5 / 44
もしかして生き別れの兄ちゃんとじいちゃん?
しおりを挟む
「元いたところに返してきなさい」
「兄さん、これは捨て犬じゃないんですよ。遠い親戚です」
ユキレラはまず当主の兄に面通しされた。
そして驚愕した。
(い、生き別れの兄ちゃんかーっ!???)
ルシウスも自分とよく似ていたが、背格好の近い彼の兄、リースト伯爵カイルのほうがもっと似ていた。
着ている衣服が、あちらは白い軍服、こちらはど田舎者丸出しの庶民の手縫いのシャツやズボンとの違いはあったが、それだけだ。
青みがかった銀髪、薄い水色の瞳、白い肌と麗しの容貌。
(なるほど、お貴族様としてお手入ればっちりなら、オレもこったら男前さなれるんだなや)
もっとも、ルシウスの兄カイルはとても冷たい印象の男で、人当たり良く面倒見の良いルシウスや、軽めの性格のユキレラとはやはり表情が違う。
リースト伯爵様は孤高のクールビューティー様である。
ルシウスにもユキレラにも、そういった氷属性はないのだった。
話に入れないユキレラは、麗しの美形兄弟ルシウスと彼の兄、リースト伯爵カイルの話をボーッとしながら眺め、聞いていた。
ルシウスは簡単にユキレラの経歴と境遇、王都に知己がいない現状を説明して、当主の兄に後見人になってくれるよう頼んでいる。
だがご当主様は渋い顔をしている。
必死に頼み込んでくる弟と、後ろに所在なさげに立ち尽くしているユキレラとを、何度も交互に見ては、やはり渋い顔のままだ。
だが、やがて諦めたように溜め息をついて、執務室の椅子に深く座り直した。
「そやつと年齢の近い私より、父に頼むと良いだろう」
それだけ言って、鬱陶しそうに執務室から二人まとめて追い払われた。
リースト伯爵家の邸宅の廊下を歩きながら、こそっと聞いてみた。
「お兄さんと仲、悪いんですか?」
「さあ、どうだろうね。兄さんはお嫁様以外には誰にでもあんな感じだよ」
なるほど、そういうキャラか。クーデレというやつだ。
そうして紹介されたルシウスの兄、リースト伯爵カイルが“生き別れの兄”なら、兄弟の父親の前伯爵様は“生き別れのじいちゃん”だった。
青みがかった銀髪や薄い水色の瞳、麗しの容貌もやはり同じ。
だが、この前伯爵様は口周りにふさふさふわふわのお髭があった。
年齢は七十代ほどだろう。髪も髭もだいぶ白髪が混ざっている。
(なんでこんな皆そっくりなんー!???)
「おお、ルシウス。久し振りではないか。む、そちらはどなただね?」
その前リースト伯爵様メガエリスは自室の寝台の上で上半身を起こして、眼鏡をかけて本を読んでいた。
ここに来る前聞いた話では、一年ほど前に怪我をして少し足腰が弱っているとのこと。
「リースト一族の顔してたから連れてきました。ど田舎領、ど田舎村の出身だそうです。父様、何かご存じないですか?」
「ど田舎領か……隣のシルドット侯爵領になら、確か数代前の分家の男子が平民女性と結婚して移り住んでいたはず」
シルドット侯爵領は、ど田舎領のお隣さんだ。
「あっ、そうです、ご先祖様はシルドット侯爵領からど田舎村に移住してきたって親父から聞いたことあります」
「ふーむ。いま平民なら、数代前の戸籍は残っておらんかもしれんなあ」
ちょいちょいっと手招きされたので、大人しく近くに寄ると、頬に手を当てられ、メガネを外してじーっと顔を覗き込まれた。
剣を握っていた者特有の、剣ダコのある硬い手のひらだ。
だが、ユキレラに触れる手つきはとても優しい。
「うむ、瞳も紛うことなき“湖面の水色”よな。この子の後見なら構わない。だがその前に、念のため人物鑑定を受けてくるように」
最後にぽんぽん、と優しく頭を叩かれて解放された。
何だか本当に、おじいちゃんに構われたような感覚だった。
ユキレラの祖父母は父方も母方も、ユキレラが産まれる前に亡くなっているから、想像でしかないのだけれども。
ユキレラが王都に到着してまだ二日目。
急展開に急展開が続いている。
「兄さん、これは捨て犬じゃないんですよ。遠い親戚です」
ユキレラはまず当主の兄に面通しされた。
そして驚愕した。
(い、生き別れの兄ちゃんかーっ!???)
ルシウスも自分とよく似ていたが、背格好の近い彼の兄、リースト伯爵カイルのほうがもっと似ていた。
着ている衣服が、あちらは白い軍服、こちらはど田舎者丸出しの庶民の手縫いのシャツやズボンとの違いはあったが、それだけだ。
青みがかった銀髪、薄い水色の瞳、白い肌と麗しの容貌。
(なるほど、お貴族様としてお手入ればっちりなら、オレもこったら男前さなれるんだなや)
もっとも、ルシウスの兄カイルはとても冷たい印象の男で、人当たり良く面倒見の良いルシウスや、軽めの性格のユキレラとはやはり表情が違う。
リースト伯爵様は孤高のクールビューティー様である。
ルシウスにもユキレラにも、そういった氷属性はないのだった。
話に入れないユキレラは、麗しの美形兄弟ルシウスと彼の兄、リースト伯爵カイルの話をボーッとしながら眺め、聞いていた。
ルシウスは簡単にユキレラの経歴と境遇、王都に知己がいない現状を説明して、当主の兄に後見人になってくれるよう頼んでいる。
だがご当主様は渋い顔をしている。
必死に頼み込んでくる弟と、後ろに所在なさげに立ち尽くしているユキレラとを、何度も交互に見ては、やはり渋い顔のままだ。
だが、やがて諦めたように溜め息をついて、執務室の椅子に深く座り直した。
「そやつと年齢の近い私より、父に頼むと良いだろう」
それだけ言って、鬱陶しそうに執務室から二人まとめて追い払われた。
リースト伯爵家の邸宅の廊下を歩きながら、こそっと聞いてみた。
「お兄さんと仲、悪いんですか?」
「さあ、どうだろうね。兄さんはお嫁様以外には誰にでもあんな感じだよ」
なるほど、そういうキャラか。クーデレというやつだ。
そうして紹介されたルシウスの兄、リースト伯爵カイルが“生き別れの兄”なら、兄弟の父親の前伯爵様は“生き別れのじいちゃん”だった。
青みがかった銀髪や薄い水色の瞳、麗しの容貌もやはり同じ。
だが、この前伯爵様は口周りにふさふさふわふわのお髭があった。
年齢は七十代ほどだろう。髪も髭もだいぶ白髪が混ざっている。
(なんでこんな皆そっくりなんー!???)
「おお、ルシウス。久し振りではないか。む、そちらはどなただね?」
その前リースト伯爵様メガエリスは自室の寝台の上で上半身を起こして、眼鏡をかけて本を読んでいた。
ここに来る前聞いた話では、一年ほど前に怪我をして少し足腰が弱っているとのこと。
「リースト一族の顔してたから連れてきました。ど田舎領、ど田舎村の出身だそうです。父様、何かご存じないですか?」
「ど田舎領か……隣のシルドット侯爵領になら、確か数代前の分家の男子が平民女性と結婚して移り住んでいたはず」
シルドット侯爵領は、ど田舎領のお隣さんだ。
「あっ、そうです、ご先祖様はシルドット侯爵領からど田舎村に移住してきたって親父から聞いたことあります」
「ふーむ。いま平民なら、数代前の戸籍は残っておらんかもしれんなあ」
ちょいちょいっと手招きされたので、大人しく近くに寄ると、頬に手を当てられ、メガネを外してじーっと顔を覗き込まれた。
剣を握っていた者特有の、剣ダコのある硬い手のひらだ。
だが、ユキレラに触れる手つきはとても優しい。
「うむ、瞳も紛うことなき“湖面の水色”よな。この子の後見なら構わない。だがその前に、念のため人物鑑定を受けてくるように」
最後にぽんぽん、と優しく頭を叩かれて解放された。
何だか本当に、おじいちゃんに構われたような感覚だった。
ユキレラの祖父母は父方も母方も、ユキレラが産まれる前に亡くなっているから、想像でしかないのだけれども。
ユキレラが王都に到着してまだ二日目。
急展開に急展開が続いている。
51
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。
ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と
主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り
狂いに狂ったダンスを踊ろう。
▲▲▲
なんでも許せる方向けの物語り
人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
表紙:meadow様(X:@into_ml79)
挿絵:Garp様(X:garp_cts)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている
春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」
王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。
冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、
なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。
誰に対しても一切の温情を見せないその男が、
唯一リクにだけは、優しく微笑む――
その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。
孤児の少年が踏み入れたのは、
権謀術数渦巻く宰相の世界と、
その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。
これは、孤独なふたりが出会い、
やがて世界を変えていく、
静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
魔王さまのヒミツ♡
黒木 鳴
BL
歴代最年少で魔王の地位に就いたレイには隠し通さなければならない秘密がある。それは……「魔王もうやだぁぁぁ~~!!下剋上こわいよぉぉぉーーー!!!」その実態が泣き虫ポンコツ魔王だということ。バレれば即・下剋上を挑まれることは必至!なので先々代の魔王を父に持ち、悪魔公爵ジェラルドが膝を折ったという2枚看板を武器にクールな魔王を演じている。だけどその実力を疑う者たちも出てきて……?!果たしてレイの運命は……?!溺愛腹黒系悪魔×初心な小悪魔系吸血鬼。お茶目なパパんも大活躍!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる