靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき

文字の大きさ
22 / 34

22 私の魔法

しおりを挟む
ドオオオオオォン!

凄まじい音がして、閉まっていたドアが吹き飛んだ。

「デイジー、大丈夫か」
「イーライお兄様!アレンお兄様、カラバスお兄様もっ」

魔法でドアを破ったのだろうイーライお兄様のうしろに、アレンお兄様、カラバスお兄様。思わずお兄様たちに駆け寄ろうとする…と、「待ちなさい!」という言葉とともにファリカステ様が手のひらを私の方に向けて何かの呪文を唱えた。ファリカステ様の手のひらに集まった紫色の光が、私の方に飛んでくる。何かわからないが、当たったら絶対まずいやつだ。

イーライお兄様も何かの呪文を唱え、紫の光に向けて杖を振る。お兄様の杖からはエメラルドグリーンの光が飛び、紫の光とぶつかって、どちらも消え去った。イーライお兄様が「デイジーへの攻撃は重罪だ、今すぐやめろ」と低い声でファリカステ様に呼びかける。

「黙りなさいイーライ、それが王族に対する口の利き方か」

そして「ああ、今その緑の魔法を見てようやく気づいたわ」と納得したように呟いた。

「ずっと私の邪魔をしてたのはイーライ、お前だったのね。カラバスが私を愛するよう魔法をかけようとしたのに、魔法で防いでいたのでしょう」
「その通り」
「小賢しい真似を…」

ファリカステ様の怒りは私ではなくイーライお兄様に向き始めたのか、お兄様に向かって目にも止まらぬ速さで攻撃を繰り出す。お兄様は避けたり防いだり、攻撃をくらってはいないが防戦一方だ。王族相手だから遠慮しているのか、それとももしかしてお兄様は攻撃魔法が使えないのか…

「デイジー、こっちへ!先に安全な場所へ」とアレンお兄様とカラバスお兄様が私を開いているドアへ誘導する。しかし「デイジーもカラバスも逃さないわよ」とファリカステ様が手をこちらに向けると、壊れたはずのドアがしっかり直されて私たちの行く手を塞いだ。

その隙をついてイーライお兄様がファリカステ様に杖を向け、何か呪文を唱えた。魔法で捕縛したのだ。動けなくなり悪態をつくファリカステ様に近づき、大きな紫の宝石が付いたネックレスを外そうとする…が、外れない。ここへきて、イーライお兄様がまさかのド不器用なのかと思ったが違うらしい。

「このネックレスがファリカステ様の魔力の源…というか、ファリカステ様を操っているものだ。並の魔法では外せない」
「操ってる!?」
「そうだ。近ごろ急にファリカステ様の性格が変わり、強い魔法が使えるようになったのは、このネックレスのせいだ」

一息ついて気がつくと、ファリカステ様の館の中には、魔術課のメンバーと思しき魔法使いたちがやってきている。魔法が使われていることや騒ぎに気づいて出動したのだろう。捕縛係を別の魔法使いに代わってもらったイーライお兄様を囲んで、みんなで何か相談している。

「見る限り、相当古い呪いだな。かなり腕のいい解魔師でないと外せないだろう」
「しかし昨年ロブロス殿が亡くなってから、我が国に解魔師はいないぞ」
「解魔師が見つかるまで、交代でファリカステ様に捕縛魔法をかけ続けるとなると、かなり労力をとられるな…国王陛下の許可を得て、魔法牢に入っていただくか…」
「しかし姉君だぞ?許可が出るかな?」
「くそ、ロブロス殿さえいれば…」

この国に一人もいないとは、どうやら解魔師というのは相当なレアキャラらしい。でも…何故だか私…

私の中の何かがうごめいて、「私ならできる」と囁いている。

「イーライお兄様、私、外せると思います」
「は?何を言ってる!?」
「お兄様、私には魔力があると言いましたよね。何かのきっかけがあれば魔法が使えるようになるかもしれないと。私、できます。わかるんです。私にやらせてください!」

イーライお兄様が私の両肩に手を置いた。グレーの瞳に真剣な優しさが見て取れる。

「デイジー、これから大切なことを言うからよく考えろ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。 7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。 ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。 ※よくある話で設定はゆるいです。 誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。

【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

断罪されてムカついたので、その場の勢いで騎士様にプロポーズかましたら、逃げれんようなった…

甘寧
恋愛
主人公リーゼは、婚約者であるロドルフ殿下に婚約破棄を告げられた。その傍らには、アリアナと言う子爵令嬢が勝ち誇った様にほくそ笑んでいた。 身に覚えのない罪を着せられ断罪され、頭に来たリーゼはロドルフの叔父にあたる騎士団長のウィルフレッドとその場の勢いだけで婚約してしまう。 だが、それはウィルフレッドもその場の勢いだと分かってのこと。すぐにでも婚約は撤回するつもりでいたのに、ウィルフレッドはそれを許してくれなくて…!? 利用した人物は、ドSで自分勝手で最低な団長様だったと後悔するリーゼだったが、傍から見れば過保護で執着心の強い団長様と言う印象。 周りは生暖かい目で二人を応援しているが、どうにも面白くないと思う者もいて…

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

処理中です...