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第二章 ある少女の非日常
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寝室を後にしリビングを抜け、おそらく一度も使われたことがないであろう真新しいキッチンに鎮座する冷蔵庫の扉を開くと、ユキが買い置きしていた缶ビールを一本取りだし、冷蔵庫の扉を開けたままでその場で缶のプルを引き上げ、ビールを一気に飲み干す。
くそっ、まだまだこんなんじゃ足りねぇ。
今日一日で受けた安本の屈辱と怒りは、こんな缶ビール一本じゃとうてい収める事は出来ない。
それはあちこちに罅の入った壷の様に、アルコールを入れた傍から全て罅から漏れ出てしまうような感覚だ。
続いてしっかり冷えていたシャンパンを取り出し、栓を抜きそれもそのままラッパ飲みで一気に空ける。
胃の腑にポッと穏やかな灯が灯り、全身を覆っていた怒りがアルコールにより少し薄らいでいく。
しかし脳裏に浮かぶお面の少年と少女たちの姿は、否応なしに安本の怒りを再び沸点へと押し上げてしまう。
――野郎、今度会ったらただじゃおかねぇ。ヤクザ舐めやがって。組の奴ら粗方戻ったらあの小娘ども探して拉致って、輪姦しまくって売り飛ばしてやる。ガキの方はたっぷりいたぶってから手足バラして、コンクリ詰めで海に沈めてやる。
急激に回ったアルコールで顔を上気させ、独り呟き暗く歪んだ笑みを浮かべた安本は、冷蔵庫から更に日本酒の一升瓶を取り出し、肴になりそうなものを物色し始めた。
―――刹那。
バツンッ!!
玄関から大きな音がしたのと同時に、安本の視界が突然夜の闇より深い暗闇に包まれた。何故か分からないが突然ブレーカーが落ちてしまった。
冷蔵庫の灯りもキッチンの電灯も一気に光を失い、安本の目は今この一瞬完全に視力を失っている。全く予想だにしない事だったので、思わず短い悲鳴を上げた程だ。
…やれやれ、今日は本当についてねぇなぁ。
ブツブツと呟きながら、安本。
時間が経ち少しづつ目が暗闇に慣れていくと、室内の様子が把握できるようになってきた。
……が。
そこでふと、キッチンからリビングに続く通路を塞ぐ様に、何かが立っている事に気付く。
ユキが戻ってきたのか?
一瞬そう思った安本だが、すぐにかぶりを振る。
ユキならばこんな停電の状態だと大騒ぎするはずに違いないからだ。
そう思うと安本の体は一気に緊張で凍り付いた。
自分以外の誰かがいる。
慌ててキッチンで武器になるような物を探そうとするが、まだ目が完全に暗闇に慣れてないのと、本当にユキは料理をしていないのか包丁やフライパンの類が一切見当たらない。
あんのバカ女がっ。
毒づく安本。そんな事を思う間に、通路に立っていた侵入者はゆっくりこちらに近づいてくる。
侵入者が近づくにつれ、その輪郭も表情もうっすらと判別できるようになる。視力もそれに合わせ慣れてきているようだ。
「誰だ!!テメェはぁっ!!!」
暗闇に向かって吠える安本。そんな安本の威嚇もお構いなしに侵入者は近づいてくる。
完全に闇に目が慣れた時、安本は侵入者の顔を睨むように凝視し、そして威嚇の眼差しは直ぐに恐怖のそれへと変貌した。
目の前に現れたのは、昼間安本の事務所で暴れた少年だった。
もちろんあのお面も付けたままだ。まるで亡霊が音も無く地から湧き出て来たかのように。
少年はこちらに向けて猛烈なプレッシャーを放っている。常人の感覚ならそのまま金縛りになってしまう程の。
「な、な、な」
何でお前がここに、と言うつもりが驚きと恐怖で舌が回らず、間の抜けた言葉しか出てこない。
少年が無言のまま一歩近づくと、安本も一歩下がる。
じり。じり。
一歩ずつ下がっていくうちに、とん、と壁際まで追い詰められてしまった。
くそっ、まだまだこんなんじゃ足りねぇ。
今日一日で受けた安本の屈辱と怒りは、こんな缶ビール一本じゃとうてい収める事は出来ない。
それはあちこちに罅の入った壷の様に、アルコールを入れた傍から全て罅から漏れ出てしまうような感覚だ。
続いてしっかり冷えていたシャンパンを取り出し、栓を抜きそれもそのままラッパ飲みで一気に空ける。
胃の腑にポッと穏やかな灯が灯り、全身を覆っていた怒りがアルコールにより少し薄らいでいく。
しかし脳裏に浮かぶお面の少年と少女たちの姿は、否応なしに安本の怒りを再び沸点へと押し上げてしまう。
――野郎、今度会ったらただじゃおかねぇ。ヤクザ舐めやがって。組の奴ら粗方戻ったらあの小娘ども探して拉致って、輪姦しまくって売り飛ばしてやる。ガキの方はたっぷりいたぶってから手足バラして、コンクリ詰めで海に沈めてやる。
急激に回ったアルコールで顔を上気させ、独り呟き暗く歪んだ笑みを浮かべた安本は、冷蔵庫から更に日本酒の一升瓶を取り出し、肴になりそうなものを物色し始めた。
―――刹那。
バツンッ!!
玄関から大きな音がしたのと同時に、安本の視界が突然夜の闇より深い暗闇に包まれた。何故か分からないが突然ブレーカーが落ちてしまった。
冷蔵庫の灯りもキッチンの電灯も一気に光を失い、安本の目は今この一瞬完全に視力を失っている。全く予想だにしない事だったので、思わず短い悲鳴を上げた程だ。
…やれやれ、今日は本当についてねぇなぁ。
ブツブツと呟きながら、安本。
時間が経ち少しづつ目が暗闇に慣れていくと、室内の様子が把握できるようになってきた。
……が。
そこでふと、キッチンからリビングに続く通路を塞ぐ様に、何かが立っている事に気付く。
ユキが戻ってきたのか?
一瞬そう思った安本だが、すぐにかぶりを振る。
ユキならばこんな停電の状態だと大騒ぎするはずに違いないからだ。
そう思うと安本の体は一気に緊張で凍り付いた。
自分以外の誰かがいる。
慌ててキッチンで武器になるような物を探そうとするが、まだ目が完全に暗闇に慣れてないのと、本当にユキは料理をしていないのか包丁やフライパンの類が一切見当たらない。
あんのバカ女がっ。
毒づく安本。そんな事を思う間に、通路に立っていた侵入者はゆっくりこちらに近づいてくる。
侵入者が近づくにつれ、その輪郭も表情もうっすらと判別できるようになる。視力もそれに合わせ慣れてきているようだ。
「誰だ!!テメェはぁっ!!!」
暗闇に向かって吠える安本。そんな安本の威嚇もお構いなしに侵入者は近づいてくる。
完全に闇に目が慣れた時、安本は侵入者の顔を睨むように凝視し、そして威嚇の眼差しは直ぐに恐怖のそれへと変貌した。
目の前に現れたのは、昼間安本の事務所で暴れた少年だった。
もちろんあのお面も付けたままだ。まるで亡霊が音も無く地から湧き出て来たかのように。
少年はこちらに向けて猛烈なプレッシャーを放っている。常人の感覚ならそのまま金縛りになってしまう程の。
「な、な、な」
何でお前がここに、と言うつもりが驚きと恐怖で舌が回らず、間の抜けた言葉しか出てこない。
少年が無言のまま一歩近づくと、安本も一歩下がる。
じり。じり。
一歩ずつ下がっていくうちに、とん、と壁際まで追い詰められてしまった。
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