鉛の矢を持ったキューピッド~なぜか婚約破棄に巻き込まれる留学生たち~

尾形モモ

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聖女とは結婚できませんよ?~王子の盛大なる勘違い~

リン・フウカ⑦

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「リン・フウカ様。まずはあなたの故郷であるジェドを王子があのように言ってしまったこと、私が深くお詫び申し上げます。ジェドは他国にもたくさんの留学生を輩出し、今なお発展を続ける素晴らしい国であるとお聞きしています。その件に関しましては私が国王陛下や教会にもしっかりお伝え申し上げますので、どうかお気を悪くなさらないでください」



 深々と頭を下げるアンナ様に、私は困惑する。



 いつの間にか用意されていたストリガー公爵家所有の馬車に、私たちは二人、向かい合わせになる形で座っていた。豪華な装飾に高級な内装、淹れ立てのお茶と美味しい茶菓子に私は戸惑いを覚えつつ頭を下げる。

「いえ、私は自分の知識が間違っているのではないかと不安に思い、失礼を承知で質問しただけです。それよりジェドをそのように評価していただき会場にいる皆様の前でそう仰ってくれたこと、非常に感謝しております」

 それはお世辞や嘘偽りではなく、本心から出た言葉だ。

 本国でたくさん勉強してこの国への留学生の座を勝ち取った私は、その後も努力を怠らず少しでも多くの知識を学びたいと勉学に励んだ。

 それは国益のためというより、自分の知識欲を満たすため。だから純粋に国のことを考えている他の留学生にとって私は邪道な存在であると思う。だけどジェドは私にとってふるさとであり、大勢の前で馬鹿にされるとやっぱりムッとしてしまうものだ。それを庇ってくれたアンナ様には素直に感謝の気持ちを示したい。そう考え、これからどうするつもりかと尋ねるとアンナ様はどこか吹っ切れたような表情で答える。

「そうですね。とりあえず今日のことを、なるべく多くの人に広めてしまおうと思います。私はエドアルド王子のことを個人的に好きになれませんでしたし、次期国王としてはあまりに器が小さすぎますので。それに今回の件が重なると……結果がとても楽しみですわ」

 怪しげな笑みを浮かべるアンナ様は、妖艶で思わずゾッとしてしまう。



 ……でもまぁ、こうやってアンナ様に気に入ってもらえたのならまぁいいか。

 聖女という、この国でかなりの発言力を持つ存在に好かれることは決して悪いことではない。

 むしろ回り回って、ジェドの利益につながることもあるだろう。ジェドにも「情けは人のためならず」という言葉があるけれど、まさしくその通りだ。なんだかんだ今日の騒動は、私にとって良い結果をもたらすものになるだろう。



 そう割り切った私は高価なお茶と茶菓子を遠慮無くいただき、すっかり満腹になったところで国王陛下や教会などあらゆるところで「証人」として立ち回るのだった。
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