裏・聖女投稿(「王弟カズンの冒険前夜」続編)

真義あさひ

文字の大きさ
6 / 16
ユーグレン究極の選択

麗しの叔父と甥

しおりを挟む

  * * *



「ここは……」

 記憶の中にあるアケロニア王家の離宮の一つだった。
 王宮と同じ敷地にあるが、庭園をいくつか挟んでいる分だけ奥にあり離れている。
 ユーグレンと神人ジューアは住居エリアへ向かう回廊の途中に立っていた。

「お前の姿は人に見られぬほうが良いな。これを被れ」

 とジューアが薄くて半透明のフード付きマントを寄越してきた。彼女に倣って身につけると自分の身体が周囲の景色に溶け込んで姿がわからなくなった。
 同じマントを被った目の前にいるはずのジューアも姿も消えたように見えなくなっている。

「隠遁のローブという。さあ、勇者の末裔のもとへ行くぞ」
「はい、ジューアお姉様」

 確かこの頃カズンが両親と住んでいた離宮は、カズンの養育を最優先するため建物や設備の改修を行なっていたと聞いたことがある。

 とそのとき、遠くから幼い子供のはしゃいだ声が聞こえてきた。
 ユーグレンたちが歩いている回廊の、王宮側の入口からだ。この離宮へは一度王宮側に回らないと入れない。

「あのねあのね、おじさま。きょうはカズンさまとおにわをかけっこしてあそぶやくそくなの」
「庭なの? 壁じゃなくて?」
「かべも! のぼりたいです! でもごえいのきしさまたちにおこられないかな?」
「僕が一緒なら平気だと思うよ」
「じゃあおじさまもいっしょ!」
「うんうん」

「!」

 ヨシュアと、叔父のルシウスだ。ヨシュアはこの頃四歳のはずだが二歳半くらいに見える。魔力が大きい子供は成長が遅いと聞くのでそのせいだろう。
 幼児ヨシュアを腕に抱っこしているルシウスが、これまた……

「ルシウス様、お若いな……」

 現実世界だと確か彼は三十八。バイタリティ溢れる立派なイケオジだが、まだ十代後半の今はまさに文句なしの美少年だ。
 しかし彼より何より。

「ヨシュア……か、可愛すぎだろう……ああああ、尊い……っ」

 幼くともリースト一族特有の麗しの容貌は健在だった。そこに幼児の愛らしさが加わって、今のヨシュアにはあまり見られないルシウスへの甘えた態度、少し舌足らずの口調、まさに天使の如き神々しさ。

「写真、写真を撮りたい……!」
「当時の写真や絵姿ならリースト家にあるはずだぞ。譲ってもらえば良かろう」
「は!? お姉様、ならばぜひお口添えを!」
「……まあ言うだけなら構わんが」
「お姉様、このユーグレン、貴女に一生ついて参ります!」

 この瞬間、アケロニア王国の次期国王と神人ジューアに確かな絆が結ばれた。これまで冗談で彼女の舎弟になっていたこととは次元が違う深い絆だ。
 このことが縁でとんでもない未来に繋がっていくわけだが、今の時点ではまだ兆しもないことだった。





しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

従者は知らない間に外堀を埋められていた

SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL 転生先は悪役令息の従者でした でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません だから知らんけど精神で人生歩みます

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

呪いで猫にされた騎士は屈強な傭兵に拾われる

結衣可
BL
呪いで猫にされた騎士は屈強な傭兵に拾われる

僕、天使に転生したようです!

神代天音
BL
 トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。  天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...