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油断が大惨事になりました
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王弟カズンに会いに、甥っ子のヨシュアを連れて王宮の離宮へ遊びに行ったルシウスが帰ってこない。
離宮でお泊まりすると聞いていたから、その間はユキレラも仕事がなく、休暇で良いと言い渡されていたのだが。
自称忠犬は一緒に行きたかったが、ユキレラはまだ身分が平民なので、離宮とはいえ王宮の敷地内に入るための身分証がない。
試用期間の三ヶ月が終われば、リースト伯爵家から専用従者や秘書としての身分証を作ってくれるそうなので、それまでは良い子でお留守番なのだ。
大丈夫。ユキレラは待てができる良い飼いユキレラ。
しかし、ご主人様が翌日になっても帰ってこない。
もしかしたら遊ぶのが楽しくて連泊してるのかも。
ルシウスに懐いていたカズンやヨシュアが引き留めている可能性もある。
わかる。あのお子さんたち可愛かったですものね。
だが、連絡もないまま二日目も帰ってこなかった。
三日目、ようやく帰って来たと思ったら、げっそり憔悴していて、ユキレラは慌ててご主人様に飛びついた。
「どうしよう。僕のミスでヨシュアとカズン様が……」
「えっ。何があったんです!?」
何とか話を聞き出してユキレラは驚愕した。
ヨシュアを連れて王宮の離宮に住む王弟カズンを訪ね遊びに行ったところ、事件に巻き込まれた。
奸計に嵌められて子供二人からルシウスが離れたところを狙われ、二人が呪詛にかけられてしまったとのこと。
幸い命に別状はなかったらしいのだが、代わりというように呪詛によって、カズンは魔力値が最高の10から2へ、ヨシュアは幸運値が何と最低ランクの1まで落ちてしまったそうなのだ。
(ファー!? 幸運値1て! それ人生ずっと罰ゲーム状態なんでねが!?)
「僕の失態なのに。兄の自分の監督不行き届きだからって、兄さんが内定していた次期魔法魔術騎士団長の座を辞退することにするって。……あんなに望んでた地位なのに。それを、僕が……僕のせいで……!」
「ルシウス様……」
更に話を聞き出してみると、どうも王族の後継者争いに巻き込まれたということらしい。
現在、この国の王家には王太女グレイシアのユーグレン王子と、先日たくさん遊んだセシリア女大公の子息で現王弟のカズンの二人がいる。
ちなみに双方の母親同士の仲はとても良い。
それに既に次期王太子はユーグレン王子に決まっているのだが、個別のステータスではカズンのほうが高かったらしい。
それで、ユーグレン王子の地位が揺らぐことに危機感を覚えたユーグレン王子陣営の過激派が、カズンを排除するために今回の呪詛事件を起こしたものだそう。
「僕が……僕がふたりから離れなければ。僕さえ油断しなければ」
この三日間、不眠不休で事態の収束に奔走していたが、三日目の今日になって被害者のひとりカズンの父の先王様に「もう帰りなさい」と馬車に投げ込まれてそのまま子爵邸に帰ってきたそうだ。
「話は(よくわからんけど)わかりました。三日寝てないんですね!? とりあえずお布団行きましょう、お布団!」
リースト伯爵家のネイビーのライン入りの白い軍服のピシッとした略礼装で出かけていたはずのルシウスは、もう見るからにヨレヨレだ。
とりあえずユキレラはヨレヨレヘロヘロしょんぼりのご主人様を横抱きに抱え上げて、二階のお部屋の寝室へと運んだ。
ゆっくり、できるだけ振動を起こさないように運んでいるうちに、ルシウスは落ちた。ふかい眠りへと。
いつも麗しくにこやかな笑顔を見せてくれている艶々の白いお肌も乾燥して荒れて、目元もクマが出てしまっている。
(まだ成長期なんだがら、徹夜なんかダメだっぺ!)
介護なら両親の亡くなる前に散々やってお手のもののユキレラだ。
起きてからシャワーを浴びて貰うのが良いのだろうが、三日間ずっと同じ服を着て不眠不休だったご主人様はちょっと汗臭い。
普段は森林浴してるようなデオドラントを使っているようで、良い匂いを漂わせているお人なのだけれど。
ルシウスの着ていた軍服やシャツ、軍靴、靴下などそーっと脱がしてお湯を絞ったタオルで清拭していく。
こういうとき、魔法や魔術の“清浄”が使えれば一発なのだが、生憎ユキレラは魔法も魔術も使えない。
「すいません、ぱんつも脱がしますからねー?」
こそっと声量を落として、パパッとぱんつを脱がしてささっと、でもしっかり腹部、股から性器、お尻のほうまで拭き取って、すぐ新しい下着と寝巻きを着せておしまい。
寝息も立てず死んだように眠るルシウスの眦には涙がある。
(呪詛って、そんなもんあるなんて、さすが王都、都会はハイカラだべなー。……んでもな、被害に遭ったのがルシウス様じゃなくてよがったあ)
これは口には出せないユキレラの本音だ。
ユキレラは忠犬になったので、飼い主様最優先。
他はぶっちゃけて言えばどうでもいい。
でもご主人様が大切にしている人は、同じように大切にしたい。
そんな出来た飼いユキレラで在りたいと思っている。
それから三時間ほど眠り込んだ後、ガバッと勢いよく起きたルシウスを浴室に押し込んでいる間に。
ユキレラは一階の厨房で簡単な缶詰のクラムチャウダーを牛乳で伸ばして温め、適当にバゲットをスライスしてバターを塗り、葉野菜とチーズを挟んだサンドイッチを作った。
いつルシウスが目を覚ますかわからなかったので、簡単なものばかりだったけれど。
「ルシウス様、その様子だとろくすっぽ食べてませんね? どこに行くにも腹ごしらえは大事ですからね、ちゃんと食べてくださいね?」
シャワーを浴び終わったご主人様の、濡れた青みがかった髪をタオルで拭き拭きしながら、有無を言わさずテーブルの上にクラムチャウダーとサンドイッチを用意した。
もちろん、お残しは許しません。
従僕で従者で秘書で世話役のユキレラは、時にはオカンにもなるのです。
離宮でお泊まりすると聞いていたから、その間はユキレラも仕事がなく、休暇で良いと言い渡されていたのだが。
自称忠犬は一緒に行きたかったが、ユキレラはまだ身分が平民なので、離宮とはいえ王宮の敷地内に入るための身分証がない。
試用期間の三ヶ月が終われば、リースト伯爵家から専用従者や秘書としての身分証を作ってくれるそうなので、それまでは良い子でお留守番なのだ。
大丈夫。ユキレラは待てができる良い飼いユキレラ。
しかし、ご主人様が翌日になっても帰ってこない。
もしかしたら遊ぶのが楽しくて連泊してるのかも。
ルシウスに懐いていたカズンやヨシュアが引き留めている可能性もある。
わかる。あのお子さんたち可愛かったですものね。
だが、連絡もないまま二日目も帰ってこなかった。
三日目、ようやく帰って来たと思ったら、げっそり憔悴していて、ユキレラは慌ててご主人様に飛びついた。
「どうしよう。僕のミスでヨシュアとカズン様が……」
「えっ。何があったんです!?」
何とか話を聞き出してユキレラは驚愕した。
ヨシュアを連れて王宮の離宮に住む王弟カズンを訪ね遊びに行ったところ、事件に巻き込まれた。
奸計に嵌められて子供二人からルシウスが離れたところを狙われ、二人が呪詛にかけられてしまったとのこと。
幸い命に別状はなかったらしいのだが、代わりというように呪詛によって、カズンは魔力値が最高の10から2へ、ヨシュアは幸運値が何と最低ランクの1まで落ちてしまったそうなのだ。
(ファー!? 幸運値1て! それ人生ずっと罰ゲーム状態なんでねが!?)
「僕の失態なのに。兄の自分の監督不行き届きだからって、兄さんが内定していた次期魔法魔術騎士団長の座を辞退することにするって。……あんなに望んでた地位なのに。それを、僕が……僕のせいで……!」
「ルシウス様……」
更に話を聞き出してみると、どうも王族の後継者争いに巻き込まれたということらしい。
現在、この国の王家には王太女グレイシアのユーグレン王子と、先日たくさん遊んだセシリア女大公の子息で現王弟のカズンの二人がいる。
ちなみに双方の母親同士の仲はとても良い。
それに既に次期王太子はユーグレン王子に決まっているのだが、個別のステータスではカズンのほうが高かったらしい。
それで、ユーグレン王子の地位が揺らぐことに危機感を覚えたユーグレン王子陣営の過激派が、カズンを排除するために今回の呪詛事件を起こしたものだそう。
「僕が……僕がふたりから離れなければ。僕さえ油断しなければ」
この三日間、不眠不休で事態の収束に奔走していたが、三日目の今日になって被害者のひとりカズンの父の先王様に「もう帰りなさい」と馬車に投げ込まれてそのまま子爵邸に帰ってきたそうだ。
「話は(よくわからんけど)わかりました。三日寝てないんですね!? とりあえずお布団行きましょう、お布団!」
リースト伯爵家のネイビーのライン入りの白い軍服のピシッとした略礼装で出かけていたはずのルシウスは、もう見るからにヨレヨレだ。
とりあえずユキレラはヨレヨレヘロヘロしょんぼりのご主人様を横抱きに抱え上げて、二階のお部屋の寝室へと運んだ。
ゆっくり、できるだけ振動を起こさないように運んでいるうちに、ルシウスは落ちた。ふかい眠りへと。
いつも麗しくにこやかな笑顔を見せてくれている艶々の白いお肌も乾燥して荒れて、目元もクマが出てしまっている。
(まだ成長期なんだがら、徹夜なんかダメだっぺ!)
介護なら両親の亡くなる前に散々やってお手のもののユキレラだ。
起きてからシャワーを浴びて貰うのが良いのだろうが、三日間ずっと同じ服を着て不眠不休だったご主人様はちょっと汗臭い。
普段は森林浴してるようなデオドラントを使っているようで、良い匂いを漂わせているお人なのだけれど。
ルシウスの着ていた軍服やシャツ、軍靴、靴下などそーっと脱がしてお湯を絞ったタオルで清拭していく。
こういうとき、魔法や魔術の“清浄”が使えれば一発なのだが、生憎ユキレラは魔法も魔術も使えない。
「すいません、ぱんつも脱がしますからねー?」
こそっと声量を落として、パパッとぱんつを脱がしてささっと、でもしっかり腹部、股から性器、お尻のほうまで拭き取って、すぐ新しい下着と寝巻きを着せておしまい。
寝息も立てず死んだように眠るルシウスの眦には涙がある。
(呪詛って、そんなもんあるなんて、さすが王都、都会はハイカラだべなー。……んでもな、被害に遭ったのがルシウス様じゃなくてよがったあ)
これは口には出せないユキレラの本音だ。
ユキレラは忠犬になったので、飼い主様最優先。
他はぶっちゃけて言えばどうでもいい。
でもご主人様が大切にしている人は、同じように大切にしたい。
そんな出来た飼いユキレラで在りたいと思っている。
それから三時間ほど眠り込んだ後、ガバッと勢いよく起きたルシウスを浴室に押し込んでいる間に。
ユキレラは一階の厨房で簡単な缶詰のクラムチャウダーを牛乳で伸ばして温め、適当にバゲットをスライスしてバターを塗り、葉野菜とチーズを挟んだサンドイッチを作った。
いつルシウスが目を覚ますかわからなかったので、簡単なものばかりだったけれど。
「ルシウス様、その様子だとろくすっぽ食べてませんね? どこに行くにも腹ごしらえは大事ですからね、ちゃんと食べてくださいね?」
シャワーを浴び終わったご主人様の、濡れた青みがかった髪をタオルで拭き拭きしながら、有無を言わさずテーブルの上にクラムチャウダーとサンドイッチを用意した。
もちろん、お残しは許しません。
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