『ユキレラ』義妹に結婚寸前の彼氏を寝取られたど田舎者のオレが、泣きながら王都に出てきて運命を見つけたかもな話

真義あさひ

文字の大きさ
13 / 44

王弟殿下と甥っ子さん

しおりを挟む
「ルシウス様、そちらはもしや……お子様ですか?」

 休日のその日、前日ちょっと飲み過ぎて昼前まで寝過ごして一階の食堂に降りていくと、ルシウスが幼児ふたりと遊んでいた。

 片腕に、ルシウスと同じ、青みがかった銀髪と湖面の水色の瞳の利発そうな幼児、もう片方には目も髪も真っ黒な、同じくらいの年のやんちゃそうな幼児を抱えていた。

 どちらも男児で、2歳半から3歳ぐらいだろうか。
 目鼻立ちのはっきりした、とても可愛いらしいお子さんだ。
 そのぐらいの年齢なら、今19歳のルシウスの子供でもギリギリ、おかしくはない。


(となると、もしや嫁っ子がおるんけ?)


 一緒に住んでいないということは、別居婚か、あるいは婚外子か。

 もやもや~としたものがユキレラの胸の中に広がってくる。

 だが、そんな憂いはすぐにルシウスが払ってくれた。

「違う違う。こっちは兄さんの子供。甥っ子だよ。こちらはカズン様。ヴァシレウス大王陛下の末のお子様で王弟殿下だよ。失礼のないようにね」
「ゔぁっ、ヴァシレウス大王様って!??」

 もちろん、ど田舎村出身のユキレラでも知っている。
 偉大なる先王陛下のヴァシレウス大王は、五年前に自分の孫より若い他国の令嬢を後添えに迎えて、翌年末のお子様がお生まれになったのだ。
 六十以上のものすごい年の差婚だったが、ロマンティックな純愛物語がそこにはあって、新聞では連日特集が組まれていたものである。

 あのクソビッチの義妹アデラですら、うっとりしながら新聞記事を切り取ってノートにスクラップしていたほど。

「ヨシュアです。よんさいです。ユキレラさま、よろしくおねがいします」
「カズンだよ! ぼくもよんさい!!!」
「えっ、4歳!?」

 それにしては随分と……。


(ちんまいなあ……)


「この子たちはとても魔力値が高くてね。そういう場合、身体の成長はゆっくりめになることが多いんだ」

 言われてみれば、ルシウスも19歳というが見た目だけなら十代半ばよりちょっと過ぎたぐらいにしか見えない。

 特にカズンのほうは、今日が初めてのお出かけだそうで、母親が近所の貴族の邸宅でお茶会の間だけルシウスが預かることになったのだそうだ。

「ふふ。初めてのお出かけが僕の小さな家がいいだなんて。カズン様ったら、もっといいところがたくさんあるのに」
「ルシウスさまのおしろ、いきたかったんだもん!」
「そっかあ」

 お城というより、普通のおうちですけどね。



 それで、食堂にお茶やジュース、お菓子などを揃えておしゃべりしながら、いろいろカズンの事情を教えてもらった。

 王弟とはいえ、先日までカズンは先王陛下の庶子に過ぎなかったし、王子の身分もなかった。
 ずっと王宮の離宮にいて、一度も外に出ていなかったし、現国王や王太女など父親の先王以外の王族との面通しもさせてもらえなかったそうな。

 ところが他国の公爵令嬢だった母御が、この国の次期女王グレイシア王太女と、不仲だった他国の女王との仲を取り持ち、国交回復に貢献した。

 そう、先日グレイシア王太女が『娼館に売り飛ばす』ネタで切れていた、カレイド王国の女王様との仲をだ。

 その功績をもって、母御は先王陛下の正式な伴侶として、息子カズンもようやく王族として認められた。
 また、それまで閉じ込められていた離宮からこうして外出することができるようになったという。

 それでも今回、ルシウスの小さな子爵邸に護衛騎士が数名。
 建物の外にも騎士団が出動しているそうな。



 その後、かんたんにお昼ごはんを食べた後でルシウスの部屋で少しお昼寝して、起きた後は身体を動かして遊ぶことにした。

 何をして遊んだかって?

 まずルシウスは、中庭に出て、子爵邸の建物の外壁を駆け上がり、そして駆け降りてきた。


「「ルシウスさま、すごーい!」」


 子供たちに尊敬の眼差しで見つめられ讃えられて、ルシウスは嬉しそうだ。

「足の裏に魔力を集めてね、壁にくっついたり、離れたりのイメージを作るんだよ」

 それで何回か見本を見せた後で、カズンはすぐにコツを掴んだようで、ルシウスと一緒にきゃーきゃー言いながら壁の登り降りを繰り返した。

「魔力使いしゅごい……」

 思わず舌を噛んでしまったユキレラだ。
 いやほんとしゅごい。

 重力なにそれ食えるの? レベルですいすい壁を駆け上がっている。

 思わずユキレラが、カズンの護衛騎士たちを見ると、彼らも必死で首を否定的に振っていた。

「あのー」
「無理です。あんな真似、誰でも簡単にできると思ってもらっては困ります!」
「ですよねー」

 良かった。ユキレラの感覚のほうが普通だった。



 とてもじゃないが壁走りなどできないユキレラは、ヨシュアと一緒に地上でお留守番だ。

 そのヨシュアは悔しそうに、ルシウスとカズンが登っていった子爵邸の屋上辺りを、ぐぬぬ……と唸りながら睨んでいる。

 見た目がまんま、ミニチュア版ルシウスなヨシュア坊ちゃんは、不機嫌丸出しでもとても麗しく可愛らしい。

 思わず、その青みがかった柔らかな銀髪の頭を撫で撫でしてしまったユキレラだ。

「オレだって、すぐできるようになりますもん!」
「うんうん」

 同い年のカズンができるのに、自分ができないのは悔しいよねーとユキレラが頷いていると。

「おじさまばっかり、カズンさまといっしょでずるい」
「え、そっちですかヨシュア様!?」

 すごい。もうこの年で最愛を見つけている。




--
カズン君とヨシュアの恋模様?は、14年後の学生時代「王弟カズンの冒険前夜」にて。

しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)

turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。 徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。 彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。 一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。 ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。 その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。 そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。 時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは? ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ? 読んでくださった方ありがとうございます😊 ♥もすごく嬉しいです。 不定期ですが番外編更新していきます!

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした

Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話 :注意: 作者は素人です 傍観者視点の話 人(?)×人 安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

処理中です...