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19 お兄様の恋の噂
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アスターベル様の誕生パーティーのしばらくあと、私は再びドーバーパム侯爵邸にやってきた。今回はアスターベル様主催のお茶会にご招待いただいたのだ。誕生パーティーをぶち壊したことを本当に怒っていないばかりか、お茶会にまで呼んでくれるとは…「育ちがいい人は性格もいい」と何かの本で読んだことを思い出す。
前回は夜だったのでよくわからなかったけれど、侯爵邸はよく手入れされた絵画のような庭園を持つ、立派なお屋敷だ。
その庭にしつらえられたテーブルに、アスターベル様、バンゼンノート侯爵令嬢サイネリアンナ様、オウルシャム伯爵令嬢ステラリリー様、私が座っている。アスターベル様はもちろん、他のご令嬢方もそれぞれにとても美しい。
水色の髪に青い目のアスターベル様、ピンクの髪に緑の目を持つステラリリー様、ライトグリーンの髪に紫の目のサイネリアンナ様…カラフルなご令嬢方の中で、栗色の髪に茶色の目の自分が「いかにも平民出身」だと思い知らされる。名前だってただの「デイジー」だし。「デイジー」だよ?
それにしても、お茶会というのは女同士のドロドロした腹の探り合いかと思っていたけれど、このお茶会は和やかだ。私を「平民出身のにわか令嬢だ」なんて馬鹿にする雰囲気もさらさらない。ひたすら美味しいお菓子とお茶を囲んで、和気藹々とおしゃべりしている。そういえば弟子から「美味しいお菓子があったら、もろて帰ってきて。タッパー持っていき」と言われたが、この優雅な雰囲気の中でそんなことは死んでもできない。
お茶会の話題は社交界での恋模様…誰々様と誰々様が婚約したとか、好き同士だとか、どうやら片思いだとか、あの指輪は誰々様のプレゼントだとか…や、パーティーで誰々様のドレスや髪型が素敵だったとか、他愛のないことがほとんどなのだけれど、つい最近まで王宮やキラキラした世界に縁がなかった私には刺激的だ。
圧倒されている私に、アスターベル様が向き直って、「今日のデイジー様のドレスも素敵だわ」と褒めてくれる。今日私が着ているのは、上半身にふんだんにレースをあしらったグリーンの長袖ハイネックドレス。
「褒めていただいて光栄ですわ。このドレスは兄のカラバスがデザインしたものですの。きっと兄も喜びます」
「まあ、カラバス様が?画家だけではなくて、ドレスデザイナーとしての才能もおありなのね。素敵だわ」
「そういえばカラバス様、ここ最近ファリカステ様のご寵愛を一身に受けておられるのですってね」
へぇ。つい先だってファリカステ様のお名前は食卓で聞いたけれど、お兄様が寵愛を一身に受けているとは知らなかった。お兄様はそんなことは一言もおっしゃっていなかったけれど。
「そうでしたの。兄はそういったことは家では話さないものですから、初耳ですわ。ファリカステ様からよく肖像画の注文をいただく…とは申しておりましたけれど」
「それなんですのよ。カラバス様をおそばに置きたいがために、何枚も肖像画をご注文されているのだとか」
「以前のファリカステ様は、そんなことをされるお方ではありませんでしたのに…控えめで淑やかで淑女のお手本のような」
「ええ、ええ。慈善事業にも熱心でいらっしゃったのに最近はさっぱりらしいですわ」
ここで、ずいとサイネリアンナ様が身を乗り出した。
「それにファリカステ様、カラバス様にご執心になられてから、どんどん若返っていると思いませんこと?」
「確かにそうですわ」
「やはり恋の力でございましょう」
やや話について開けない私が「そんなにお若くお見えになるんですの?」と聞くと、ご令嬢方は一斉に頷いた。
「国王陛下のお姉様ですから、確かもう40代も半ばでいらっしゃるのですけれど、見た目は30歳に届くかどうかというところですわ」
「デイジー様も、今度のパーティーでお会いしてみればわかりますわよ」
前回は夜だったのでよくわからなかったけれど、侯爵邸はよく手入れされた絵画のような庭園を持つ、立派なお屋敷だ。
その庭にしつらえられたテーブルに、アスターベル様、バンゼンノート侯爵令嬢サイネリアンナ様、オウルシャム伯爵令嬢ステラリリー様、私が座っている。アスターベル様はもちろん、他のご令嬢方もそれぞれにとても美しい。
水色の髪に青い目のアスターベル様、ピンクの髪に緑の目を持つステラリリー様、ライトグリーンの髪に紫の目のサイネリアンナ様…カラフルなご令嬢方の中で、栗色の髪に茶色の目の自分が「いかにも平民出身」だと思い知らされる。名前だってただの「デイジー」だし。「デイジー」だよ?
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お茶会の話題は社交界での恋模様…誰々様と誰々様が婚約したとか、好き同士だとか、どうやら片思いだとか、あの指輪は誰々様のプレゼントだとか…や、パーティーで誰々様のドレスや髪型が素敵だったとか、他愛のないことがほとんどなのだけれど、つい最近まで王宮やキラキラした世界に縁がなかった私には刺激的だ。
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「褒めていただいて光栄ですわ。このドレスは兄のカラバスがデザインしたものですの。きっと兄も喜びます」
「まあ、カラバス様が?画家だけではなくて、ドレスデザイナーとしての才能もおありなのね。素敵だわ」
「そういえばカラバス様、ここ最近ファリカステ様のご寵愛を一身に受けておられるのですってね」
へぇ。つい先だってファリカステ様のお名前は食卓で聞いたけれど、お兄様が寵愛を一身に受けているとは知らなかった。お兄様はそんなことは一言もおっしゃっていなかったけれど。
「そうでしたの。兄はそういったことは家では話さないものですから、初耳ですわ。ファリカステ様からよく肖像画の注文をいただく…とは申しておりましたけれど」
「それなんですのよ。カラバス様をおそばに置きたいがために、何枚も肖像画をご注文されているのだとか」
「以前のファリカステ様は、そんなことをされるお方ではありませんでしたのに…控えめで淑やかで淑女のお手本のような」
「ええ、ええ。慈善事業にも熱心でいらっしゃったのに最近はさっぱりらしいですわ」
ここで、ずいとサイネリアンナ様が身を乗り出した。
「それにファリカステ様、カラバス様にご執心になられてから、どんどん若返っていると思いませんこと?」
「確かにそうですわ」
「やはり恋の力でございましょう」
やや話について開けない私が「そんなにお若くお見えになるんですの?」と聞くと、ご令嬢方は一斉に頷いた。
「国王陛下のお姉様ですから、確かもう40代も半ばでいらっしゃるのですけれど、見た目は30歳に届くかどうかというところですわ」
「デイジー様も、今度のパーティーでお会いしてみればわかりますわよ」
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