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「乙女☆プリズム夢の王国」特典ストーリーの世界
セドリックの後悔
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夕食後、カーティスはセドリックを自分の客間に誘った。
「他の客たちと交流するより気が楽だろ」
「違いない」
エスティアの結婚祝いに持参していたウィスキーを一本空けて、ロックで。
学生時代は同学年で毎日顔を合わせていた二人だが、卒業後はカーティスは時期辺境伯、セドリックは隣国の王弟で兄王の政務補佐。
今ではたまに手紙のやり取りぐらいで、滅多に会うこともなかった。今回エスティアたちの結婚に参列するための再会も五年振りになる。
本当ならエスティアとアルフォートも一緒に誘って飲むつもりで持ってきたものだが、当人たちはそれどころではなさそうだ。
「いいのか? エスティアは白い結婚と言ってたけどあの女好きのアルフォートが相手だ。貞操を守り通せるかわかんねえぞ?」
「私に何をしろと? 王族とはいえ不義の子だ。大した権力もないのに」
セドリックは隣国の王弟で、先王の庶子とされている青年だ。
実際は王姉である独身の伯母の私生児だが、どちらにせよ不義の子には違いない。
厳格な性格で、倫理や道徳を遵守するが、その〝正しくない〟出自のせいで本人に一番向いている法務官に就けずにいる。王族なら法務長官のポストもあるはずなのに、だ。
兄王の補佐だったが実際は雑用係のようなものだ。国政に深く関わっているわけでもない。
厳格で慎重、常に正しい判断を心がける彼が不貞の子とは運命の皮肉だった。
「せめて、カタリナ様がご存命なら」
ウイスキーを口に含んだ後、セドリックがぽつりと呟いた。
薄い青色の瞳は酒の琥珀色を見ているようで、過去を見つめている。
「パラディオ伯爵家が誇る、歴代唯一の全属性持ち聖女。その権威は王家すら蔑ろにできなかった」
「せめて俺たちが学園に入学する頃まで生きててくださったらなあ……」
先代女伯爵カタリナが生きていたら、エスティアとその父テレンスの仲もここまで拗れていなかったはずだ。
「学園時代は楽しかったよな。王女様が生徒会長、お前は副会長。エスティアが書記。たまに助っ人で俺。アルフォートの野郎はいつも引っ掻き回すだけだったけど、あれはあれで楽しかった」
「卒業してから何年経ったと思ってる? いつまでも学生気分ではいかんだろう。だが、……良い青春時代を過ごせた。それは確かだ」
グラスの中で氷が鳴った。
当時は生徒会の役員たちや関係者がお茶やお菓子を持ち寄って、何も仕事がない日でも放課後に集まって憩いの時間を過ごしていた。
セドリックはあまり口数が多くない性格だが、あの頃は他愛ないおしゃべりが楽しくて放課後が待ち遠しくて仕方がなかった。
隣国先王の庶子セドリックは、本国ではその出自のせいで腫れ物にさわるような扱いだった。
今も昔も変わらず愛してくれるのは公式には伯母の実母、王姉ギネヴィアだけ。
留学中はどの生徒もセドリックの出自ではなくそのままを見てくれたので、とても息がしやすかったのを覚えている。
隣国王族のセドリックと、伯爵令嬢のエスティアはクラスが違かったから、会えるのが放課後の生徒会室だけだったこともある。
エスティアとセドリックは母親たちが元同級生の親友だった縁から、子供の頃からセドリックがパラディオ伯爵家に避暑で遊びに来る幼馴染み同士だった。
最初は喧嘩ばかりで険悪だった。
厳しいと評判の伯母(実母)の王姉に育てられて融通のきかない頑固少年だったセドリックと、次期女伯爵だが子供のうちは自由に育ってほしいからと元気いっぱいのお転婆娘だったエスティア。
衝突を繰り返し、セドリックがエスティアの無作法を叱っては、反論するように今度はエスティアが堂々とセドリックの頭の硬さを指摘してやり込める。
そんなことを繰り返しているうちに仲良くなって、互いに毎年、夏の時期だけ会える友人になったのだ。
会えない時期は文通を。
そして成長して、セドリックが隣国からプリズム王国の学園に留学すると知らせたときは、とても喜んでくれた。
入学した学園では三学年ずっと違うクラスだったが、昼食や生徒会の活動で毎日顔を合わせて一緒にいられる時間を積極的に作っていた。
エスティアは父親譲りの濃いミルクティ色の美しい髪と緑の瞳に、母親譲りの整った顔立ちの、よく笑う笑顔が愛らしい少女に育った。
学園時代は何人もの男子生徒たちから交際や婚約を申し込まれていた。
が、すべてセドリックが手を回して撤回させ、エスティアから引き離していたものだ。
周囲は皆、セドリックとエスティアが婚約するものとばかり思っていたし、本人たちも言葉にしないだけでそのつもりだった。
卒業間近になって、パラディオ伯爵家の領地にいるエスティアの父が、彼女の婚約を勝手に決めて手紙だけで通知してきたあの日までは。
「私は、彼女はずっと自分のものだと思っていたんだ」
「知ってた。それ皆知ってたから」
あれだけ周囲を牽制する姿を見て、わからないわけがない。
「もっと早く言葉に出して、エスティア本人にもパラディオ伯爵家にも婚約を……せめて交際まで漕ぎ着けておくべきだった。体裁を考えているうちにこの様だ」
ぐいっとグラスに残ったウイスキーを飲み干す。
氷で冷えたアルコールが喉を焼いた。
無言でカーティスがお代わりを注いできた。
明日の婚儀は午前中だ。
深酒して酒臭いまま参列はできなかったが、二人の男はそれから無言でグラスを傾け続けた。
「他の客たちと交流するより気が楽だろ」
「違いない」
エスティアの結婚祝いに持参していたウィスキーを一本空けて、ロックで。
学生時代は同学年で毎日顔を合わせていた二人だが、卒業後はカーティスは時期辺境伯、セドリックは隣国の王弟で兄王の政務補佐。
今ではたまに手紙のやり取りぐらいで、滅多に会うこともなかった。今回エスティアたちの結婚に参列するための再会も五年振りになる。
本当ならエスティアとアルフォートも一緒に誘って飲むつもりで持ってきたものだが、当人たちはそれどころではなさそうだ。
「いいのか? エスティアは白い結婚と言ってたけどあの女好きのアルフォートが相手だ。貞操を守り通せるかわかんねえぞ?」
「私に何をしろと? 王族とはいえ不義の子だ。大した権力もないのに」
セドリックは隣国の王弟で、先王の庶子とされている青年だ。
実際は王姉である独身の伯母の私生児だが、どちらにせよ不義の子には違いない。
厳格な性格で、倫理や道徳を遵守するが、その〝正しくない〟出自のせいで本人に一番向いている法務官に就けずにいる。王族なら法務長官のポストもあるはずなのに、だ。
兄王の補佐だったが実際は雑用係のようなものだ。国政に深く関わっているわけでもない。
厳格で慎重、常に正しい判断を心がける彼が不貞の子とは運命の皮肉だった。
「せめて、カタリナ様がご存命なら」
ウイスキーを口に含んだ後、セドリックがぽつりと呟いた。
薄い青色の瞳は酒の琥珀色を見ているようで、過去を見つめている。
「パラディオ伯爵家が誇る、歴代唯一の全属性持ち聖女。その権威は王家すら蔑ろにできなかった」
「せめて俺たちが学園に入学する頃まで生きててくださったらなあ……」
先代女伯爵カタリナが生きていたら、エスティアとその父テレンスの仲もここまで拗れていなかったはずだ。
「学園時代は楽しかったよな。王女様が生徒会長、お前は副会長。エスティアが書記。たまに助っ人で俺。アルフォートの野郎はいつも引っ掻き回すだけだったけど、あれはあれで楽しかった」
「卒業してから何年経ったと思ってる? いつまでも学生気分ではいかんだろう。だが、……良い青春時代を過ごせた。それは確かだ」
グラスの中で氷が鳴った。
当時は生徒会の役員たちや関係者がお茶やお菓子を持ち寄って、何も仕事がない日でも放課後に集まって憩いの時間を過ごしていた。
セドリックはあまり口数が多くない性格だが、あの頃は他愛ないおしゃべりが楽しくて放課後が待ち遠しくて仕方がなかった。
隣国先王の庶子セドリックは、本国ではその出自のせいで腫れ物にさわるような扱いだった。
今も昔も変わらず愛してくれるのは公式には伯母の実母、王姉ギネヴィアだけ。
留学中はどの生徒もセドリックの出自ではなくそのままを見てくれたので、とても息がしやすかったのを覚えている。
隣国王族のセドリックと、伯爵令嬢のエスティアはクラスが違かったから、会えるのが放課後の生徒会室だけだったこともある。
エスティアとセドリックは母親たちが元同級生の親友だった縁から、子供の頃からセドリックがパラディオ伯爵家に避暑で遊びに来る幼馴染み同士だった。
最初は喧嘩ばかりで険悪だった。
厳しいと評判の伯母(実母)の王姉に育てられて融通のきかない頑固少年だったセドリックと、次期女伯爵だが子供のうちは自由に育ってほしいからと元気いっぱいのお転婆娘だったエスティア。
衝突を繰り返し、セドリックがエスティアの無作法を叱っては、反論するように今度はエスティアが堂々とセドリックの頭の硬さを指摘してやり込める。
そんなことを繰り返しているうちに仲良くなって、互いに毎年、夏の時期だけ会える友人になったのだ。
会えない時期は文通を。
そして成長して、セドリックが隣国からプリズム王国の学園に留学すると知らせたときは、とても喜んでくれた。
入学した学園では三学年ずっと違うクラスだったが、昼食や生徒会の活動で毎日顔を合わせて一緒にいられる時間を積極的に作っていた。
エスティアは父親譲りの濃いミルクティ色の美しい髪と緑の瞳に、母親譲りの整った顔立ちの、よく笑う笑顔が愛らしい少女に育った。
学園時代は何人もの男子生徒たちから交際や婚約を申し込まれていた。
が、すべてセドリックが手を回して撤回させ、エスティアから引き離していたものだ。
周囲は皆、セドリックとエスティアが婚約するものとばかり思っていたし、本人たちも言葉にしないだけでそのつもりだった。
卒業間近になって、パラディオ伯爵家の領地にいるエスティアの父が、彼女の婚約を勝手に決めて手紙だけで通知してきたあの日までは。
「私は、彼女はずっと自分のものだと思っていたんだ」
「知ってた。それ皆知ってたから」
あれだけ周囲を牽制する姿を見て、わからないわけがない。
「もっと早く言葉に出して、エスティア本人にもパラディオ伯爵家にも婚約を……せめて交際まで漕ぎ着けておくべきだった。体裁を考えているうちにこの様だ」
ぐいっとグラスに残ったウイスキーを飲み干す。
氷で冷えたアルコールが喉を焼いた。
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明日の婚儀は午前中だ。
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