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「乙女☆プリズム夢の王国」特典ストーリーの世界
乙女ゲームのとんでもない裏事情2
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数年前、そのゲーム会社の社長だった親友が亡くなった。
ヒナコは親友が残した会社を相手取って、盗作詐欺の訴えを起こすことを決めた。
『その前に互いに弁護士を交えて話し合いをしたわ。でも私の優位性は疑いようがなかった。『乙女☆プリズム夢の王国』の原作となった原稿が、ゲーム会社には複製のみ。私の手元に原本があったのが決定的だった』
親友の息子である現社長との話し合いの結果、裁判で争う代わりにゲーム会社がこれまでの原作盗用を公表し謝罪することで話がまとまった。
原作者ヒナコの許可を得ず原作を改変したことやその経緯を、ゲーム会社の公式サイト等で告知し、周知に務めること。
ヒナコが本来得られるはずだった原作使用料を慰謝料として分割で支払うこと。
ただ、この慰謝料の代わりに、本来の『乙女☆プリズム夢の王国』を書かせてくれないかとヒナコは現社長に提案したらしい。
『もう乙プリ自体は既に完成されてしまっていたから、作品の世界観や登場人物を元に戻すのは難しい。でも、元々少女小説だった原作からごっそり削られてしまった要素があったの』
「そ、それがまさか……」
『そう。今で言う、百合とBLね。当時は少女恋愛や少年愛、やおいなどと言ってたものになるわ』
時代はちょうどスマホのアプリゲーム全盛期。
社運を賭けた一大プロジェクトとして、蔑ろにされた原作者への謝罪と真相の公表の話題効果を狙って発表されたのが、スマホ版『乙女☆プリズム夢の王国』だったわけだ。
『私がショックだったのは、自分の書いた小説が許可なくゲームに盗用されたこともだけど、原作で表現していた、自分が大事にしていた要素がたくさん削られ改変されたことだったの』
例えば、原作はアーサー王伝説のオマージュで、登場人物の名前や性格、環境などの設定を丁寧に反映させて書いていたのに、乙女ゲームではストーリーに都合よく〝加工〟されまくっていた。
「あー……。なるほど、アーサー王伝説がモチーフなのに上手く使いこなせてないなあって当時から思ってました。そういうことだったんですね」
セドリックの実の父親ランスロットは、アーサー王物語なら円卓の騎士の一人でアーサー王の強力な臣下だが、王の妻ギネヴィアを奪って駆け落ちしてしまう。
乙プリでは、隣国の王女だったギネヴィアと婚約者だったが正ヒロインの現王妃に懸想して婚約破棄している。
同じくパーシヴァルというキャラなら単独で聖杯を探しに旅に出るはずが、乙プリでは学園の一教師に過ぎなかった。
同じようにトリスタンという名前のキャラなら、ヨーロッパの中世恋愛譚の主人公でイゾルテなる女性と数奇な運命に翻弄されることで知られる。
しかし乙プリでは攻略対象のアーサー王太子の取り巻きでしかなかった。
『ただ、ねえ。乙プリが発売された後から私はこの世界を夢で見るようになった。確かにアーサー王物語と似た人物や設定がある世界だけど、私が書いた原作小説とは違うところも多い。……わたしの原作のほうが無理に構成してしまったものだったかもしれない』
ヒナコは、この世界に夢を通して意識が飛ぶ経験を通じて、本当はゲームの乙プリこそがこの世界を正しく感得して作られたのかもしれないと考えるようになったそうだ。
「つまり、あなたやゲーム会社は私たちの世界を読み取って作品を作っていただけだと?」
『創作家ってそんなものでしょう? 空想なのか、別の世界を直感を通じてインスピレーションとしてダウンロードしたものか。どちらもあり得ることだと思うの』
(でもそれなら、この世界でお母様たち親世代が辿ったルートが一つだけで、細部が良い意味でゲームっぽくない理由も納得できる)
『乙女☆プリズム夢の王国は、原作もゲームも、あなたたちが今いる、その世界を私やゲームの監督がリーディングして生まれたものだと思うの。あなたたちは小説やゲームのキャラクターじゃない。その世界という現実で生きているのよ』
だから、原作やゲームとは違う展開になることもあり得る。
そう忠告してきた。
「となると、この世界はアーサー王物語を元に作られたというより」
「アーサー王伝説と似た要素があるだけの、全然別の世界……なのかも」
こちらのほうが体験として納得できるかもしれなかった。
『改変はされてたけど、ゲームとしての乙プリはとても良い出来の作品だわ。だから本編のメインストーリーは家庭用ゲーム機時代のままで、原作にあった少女愛や少年愛の要素はノベルゲームの形で追加したの。本編と矛盾する要素も多いからあくまでももしものルートとしてね』
そう、だからスマホ版の百合とBLモードのルートは一本の小説をクリックしながら読むタイプで、選択肢があっても、どの選択肢を選んでもストーリーは変わらない。
ノベルゲームだから、本編にあったようなミニゲームや戦闘パートもない。
本編の王道ルートや正解ルートを別側面から眺める展開になっていた。
『本編、百合モード、BLモードをすべてクリアしたプレーヤーだけ、〝その後〟の後日談をプレイできるの。それが百合とBLモードのルートを課金してまでダウンロードしてくれたファンへのサービスね』
完全新作で、全十二章あった本編と同じ数の章がある。
それがエスティアたち、本編のヒロインやヒーローたちの子供世代の物語だった。
前編の四章は学園編の十代後半。
中編の四章は学園卒業後、エスティアたちが故郷や自国に戻ってからの話。
後編、残りの四章が聖杯の旅だ。
今のエスティアたちの段階である。
ヒナコは親友が残した会社を相手取って、盗作詐欺の訴えを起こすことを決めた。
『その前に互いに弁護士を交えて話し合いをしたわ。でも私の優位性は疑いようがなかった。『乙女☆プリズム夢の王国』の原作となった原稿が、ゲーム会社には複製のみ。私の手元に原本があったのが決定的だった』
親友の息子である現社長との話し合いの結果、裁判で争う代わりにゲーム会社がこれまでの原作盗用を公表し謝罪することで話がまとまった。
原作者ヒナコの許可を得ず原作を改変したことやその経緯を、ゲーム会社の公式サイト等で告知し、周知に務めること。
ヒナコが本来得られるはずだった原作使用料を慰謝料として分割で支払うこと。
ただ、この慰謝料の代わりに、本来の『乙女☆プリズム夢の王国』を書かせてくれないかとヒナコは現社長に提案したらしい。
『もう乙プリ自体は既に完成されてしまっていたから、作品の世界観や登場人物を元に戻すのは難しい。でも、元々少女小説だった原作からごっそり削られてしまった要素があったの』
「そ、それがまさか……」
『そう。今で言う、百合とBLね。当時は少女恋愛や少年愛、やおいなどと言ってたものになるわ』
時代はちょうどスマホのアプリゲーム全盛期。
社運を賭けた一大プロジェクトとして、蔑ろにされた原作者への謝罪と真相の公表の話題効果を狙って発表されたのが、スマホ版『乙女☆プリズム夢の王国』だったわけだ。
『私がショックだったのは、自分の書いた小説が許可なくゲームに盗用されたこともだけど、原作で表現していた、自分が大事にしていた要素がたくさん削られ改変されたことだったの』
例えば、原作はアーサー王伝説のオマージュで、登場人物の名前や性格、環境などの設定を丁寧に反映させて書いていたのに、乙女ゲームではストーリーに都合よく〝加工〟されまくっていた。
「あー……。なるほど、アーサー王伝説がモチーフなのに上手く使いこなせてないなあって当時から思ってました。そういうことだったんですね」
セドリックの実の父親ランスロットは、アーサー王物語なら円卓の騎士の一人でアーサー王の強力な臣下だが、王の妻ギネヴィアを奪って駆け落ちしてしまう。
乙プリでは、隣国の王女だったギネヴィアと婚約者だったが正ヒロインの現王妃に懸想して婚約破棄している。
同じくパーシヴァルというキャラなら単独で聖杯を探しに旅に出るはずが、乙プリでは学園の一教師に過ぎなかった。
同じようにトリスタンという名前のキャラなら、ヨーロッパの中世恋愛譚の主人公でイゾルテなる女性と数奇な運命に翻弄されることで知られる。
しかし乙プリでは攻略対象のアーサー王太子の取り巻きでしかなかった。
『ただ、ねえ。乙プリが発売された後から私はこの世界を夢で見るようになった。確かにアーサー王物語と似た人物や設定がある世界だけど、私が書いた原作小説とは違うところも多い。……わたしの原作のほうが無理に構成してしまったものだったかもしれない』
ヒナコは、この世界に夢を通して意識が飛ぶ経験を通じて、本当はゲームの乙プリこそがこの世界を正しく感得して作られたのかもしれないと考えるようになったそうだ。
「つまり、あなたやゲーム会社は私たちの世界を読み取って作品を作っていただけだと?」
『創作家ってそんなものでしょう? 空想なのか、別の世界を直感を通じてインスピレーションとしてダウンロードしたものか。どちらもあり得ることだと思うの』
(でもそれなら、この世界でお母様たち親世代が辿ったルートが一つだけで、細部が良い意味でゲームっぽくない理由も納得できる)
『乙女☆プリズム夢の王国は、原作もゲームも、あなたたちが今いる、その世界を私やゲームの監督がリーディングして生まれたものだと思うの。あなたたちは小説やゲームのキャラクターじゃない。その世界という現実で生きているのよ』
だから、原作やゲームとは違う展開になることもあり得る。
そう忠告してきた。
「となると、この世界はアーサー王物語を元に作られたというより」
「アーサー王伝説と似た要素があるだけの、全然別の世界……なのかも」
こちらのほうが体験として納得できるかもしれなかった。
『改変はされてたけど、ゲームとしての乙プリはとても良い出来の作品だわ。だから本編のメインストーリーは家庭用ゲーム機時代のままで、原作にあった少女愛や少年愛の要素はノベルゲームの形で追加したの。本編と矛盾する要素も多いからあくまでももしものルートとしてね』
そう、だからスマホ版の百合とBLモードのルートは一本の小説をクリックしながら読むタイプで、選択肢があっても、どの選択肢を選んでもストーリーは変わらない。
ノベルゲームだから、本編にあったようなミニゲームや戦闘パートもない。
本編の王道ルートや正解ルートを別側面から眺める展開になっていた。
『本編、百合モード、BLモードをすべてクリアしたプレーヤーだけ、〝その後〟の後日談をプレイできるの。それが百合とBLモードのルートを課金してまでダウンロードしてくれたファンへのサービスね』
完全新作で、全十二章あった本編と同じ数の章がある。
それがエスティアたち、本編のヒロインやヒーローたちの子供世代の物語だった。
前編の四章は学園編の十代後半。
中編の四章は学園卒業後、エスティアたちが故郷や自国に戻ってからの話。
後編、残りの四章が聖杯の旅だ。
今のエスティアたちの段階である。
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