80 / 217
ルシウス君、覚醒編
おうちが壊れたときのお話
しおりを挟む
「何年か前、王都で大地震が起こったことがあって。全体的に死者や負傷者は少なく済んだんだけど、うちの屋敷は老朽化が進んでるとこ中心に半壊しちゃったんだよね」
ああ、リーストさんちは幸運値低いですものねえ……とご近所さんからの同情を集めた事件だったとのこと。
リースト伯爵家の一族は、ステータスの魔力や知力は高めだが、代わりというように幸運値が低めになる傾向があるらしい。
「王都の貴族街、周りどこも被害受けてないのにうちだけ半壊。そのとき、たまたま休日で父様も兄様も家にいたから、お庭で一緒に遊んでた午後に、ドカーンと。目の前でおうちが崩れて僕泣いちゃった」
「庭に出てたから無事だったのか……」
それは逆に運が良いのでは?
「それでおうちを修復するまで、父様が勤めてた騎士団の寮の部屋に兄さんと二人でしばらく避難してたんだ」
「えっ。領地に戻ったり、親戚を頼ったりはしなかったの?」
「その頃、兄さんが王都の学園の高等部に進学したばかりだったし、僕も兄さんと離れたくなかったんだもん。親戚は……王都にいたけど仲悪かったから」
屋敷の修復期間中は家人たちの大半に暇を出し、父親のメガエリスも騎士団内に持っていた執務室で寝起きする生活が続いた。
「でね、朝ごはんと夜ごはんは騎士団内の食堂で食べることができたんだけど、お昼は閉まっちゃうから、お外のお店に行くか、寮内の簡易キッチンで自炊するかしかなくて」
「それで自炊するときに覚えたと」
「え、何で年上の兄貴じゃなくてルシウスが?」
今でもこんなにちまっこい子供なのに、数年前ならもっと小さかったはずだ。
聞けば、だいたい6年前のことでルシウスは8歳そこそこだったとのこと。
間違いない。可愛い盛りの幼児だ。
14歳の現在でも10歳そこそこにしか育っていないのだから、8歳のときはもっともっと幼かったはず。
「その頃はまだ兄さんもサーモンパイ作れなかったんだよね。数年後に父様が仕事を引退するから、その頃ゆっくり教えるよって話になってて」
「外に食べに行けない理由……あ、そうか、おうちの修復で経済力が低下しちゃったのかあ」
ハスミンが納得したように苦笑している。
「古い屋敷だったから、半壊を修復とはいえ、新築する並にかかっちゃって。伯爵家の家の格的にもそれなりの屋敷の規模が求められるし。でもうちは父様が魔道騎士団の団長で国に貢献してたし、王族の皆さんとも仲が良かったから、国王陛下が支援してくれるって話が出てたんだよ。それをさ……」
ぐさっとフォークで、二匹めのサーモンパイも頭の部分を貰っていたルシウスが、目玉の部分にぶっ刺している。
こわい。めちゃおこだ。
お行儀悪いですよと突っ込めないくらい怒っている。
本人の小柄な身体からネオンブルーの魔力が噴き出していて、肌がピリピリする。
「宰相が難癖つけてきたんだ。『国王陛下が一貴族を贔屓することは好ましくありません』とかなんとか言って。そのくせ、もったいぶって後から自分が支援するとか恩着せがましく言ってきたんだって!」
「てことは、パパさんは断ったんだな?」
「当然だよ! 酷いよね、いくら自分が学生時代に父様にフラれてるからって、おうちが壊れて困ってるところに文句つけてくるなんて!」
「んんん?」
何やら不穏な内容が混ざっている。
「アケロニア王国の現宰相はグロリオーサ侯爵でしたか。年齢は70近く……」
「学生時代に振られてた……?」
「ヤベエ。なんかすごくヤベエ情報聞いてる気がする」
大人たちが親世代の愛憎に冷や汗をかいている中、ルシウスの話は続いている。
「父様が頑張ってくれて、一年もかからずおうちには戻れたけど! あの頃、父様のふわふわのお髭が苦労したせいでぺしょってなって、艶がなくなっちゃってたんだからね!」
「お髭のお手入れする余裕もなく、金策に奔走されてたんでしょうねえ……」
パパの苦労が偲ばれる。
--
パパに会ってハグして頬っぺたスリスリすると、いつもはふわふわ~なお髭が大好きだったのにペショッててガーン´д` ;だったルシウス君。
ああ、リーストさんちは幸運値低いですものねえ……とご近所さんからの同情を集めた事件だったとのこと。
リースト伯爵家の一族は、ステータスの魔力や知力は高めだが、代わりというように幸運値が低めになる傾向があるらしい。
「王都の貴族街、周りどこも被害受けてないのにうちだけ半壊。そのとき、たまたま休日で父様も兄様も家にいたから、お庭で一緒に遊んでた午後に、ドカーンと。目の前でおうちが崩れて僕泣いちゃった」
「庭に出てたから無事だったのか……」
それは逆に運が良いのでは?
「それでおうちを修復するまで、父様が勤めてた騎士団の寮の部屋に兄さんと二人でしばらく避難してたんだ」
「えっ。領地に戻ったり、親戚を頼ったりはしなかったの?」
「その頃、兄さんが王都の学園の高等部に進学したばかりだったし、僕も兄さんと離れたくなかったんだもん。親戚は……王都にいたけど仲悪かったから」
屋敷の修復期間中は家人たちの大半に暇を出し、父親のメガエリスも騎士団内に持っていた執務室で寝起きする生活が続いた。
「でね、朝ごはんと夜ごはんは騎士団内の食堂で食べることができたんだけど、お昼は閉まっちゃうから、お外のお店に行くか、寮内の簡易キッチンで自炊するかしかなくて」
「それで自炊するときに覚えたと」
「え、何で年上の兄貴じゃなくてルシウスが?」
今でもこんなにちまっこい子供なのに、数年前ならもっと小さかったはずだ。
聞けば、だいたい6年前のことでルシウスは8歳そこそこだったとのこと。
間違いない。可愛い盛りの幼児だ。
14歳の現在でも10歳そこそこにしか育っていないのだから、8歳のときはもっともっと幼かったはず。
「その頃はまだ兄さんもサーモンパイ作れなかったんだよね。数年後に父様が仕事を引退するから、その頃ゆっくり教えるよって話になってて」
「外に食べに行けない理由……あ、そうか、おうちの修復で経済力が低下しちゃったのかあ」
ハスミンが納得したように苦笑している。
「古い屋敷だったから、半壊を修復とはいえ、新築する並にかかっちゃって。伯爵家の家の格的にもそれなりの屋敷の規模が求められるし。でもうちは父様が魔道騎士団の団長で国に貢献してたし、王族の皆さんとも仲が良かったから、国王陛下が支援してくれるって話が出てたんだよ。それをさ……」
ぐさっとフォークで、二匹めのサーモンパイも頭の部分を貰っていたルシウスが、目玉の部分にぶっ刺している。
こわい。めちゃおこだ。
お行儀悪いですよと突っ込めないくらい怒っている。
本人の小柄な身体からネオンブルーの魔力が噴き出していて、肌がピリピリする。
「宰相が難癖つけてきたんだ。『国王陛下が一貴族を贔屓することは好ましくありません』とかなんとか言って。そのくせ、もったいぶって後から自分が支援するとか恩着せがましく言ってきたんだって!」
「てことは、パパさんは断ったんだな?」
「当然だよ! 酷いよね、いくら自分が学生時代に父様にフラれてるからって、おうちが壊れて困ってるところに文句つけてくるなんて!」
「んんん?」
何やら不穏な内容が混ざっている。
「アケロニア王国の現宰相はグロリオーサ侯爵でしたか。年齢は70近く……」
「学生時代に振られてた……?」
「ヤベエ。なんかすごくヤベエ情報聞いてる気がする」
大人たちが親世代の愛憎に冷や汗をかいている中、ルシウスの話は続いている。
「父様が頑張ってくれて、一年もかからずおうちには戻れたけど! あの頃、父様のふわふわのお髭が苦労したせいでぺしょってなって、艶がなくなっちゃってたんだからね!」
「お髭のお手入れする余裕もなく、金策に奔走されてたんでしょうねえ……」
パパの苦労が偲ばれる。
--
パパに会ってハグして頬っぺたスリスリすると、いつもはふわふわ~なお髭が大好きだったのにペショッててガーン´д` ;だったルシウス君。
12
あなたにおすすめの小説
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~
shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて
無名の英雄
愛を知らぬ商人
気狂いの賢者など
様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。
それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま
幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる