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番外編
番外編 空の王・陸の王2
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「遅れてごめん。」
「このくらい遅れたうちに入らない。」
彼が休みの日に俺は用意された服を着て、付き添いの人と指定された店へ向かうのが定番になっている。
何着てもカッコいいのかこのひと。
普段からスーツばかり見るエルムディンだが、休日ごくたまにこう言う格好が見られる。
デニムテーパードを穿いて、リブニットのセーターを着ている。インナーはシャツだが。
こんなに砕けた格好の彼は普段見慣れない。
椅子の背にチェスターコートが掛けてある。
最近温かくなってきたからな。
「その格好似合ってる。」
「お前も。私の見立ては間違っていなかったな。もっと近くで見たい。」
褒められた。言う程、見ても面白くない姿だと自分では思う。
チノパンに薄い丸襟のシャツの上にセーターを着ている。
特別なのは、このネックレスだ。
縁はゴールドなのに台座が派手な朱色で、ライオンの咆哮するモチーフが嵌っているが、背後に咲く花が派手なだけじゃなく華やかさを見せていて。
品良く美しく収まっている。
「気に入ったか?」
俺は頷いて見せた。
「朱色が良いし、花が咲いてる。ライオンはあんたの好みだろ。」
「馴染みの店で前にライオンのタイピンを作らせた事がある。そこの弟子が花を入れたらどうかと言うんだ。」
「へぇ。」
「お前の心に触れたようだな。」
「恥ずかしい言い方だけど、そうだな。すごく気に入った。ありがとうエル。」
「どういたしまして。さて。腹が減ったな。」
「今日は何を食べさせてくれるんだ?」
ありがたい事に彼とのデートは毎回、店を貸し切っている。
大統領とその番を危険な目に遭わせない為だそうだ。
その為に俺は遠慮なく彼と話せる。
「あんたの店選びは何時も間違いがない。」
知らない土地の洋食暮らしでも飯が美味いのは有難い。
「こっちの方が良い。そっちは少し甘味が強い。」
「うーーん。でもこっちの方が美味しそう何だよなぁ。」
「どっちにしても美味いぞ。私が保証する。」
ランチは決まった。
デザートも決まった。少し寒い気がするがアイスにした。
それに会話も弾む。
久しぶりのデートだからな。
彼をエルムディンさん、ではなくエルと呼ぶのにも少し慣れた気がする。
「トキアキ、何か私に聞きたい事はないか?」
「有る。」
「そうだろうな。」
「というか、その質問をする時点でもうバレてる様なもんだろエルムディンさんよぉ。」
「ふっ、そうだな。」
美味しいランチは心も溶かす。
重苦しい面倒くさい事も大抵、美味いもん食えば励みになる。
デザート、プリンも頼べば良かったな。
「俺、何に目を付けられてるの?」
「端的に言うなら人事の採用担当者にだな。」
「何処の?」
「私の周囲だ。」
嗚呼、やっぱプリン頼めば良かった、!
「大統領の周辺で俺を雇おうって話が持ち上がっていて、俺にあんな文書寄越して試験させたって訳だ。」
「普段ならきちんと試験を行い皆が同じ条件で挑むものだ。」
つまり、一昨日ユディール君が回収して行ったあの書類達は、俺の採用試験だったという事だ。
なにが"学生に教える用"だ。
「俺の世界にも似た様な物があるんだよ。最初は法律が3ページ。あとは性格診断、適職診断だった。それと思考実験。」
「何処もする事は変わらないと言う事だな。そう言う点でも、お前を政府に取り込みたいと考える者は少なくない。異世界の政治だ、気になるに決まっている。」
「そう言えば、数学が無かったな。」
「それは別部門の採用試験で出している。それよりもこちらの仕事では人間性を重視しなければならない。」
「このくらい遅れたうちに入らない。」
彼が休みの日に俺は用意された服を着て、付き添いの人と指定された店へ向かうのが定番になっている。
何着てもカッコいいのかこのひと。
普段からスーツばかり見るエルムディンだが、休日ごくたまにこう言う格好が見られる。
デニムテーパードを穿いて、リブニットのセーターを着ている。インナーはシャツだが。
こんなに砕けた格好の彼は普段見慣れない。
椅子の背にチェスターコートが掛けてある。
最近温かくなってきたからな。
「その格好似合ってる。」
「お前も。私の見立ては間違っていなかったな。もっと近くで見たい。」
褒められた。言う程、見ても面白くない姿だと自分では思う。
チノパンに薄い丸襟のシャツの上にセーターを着ている。
特別なのは、このネックレスだ。
縁はゴールドなのに台座が派手な朱色で、ライオンの咆哮するモチーフが嵌っているが、背後に咲く花が派手なだけじゃなく華やかさを見せていて。
品良く美しく収まっている。
「気に入ったか?」
俺は頷いて見せた。
「朱色が良いし、花が咲いてる。ライオンはあんたの好みだろ。」
「馴染みの店で前にライオンのタイピンを作らせた事がある。そこの弟子が花を入れたらどうかと言うんだ。」
「へぇ。」
「お前の心に触れたようだな。」
「恥ずかしい言い方だけど、そうだな。すごく気に入った。ありがとうエル。」
「どういたしまして。さて。腹が減ったな。」
「今日は何を食べさせてくれるんだ?」
ありがたい事に彼とのデートは毎回、店を貸し切っている。
大統領とその番を危険な目に遭わせない為だそうだ。
その為に俺は遠慮なく彼と話せる。
「あんたの店選びは何時も間違いがない。」
知らない土地の洋食暮らしでも飯が美味いのは有難い。
「こっちの方が良い。そっちは少し甘味が強い。」
「うーーん。でもこっちの方が美味しそう何だよなぁ。」
「どっちにしても美味いぞ。私が保証する。」
ランチは決まった。
デザートも決まった。少し寒い気がするがアイスにした。
それに会話も弾む。
久しぶりのデートだからな。
彼をエルムディンさん、ではなくエルと呼ぶのにも少し慣れた気がする。
「トキアキ、何か私に聞きたい事はないか?」
「有る。」
「そうだろうな。」
「というか、その質問をする時点でもうバレてる様なもんだろエルムディンさんよぉ。」
「ふっ、そうだな。」
美味しいランチは心も溶かす。
重苦しい面倒くさい事も大抵、美味いもん食えば励みになる。
デザート、プリンも頼べば良かったな。
「俺、何に目を付けられてるの?」
「端的に言うなら人事の採用担当者にだな。」
「何処の?」
「私の周囲だ。」
嗚呼、やっぱプリン頼めば良かった、!
「大統領の周辺で俺を雇おうって話が持ち上がっていて、俺にあんな文書寄越して試験させたって訳だ。」
「普段ならきちんと試験を行い皆が同じ条件で挑むものだ。」
つまり、一昨日ユディール君が回収して行ったあの書類達は、俺の採用試験だったという事だ。
なにが"学生に教える用"だ。
「俺の世界にも似た様な物があるんだよ。最初は法律が3ページ。あとは性格診断、適職診断だった。それと思考実験。」
「何処もする事は変わらないと言う事だな。そう言う点でも、お前を政府に取り込みたいと考える者は少なくない。異世界の政治だ、気になるに決まっている。」
「そう言えば、数学が無かったな。」
「それは別部門の採用試験で出している。それよりもこちらの仕事では人間性を重視しなければならない。」
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