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第49話 スラムに激震が走る
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誘拐犯のアジトから外に出た。
俺達は被害者なのだから、何か金目の物を報酬として奪ったとしても許されるような気はするんだけど、そういう犯罪返しみたいな真似はしなかった。
今は食べ物に困ってるわけでもないし、タマねえの教育に悪いだろうからね。
「ん?」
なんか、アジトにいた連中よりも少し立派な服を着ているけど、中で転がってる奴らと同じくらい悪そうな顔をした男がこっちを見ている。
「タマねえ、こっちを見てる男がいる。ホラあそこ!」
タマねえが俺の指差す方向を見た。
「絶対悪者」
「だよね~!でもここは敢えて話し掛ける!」
と思ったら向こうから近寄って来た。
「何だガキども!人を指差しやがって!」
あ、人に指を差したらダメだって父さんに言われてたのを忘れてた!
「おじさん!この家の中にいる人達とは知り合い?」
「俺はまだ29歳だ!おじさんって呼ぶんじゃねえ!!」
「じゃあ悪そうなお兄さん!」
「おいっ!!・・・チッ、面倒だからもういい。中の奴らの事は知ってるが、知り合いとは少し違う。しかしなぜそんな事を聞く?」
知ってるなら好都合だ。
たとえこの男が敵対組織の人間だとしても、あまりにも異常な話を聞けば、様子を見に行かざるを得なくなる。
「治療師をいっぱい連れて来てほしいんだ。中の人、全員大怪我して倒れてるから」
「・・・・・・・・・はあ!?」
馬鹿げた話だと思うだろ?でも信じられる要因が今アジトから出てくる。
『オン!』
当然ながら、俺は倒れていた連中を信用なんかしてない。
背後から不意打ちされないよう、メルドアに後ろを見張っていてもらったのだ。
「なッッ!?」
「見張っててくれてありがとう、メルドア!」
頭をナデナデしてメルドアを労った。
「ちょ、ちょっと待て!それって、メルドアジェンダじゃねえのか!?」
「そうだよ」
「・・・・・・・・・」
悪そうなお兄さんは言葉を失っている。
「治療師を呼んで来てもらえる?治療費はたぶん中の人達が払うから」
「・・・・・・真実のようだな。貧民街にいる身なりの良い者がどういう人間なのかをわかっていて、それでも尚、圧力をかけて従わせようとするとは、可愛い顔してるくせに恐ろしいガキだ・・・」
この人、結構洞察力が鋭いね。
おそらく中で寝ている連中の敵対組織の幹部とかそういう身分とみた。
貸しも作れるし、治療費だって思い切りボッタくれるんだから、美味しい話だと思うんだけどな。
「わかった。中を確認次第、治療師を手配しよう」
「急いでね?出血が酷くて本当に死にかけてるから。じゃあボク達はもう帰るんで後はヨロシク!」
「ハァ~~~、こんなとこ来るんじゃなかったぜ・・・」
悪そうなお兄さんは、頭をボリボリ掻きながらアジトに入って行った。
◇
「じゃあ帰ろっかタマねえ!」
「うん」
そして前に2~3歩進んだ時だった。
「痛っ!」
「・・・ん?」
見るとタマねえが左足首を押さえて蹲っていた。
「どうしたのタマねえ!?・・・あっ、牢屋から出る時に掴まれたヤツか!!」
「ちょっと待ってて。少し休めば大丈夫」
いや、大丈夫じゃないだろ。
・・・しゃーない、貧民街を出るまではメルドアに乗って行こう。
家の近くだと大騒ぎになるだろうからメルドアは消さなきゃだけど、貧民街を出るまでならば問題あるまい。
「メルドア、背中に二人乗っても平気?」
『オン!』
メルドアが目の前まで歩いて来て、乗りやすいように伏せてくれた。
俺が乗ってからじゃないと困惑するだろうから、先にメルドアに跨った。
「タマねえ、後ろに乗って!」
「・・・魔物に乗って大丈夫なの?」
「野生の魔物はたぶん無理だけど、メルドアは僕の召喚獣だから平気だよ!」
「クーヤすごい!」
少し慣れたのか、タマねえはあまり警戒すること無くショタの後ろに乗った。
辺りを見ると、左はすぐ行き止まりなんだけど、正面と右に道がある。
・・・・・・どっちへ向かえばいいんだ?
「タマねえ、これどっち行けばいいの?」
「えーと・・・、たぶん真っ直ぐ」
「あいあいさー!メルドア、真っ直ぐだってさ」
『オン!』
あひるポンチョのショタと黒髪の女の子を乗せた白い巨大な魔物が、貧民街の中を闊歩し始めた。
◇
「う、うわああああああああああ!!」
「なんで魔物が!?」
「・・・上に子供が乗ってない??」
「だ、大丈夫なのか?あの子達・・・」
「ヒイイイイイイイィィィィィ!」
「正直意味が分からない」
貧民街は大混乱だ。
別に獲って食おうなんて気はまったく無いのに、ちょっと悪いことしたな~。
でもタマねえが足に怪我をしているし、ココを抜けるまでだから許してね!
「タマねえ、やっぱりメルドアを出してると悲鳴とかすごいっス」
「もう降りて歩いて帰ってもいいよ?」
「いや、貧民街を出るまではメルドアに乗ってく。ここじゃか弱い子供だと思われたら誘拐されるしさ。でも家がある辺りだと騒ぎになると拙いから、メルドアから降りて歩くことになるけど、タマねえ歩けそう?」
「それくらいなら歩ける」
「そっかー。じゃあ道案内よろしく!」
こうして猛獣に乗った二人の子供は、貧民街の住人達の悲鳴を聞きながら愛しき我が家へと帰って行った。
その噂は瞬く間に広がり、黄色と黒の子供注意報が貧民街中を駆け巡った。
俺達は被害者なのだから、何か金目の物を報酬として奪ったとしても許されるような気はするんだけど、そういう犯罪返しみたいな真似はしなかった。
今は食べ物に困ってるわけでもないし、タマねえの教育に悪いだろうからね。
「ん?」
なんか、アジトにいた連中よりも少し立派な服を着ているけど、中で転がってる奴らと同じくらい悪そうな顔をした男がこっちを見ている。
「タマねえ、こっちを見てる男がいる。ホラあそこ!」
タマねえが俺の指差す方向を見た。
「絶対悪者」
「だよね~!でもここは敢えて話し掛ける!」
と思ったら向こうから近寄って来た。
「何だガキども!人を指差しやがって!」
あ、人に指を差したらダメだって父さんに言われてたのを忘れてた!
「おじさん!この家の中にいる人達とは知り合い?」
「俺はまだ29歳だ!おじさんって呼ぶんじゃねえ!!」
「じゃあ悪そうなお兄さん!」
「おいっ!!・・・チッ、面倒だからもういい。中の奴らの事は知ってるが、知り合いとは少し違う。しかしなぜそんな事を聞く?」
知ってるなら好都合だ。
たとえこの男が敵対組織の人間だとしても、あまりにも異常な話を聞けば、様子を見に行かざるを得なくなる。
「治療師をいっぱい連れて来てほしいんだ。中の人、全員大怪我して倒れてるから」
「・・・・・・・・・はあ!?」
馬鹿げた話だと思うだろ?でも信じられる要因が今アジトから出てくる。
『オン!』
当然ながら、俺は倒れていた連中を信用なんかしてない。
背後から不意打ちされないよう、メルドアに後ろを見張っていてもらったのだ。
「なッッ!?」
「見張っててくれてありがとう、メルドア!」
頭をナデナデしてメルドアを労った。
「ちょ、ちょっと待て!それって、メルドアジェンダじゃねえのか!?」
「そうだよ」
「・・・・・・・・・」
悪そうなお兄さんは言葉を失っている。
「治療師を呼んで来てもらえる?治療費はたぶん中の人達が払うから」
「・・・・・・真実のようだな。貧民街にいる身なりの良い者がどういう人間なのかをわかっていて、それでも尚、圧力をかけて従わせようとするとは、可愛い顔してるくせに恐ろしいガキだ・・・」
この人、結構洞察力が鋭いね。
おそらく中で寝ている連中の敵対組織の幹部とかそういう身分とみた。
貸しも作れるし、治療費だって思い切りボッタくれるんだから、美味しい話だと思うんだけどな。
「わかった。中を確認次第、治療師を手配しよう」
「急いでね?出血が酷くて本当に死にかけてるから。じゃあボク達はもう帰るんで後はヨロシク!」
「ハァ~~~、こんなとこ来るんじゃなかったぜ・・・」
悪そうなお兄さんは、頭をボリボリ掻きながらアジトに入って行った。
◇
「じゃあ帰ろっかタマねえ!」
「うん」
そして前に2~3歩進んだ時だった。
「痛っ!」
「・・・ん?」
見るとタマねえが左足首を押さえて蹲っていた。
「どうしたのタマねえ!?・・・あっ、牢屋から出る時に掴まれたヤツか!!」
「ちょっと待ってて。少し休めば大丈夫」
いや、大丈夫じゃないだろ。
・・・しゃーない、貧民街を出るまではメルドアに乗って行こう。
家の近くだと大騒ぎになるだろうからメルドアは消さなきゃだけど、貧民街を出るまでならば問題あるまい。
「メルドア、背中に二人乗っても平気?」
『オン!』
メルドアが目の前まで歩いて来て、乗りやすいように伏せてくれた。
俺が乗ってからじゃないと困惑するだろうから、先にメルドアに跨った。
「タマねえ、後ろに乗って!」
「・・・魔物に乗って大丈夫なの?」
「野生の魔物はたぶん無理だけど、メルドアは僕の召喚獣だから平気だよ!」
「クーヤすごい!」
少し慣れたのか、タマねえはあまり警戒すること無くショタの後ろに乗った。
辺りを見ると、左はすぐ行き止まりなんだけど、正面と右に道がある。
・・・・・・どっちへ向かえばいいんだ?
「タマねえ、これどっち行けばいいの?」
「えーと・・・、たぶん真っ直ぐ」
「あいあいさー!メルドア、真っ直ぐだってさ」
『オン!』
あひるポンチョのショタと黒髪の女の子を乗せた白い巨大な魔物が、貧民街の中を闊歩し始めた。
◇
「う、うわああああああああああ!!」
「なんで魔物が!?」
「・・・上に子供が乗ってない??」
「だ、大丈夫なのか?あの子達・・・」
「ヒイイイイイイイィィィィィ!」
「正直意味が分からない」
貧民街は大混乱だ。
別に獲って食おうなんて気はまったく無いのに、ちょっと悪いことしたな~。
でもタマねえが足に怪我をしているし、ココを抜けるまでだから許してね!
「タマねえ、やっぱりメルドアを出してると悲鳴とかすごいっス」
「もう降りて歩いて帰ってもいいよ?」
「いや、貧民街を出るまではメルドアに乗ってく。ここじゃか弱い子供だと思われたら誘拐されるしさ。でも家がある辺りだと騒ぎになると拙いから、メルドアから降りて歩くことになるけど、タマねえ歩けそう?」
「それくらいなら歩ける」
「そっかー。じゃあ道案内よろしく!」
こうして猛獣に乗った二人の子供は、貧民街の住人達の悲鳴を聞きながら愛しき我が家へと帰って行った。
その噂は瞬く間に広がり、黄色と黒の子供注意報が貧民街中を駆け巡った。
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