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魔術師カズン、子供時代の終わり
未来の剣聖氏、タラの魚卵開発に乗り出す
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フリーダヤたち三人が帰ってきた頃には昼食の時間も近くなっていたため、食堂へ行って食事を済ませることにした。
今回はカズンが鮭と魚卵を食べたがっ
ていたので、あえてリースト伯爵領の特産品としての鮭は明日以降の本番として、ふつうに鮭以外のメニューだった。
食後、またサロンに戻ってきてお茶を飲みながら他愛のない話をしていた。
「僕たちは、リースト伯爵領にもダンジョンがあると聞いてたので。確かAランクでしたっけ?」
ピンクブロンドの髪に水色の瞳の美少女のような美少年、グレンが自分たちの来訪の目的を語った。
「そうそう。このあと一度、冒険者ギルドに行って、この環が使えるようになったって報告してこようかと思っててよ」
「確か、何か特殊なマークが冒険者証に付くんですよね?」
グレンが自分の冒険者証を取り出す。
「そうだね、表面に環のシンボルである光のリングのイラスト付きの冒険者証に変わる。魔力使いの場合は、環が使えると間違いのない信用証明になるからね」
魔力使いの新世代が使う、環なる円環状の光の術式は、人間の持つ過剰な執着を削ぎ落とさなければ発動しない仕様になっている。
悪意や悪念を持つ人間にはそもそも発動できないし、発動できた後でも、人として心ない言動や意識状態が続くと使えなくなる。
この事実が知れ渡っていることで、『環が使える魔力使い』はそれだけで“良い人間”であることの保証となる。
簡単にいえば、冒険者同士でパーティーを組んだとき、リーダーが環使いだったら報酬を独り占めして逃走するような心配だけはなくなる。
もちろん、人であるからには、リーダーとして自分の活躍に応じた報酬の取り分を要求するだろうが、ある程度は理性的に主張するから、人間社会においては、やはり信頼されやすい部類に入る。
「ライル君は人物鑑定でステータスを見たらビックリしたよ、魔力値1なんだもの。環が万人に開かれた可能性だという、生き証人みたいなものだね」
そう。アケロニア王国にいる魔力使いたちは、ほとんどが環を使わない旧世代だ。
旧世代の魔力使いにとって、魔法や魔術は自分の持つ血筋や、生まれた後の訓練によって得られた魔力量に依存する。
人物鑑定スキルで見ることができる、自分のステータスの“魔力値”の数値次第だった。魔力値は十段階評価。数値が高ければ魔力量が多く、魔力使いとして強い。低ければ弱い。
だが、この魔術師フリーダヤが開発した環という術式が使える者は、血筋は関係なく魔法や魔術が使えるという触れ込みだった。
今回、魔力値1のライルが環を発現させたことは、その動かぬ証拠となったわけだ。
フリーダヤは紅茶が冷めていくのにも構わず、興奮して喋り続けている。
そんな彼を見て、ヨシュアは昼食前から沈んだ様子を見せていたが、思いきったように声をかけた。
「フリーダヤ様。ライル様の場合は、どのような新たな称号の可能性が出たのですか?」
室内の一同の視線がヨシュアに向く。
「彼はね、“剣聖”の称号が見えてるね。今は剣士。研鑽を積んでいけば剣豪になって、そのうち本当に剣聖の称号が安定するんだと思う」
おお、と全員が感嘆の声をあげる。
ヨシュアはまだ沈んだまま、何事かを考え込んでいる。
「………………」
話が続かない。
ユーグレンが場をもたせようと口を開きかけたところ、カズンが殊更明るい声を出した。
「ああ、早く明日にならないだろうか。僕はここにはイクラを食べに来たんだ」
「そういえば、手紙にもそう書いてあったな? あのさ、うちのホーライル侯爵領の漁港から獲れるタラの魚卵てさあ……あれ、もしかして“タラコ”か?」
「ホーライル侯爵領では魚卵はどうしてるんだ?」
「うちのとこも、腐りやすいから基本廃棄なんだが。……煮魚や焼き魚にして美味いやつは、そのまま食ってるな。ほら、子持ちカレイやシシャモみたいなのの卵はプチプチしてなかなかいけるし」
「ライルー! タラコって、タラコってあれだろ、前世の日本で食べていたよな? おにぎりに焼いて入れてたりしたあれだよな!?」
「おう。あのタラコ。……食いたくなってきたな。どうよ、カズン」
「食べたい。食べたいです。食用加工の研究をぜひお願いしたい!」
カズンに懇願されたライル率いるホーライル侯爵領は、それから魚卵加工にも力を入れることになる。
だが実用化されるのはまだまだ未来の話である。
今回はカズンが鮭と魚卵を食べたがっ
ていたので、あえてリースト伯爵領の特産品としての鮭は明日以降の本番として、ふつうに鮭以外のメニューだった。
食後、またサロンに戻ってきてお茶を飲みながら他愛のない話をしていた。
「僕たちは、リースト伯爵領にもダンジョンがあると聞いてたので。確かAランクでしたっけ?」
ピンクブロンドの髪に水色の瞳の美少女のような美少年、グレンが自分たちの来訪の目的を語った。
「そうそう。このあと一度、冒険者ギルドに行って、この環が使えるようになったって報告してこようかと思っててよ」
「確か、何か特殊なマークが冒険者証に付くんですよね?」
グレンが自分の冒険者証を取り出す。
「そうだね、表面に環のシンボルである光のリングのイラスト付きの冒険者証に変わる。魔力使いの場合は、環が使えると間違いのない信用証明になるからね」
魔力使いの新世代が使う、環なる円環状の光の術式は、人間の持つ過剰な執着を削ぎ落とさなければ発動しない仕様になっている。
悪意や悪念を持つ人間にはそもそも発動できないし、発動できた後でも、人として心ない言動や意識状態が続くと使えなくなる。
この事実が知れ渡っていることで、『環が使える魔力使い』はそれだけで“良い人間”であることの保証となる。
簡単にいえば、冒険者同士でパーティーを組んだとき、リーダーが環使いだったら報酬を独り占めして逃走するような心配だけはなくなる。
もちろん、人であるからには、リーダーとして自分の活躍に応じた報酬の取り分を要求するだろうが、ある程度は理性的に主張するから、人間社会においては、やはり信頼されやすい部類に入る。
「ライル君は人物鑑定でステータスを見たらビックリしたよ、魔力値1なんだもの。環が万人に開かれた可能性だという、生き証人みたいなものだね」
そう。アケロニア王国にいる魔力使いたちは、ほとんどが環を使わない旧世代だ。
旧世代の魔力使いにとって、魔法や魔術は自分の持つ血筋や、生まれた後の訓練によって得られた魔力量に依存する。
人物鑑定スキルで見ることができる、自分のステータスの“魔力値”の数値次第だった。魔力値は十段階評価。数値が高ければ魔力量が多く、魔力使いとして強い。低ければ弱い。
だが、この魔術師フリーダヤが開発した環という術式が使える者は、血筋は関係なく魔法や魔術が使えるという触れ込みだった。
今回、魔力値1のライルが環を発現させたことは、その動かぬ証拠となったわけだ。
フリーダヤは紅茶が冷めていくのにも構わず、興奮して喋り続けている。
そんな彼を見て、ヨシュアは昼食前から沈んだ様子を見せていたが、思いきったように声をかけた。
「フリーダヤ様。ライル様の場合は、どのような新たな称号の可能性が出たのですか?」
室内の一同の視線がヨシュアに向く。
「彼はね、“剣聖”の称号が見えてるね。今は剣士。研鑽を積んでいけば剣豪になって、そのうち本当に剣聖の称号が安定するんだと思う」
おお、と全員が感嘆の声をあげる。
ヨシュアはまだ沈んだまま、何事かを考え込んでいる。
「………………」
話が続かない。
ユーグレンが場をもたせようと口を開きかけたところ、カズンが殊更明るい声を出した。
「ああ、早く明日にならないだろうか。僕はここにはイクラを食べに来たんだ」
「そういえば、手紙にもそう書いてあったな? あのさ、うちのホーライル侯爵領の漁港から獲れるタラの魚卵てさあ……あれ、もしかして“タラコ”か?」
「ホーライル侯爵領では魚卵はどうしてるんだ?」
「うちのとこも、腐りやすいから基本廃棄なんだが。……煮魚や焼き魚にして美味いやつは、そのまま食ってるな。ほら、子持ちカレイやシシャモみたいなのの卵はプチプチしてなかなかいけるし」
「ライルー! タラコって、タラコってあれだろ、前世の日本で食べていたよな? おにぎりに焼いて入れてたりしたあれだよな!?」
「おう。あのタラコ。……食いたくなってきたな。どうよ、カズン」
「食べたい。食べたいです。食用加工の研究をぜひお願いしたい!」
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だが実用化されるのはまだまだ未来の話である。
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