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30 彼の名前
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イーライお兄様と踊り終わると「デイジー嬢、私と踊っていただけますか」と声がかかった。「よろこんで」と振り返ると、見たことのない男性。「ニトレマ王国第二王子サワジです」と自己紹介され、手を取られて踊り始める。
サワジ殿下は南国の王子らしく日焼けした肌が印象的なイケメンだ。が、踊っている間中「私の趣味は美女をたくさん集めて行うパーティーです」とか「私はニトレマの女性に大人気で妻候補がたくさんいます」とか思慮が浅そうな自己紹介をし続ける。私は「素敵ですわ」「素晴らしいですわね」と思いつく限りの褒め言葉のバリエーションを使って相槌を打ち続けた。
曲が終わって、自慢話と心がこもっていない褒め言葉の応酬からようやく解放されるかと思いきや…
「えっ!?」
サワジ殿下が私の手を握ったまま、跪いた。
「ホークボロー伯爵令嬢デイジー、私と結婚してください」
はああああああ!?何言ってんだこの自分大好きアホ王子!今日初めて会って一曲踊っただけの私にプロポーズだと!?
会場の視線が一斉に私たちに注がれる。
「返事をいただけますか」
いやそりゃ全力で拒否だよ!でもさすがにこんな公式な場で、他国の王族に対してそんなことは言えない。私は命が惜しい。
「殿下、あまりに突然のお話で…」
「それがどうしました?私は一国の王子ですよ。自分も養父も平民出身の伯爵令嬢にしては、大金星の縁談だと思いますが。まだ婚約者もいらっしゃらないのでしょう?」
自分の出自だけでなくお父様まで馬鹿にされ、怒りに震える私に、サワジの大馬鹿野郎は続ける。
「それとも心に決めた方でも?それなら一旦は諦めなくもないですが」
「ええ、ええ、私には心に決めた方がおりますっ」
「ほぉ…それはどなたですか?名前を伺わないと信じられませんねぇ」
「えっ…」
困って助けを求めて視線をあげると、サワジ殿下を睨みつけながら口を動かしているイーライお兄様が目に入る。まずい。こんなところで外国の王族に対して魔法なんか使ったら外交問題だ。ただではすまない。イーライお兄様に向かって「やめてください」と首を振る。
その後ろに…私を見つめているアレンお兄様とカラバスお兄様。お兄様たちと目が合って…
「私は、ア…」
名前を言いかけたところで「サワジ殿下、お戯れはそれくらいにいたしましょう」とよく通る低い声がした。
「今日は私の婚約披露パーティーだということをお忘れですか?主役を奪わないでいただきたいな。それに、公衆の面前で女性に想い人の名前を言わせるなんて、殿下に似合わず無粋ですよ」
サルトス王太子殿下…!助けてくださった!その隣ではアスターベル様が私に向かって、"大丈夫ですわ"と唇の形で伝えてくれる。
「あとね…我がセトルス王国としても、おいそれと貴重な解魔師を連れて行かれるわけにはいかないんですよ。サワジ殿下とデイジー嬢が相思相愛なら話は別ですが」
顔には笑いを浮かべながら魔力の圧をかける王太子殿下と、「相思相愛なんかじゃない!」という心の叫びを込めて首を振る私を見て、サワジ殿下が小さく舌打ちをして「戯れが過ぎたようだ、すまない」と謝罪し、静まり返っていた会場にざわめきが戻ってきた。
サワジ殿下は南国の王子らしく日焼けした肌が印象的なイケメンだ。が、踊っている間中「私の趣味は美女をたくさん集めて行うパーティーです」とか「私はニトレマの女性に大人気で妻候補がたくさんいます」とか思慮が浅そうな自己紹介をし続ける。私は「素敵ですわ」「素晴らしいですわね」と思いつく限りの褒め言葉のバリエーションを使って相槌を打ち続けた。
曲が終わって、自慢話と心がこもっていない褒め言葉の応酬からようやく解放されるかと思いきや…
「えっ!?」
サワジ殿下が私の手を握ったまま、跪いた。
「ホークボロー伯爵令嬢デイジー、私と結婚してください」
はああああああ!?何言ってんだこの自分大好きアホ王子!今日初めて会って一曲踊っただけの私にプロポーズだと!?
会場の視線が一斉に私たちに注がれる。
「返事をいただけますか」
いやそりゃ全力で拒否だよ!でもさすがにこんな公式な場で、他国の王族に対してそんなことは言えない。私は命が惜しい。
「殿下、あまりに突然のお話で…」
「それがどうしました?私は一国の王子ですよ。自分も養父も平民出身の伯爵令嬢にしては、大金星の縁談だと思いますが。まだ婚約者もいらっしゃらないのでしょう?」
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「ええ、ええ、私には心に決めた方がおりますっ」
「ほぉ…それはどなたですか?名前を伺わないと信じられませんねぇ」
「えっ…」
困って助けを求めて視線をあげると、サワジ殿下を睨みつけながら口を動かしているイーライお兄様が目に入る。まずい。こんなところで外国の王族に対して魔法なんか使ったら外交問題だ。ただではすまない。イーライお兄様に向かって「やめてください」と首を振る。
その後ろに…私を見つめているアレンお兄様とカラバスお兄様。お兄様たちと目が合って…
「私は、ア…」
名前を言いかけたところで「サワジ殿下、お戯れはそれくらいにいたしましょう」とよく通る低い声がした。
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顔には笑いを浮かべながら魔力の圧をかける王太子殿下と、「相思相愛なんかじゃない!」という心の叫びを込めて首を振る私を見て、サワジ殿下が小さく舌打ちをして「戯れが過ぎたようだ、すまない」と謝罪し、静まり返っていた会場にざわめきが戻ってきた。
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