くとそこはゴミ捨て場だった。たくさんの「もの」が捨てられている処分場のような場所だった。今もなお、上から「もの」が降ってきている状態だった。男は急に変わった状況に焦った。たしか自分の部屋でちゃんとベットの上で寝たはずだが…。突然訳のわからないところに一人である。
「ああそうか。これは夢なんだな。」
今までの状況を整理すると、これしかありえない。男はそう割り切ると、改めて辺りを見回した。すると、前方遠くにかすかに人影が見えた。男はその人の所まで駆け寄って行った。
「すみません」
男はその人影、40代くらいの容姿をし、青い作業着を身に着けた彼に話しかけた。
40くらいの彼は答える
「お待ちしておりました。そろそろ取りにいらっしゃるころだと思っておりました。」
男は戸惑った。取りに来るとは、いったい何の話だろうか?
40くらいの彼は被っていた帽子を脱いで言った。
「ここは諦められ、捨てられた夢が集められる場所、私は『管理人』と呼ばれています。」
男は少し怪訝な顔をした。夢とはいえ、今の彼にとって夢の話は心地の良いものではなかった。
作業着の彼は言った。
「どうやら少し不快なようですね?まあそれも無理からぬことでしょう。そういう時に、『取りに来る』機会が訪れるのですから。」
男はなおさら意味が分からないというような態度をとった。
管理人と名乗る男は足元にあった『プロ野球選手』と書かれた薄汚れた物体、もとい、そう書かれていると認識できる何かを拾い上げた。
「まあ実際に見た方が早いでしょう。例えばこれ、『プロ野球選手』とありますよね?」
そういえばさっき彼は諦められた夢が集まる場所だと言っていた。ならばこれこそがその諦められた夢なのだろうか?
こちらから何を話したでもないのに管理人と名乗る男はまるでこちらの心を読んだかのようにこう口にした。
「はい。お察しの通りこちらがあなた方、夢を諦めた人たちの夢だったものです」
男は少し驚き管理人を見た後、再び足元を見た。そこには様々な色、形の夢だったものが山のように積み重ねられていた。
人の数だけ夢があるだろう。少なくとも男はそう思っている。だがその多くある夢とはいえ、こんなにたくさんの夢が諦められているのである。男は思う。よく考えれば当たり前のことだ。誰もが夢をかなえられるはずがない。結局自分は諦めたんだ。逃げたんだ。夢をかなえた彼らとは違う。結局夢を叶えられる人は、真っすぐ夢を追いかけて、誠実で…。とにかく自分とは何もかもが違――
「――変わりませんよ。」
男はふと顔を上げた。管理人を見ると、二つの薄汚れた夢だったものを持ってこちらを柔らかい笑みで見つめていた。
「何も、変わりませんよ。貴方も、貴方に先ほどまっずぐ夢を追いかけてると思われた人もね。」
男には管理人の言っていることが理解できなかった。夢をかなえた者たちと諦めた者たち、そこには絶対的な壁があるではないか。男は管理人を少し睨みながら言い放つ。
「いったいどこが変わらないと言うのです?」
管理人は持っていた一つの今にも崩れそうな夢だったものを見つめた
「この夢だったもの、何か分かりますか?」
男はそれをよく見てみた。そこには『パイロット』と書かれていた。
「これは?パイロットとありますが?」
管理人はこちらを真剣に見つめて言った
「これは、貴方が強者と定義した、ある方の夢だったもの。」
そこで男はふと思い出した。
〔僕の将来の夢は、パイロットです〕
「もしかして....Aの...ですか?」
「正解だ。」
そう言って管理人は持っていたもう片方のほぼ欠片状の夢だったものを見せてきた。
「こちらは...辛うじてイラストレーター?とありますが...これは?」
「さっきと同じ物です。」
男は考える。自分が強者と定義した中に該当する人物などいるだろうか?
「彼にはサッカーの才能はあったが、絵心はなかったようだね。傍から見たら彼は恵まれた才能を持った最高のサッカープレイヤーかもしれないが、本人は1番大切な夢を諦めざるを得なかった。はたして彼らは本当に強者で、君たちは本当に敗者なのかな?」
男は、はっとした。そして今気づいた。今の自分に不満を持っているのは自分だけでは無い、成功していそうなあの人だって、本人からしたらどこかで失敗しているのだ。だが彼らは知っているのだ。失敗しても、別の道があると。
「そして、これはもう夢だったものではないですが。」
管理人はさらにもう一つ、まばゆい光を放つものを見せてくれた。
そこにはきれいな文字ではっきりと歌手と書いてあった。
「彼の人生、案外壮絶なんですよ。」
そう言って管理人はその夢の持ち主について話してくれた。彼は、20代でオーディションに落ち続け、一度は歌手の夢を諦めたらしい。でも40を過ぎ、それでも諦めきれなかった夢のひとかけらを拾って、歌手デビューをつかみ取った、と。
「大器晩成な方だったんですよね。夢をかなえた人、かなえられなかった人。どの人も努力はしています。そのうえで、夢が叶うことだって叶わないことだってある。でもね。」
管理人はどこからか一つの夢だったものを取り出して男に差し出した。
「努力は無駄じゃない。いつ報われるかなんてわからない。逆に言えば、どれだけ遅くなっても。報われる可能性はあるんですよ。」
男が前を向いたとき、差し出された夢だったものが輝きだした。男はそれを手に取らなければならない気がした。その、光る夢だったものをよく見るが何も書かれていない。男は不思議に思い管理人を見た。
管理人は微笑み言った。
「やっと、受け取られたようですね。」
「…ありがとう。」
そう言ったのを最後に、男の意識は段々と深くへ落ちていった。
気が付くとそこはいつもの部屋だった。さっきのは夢だったのか?などと思い時計を見るとちょうどいつも起きる時間だった。
結局あれが全て夢だったのかそれとも不思議な現実だったのか、今となっては知るすべも無いし、あれから変わったことなんてほとんど無いけれど、たった一つ。確実に変わったのは.....
翌日、男の机の上では、数年ぶりに『原稿用紙』と『ペン』が光を浴びていた。
だが考えてみてほしい、叶えられなかった夢、捨てられてしまった夢はいったい何処に行くのだろうか?
男は今日も仕事場である工事現場で汗を流していた。それは今年30になる独身の男で、仕事ではたびたびやらかすミスに親方から怒鳴られ、家に帰っても特に趣味もないので、食べて寝るだけと、日々退屈な日常を過ごしていた。
「オラァ、サボってねぇでサクサク働け!」
親方の怒鳴り声が聞こえる。男は目当ての木材を担いで自分の場所に向かっていった。
「お前は何度失敗すれば学ぶんだ?」
親方の言葉が男の心に刺さる、男は今日も些細な、だが自分に非のあるミスをしていた。工事現場では些細なミスが文字通り命取りである。それだけに親方も自分等のことを思って厳しく接しているというのは分かっているつもりで入るのだが、やはり叱られるのはメンタルの弱い男にとってはくるものがあった。
その日の仕事も終えて、男はコンビニで買った缶ビールと適当なつまみを持って家に帰ってきた、「ただいま」と言い家に入っても、誰もいない部屋に自分の声だけが反響し、どこかむなしい気分になる。男はそのままリビングのソファーに腰かけてテレビを肴に缶ビールを呷る。やっているバラエティー番組では、ある芸能人Aが罰ゲームで、子供のころの作文を読まされていた。その作文は〔僕の将来の夢は、パイロットです。〕の一文で始まる、要約すると彼の小学生の頃の将来の夢がパイロットであると書かれたものだった
「将来の夢、ね」
男はぽつんと呟いた。そういえば昔は自分にも夢があったかな、などと思い出す。男は子供の頃、沢山の人に笑顔を届ける漫画家になりたいと思っていた。しかし、甘美な夢とは裏腹に現実は非常なものだった。彼の作品を見たある人は言った、「内容はいいけど面白くないね。」またある人は言った、「才能がないね。」。彼はこのよう彼らの言葉に傷つき、ついには漫画を描くのを辞めてしまった。
男はAの話を聞き続けるのが辛くなりチャンネルを変えた。
次のチャンネルでやっていたのは野球少年たちが、プロ選手に技を教わるという番組だった、少年たちの夢を追うキラキラした目がとても眩しくて、また夢をあきらめた罪悪感に耐えられず、男はまたしてもチャンネルを変えた。
変えた先のチャンネルでは丁度、サッカーの世界選手権がやっていた。そういえばそろそろそんな時期だっけなどと思いながらしばらくは自国を応援しながら楽しんで見ていたが、自国のチームのFWの選手が相手ゴールに強烈な一発を叩き込んだ時、ふと思ってしまった。
「彼らは...夢をかなえた人間...自分とは違って、才能のあった人間なんだよな。」
そう思うとこれも見るのがつらくなり、ついに彼はテレビを見るのを止めてしまった。
彼はソファーに寝転がり考える。彼らのことが羨ましい。夢をかなえて華々しい舞台にいて、順風満帆の生活をして。それに対して自分の生活はどうだ?才能のせいで夢を諦めてからはなにも手につかず、ただなあなあに学生生活を過ごし、挙句にはやりたくもない仕事をして毎日のように怒鳴られて、家に帰っても楽しいことなんか一つもなくって...。
男はいっそ死んでしまおうかと思った。どうせ親も親戚もいない孤独の身、楽しいこともなしに生きているんじゃ、意味もないか、と。
「あぁ、もぅ!」
彼は、死のうかなど我ながら馬鹿なことを考えたと思い、缶ビールを1缶一気に呷った。
いつもなら酒に溺れてしまえば嫌なことなんて忘れてしまうはずなのに、今日に限ってなぜか酔えば酔うほど考えが後ろ向きになってしまう。男はもう考えるのも嫌になりベッドにごろりと寝転がった。
「こんな時は寝てしまうのが一番だ。」
そうつぶやき、男は意識を沈ませていくのだった。
気が付くとそこはゴミ捨て場だった。たくさんの「もの」が捨てられている処分場のような場所だった。今もなお、上から「もの」が降ってきている状態だった。男は急に変わった状況に焦った。たしか自分の部屋でちゃんとベットの上で寝たはずだが…。突然訳のわからないところに一人である。
「ああそうか。これは夢なんだな。」
今までの状況を整理すると、これしかありえない。男はそう割り切ると、改めて辺りを見回した。すると、前方遠くにかすかに人影が見えた。男はその人の所まで駆け寄って行った。
「すみません」
男はその人影、40代くらいの容姿をし、青い作業着を身に着けた彼に話しかけた。
40くらいの彼は答える
「お待ちしておりました。そろそろ取りにいらっしゃるころだと思っておりました。」
男は戸惑った。取りに来るとは、いったい何の話だろうか?
40くらいの彼は被っていた帽子を脱いで言った。
「ここは諦められ、捨てられた夢が集められる場所、私は『管理人』と呼ばれています。」
男は少し怪訝な顔をした。夢とはいえ、今の彼にとって夢の話は心地の良いものではなかった。
作業着の彼は言った。
「どうやら少し不快なようですね?まあそれも無理からぬことでしょう。そういう時に、『取りに来る』機会が訪れるのですから。」
男はなおさら意味が分からないというような態度をとった。
管理人と名乗る男は足元にあった『プロ野球選手』と書かれた薄汚れた物体、もとい、そう書かれていると認識できる何かを拾い上げた。
「まあ実際に見た方が早いでしょう。例えばこれ、『プロ野球選手』とありますよね?」
そういえばさっき彼は諦められた夢が集まる場所だと言っていた。ならばこれこそがその諦められた夢なのだろうか?
こちらから何を話したでもないのに管理人と名乗る男はまるでこちらの心を読んだかのようにこう口にした。
「はい。お察しの通りこちらがあなた方、夢を諦めた人たちの夢だったものです」
男は少し驚き管理人を見た後、再び足元を見た。そこには様々な色、形の夢だったものが山のように積み重ねられていた。
人の数だけ夢があるだろう。少なくとも男はそう思っている。だがその多くある夢とはいえ、こんなにたくさんの夢が諦められているのである。男は思う。よく考えれば当たり前のことだ。誰もが夢をかなえられるはずがない。結局自分は諦めたんだ。逃げたんだ。夢をかなえた彼らとは違う。結局夢を叶えられる人は、真っすぐ夢を追いかけて、誠実で…。とにかく自分とは何もかもが違――
「――変わりませんよ。」
男はふと顔を上げた。管理人を見ると、二つの薄汚れた夢だったものを持ってこちらを柔らかい笑みで見つめていた。
「何も、変わりませんよ。貴方も、貴方に先ほどまっずぐ夢を追いかけてると思われた人もね。」
男には管理人の言っていることが理解できなかった。夢をかなえた者たちと諦めた者たち、そこには絶対的な壁があるではないか。男は管理人を少し睨みながら言い放つ。
「いったいどこが変わらないと言うのです?」
管理人は持っていた一つの今にも崩れそうな夢だったものを見つめた
「この夢だったもの、何か分かりますか?」
男はそれをよく見てみた。そこには『パイロット』と書かれていた。
「これは?パイロットとありますが?」
管理人はこちらを真剣に見つめて言った
「これは、貴方が強者と定義した、ある方の夢だったもの。」
そこで男はふと思い出した。
〔僕の将来の夢は、パイロットです〕
「もしかして....Aの...ですか?」
「正解だ。」
そう言って管理人は持っていたもう片方のほぼ欠片状の夢だったものを見せてきた。
「こちらは...辛うじてイラストレーター?とありますが...これは?」
「さっきと同じ物です。」
男は考える。自分が強者と定義した中に該当する人物などいるだろうか?
「彼にはサッカーの才能はあったが、絵心はなかったようだね。傍から見たら彼は恵まれた才能を持った最高のサッカープレイヤーかもしれないが、本人は1番大切な夢を諦めざるを得なかった。はたして彼らは本当に強者で、君たちは本当に敗者なのかな?」
男は、はっとした。そして今気づいた。今の自分に不満を持っているのは自分だけでは無い、成功していそうなあの人だって、本人からしたらどこかで失敗しているのだ。だが彼らは知っているのだ。失敗しても、別の道があると。
「そして、これはもう夢だったものではないですが。」
管理人はさらにもう一つ、まばゆい光を放つものを見せてくれた。
そこにはきれいな文字ではっきりと歌手と書いてあった。
「彼の人生、案外壮絶なんですよ。」
そう言って管理人はその夢の持ち主について話してくれた。彼は、20代でオーディションに落ち続け、一度は歌手の夢を諦めたらしい。でも40を過ぎ、それでも諦めきれなかった夢のひとかけらを拾って、歌手デビューをつかみ取った、と。
「大器晩成な方だったんですよね。夢をかなえた人、かなえられなかった人。どの人も努力はしています。そのうえで、夢が叶うことだって叶わないことだってある。でもね。」
管理人はどこからか一つの夢だったものを取り出して男に差し出した。
「努力は無駄じゃない。いつ報われるかなんてわからない。逆に言えば、どれだけ遅くなっても。報われる可能性はあるんですよ。」
男が前を向いたとき、差し出された夢だったものが輝きだした。男はそれを手に取らなければならない気がした。その、光る夢だったものをよく見るが何も書かれていない。男は不思議に思い管理人を見た。
管理人は微笑み言った。
「やっと、受け取られたようですね。」
「…ありがとう。」
そう言ったのを最後に、男の意識は段々と深くへ落ちていった。
気が付くとそこはいつもの部屋だった。さっきのは夢だったのか?などと思い時計を見るとちょうどいつも起きる時間だった。
結局あれが全て夢だったのかそれとも不思議な現実だったのか、今となっては知るすべも無いし、あれから変わったことなんてほとんど無いけれど、たった一つ。確実に変わったのは.....
翌日、男の机の上では、数年ぶりに『原稿用紙』と『ペン』が光を浴びていた。
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勿論、作者様のご事情が一番ですが、負担になりしたら申し訳ありませんが、私としては待ち遠しいばかりです。
素直に良い作品だと思いました。
「夢」に関する想いが中学生が書いただけあって素直で暖かいものでした。
所々脱字がありましたが、無料で拝見させて頂きましたのでなんとか読み入れました。
中学生とは思えない文章力でただ感心する思いです。
私が投稿した作品のすぐ上に表示されたこともありちょっとした興味で読むことが出来ました。
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