『ユキレラ』義妹に結婚寸前の彼氏を寝取られたど田舎者のオレが、泣きながら王都に出てきて運命を見つけたかもな話

真義あさひ

文字の大きさ
3 / 44

憧れの朝チュン、隣には全裸の美少年

しおりを挟む
 翌朝、ユキレラは宿屋のベッドで目を覚ました。

「あれ。いつの間にオレ、宿まで帰ってきたんだろ?」

 昨晩、酒場に行く前にチェックインしてあった部屋で間違いない。
 ベッド脇の小さな机の上に、故郷から持ってきたバッグが置いてあるのがその証拠だ。

「ん? オレ、はだか!?」

 部屋の中は魔導具の空調機があって室温が快適に保たれている。
 だが、素肌に当たるこの布団の感覚は!?

「うーん……」

 ハッとしてユキレラは小さな唸り声の発生源を見た。
 ベッドの隣には、若い青年、いや寝顔の感じからするとまだ少年だ。
 しかも布団の隙間から見える限り、彼も全裸では!?

 だが一番ユキレラを驚愕させたのは、その顔だ。

「え? ええっ!? お、オレと同じ顔!???」

 青みがかった真っ直ぐな銀髪、白い肌。
 もしかしたら薄い水色の瞳まで同じかもしれない。

 ユキレラが混乱していると、煩かったのか少年が少しむずがるような仕草を見せた後、パチっと目を開けた。

 想像通り、ユキレラと同じ薄い水色の瞳だった。



 目覚めた少年は、ニコ、と綺麗な顔でユキレラに笑いかけてきた。

 間違いない。昨晩、酒場で一緒に飲んでいた青年だ。
 暗めの酒場の照明では青年だと思ったが、実際はだいぶ若い子だったようだ。

「やあ。名も知らぬご親戚君。お前、名前は?」

 お前、とユキレラへの呼び方が慣れている。
 上位者特有の物言いだ。

 これは庶民ではあり得ない。

「き、君こそ誰なんだい!?」
「僕はリースト子爵ルシウスという。リースト伯爵家の者だよ」
「し、子爵様……しかも伯爵家の方でしたか!」

 ヤバい。

 この国、アケロニア王国は平民差別が少ないけれど、魔力を持つことが多いお貴族様を優先して保護する法律がいくつかある。

 中でも、平民が貴族を性的に襲うのは即アウトだった気がする。
 しかも被害者が未成年だった場合は去勢された上での即処刑も有り得た。

 ど田舎村で通っていた学校では、その辺の法律や決まりごとについて、先生が口を酸っぱくして注意していたものだ。



「それで、お前は?」
「オレはユキレラ・オコメダです。ど田舎領、ど田舎村から来ました」

 ど田舎領も、ど田舎村も、冗談のような話だが、このアケロニア王国内の正式な地名である。

 元は王女が降嫁した由緒ある飛び地の公爵家の領地だったが、たび重なる災害や他国からの侵攻などでコロコロ名称が変わって僻地・最果て化した曰く付きの土地だ。
 結果、ど田舎領ど田舎領と蔑称が定着。

 200年ほど前の当時の領主が「もういちいち訂正するの面倒だからど田舎領で良いのでは?」と言い出して国に届け出を出して受理されてしまった。
 ど田舎村の他、ど田舎郷、ど田舎町がある。
 逆に今では領民自ら面白がって自分たちをど田舎者と称してる、そんな土地柄だった。

 なお、現在は王家の直轄領なので、ど田舎領主と呼ばれる不幸なお貴族様は存在しない。

 ついでにいえば、改称した後は他国からの侵略もなく平和なものだった。
 だって侵攻するたびにど田舎領、ど田舎領と言わねばならない。
 そんな名前なら要らんわと他国の皆さんも諦めたと言われている。

「随分遠いところから来たね」
「そ、そんなことより、何でオレたち裸なんでしょう? 昨晩、オレたちの間にナニかありましたか!?」

 あったらヤバい、あったらヤバい。
 下手したら本当にしょっ引かれて首が胴体から離れてしまう。
 ついでに下半身の獲物までむしり取られてしまう。

 だが、そんなユキレラの心配は杞憂だったようだ。

「裸なのはねえ。お前が飲みすぎて前後不覚になっちゃって、僕の服に吐いちゃったからさ。さすがにそのまま家に帰るのはイヤだったから、君が泊まってるこの宿屋まで連れてきて、服は宿の人に洗濯してもらってる最中だよ」
「す、すいません。ものすごい迷惑かけちまったみたいで」

 これが普通の平民相手ならともかく、よりにもよって何でお貴族様に迷惑かけてしまったのか、昨日の自分よ!

「そうでもないよ。新しい同族だもの、他の変な人たちに見つかる前に保護できて良かった」
「へ? 保護?」

 そういえば先ほど、『ご親戚君』と呼ばれたような。
 少年がベッドの上に起き上がる。
 良かった、彼はパンツは穿いていた!




--
というわけで、「家出少年ルシウスNEXT」の5年後のお話。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした

Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話 :注意: 作者は素人です 傍観者視点の話 人(?)×人 安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)

姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)

turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。 徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。 彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。 一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。 ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。 その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。 そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。 時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは? ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ? 読んでくださった方ありがとうございます😊 ♥もすごく嬉しいです。 不定期ですが番外編更新していきます!

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

処理中です...