靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき

文字の大きさ
10 / 34

10 お兄様たちの婚約事情

しおりを挟む
「兄上たち、照れてる!」とからかうようなカラバスお兄様。

照れてる?これが?どこが?

よくよく見ると、アレンお兄様もイーライお兄様も耳が赤くなっている。なんだか可愛いと思ってしまい、「あはは」と笑うと、途端にアレンお兄様の声が飛んできた。

「デイジー、淑女はそんな笑い方はしない。明日からは、伯爵令嬢の立ち居振る舞いや話し方を身につける訓練をみっちり受けるように。ジェニンやジヴァ、執事のレオニが指南役だが、私も休みの日には様子を確認するので、そのつもりで」
「はい…」

耳はまだ赤いけれど苦虫噛み潰し顔のままなので、とても怖い。頷くしかない。

カラバスお兄様は「ダンス指導は僕に任せてね!僕ダンス上手いんだよ!」と楽しそうだ。

イーライお兄様の耳は、普段の色に戻っている。

「3ヶ月後にドーバーパム侯爵邸でアスターベル嬢の17歳の誕生パーティーがあり、我々も招待されている。デイジーはそこで社交界デビューを予定しているので、間に合うように励むように。私邸でのパーティーではあるが、アスターベル嬢は王太子妃候補と目される方だから、決して失礼のないように準備しなければ」
「はっ!?…はい」

3ヶ月後には王太子妃候補者のパーティーで実戦だと言われて、心は拒否反応を起こしたけれど、有無を言わせぬアレンお兄様の圧に、従うしかなかった。

「アスターベル嬢のパーティーかぁ、そういえば僕、ステラリリー嬢にエスコート頼まれてたな。デイジーと一緒に行きたいけど、行けないや」
「構わない。デイジーのエスコートは私が担当する」

カラバスお兄様とアレンお兄様で勝手に決めてしまい、私はアレンお兄様にエスコートされることになってしまった。イーライお兄様は知らんぷりなので、多分パーティーには来ないのだろう。そんなタイプな気がする。それにしても、カラバスお兄様なら多少失敗しても「大丈夫大丈夫」と言ってくれそうだけど、アレンお兄様は妥協を許さないタイプっぽいから…死ぬ気で練習せねば。

ところで気になるのは…

「カラバスお兄様。ステラリリー様という方は、お兄様の婚約者かなにかですか?」

するとカラバスお兄様は「あはは、違う違う」と笑う。婚約者がいない独身女性のエスコートはたいてい親族の男性がするのだが、オウルシャム伯爵令嬢ステラリリー様はお父様もお兄様も長期の外国滞在中なのだそうだ。困ったステラリリー様が、肖像画を依頼した縁で知り合ったカラバスお兄様にエスコートを頼んだらしい。

「それにね」とカラバスお兄様は続ける。

「ホークボロー三兄弟は、イケメンで引く手数多なのに、なかなか婚約者が決まらないって評判なんだよ」
「え、全員婚約者いないんですか?」

私が驚くのも当然だと思ってほしい。この国では貴族でも平民でも、男性は20歳、女性は18歳くらいで婚約するのが普通なのだ。貴族や王族の場合は、もっと早くに婚約者が決まっていることも多い。

「お兄様たちこんなに格好いいのに、どうしてですか?」
「三人とも、結婚したいって思える相手に出会ってないってことじゃない?父上も、無理矢理結婚させようってタイプじゃないし。うちは自由なの。僕が画家やってることからもわかるようにね」

「ま、僕は兄上たちが婚約するのを待ってるっていうのもあるんだけどね。末っ子だし」とカラバスお兄様が付け足すと、アレンお兄様が「人のせいにするな。お前は誰にでもいい顔をして、真剣に一人と付き合う気がないだけだろう」と睨む。

「僕より兄上はどうなの。内々にいろんなご令嬢のお家から打診があるのに、全部断ってるじゃん。パーティーにもあんまり行きたがらないし。せめてパーティーで誰かとダンスでもしなきゃ、出会える相手にも出会えないよ」

図星をさされたのかアレンお兄様はムッとして黙り込んだけれど、聞き役に徹していたお父様は「アイリスとデイジーが来てから、食事が賑やかで楽しいね」とニコニコしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。 7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。 ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。 ※よくある話で設定はゆるいです。 誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。

【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

断罪されてムカついたので、その場の勢いで騎士様にプロポーズかましたら、逃げれんようなった…

甘寧
恋愛
主人公リーゼは、婚約者であるロドルフ殿下に婚約破棄を告げられた。その傍らには、アリアナと言う子爵令嬢が勝ち誇った様にほくそ笑んでいた。 身に覚えのない罪を着せられ断罪され、頭に来たリーゼはロドルフの叔父にあたる騎士団長のウィルフレッドとその場の勢いだけで婚約してしまう。 だが、それはウィルフレッドもその場の勢いだと分かってのこと。すぐにでも婚約は撤回するつもりでいたのに、ウィルフレッドはそれを許してくれなくて…!? 利用した人物は、ドSで自分勝手で最低な団長様だったと後悔するリーゼだったが、傍から見れば過保護で執着心の強い団長様と言う印象。 周りは生暖かい目で二人を応援しているが、どうにも面白くないと思う者もいて…

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

処理中です...