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丸め込まれたエド王子
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マリオンに遅れること約3ヶ月後。
この短期間で驚くほど精悍な顔つきになってエドアルド第二王子がタイアド王国に帰還した。
「エド王子が戻ってきた! 祭りですね!」
と王宮の皆も国民たちも沸いたが、当の本人は我関せずで真っ先に父親の国王や兄の王太子、そして王妃の3人に報告しに行った。
謁見室で一通り、カーナ神国での魔王の試練を受けて乗り越えたことや、その後の修行についてを報告した後、ビシッと王妃を向いた。
ちなみにエドアルド王子は王妃が自分を嫌っていると今も誤解したままだ。
「王妃様。マリオンの件、俺はまだ忘れたわけじゃありませんよ! あなたを告発しない代わりに、俺が王子の籍も王位継承権も返上して他国に帰化する手助けをしていただきたい!」
「く……っ。き、気に食わないけど、あなたは王太子のスペアです。王家からの出奔を認めるわけにはいきません!」
こうなるともう王妃は必死だ。大ファンだったかつての女優だった側妃の、やはり大ファンの息子を逃してなるものか。
「なぜですか。俺がいなくなれば王太子の兄上のお立場は盤石。あなたは身分の低い側妃だった俺の母も、母から産まれた俺のことも嫌いなのだから、むしろ喜ぶべきです」
うわあ、と国王も王太子も、他の側近や臣下たちも生温い表情で王妃を見た。
この美しきタイアドの王妃が、表面上はエドアルド王子に冷淡でも、実際は母子のファンであることはわりと知られている。ヤな感じのツンデレ熟女なのだ。
「ふ、ふふふ……わかっていますよ、エドアルド王子。あの可憐なマリオン・ブルーに会いたいのですね?」
「ぎくっ」
なぜバレた!? と王子が焦る。
なぜ隠し通せていると思った? と呆れる国王や王太子、そして側近や大臣、衛兵たち。
「王位継承権の返上? 他国に帰化? それがそなたの望みなら好きにするが良いでしょう」
「はい、遠慮な」
遠慮なく、と言いきる前に「ですが!」と王妃が彼女なりに大声を張り上げた。
「ですが! そなたの愛するマリオンたんは、そなたがタイアド王族の義務と責任を放棄して己の元へ来たることを喜ぶのですか?」
「……うっ」
マリオンたんって言った? とその場の誰もが頭に疑問符を浮かべたが、当のエドアルド王子はそれどころではない。
「マリオンたんに会いたいのはわたくしも同じ! ですが彼はわたくしの顔など見たくもないでしょうから、そなたが代わりに行きなさい」
「え?」
王妃が侍従を見ると、心得たと言わんばかりに奥から大箱の宝箱を数名で抱えて持ってきた。
箱自体も、中に詰まっている物もキンキラキンで、貴金属と宝石が輝いている。
「聞くところによると、マリオンたんは大層腕の良い魔導具師だったとか。しかしアケロニア王国などという無骨な国の民ゆえ、装飾の心得は乏しいでしょう。職人を連れてマリオンたんの工房にこちらを届けに行きなさい」
「お、王妃様ー!」
エドアルド王子がエメラルド色の瞳をキラッキラと輝かせている。
同じエメラルド色の瞳のマルガレータ王妃はうむ、と力強く頷いた。
「我ら揃ってマリオンたんのパトロネスとパトロンとなればよい! そのためにもエドアルド王子はタイアド王族のままでいるが良いでしょう!」
「そ、それは確かにー!?」
あーあ、とそこかしこから溜め息が漏れた。
「王子、上手く丸め込まれちゃいましたね……」
「王妃殿下、やるじゃん……」
「これまた新聞に載ったらタイアド王家の威信落ちそう……」
「いや、案外上がるかも?」
国王も王太子もこの展開はさすがに予想していなかった。
揃って呆気に取られていたが、やがて先に気を取り直したクリストファー王太子が手を挙げた。
「あ、それ私も一枚噛みますね」
この短期間で驚くほど精悍な顔つきになってエドアルド第二王子がタイアド王国に帰還した。
「エド王子が戻ってきた! 祭りですね!」
と王宮の皆も国民たちも沸いたが、当の本人は我関せずで真っ先に父親の国王や兄の王太子、そして王妃の3人に報告しに行った。
謁見室で一通り、カーナ神国での魔王の試練を受けて乗り越えたことや、その後の修行についてを報告した後、ビシッと王妃を向いた。
ちなみにエドアルド王子は王妃が自分を嫌っていると今も誤解したままだ。
「王妃様。マリオンの件、俺はまだ忘れたわけじゃありませんよ! あなたを告発しない代わりに、俺が王子の籍も王位継承権も返上して他国に帰化する手助けをしていただきたい!」
「く……っ。き、気に食わないけど、あなたは王太子のスペアです。王家からの出奔を認めるわけにはいきません!」
こうなるともう王妃は必死だ。大ファンだったかつての女優だった側妃の、やはり大ファンの息子を逃してなるものか。
「なぜですか。俺がいなくなれば王太子の兄上のお立場は盤石。あなたは身分の低い側妃だった俺の母も、母から産まれた俺のことも嫌いなのだから、むしろ喜ぶべきです」
うわあ、と国王も王太子も、他の側近や臣下たちも生温い表情で王妃を見た。
この美しきタイアドの王妃が、表面上はエドアルド王子に冷淡でも、実際は母子のファンであることはわりと知られている。ヤな感じのツンデレ熟女なのだ。
「ふ、ふふふ……わかっていますよ、エドアルド王子。あの可憐なマリオン・ブルーに会いたいのですね?」
「ぎくっ」
なぜバレた!? と王子が焦る。
なぜ隠し通せていると思った? と呆れる国王や王太子、そして側近や大臣、衛兵たち。
「王位継承権の返上? 他国に帰化? それがそなたの望みなら好きにするが良いでしょう」
「はい、遠慮な」
遠慮なく、と言いきる前に「ですが!」と王妃が彼女なりに大声を張り上げた。
「ですが! そなたの愛するマリオンたんは、そなたがタイアド王族の義務と責任を放棄して己の元へ来たることを喜ぶのですか?」
「……うっ」
マリオンたんって言った? とその場の誰もが頭に疑問符を浮かべたが、当のエドアルド王子はそれどころではない。
「マリオンたんに会いたいのはわたくしも同じ! ですが彼はわたくしの顔など見たくもないでしょうから、そなたが代わりに行きなさい」
「え?」
王妃が侍従を見ると、心得たと言わんばかりに奥から大箱の宝箱を数名で抱えて持ってきた。
箱自体も、中に詰まっている物もキンキラキンで、貴金属と宝石が輝いている。
「聞くところによると、マリオンたんは大層腕の良い魔導具師だったとか。しかしアケロニア王国などという無骨な国の民ゆえ、装飾の心得は乏しいでしょう。職人を連れてマリオンたんの工房にこちらを届けに行きなさい」
「お、王妃様ー!」
エドアルド王子がエメラルド色の瞳をキラッキラと輝かせている。
同じエメラルド色の瞳のマルガレータ王妃はうむ、と力強く頷いた。
「我ら揃ってマリオンたんのパトロネスとパトロンとなればよい! そのためにもエドアルド王子はタイアド王族のままでいるが良いでしょう!」
「そ、それは確かにー!?」
あーあ、とそこかしこから溜め息が漏れた。
「王子、上手く丸め込まれちゃいましたね……」
「王妃殿下、やるじゃん……」
「これまた新聞に載ったらタイアド王家の威信落ちそう……」
「いや、案外上がるかも?」
国王も王太子もこの展開はさすがに予想していなかった。
揃って呆気に取られていたが、やがて先に気を取り直したクリストファー王太子が手を挙げた。
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