ゲームランカーのスパダリ彼氏

真義あさひ

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第一章「最強ランカーのリアル彼氏はスパダリ覚醒する」二条泰然編

誓約、そして制裁

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 怜司の泰然との思い出写真という〝物的論破〟によって、誰の目にも勝者は怜司だと明らかだった。

「くそ……積み重ねてきた思い出にはさすがに勝てない……」

 ゲーム恋人たちが諦めに肩を落とす。
 しかし案の定、デスメリーだけは諦めが悪かった。

「ワタシのものにならないなら、泰然のLOI資産ぜ~んぶ壊しちゃおっかな~♪」

 デスメリーが怪しく笑いながら、手にしたスマホを泰然の目前に突きつける。

 泰然は一瞬、呼吸を忘れた。

 しかしこの異常な状況で、誰よりも冷静なのは――怜司だった。
 傍らで震える泰然の肩を抱きながら、不敵に言い放った。

「デスメリー。やれるものならやってみたらどうだい?」
「はぁ~?」

 怜司は静かにスマホ画面を数回タップした。

『えっ、何? なに始めたの?』
『こわっ』
『え? なにが始まるのー?』

 実況配信のコメントがざわつくなか、泰然は目の前の男に小さく声を漏らした。

「怜司……」
「大丈夫。ちょっとした仕返しだよ。僕の王に、手を出した罰だ」

 ピー!!!
 ピーピーピーピーピー!

 その瞬間、デスメリーのスマホが異音を立て、急にブラックアウトした。

「……え?」

 同時に、ゲーム内のアイテムボックスインベントリ画面に次々と表示される赤い警告マーク。

《高レアアイテム:抹消》
《暗号通貨(クォンタムコイン):残高ゼロ化》
《アカウント内資産:全凍結》

「うそでしょぉぉぉ!?!?!?」

 デスメリーが絶叫し、頭を抱える。

「わ、ワタシの資産が……き、消えたァアアッ!」

 コメント欄も阿鼻叫喚だ。

『ぎゃああああ!』
『デスメリー死亡確認!』
『やっば怜司こわっ!!』」

 怜司はふっと笑って言った。

「ちなみに、君の資産の一部はギルド運営費として有効活用させてもらうよ。あ、法的に問題ないスキームだから安心して」
「おまえ……いったい何者……」
「ただの泰然唯一の彼氏だけど?」

 視聴者たちはいきり立つ。

『ドヤ顔うざすぎる』
『でも好き』
『殴りたいほどスパダリ』


「うちのお兄ちゃんの趣味、アプリ開発とハッキングだからねえ……はは、知ってたらふつうは敵に回さない。怖いから」
「おう、凛太。間に合ったな」

 怜司の弟の凛太もようやくホテルに合流した。
 すっかり観客ポジションになっているジェイクの隣から、恐る恐る兄たちを見守ることにした。


『クールガイ、正直コワイ。サイコじみてる……そりゃクレイジーレイジ呼ばれるわけだわ……』
『やばい、これ一線超えてる』
『泰然ギルマス、逃げてー!』

 ――資産潰し。
 デスメリーをデジタルでぶちのめす怜司のえげつなさに、視聴者たちも、観客たちも震えている中、泰然だけが小さく呟く。

「……そこがいいんじゃないか」

 小さく笑う泰然の呟きは、もちろん怜司の耳にも届いている。
 ならば怜司はまだ止まらない。止まる必要もない。

「さて。……泰然」

 その低く静かな声に、泰然の心臓が跳ねた。視線が絡み合う。

「僕と、君の関係を教えてくれるかい?」

 実況配信コメントが爆発する。

『うおおおおお!! 怜司、ついに聞いた!!』
『これ、泰然が答えた瞬間、決着つくやつじゃん!!』
『どうする!? 泰然、どうする!?』

 視聴者の大半は答えを予想していた。

『まあ、普通に『怜司の恋人だ』って言うよな』
『はい、ここで恋人宣言、カップル成立っと』
『これで怜司の勝ち確定か』

 だが、泰然は一瞬息を飲むと、ゆっくりと口を開いた。

「俺は……俺が……怜司の――」

 泰然は拳を握りしめ、強い声で宣言した。

「怜司と、人生最後まで一緒にいる、唯一の男だ!」

 実況配信コメントが熱狂する。

『『『『『伴侶宣言来たー!!!』』』』』
『恋人超えた!! これもう夫婦じゃん!!』
『夫夫(ふうふ)!?!?!?!』
『デスメリー、完全に敗北wwww』

 泰然の宣言が響いた瞬間、空気が凍りついた。
 デスメリーの残っていた余裕はブレブレに揺らいでいる。その様子に怜司の目がわずかに細められた。

 実況配信コメントが更に加速する。

『いやいやいや、今のヤバすぎたって!!』
『恋人じゃなくて〝人生最後まで一緒にいる男〟宣言!?』
『怜司、これどうすんの!? どう応えるの!?』


 泰然は息を整え、怜司の顔を見上げた。

(どうだ、これで文句ないだろ)

 すると、怜司はふっと微笑んだ。
 それはいつもの冷静さとは違う、満足げで愛おしそうな笑みだった。

「君の口から、それが聞きたかった」

 彼はスーツの内ポケットから、一通の古びた封筒を取り出した。

「な、何それ……?」

 怜司は書類を広げ、そこに記されたタイトルをゆっくりと読み上げる。

「『高瀬怜司と二条泰然の事実婚契約書』です」

「「「「「はあああああ!?!?!?」」」」」

 もうホテルのロビーも視聴者たちも一体だった。

「え。それって……」
「うん。君がお母さんを失って泣いてたとき……『じゃあ、僕が家族になる』って言って、一緒に作ったやつだよ」

 泰然の目に、潤んだ光が宿る。

「俺、そんなの……忘れて……」
「でも僕は、ずっと持ってた」

 怜司は静かに手を伸ばし、その紙を泰然の胸にそっと押し当てた。

「君が誰のものか。誰よりも早く、誰よりも深く知ってるのは僕だよ」
「…………怜司」
「証明しようか?」

 スマホを操作し、怜司が言う。

「区役所にはここに来る途中、アップロードして提出済み」
「う、うん」
「LOIの運営には、この書類データと一緒に君との伴侶認証を申請する……」

 その瞬間、怜司と泰然のスマホに公式通知が届く。

《LOIシステムより告知:二条泰然&高瀬怜司 伴侶認証済み》

 視聴者のコメントが爆発する。

『こ、恋人を飛び越えて……伴侶!?』
『あーあ、デスメリー死亡確認二回目ー』

 泰然は怜司にすがるように言った。

「おまえ、ほんとに……」
「僕はもうずっと昔から、君を守ると決めてるんだ。これが僕の守り方さ。泰然」

 怜司の言葉に、泰然は震えながら、けれど確かな笑顔を浮かべた。

「い、いろいろ言いたいことはあるけど。……ありがとな、怜司」

 その手は、もう二度と離れなかった。


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