75 / 172
王家の派閥問題
部屋の外で見守る人々
しおりを挟む
部屋の外で待機しているよう言われた、ユーグレン王子の護衛兼側近の名をウェイザー騎士爵ローレンツという。
本人は騎士爵だが、出身は王家の親戚ウェイザー公爵家の次男だった。
榛色の短い髪と、黒に近いグレーの瞳をした背の高い好青年だ。
ユーグレンと同じ学園の3年B組の生徒で、学生の身ながら既に騎士爵を授かる騎士としての実力を買われて、学友を兼ねた護衛を請け負っている。
「ウェイザー卿。サロンでお茶でも如何ですか」
リースト伯爵家の執事長が声をかけてきたが、ローレンツは結構と断った。
ユーグレン王子の護衛なので、この場を離れるわけにはいかなかった。
「そうですか。ではこちらを」
と執事長は傍らの侍女が引いてきたワゴンの簡易ティーセットを示した。
「中でお話が弾んでいるようです。よろしければこちらをどうぞ」
「感謝します、いただきましょう」
立ったままになるが、入れたての紅茶を味わいつつ、主ユーグレンが出てくるのを待つことになった。
部屋の中からは、この家の当主ヨシュア、ユーグレン王子、そして王弟カズンの三人の声が途切れ途切れに聞こえてくる。
『カズン、お前は、私がヨシュアを……、…………!』
『そうだな、殿下の………………』
『………………、私を、……』
「うーん。痴話喧嘩っぽいですねえ」
思わずローレンツが呟くと、ローレンツと同じように廊下に控えていた執事長が苦笑した。
「当家のご当代様が王弟殿下をお慕いしていること、王子殿下はご存じなかったようですね」
「仲が良いのは知っていましたが……いやあ、拗れてますね」
部屋の中では怒っていたり、焦っていたり、大声も聞こえてくる。
『誤解だ、ユーグレン。ヨシュアには、…………!』
『いいえ。オレの、………………、子供の頃からずっと、………………』
『は? …………、僕を?』
要はヨシュアを慕うユーグレンのことを知っていたのに、当のヨシュアはカズンの配下となることを自分の中で決めていた。
わかっていてユーグレンが右往左往する姿を見て腹の中では笑っていたのだろうと、カズン相手に王子が怒っている。
ちなみにヨシュアは「そんなの最初からです」としれっと王族二人に伝えていた。
「なるほど。ヨシュア君はそういう感じだったのか」
そうとわかると、いろいろ納得するものがある。
ユーグレン王子の側近候補として幼い頃から学友だったローレンツは、周囲の大人たちやその影響を受けた高位貴族の子息たちが王弟カズンの友人ヨシュアに圧力をかけていることを知っていた。
現在、アケロニア王族はとても数が少ない。
王位継承権は一位がグレイシア王太女、二位がその息子ユーグレン王子、そして三位が先王ヴァシレウス大王の末っ子カズン。
ユーグレンの周りは既にローレンツなど公爵家や侯爵家の子息たちで固められている。
代わりに、カズンに取り入りたい者たちは多かった。
だが、側には常にリースト伯爵令息だったヨシュアがいて、カズンと親しくしたい者たちには非常に邪魔な存在だった。
ヨシュアはリースト伯爵家の嫡男として麗しの美貌を持ち人々を魅了しているが、さすがに皮一枚だけで野心ある貴族たちの思惑を退けることはできなかったとみえる。
「4歳で王弟殿下とお会いしてからずっと、如何にお側に侍るかがご当代様の至上命題なのです。専属騎士を目指しておりましたが、先日のお家乗っ取り事件でリースト伯爵を襲名したことで、少し遠くなってしまいました」
「領地のない名前だけの伯爵なら問題ないですけどね。リースト伯爵家は規模もそこそこ大きいから、しばらくは治めるのも大変でしょう」
とこれまたリースト伯爵家に特有の青銀の髪と湖面の水色の瞳を持った、要するにヨシュアとよく似た容貌の執事長と雑談して時間を潰していた。
この家は、下働きの家人に至るまで自分たちの一族で家内を固めているので、この執事長のように当主と似た麗しの容貌を持つ者が少なくなかった。
『ええと、つまりだな。ユーグレンはヨシュアが、…………。ヨシュアは………………、合ってるか?』
「これが男女なら三角関係なのかな」
「さて、どうでしょうか。ワタクシどもはご当代様の意志に従うのみですが」
室内からは啜り泣きが聞こえてくる。
この声はユーグレン王子のものだ。
「青春が終わってしまいましたかねえ。ユーグレン様の」
護衛を兼ねた側近候補として、一番ユーグレンの側にいたのはローレンツだ。
ユーグレンが、竜殺しを果たしたヨシュアに強烈に魅せられたときも護衛としてすぐ隣にいて、その瞬間を目撃している。
学園でも友人のカズンと一緒にいる姿を羨ましそうに眺めていたことも、もちろん知っていた。
それでいて自分から話しかけることができず、躊躇う姿も。
「ウェイザー卿。これ以上は野暮でしょう。部屋の護衛には家の者を付けますので、こちらへ」
立ち聞きを続けるのは良くないと、執事長に促されてローレンツは素直に従った。
ローレンツの代わりに、当主の部屋の前にはリースト伯爵家のメイビーのライン入りの白い軍服姿の青年が立った。
彼もまたヨシュアたちとよく似た青銀の髪と湖面の水色の瞳を持っていた。
--
部屋の中では何を話してたのでしょうね(・∀・)
新規で追加してみた周りの人々視点。
本人は騎士爵だが、出身は王家の親戚ウェイザー公爵家の次男だった。
榛色の短い髪と、黒に近いグレーの瞳をした背の高い好青年だ。
ユーグレンと同じ学園の3年B組の生徒で、学生の身ながら既に騎士爵を授かる騎士としての実力を買われて、学友を兼ねた護衛を請け負っている。
「ウェイザー卿。サロンでお茶でも如何ですか」
リースト伯爵家の執事長が声をかけてきたが、ローレンツは結構と断った。
ユーグレン王子の護衛なので、この場を離れるわけにはいかなかった。
「そうですか。ではこちらを」
と執事長は傍らの侍女が引いてきたワゴンの簡易ティーセットを示した。
「中でお話が弾んでいるようです。よろしければこちらをどうぞ」
「感謝します、いただきましょう」
立ったままになるが、入れたての紅茶を味わいつつ、主ユーグレンが出てくるのを待つことになった。
部屋の中からは、この家の当主ヨシュア、ユーグレン王子、そして王弟カズンの三人の声が途切れ途切れに聞こえてくる。
『カズン、お前は、私がヨシュアを……、…………!』
『そうだな、殿下の………………』
『………………、私を、……』
「うーん。痴話喧嘩っぽいですねえ」
思わずローレンツが呟くと、ローレンツと同じように廊下に控えていた執事長が苦笑した。
「当家のご当代様が王弟殿下をお慕いしていること、王子殿下はご存じなかったようですね」
「仲が良いのは知っていましたが……いやあ、拗れてますね」
部屋の中では怒っていたり、焦っていたり、大声も聞こえてくる。
『誤解だ、ユーグレン。ヨシュアには、…………!』
『いいえ。オレの、………………、子供の頃からずっと、………………』
『は? …………、僕を?』
要はヨシュアを慕うユーグレンのことを知っていたのに、当のヨシュアはカズンの配下となることを自分の中で決めていた。
わかっていてユーグレンが右往左往する姿を見て腹の中では笑っていたのだろうと、カズン相手に王子が怒っている。
ちなみにヨシュアは「そんなの最初からです」としれっと王族二人に伝えていた。
「なるほど。ヨシュア君はそういう感じだったのか」
そうとわかると、いろいろ納得するものがある。
ユーグレン王子の側近候補として幼い頃から学友だったローレンツは、周囲の大人たちやその影響を受けた高位貴族の子息たちが王弟カズンの友人ヨシュアに圧力をかけていることを知っていた。
現在、アケロニア王族はとても数が少ない。
王位継承権は一位がグレイシア王太女、二位がその息子ユーグレン王子、そして三位が先王ヴァシレウス大王の末っ子カズン。
ユーグレンの周りは既にローレンツなど公爵家や侯爵家の子息たちで固められている。
代わりに、カズンに取り入りたい者たちは多かった。
だが、側には常にリースト伯爵令息だったヨシュアがいて、カズンと親しくしたい者たちには非常に邪魔な存在だった。
ヨシュアはリースト伯爵家の嫡男として麗しの美貌を持ち人々を魅了しているが、さすがに皮一枚だけで野心ある貴族たちの思惑を退けることはできなかったとみえる。
「4歳で王弟殿下とお会いしてからずっと、如何にお側に侍るかがご当代様の至上命題なのです。専属騎士を目指しておりましたが、先日のお家乗っ取り事件でリースト伯爵を襲名したことで、少し遠くなってしまいました」
「領地のない名前だけの伯爵なら問題ないですけどね。リースト伯爵家は規模もそこそこ大きいから、しばらくは治めるのも大変でしょう」
とこれまたリースト伯爵家に特有の青銀の髪と湖面の水色の瞳を持った、要するにヨシュアとよく似た容貌の執事長と雑談して時間を潰していた。
この家は、下働きの家人に至るまで自分たちの一族で家内を固めているので、この執事長のように当主と似た麗しの容貌を持つ者が少なくなかった。
『ええと、つまりだな。ユーグレンはヨシュアが、…………。ヨシュアは………………、合ってるか?』
「これが男女なら三角関係なのかな」
「さて、どうでしょうか。ワタクシどもはご当代様の意志に従うのみですが」
室内からは啜り泣きが聞こえてくる。
この声はユーグレン王子のものだ。
「青春が終わってしまいましたかねえ。ユーグレン様の」
護衛を兼ねた側近候補として、一番ユーグレンの側にいたのはローレンツだ。
ユーグレンが、竜殺しを果たしたヨシュアに強烈に魅せられたときも護衛としてすぐ隣にいて、その瞬間を目撃している。
学園でも友人のカズンと一緒にいる姿を羨ましそうに眺めていたことも、もちろん知っていた。
それでいて自分から話しかけることができず、躊躇う姿も。
「ウェイザー卿。これ以上は野暮でしょう。部屋の護衛には家の者を付けますので、こちらへ」
立ち聞きを続けるのは良くないと、執事長に促されてローレンツは素直に従った。
ローレンツの代わりに、当主の部屋の前にはリースト伯爵家のメイビーのライン入りの白い軍服姿の青年が立った。
彼もまたヨシュアたちとよく似た青銀の髪と湖面の水色の瞳を持っていた。
--
部屋の中では何を話してたのでしょうね(・∀・)
新規で追加してみた周りの人々視点。
21
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~
けろ
ファンタジー
【完結済み】
仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!?
過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。
救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。
しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。
記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。
偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。
彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。
「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」
強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。
「菌?感染症?何の話だ?」
滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級!
しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。
規格外の弟子と、人外の師匠。
二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。
これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる