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【家出少年ルシウスNEXT】ルシウス君、冒険者になる
理不尽な言いがかり
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ルアーロブスターを解体してギルドの建物の中に戻ってくるなり、すっ飛んできた臨時調理人の男に怒鳴りつけられて、ルシウスはその大きな湖面の水色の瞳を瞬かせた。
「あの、話がよく見えないんですけど?」
「お前、外で大量に水を使っただろ! お陰で厨房で皿洗いする水が足りなくなっちまった、どうしてくれるんだ!」
「あ、そういうこと!?」
解体所で汚れを落とすのに、確かにルシウスたちは大量の水を流して使った。
それがどうやら、思いのほか大量に水を使ってしまったということらしい。
隣にいたハスミンも「やっちまった」という顔をして額を押さえている。
臨時料理人の男は火がついたように怒り狂っている。
「ごめんなさい。水を使うのに許可がいるとは思わなくて」
そういえばここは僻地。内陸部からも離れている。
今まで意識したことはなかったが、水は貴重かもしれない。
一通り叱られ、謝り倒すルシウスとハスミンだった。
(ごめんね、あたしがその辺ちゃんと気をつけておけばよかったわ)
(ううん、大丈夫)
だが案外、ルシウスはケロッとしている。
まだ嫌味を言って怒鳴り続ける男性に、
「ねえ、もう行ってもいいかな?」
と平気で言って、更に怒らせることになった。
男の剣幕はヒートアップしてくる。
しかし一方的に言われっぱなしのルシウスではない。
「僕が悪いことしたのは謝るよ。僕が水を使いすぎて困ったあなたが怒るのももっともだ。でもそれ以上怒鳴られたって、僕はどうすればいいのさ?」
「口の減らないガキだ! 少しは反省したらどうなんだ!」
と言われましても。
「だから、申し訳ないことをしてしまったよね。ごめんなさい。まだ何かあるの?」
「その態度が生意気なんだ!」
「ええええ」
あまりの男の剣幕に、ギルドマスターのカラドンまで事務室から出てくる事態になった。
ギルマスが加勢してくれたと思った男は止まらない。
(ガーガーうるさい)
似たようなタイプが親戚に一人いるが、少し口を挟んだだけで激昂するようなところまで同じでげんなりした。
しかも、怒りの矛先は一緒にいたハスミンには向かず、ルシウスばかりに向けられている。
仕舞いには、ルシウスが水を無駄遣いしたことだけでなく、自分が普段ルシウスを気に入らないことまであげつらうようになってきて、さすがにいい加減にしろと口を開きかけたとき。
「おい、そこまでにしておけ」
「ですが、ギルドマスター! ただの下働きのガキに大きな顔をさせるつもりですか!?」
男はルシウスが新しくギルドに来た下働きだと勘違いしている。
確かにルシウスはまだ子供だし、他の冒険者たちのようなゴツい装備も装着していないから、誤解されるのは仕方ないとはいえ。
「? お前、何か変な誤解してねえか? ルシウスは下働きじゃない。れっきとした冒険者だよ」
「は? ……で、ですが、どうせ低ランクでしょう!」
この年頃で冒険者なら、どうせ低ランクのEやDだろうと男は鼻で笑う。
「ルシウスはBランク冒険者だ。下働きに見えたのは、暇だからギルド内の仕事を手伝ってくれてただけだぞ?」
「そ、そんな!」
ルシウスを男が睨みつけてくる。
冒険者なら、ギルド内外の設備利用に特に制限はなかった。
(なるほど、だから見た目で魔法使いとわかるハスミンさんには噛み付かなかったのか)
それに、ルシウスもここココ村支部に来て冒険者登録をしたとき、受付嬢クレアからギルド利用の説明を受けている。
その中に、水の節約なんて項目はなかったはずだ。
(やっぱりこの人、何か変だ)
結局、男はルシウスに謝ることはしないまま、今日はもう食堂で調理は無理だと言って町に戻っていったのだった。
「あの人なんなの? 意味わからないんだけど」
「んー。何か気に入らねえんだろうな。ま、気にするな、ルシウス!」
プクーと魚のフグさんのようにルシウスが膨らませた頬を、ギルマスに突っつかれた。
何と言われようと、不快な経験だった。
「でもおかしいよねえ。海岸で海の魔物を相手に戦う冒険者ギルドのココ村支部なんだから、必要な水ぐらい確保してあるでしょ」
「そりゃそうだ。基本は雨水を濾過して使ってるが、足りない分は水の魔石で賄ってる」
「解体所だって、わりと日常的に使ってるよね?」
「大抵は魔石にしちまってるから、他のギルドに比べたら使用頻度は低いかもな」
「……水を流しっぱなしにしてたのは、10分ぐらいだよ。それであの怒りようはおかしい」
男のような『イヤな感じ』のする人間は、故郷でのルシウスの近くにもいた。
例えば、学園の中等部のクラスメイトにも一人いて、小さなこと、細かな取るに足りないことで激昂して突っかかってきたりする。
(兄さんの側にもこんな感じの厭な奴がいるんだ。あまり関わりたくないけど、ここにいる限りそうも言ってられないだろうしなあ)
亡くなった母親の弟が、まさに同じ系統の人種だった。
ルシウスが覚えている母親はとても優しく愛情深い人だったのに、同じ血を分けた弟がなぜああなってしまうのか。
この手のタイプとルシウスは相性が悪い。ルシウスが何を言い、何をしても過剰反応してくるから、近寄らないのが無難だった。
「あの、話がよく見えないんですけど?」
「お前、外で大量に水を使っただろ! お陰で厨房で皿洗いする水が足りなくなっちまった、どうしてくれるんだ!」
「あ、そういうこと!?」
解体所で汚れを落とすのに、確かにルシウスたちは大量の水を流して使った。
それがどうやら、思いのほか大量に水を使ってしまったということらしい。
隣にいたハスミンも「やっちまった」という顔をして額を押さえている。
臨時料理人の男は火がついたように怒り狂っている。
「ごめんなさい。水を使うのに許可がいるとは思わなくて」
そういえばここは僻地。内陸部からも離れている。
今まで意識したことはなかったが、水は貴重かもしれない。
一通り叱られ、謝り倒すルシウスとハスミンだった。
(ごめんね、あたしがその辺ちゃんと気をつけておけばよかったわ)
(ううん、大丈夫)
だが案外、ルシウスはケロッとしている。
まだ嫌味を言って怒鳴り続ける男性に、
「ねえ、もう行ってもいいかな?」
と平気で言って、更に怒らせることになった。
男の剣幕はヒートアップしてくる。
しかし一方的に言われっぱなしのルシウスではない。
「僕が悪いことしたのは謝るよ。僕が水を使いすぎて困ったあなたが怒るのももっともだ。でもそれ以上怒鳴られたって、僕はどうすればいいのさ?」
「口の減らないガキだ! 少しは反省したらどうなんだ!」
と言われましても。
「だから、申し訳ないことをしてしまったよね。ごめんなさい。まだ何かあるの?」
「その態度が生意気なんだ!」
「ええええ」
あまりの男の剣幕に、ギルドマスターのカラドンまで事務室から出てくる事態になった。
ギルマスが加勢してくれたと思った男は止まらない。
(ガーガーうるさい)
似たようなタイプが親戚に一人いるが、少し口を挟んだだけで激昂するようなところまで同じでげんなりした。
しかも、怒りの矛先は一緒にいたハスミンには向かず、ルシウスばかりに向けられている。
仕舞いには、ルシウスが水を無駄遣いしたことだけでなく、自分が普段ルシウスを気に入らないことまであげつらうようになってきて、さすがにいい加減にしろと口を開きかけたとき。
「おい、そこまでにしておけ」
「ですが、ギルドマスター! ただの下働きのガキに大きな顔をさせるつもりですか!?」
男はルシウスが新しくギルドに来た下働きだと勘違いしている。
確かにルシウスはまだ子供だし、他の冒険者たちのようなゴツい装備も装着していないから、誤解されるのは仕方ないとはいえ。
「? お前、何か変な誤解してねえか? ルシウスは下働きじゃない。れっきとした冒険者だよ」
「は? ……で、ですが、どうせ低ランクでしょう!」
この年頃で冒険者なら、どうせ低ランクのEやDだろうと男は鼻で笑う。
「ルシウスはBランク冒険者だ。下働きに見えたのは、暇だからギルド内の仕事を手伝ってくれてただけだぞ?」
「そ、そんな!」
ルシウスを男が睨みつけてくる。
冒険者なら、ギルド内外の設備利用に特に制限はなかった。
(なるほど、だから見た目で魔法使いとわかるハスミンさんには噛み付かなかったのか)
それに、ルシウスもここココ村支部に来て冒険者登録をしたとき、受付嬢クレアからギルド利用の説明を受けている。
その中に、水の節約なんて項目はなかったはずだ。
(やっぱりこの人、何か変だ)
結局、男はルシウスに謝ることはしないまま、今日はもう食堂で調理は無理だと言って町に戻っていったのだった。
「あの人なんなの? 意味わからないんだけど」
「んー。何か気に入らねえんだろうな。ま、気にするな、ルシウス!」
プクーと魚のフグさんのようにルシウスが膨らませた頬を、ギルマスに突っつかれた。
何と言われようと、不快な経験だった。
「でもおかしいよねえ。海岸で海の魔物を相手に戦う冒険者ギルドのココ村支部なんだから、必要な水ぐらい確保してあるでしょ」
「そりゃそうだ。基本は雨水を濾過して使ってるが、足りない分は水の魔石で賄ってる」
「解体所だって、わりと日常的に使ってるよね?」
「大抵は魔石にしちまってるから、他のギルドに比べたら使用頻度は低いかもな」
「……水を流しっぱなしにしてたのは、10分ぐらいだよ。それであの怒りようはおかしい」
男のような『イヤな感じ』のする人間は、故郷でのルシウスの近くにもいた。
例えば、学園の中等部のクラスメイトにも一人いて、小さなこと、細かな取るに足りないことで激昂して突っかかってきたりする。
(兄さんの側にもこんな感じの厭な奴がいるんだ。あまり関わりたくないけど、ここにいる限りそうも言ってられないだろうしなあ)
亡くなった母親の弟が、まさに同じ系統の人種だった。
ルシウスが覚えている母親はとても優しく愛情深い人だったのに、同じ血を分けた弟がなぜああなってしまうのか。
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