8 / 44
第8話 お金が必要じゃない人間なんていない(確信)
しおりを挟む
「チキンクリスプとホットアップルパイ1つずつ。ええ、単品で。あと水下さい」
洗練された手際でいつもの注文を済ませ、待機列に移動する。
この練度、リカルド・マルチネスの左ジャブを彷彿とさせる
幹線道路沿いのマクドナルド。ちょっと1人で考えたいことがあり、座れる店に寄り道した。
近くにコメダ珈琲があるから迷ったけどね。
あそこは居心地は最強だけど、価格帯が安くても500 - 600円くらいはかかるから。長居する時用だな。
ドミグラスハンバーグサンドがマジで旨いからたまに食べたくなるけど。帰ったら母さんが夕飯用意してくれてるから今日はいいや。
注文した品を受け取り、適当な席に着く。
椅子の座り心地はコメダに劣るが、短時間で考え事を済ますつもりなので、むしろ都合がいい。
ビタミンサプリを水で流し込み、チキンクリスプを左手で食べつつ、卓上に大学ノートを広げる。
考え事は書きながらするのが1番だ。
「相棒制度、か」
嘆息しつつ、先程の出来事を思い出す。
まったく、困ったことになったもんだ。
—-
「じゃあこの人でいいわ!保護者同伴なら問題ないんでしょ!」
俺の腕を掴みながら、唐突に女子高生はそう叫んだ。
「マリさん、いい加減にして下さい。
お気持ちはわかりますが、宇津美さんに迷惑ですよ」
ギルド職員の言葉に我に返ったのか、女子高生は慌てて手を離し、ばつが悪そうに俺に頭を下げた。
「えっと、何かあったんですか?俺に関係のある事ですか?」
とりあえず2人に聞いてみたが、
「いえ、大丈夫よ。
ウツミさん、だっけ。こっちの問題だから。
もう行っていいよ。掴んじゃってごめんなさい」
女子高生が割とタメ口きいてくるのに軽くたじろぐが、まあ別にいいか。
指導すんのは親とか教師の役割だ。
恨まれるリスク負ってまで苦言を呈す気はない。
「そう、じゃあお疲れ様」
乗りかかった船だ。事情を聞かせてくれよ。何か力になれるかもしれない。
なんて精神はからっきしない。俺に関係ないならそれでいい。
今この瞬間も地球上では無数のトラブルが生じている。
そしてそのほとんどが俺と関係なく発生し、解決したりしなかったりしている。
その全てに関わってたんじゃ身がもたない。
この件もただ距離的に近い所で発生したってだけだ。
おうち帰って母さんの作った夕飯を食べよう。
今日は魚系がいいな。
風呂は買い置きのちょっと高い入浴剤入れようかな。
「……あっそうだ!待って下さい宇都美さん!
むしろ丁度いいかもしれません!
よければ、少し話を聞いて下さい!」
ギルド職員が何かを思い付いたような表情で、急にそんなことを言ってきた。
えー。なんだよ。
俺は自分の生活リズムを乱されることに強いストレスを感じるんだ。
若くて可愛い姉ちゃんだからって、なんでも自分の思い通りにいくと思うなよ。
「お願いします!
宇津美さん自身にもいいお話だと思います!
むしろこれを聞かないと、宇都美さんは大変なことになるかもしれません!」
ぴくり。帰ろうとしていた肉体が急停止する。
むむ、この姉ちゃん、俺の扱いをわかってるな。
冒険者になってまだ1週間ちょいなのに。
聞かないと大変なことになるってフレーズ、便利だよね。強制的に話を聞く気にさせられる。
詐欺師とか占い師とか宗教家がよく使う脅し文句だ。
俺は得をするのが大好きで、それ以上に損をするのが大大大嫌いだからね。
このバナーをクリックしないと、貴方は18万8千円損します!みたいなアフィがあったらうっかり押しちゃいそうだわ。
人は悲しい生き物だ。
女子高生は怪訝そうにギルド職員を眺めている。
お前が掴んできたのが発端だろうが。
いい根性してるなこいつ。
「実はこの子、及川 真理さんというのですが、ご覧の通り18歳未満でして、条例で18時以降の迷宮探索は禁止されてるのですが」
及川 麻里。
オイカワ マリ、ね。
そうだ、そんな名前だったな。
ご覧の通り、というのは普通に高校の制服を着てる。
学校帰りに迷宮探索ってとこか。
高校生は割とみんなそんな感じだ。
武器の類はギルドの貸しロッカーでも契約してるのかな、この……えーと、オイカワ、及川 真理さんは。
「ええ、確かにそんな条例ありましたね。青少年の育成のためとかいう」
確かに、ゲーセンは入っちゃダメな時間に迷宮はOKってのもおかしな話だからな。
妥当な規制に思える。
むしろ俺が18歳未満になることは今後未来永劫ない訳だから、どんどん厳しくしちゃえ。
迷宮が空いて都合がいいぜ。(老害)
「はい。なのですが、この子ときたら、何度言っても18時を過ぎても潜り続けていて。
迷宮内の事なので、魔物と戦っていて予定通りに出られないということもあるでしょう。
我々もたまの偶然ならば黙認するのですが、この子の場合ほぼ毎回時間超過していて」
「仕方ないじゃない。お金が必要なのよ」
お金が必要じゃない人間なんていない(確信)。
遊ぶ金欲しさの犯行ってやつか。
気持ちはわかるよ。お金は大事だよな。俺も大好きだ。
何しろ便利だ。本質以外ならなんでも買える。
いい事言うだろ俺。ユダヤに伝わる諺の丸パクリだ。
流石他人が考えた名言だけあって真実を突いている。
で、それが俺になんの関係が?
「あ、わかった!
やっぱりこの人、えっとウツミさんに私の保護者になってもらおうってんでしょ!
保護者同伴なら20時まで迷宮に入れるもんね!
流石サナエさん、わかってるぅ!」
「違います。そもそも見ず知らずの相手が保護者になれる訳がないでしょう」
「見ず知らずじゃないわよ。養成所で一緒だったし。
一度も会話してないけど」
それは見ず知らずと変わらないんじゃないのか?
というか、こんなに喋る子だっけ?
養成所とキャラ違うな。職員さん、サナエさんってのか、には心を開いてるんだろうか。
「宇津美さん。折り入ってお願いがあります。
しばらく、この子の事、迷宮内で面倒を見てあげて頂けないでしょうか。
条例破りもそうなのですが、なにしろ冒険の仕方もイケイケで、危なっかしくて仕方がないんです。
宇津味さんのような慎重派の方と行動を共にして頂けると、こちらとしてはとても安心なのですが」
「それはまた……随分と急な話ですね」
いやマジで何言ってんだこの人。
なんでまた俺にそんなことを言ってくるのか。
全然関係ないじゃん。
「お話はわかりましたが、僕にも都合がありますし、もっと他の信頼できる方にお願いした方がいいんじゃないですか?」
ガキの子守なんて冗談じゃない。
面倒ごとを全て排除した気楽な無職生活を楽しむ為に冒険者になったんだ。
そもそもこの商売も長く続けるつもりもない。
活動実績を確保して補助金と減税措置をゲットしたらその日で引退の腰掛けだ。
再就職までのモラトリアム期間を邪魔されちゃたまらんし、途中で見離されたらこの子にも迷惑だろう。
「そもそも保護者というのも、誰でも認められるものじゃなかったと思いますけど」
「あれ?そうだっけ?大人なら誰でもいいんじゃないの?」
「マリさん!貴女、養成所を卒業して冒険者になったんでしょう!?
はい。宇津味さんの仰るよう、保護者としてギルドが認めるには、いくつか要件があります。
通常ご両親や親族を対象とする制度ですからね。
例えば年齢は22歳以上となっていますが、これは最低でもという基準で、実際には30歳以上の大人でなければ認められることはありません。
年齢以外にも青少年を預けるに足るだけの保証が必要で、学生と学校の先生くらいでも弱いです。担任や、所属する部活の顧問として一定期間直接指導した実績があれば認められた事もありますが」
「じゃあムリじゃん」
そうだよ(便乗)。
年齢がアレだから、爽やか大学生レスラーのオサム君に押し付けるのもムリか。
また人に仕事を押し付けようとしている俺。
しかし、30男と女子高生なんて、別の条例に引っかかりそうでリスクしか感じない。
そもそも高校生とか俺の年代からしたら宇宙人みたいなもんだからな。話が噛み合う気がしない。
性欲の対象にはなるけど、人間同士の付き合いなんかできる気がしない。
女子校・生は割と好きだけど、女子高・生はお呼びじゃないよ。(動画的な意味で)
一番子供を任せちゃいけない人材ですな。
「ですので、保護者としてではなく、相棒として冒険に付き添ってあげて頂きたいのです。
勿論、この方法では条例に定める時間の制限を超える事は出来ません。
規定通り、18時までにマリさんを迷宮外に連れ出して頂くことになります」
相棒制度。
冒険者同士がコンビを組む際に使う制度で、冒険で得た金や魔素、拾得物、それにかかった費用なんかもコンビ単位で管理される。
軽い法人化みたいなもんだな。
僅かだが税金的にも優遇措置があったような。
3人以上の場合は徒党パーティ制度っていうもうちょっと複雑な制度が用いられる。
「随分この子を気にかけるんですね。冒険者になって1週間かそこらの新人に。
それもお仕事の範疇ですか?」
「迷宮探索の過酷さから少しでも青少年を守るのは我々ギルド職員の職務ですが……。
実はこの子は私の従姉妹なんです。昔から知っているだけに、放って置けなくて」
「それはまた」
ああ。それでファーストネームで呼んでいるのか。
及川さんも心を開いているワケだ。
だったらアンタが自分で面倒見てやりなさいよ、とは言いますまい。
冒険者ってのもやっぱり危険な商売だし、女性がやるにはハードルも高かろう。
でもやっぱり俺には関係ないなー。
というか、正直イライラしてきた。
もう何分もしょうもない話に付き合わされている。
その子が心配なら、親族でも友達でも金で雇ったプロでも、自力で信用できる人を用意してやりゃあいいだろう。
アンタにとっちゃ大事な親戚でも、俺にとっちゃアカの他人だ。
どうでもいい。
俺は帰ってご飯食べて風呂入ってアニメでも見て寝るんだ。
Netflix でジョジョの5部でも見よう。今夜はギアッチョ戦にしようかな。
「残念ですが、他を当たって頂いた方が……」
「待って下さい!
宇津味さん。このままでは貴方は、冒険者としての活動実績を得られないおそれがあります!」
え?
—-
帰り道のマクドナルド。
思い出すと、また頭が痛くなってきた。
ホットアップルパイを齧りつつ、大学ノートに視線を落とす。
ページは、4つの象限に区切られている。
引き受ける / 引き受けない。
メリット / デメリット。
それぞれに書き込んだ内容の量と質。
思わず溜め息が出る。
わかっている。
引き受けないという選択肢は選びようがないという現実は。
むしろ、職員さんがこの話を持ってきてくれてなかったらと思うとぞっとする。
しかし、失うものは大きい。
本当に面倒な事になった。
楽な話はないということか。
「まさか、自分がそんなに危うい状況にいたなんてな……」
洗練された手際でいつもの注文を済ませ、待機列に移動する。
この練度、リカルド・マルチネスの左ジャブを彷彿とさせる
幹線道路沿いのマクドナルド。ちょっと1人で考えたいことがあり、座れる店に寄り道した。
近くにコメダ珈琲があるから迷ったけどね。
あそこは居心地は最強だけど、価格帯が安くても500 - 600円くらいはかかるから。長居する時用だな。
ドミグラスハンバーグサンドがマジで旨いからたまに食べたくなるけど。帰ったら母さんが夕飯用意してくれてるから今日はいいや。
注文した品を受け取り、適当な席に着く。
椅子の座り心地はコメダに劣るが、短時間で考え事を済ますつもりなので、むしろ都合がいい。
ビタミンサプリを水で流し込み、チキンクリスプを左手で食べつつ、卓上に大学ノートを広げる。
考え事は書きながらするのが1番だ。
「相棒制度、か」
嘆息しつつ、先程の出来事を思い出す。
まったく、困ったことになったもんだ。
—-
「じゃあこの人でいいわ!保護者同伴なら問題ないんでしょ!」
俺の腕を掴みながら、唐突に女子高生はそう叫んだ。
「マリさん、いい加減にして下さい。
お気持ちはわかりますが、宇津美さんに迷惑ですよ」
ギルド職員の言葉に我に返ったのか、女子高生は慌てて手を離し、ばつが悪そうに俺に頭を下げた。
「えっと、何かあったんですか?俺に関係のある事ですか?」
とりあえず2人に聞いてみたが、
「いえ、大丈夫よ。
ウツミさん、だっけ。こっちの問題だから。
もう行っていいよ。掴んじゃってごめんなさい」
女子高生が割とタメ口きいてくるのに軽くたじろぐが、まあ別にいいか。
指導すんのは親とか教師の役割だ。
恨まれるリスク負ってまで苦言を呈す気はない。
「そう、じゃあお疲れ様」
乗りかかった船だ。事情を聞かせてくれよ。何か力になれるかもしれない。
なんて精神はからっきしない。俺に関係ないならそれでいい。
今この瞬間も地球上では無数のトラブルが生じている。
そしてそのほとんどが俺と関係なく発生し、解決したりしなかったりしている。
その全てに関わってたんじゃ身がもたない。
この件もただ距離的に近い所で発生したってだけだ。
おうち帰って母さんの作った夕飯を食べよう。
今日は魚系がいいな。
風呂は買い置きのちょっと高い入浴剤入れようかな。
「……あっそうだ!待って下さい宇都美さん!
むしろ丁度いいかもしれません!
よければ、少し話を聞いて下さい!」
ギルド職員が何かを思い付いたような表情で、急にそんなことを言ってきた。
えー。なんだよ。
俺は自分の生活リズムを乱されることに強いストレスを感じるんだ。
若くて可愛い姉ちゃんだからって、なんでも自分の思い通りにいくと思うなよ。
「お願いします!
宇津美さん自身にもいいお話だと思います!
むしろこれを聞かないと、宇都美さんは大変なことになるかもしれません!」
ぴくり。帰ろうとしていた肉体が急停止する。
むむ、この姉ちゃん、俺の扱いをわかってるな。
冒険者になってまだ1週間ちょいなのに。
聞かないと大変なことになるってフレーズ、便利だよね。強制的に話を聞く気にさせられる。
詐欺師とか占い師とか宗教家がよく使う脅し文句だ。
俺は得をするのが大好きで、それ以上に損をするのが大大大嫌いだからね。
このバナーをクリックしないと、貴方は18万8千円損します!みたいなアフィがあったらうっかり押しちゃいそうだわ。
人は悲しい生き物だ。
女子高生は怪訝そうにギルド職員を眺めている。
お前が掴んできたのが発端だろうが。
いい根性してるなこいつ。
「実はこの子、及川 真理さんというのですが、ご覧の通り18歳未満でして、条例で18時以降の迷宮探索は禁止されてるのですが」
及川 麻里。
オイカワ マリ、ね。
そうだ、そんな名前だったな。
ご覧の通り、というのは普通に高校の制服を着てる。
学校帰りに迷宮探索ってとこか。
高校生は割とみんなそんな感じだ。
武器の類はギルドの貸しロッカーでも契約してるのかな、この……えーと、オイカワ、及川 真理さんは。
「ええ、確かにそんな条例ありましたね。青少年の育成のためとかいう」
確かに、ゲーセンは入っちゃダメな時間に迷宮はOKってのもおかしな話だからな。
妥当な規制に思える。
むしろ俺が18歳未満になることは今後未来永劫ない訳だから、どんどん厳しくしちゃえ。
迷宮が空いて都合がいいぜ。(老害)
「はい。なのですが、この子ときたら、何度言っても18時を過ぎても潜り続けていて。
迷宮内の事なので、魔物と戦っていて予定通りに出られないということもあるでしょう。
我々もたまの偶然ならば黙認するのですが、この子の場合ほぼ毎回時間超過していて」
「仕方ないじゃない。お金が必要なのよ」
お金が必要じゃない人間なんていない(確信)。
遊ぶ金欲しさの犯行ってやつか。
気持ちはわかるよ。お金は大事だよな。俺も大好きだ。
何しろ便利だ。本質以外ならなんでも買える。
いい事言うだろ俺。ユダヤに伝わる諺の丸パクリだ。
流石他人が考えた名言だけあって真実を突いている。
で、それが俺になんの関係が?
「あ、わかった!
やっぱりこの人、えっとウツミさんに私の保護者になってもらおうってんでしょ!
保護者同伴なら20時まで迷宮に入れるもんね!
流石サナエさん、わかってるぅ!」
「違います。そもそも見ず知らずの相手が保護者になれる訳がないでしょう」
「見ず知らずじゃないわよ。養成所で一緒だったし。
一度も会話してないけど」
それは見ず知らずと変わらないんじゃないのか?
というか、こんなに喋る子だっけ?
養成所とキャラ違うな。職員さん、サナエさんってのか、には心を開いてるんだろうか。
「宇津美さん。折り入ってお願いがあります。
しばらく、この子の事、迷宮内で面倒を見てあげて頂けないでしょうか。
条例破りもそうなのですが、なにしろ冒険の仕方もイケイケで、危なっかしくて仕方がないんです。
宇津味さんのような慎重派の方と行動を共にして頂けると、こちらとしてはとても安心なのですが」
「それはまた……随分と急な話ですね」
いやマジで何言ってんだこの人。
なんでまた俺にそんなことを言ってくるのか。
全然関係ないじゃん。
「お話はわかりましたが、僕にも都合がありますし、もっと他の信頼できる方にお願いした方がいいんじゃないですか?」
ガキの子守なんて冗談じゃない。
面倒ごとを全て排除した気楽な無職生活を楽しむ為に冒険者になったんだ。
そもそもこの商売も長く続けるつもりもない。
活動実績を確保して補助金と減税措置をゲットしたらその日で引退の腰掛けだ。
再就職までのモラトリアム期間を邪魔されちゃたまらんし、途中で見離されたらこの子にも迷惑だろう。
「そもそも保護者というのも、誰でも認められるものじゃなかったと思いますけど」
「あれ?そうだっけ?大人なら誰でもいいんじゃないの?」
「マリさん!貴女、養成所を卒業して冒険者になったんでしょう!?
はい。宇津味さんの仰るよう、保護者としてギルドが認めるには、いくつか要件があります。
通常ご両親や親族を対象とする制度ですからね。
例えば年齢は22歳以上となっていますが、これは最低でもという基準で、実際には30歳以上の大人でなければ認められることはありません。
年齢以外にも青少年を預けるに足るだけの保証が必要で、学生と学校の先生くらいでも弱いです。担任や、所属する部活の顧問として一定期間直接指導した実績があれば認められた事もありますが」
「じゃあムリじゃん」
そうだよ(便乗)。
年齢がアレだから、爽やか大学生レスラーのオサム君に押し付けるのもムリか。
また人に仕事を押し付けようとしている俺。
しかし、30男と女子高生なんて、別の条例に引っかかりそうでリスクしか感じない。
そもそも高校生とか俺の年代からしたら宇宙人みたいなもんだからな。話が噛み合う気がしない。
性欲の対象にはなるけど、人間同士の付き合いなんかできる気がしない。
女子校・生は割と好きだけど、女子高・生はお呼びじゃないよ。(動画的な意味で)
一番子供を任せちゃいけない人材ですな。
「ですので、保護者としてではなく、相棒として冒険に付き添ってあげて頂きたいのです。
勿論、この方法では条例に定める時間の制限を超える事は出来ません。
規定通り、18時までにマリさんを迷宮外に連れ出して頂くことになります」
相棒制度。
冒険者同士がコンビを組む際に使う制度で、冒険で得た金や魔素、拾得物、それにかかった費用なんかもコンビ単位で管理される。
軽い法人化みたいなもんだな。
僅かだが税金的にも優遇措置があったような。
3人以上の場合は徒党パーティ制度っていうもうちょっと複雑な制度が用いられる。
「随分この子を気にかけるんですね。冒険者になって1週間かそこらの新人に。
それもお仕事の範疇ですか?」
「迷宮探索の過酷さから少しでも青少年を守るのは我々ギルド職員の職務ですが……。
実はこの子は私の従姉妹なんです。昔から知っているだけに、放って置けなくて」
「それはまた」
ああ。それでファーストネームで呼んでいるのか。
及川さんも心を開いているワケだ。
だったらアンタが自分で面倒見てやりなさいよ、とは言いますまい。
冒険者ってのもやっぱり危険な商売だし、女性がやるにはハードルも高かろう。
でもやっぱり俺には関係ないなー。
というか、正直イライラしてきた。
もう何分もしょうもない話に付き合わされている。
その子が心配なら、親族でも友達でも金で雇ったプロでも、自力で信用できる人を用意してやりゃあいいだろう。
アンタにとっちゃ大事な親戚でも、俺にとっちゃアカの他人だ。
どうでもいい。
俺は帰ってご飯食べて風呂入ってアニメでも見て寝るんだ。
Netflix でジョジョの5部でも見よう。今夜はギアッチョ戦にしようかな。
「残念ですが、他を当たって頂いた方が……」
「待って下さい!
宇津味さん。このままでは貴方は、冒険者としての活動実績を得られないおそれがあります!」
え?
—-
帰り道のマクドナルド。
思い出すと、また頭が痛くなってきた。
ホットアップルパイを齧りつつ、大学ノートに視線を落とす。
ページは、4つの象限に区切られている。
引き受ける / 引き受けない。
メリット / デメリット。
それぞれに書き込んだ内容の量と質。
思わず溜め息が出る。
わかっている。
引き受けないという選択肢は選びようがないという現実は。
むしろ、職員さんがこの話を持ってきてくれてなかったらと思うとぞっとする。
しかし、失うものは大きい。
本当に面倒な事になった。
楽な話はないということか。
「まさか、自分がそんなに危うい状況にいたなんてな……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる