水蓮寺さんは謎だらけ

小白和花

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第一話「今日から刑事」

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『お兄ちゃん!お兄ちゃんッ!』


ピピピッ...ピピピッ...
目覚ましがなる。眠い目を擦りながら目覚ましを止め、時間を確認する。

「...ッやば!遅刻しちゃう!」
勢いよく起き上がり素早く服を着替えるとキッチンにあるパンを取り家を飛び出す。


「今日からやっと刑事になれる!兄がいた横浜警察署の第三課に所属することになった!」

彼女、古屋美子が高校生の頃に兄の古屋涼を事故で亡くした。事件の捜査中だったそうだ。
しかし美子はそれを疑問に思っている。兄は事故死ではないと思っているそうだ。その真相を確かめるために、美子は刑事になったのだ。

『第三課』と書かれたドアの前で呼吸を整えると勢いよくドアを開けた。

「遅れてすみません!今日から所属することになりました、古屋美子です!よろしくお願いします!」
よし...最初の挨拶はバッチリだ!そう思った美子は顔を上げると...
「はーい...」「ん、よろしくー」歓迎されてないように見えた...が、そうではない。第三課のメンバーは変わった人物が多いようだ。
ゲームをしている人がいたり、筋トレをしている人がいたりネイルを直している人がいたり...すると「お、古屋じゃん!お前もここ配属なんだ!」声をかけてきたのは同期の滝野柚斗だった。
彼は警察学校からの友達で今回も同じ第三課配属だそうだ。
「柚斗!うん、今日からよろしくね!...ここの人たちって大丈夫なの...?」「いや、俺も来たばっかりで分かんないけど...なんか癖のある人たちばっかりみたい」そんな話をしていると後ろから声をかけられた...。
「あ、君たちが新人さんだね」「え、あ、はい!」「おはようございます!」後ろを振り向くと白髪混じりの頭にメガネをズラしてかけている、絵に描いたような老人...おじさんが立っていた。
「僕は第三課の課長の駒澤です。えーっと...滝野くんは事務希望だったよね?初日は資料とか色々まとめる仕事を任せるね」「...あ、はい!」柚斗はそう言われると資料を貰い、自分のデスクに戻った。
「でー...君は、捜査がしたいって...書いてあったけど先輩がいるから彼と共にさっそく捜査に行ってくれるかな?」そういうと駒澤さんは後ろを指さした。
「え...?」後ろを振り向くと入ってきた時には分からなかったが部屋の後ろにあるソファで寝ている人物がいた。
「あの人が...先輩?」「あー水蓮寺くん、また例の事件があったみたいだから新人の古屋さん連れて捜査に行って欲しいんだけど...」そう言うとソファの彼はゆっくりと起き上がると眠そうに欠伸をしながらこちらにやってきた。
背は高く、Tシャツにスウエットというだらしない格好にコートを羽織り、眼鏡をかけると美子のことを一度見るとそのまま外へ出ていく。「あ、待ってください!私も行きます!」彼のあとを追うために慌てて外に出た。
隣を歩くも彼は無言で歩く。
最初に口を開いたのは美子だった。「えっと...あの!私、今日から配属された古屋...ッ」隣を歩きながら自己紹介をしようとしていると急に壁に押し付けられた。「え...あ、あのッ...す、水蓮寺...さん?」「お前......」顔を近づけられて、さっきは気づかなかったけど綺麗な顔をしているな...と呑気なことを思っていると「...何カップだ?」「...は?」自分でもびっくりするほど間抜けな声が出た。「何カップだ?胸の話だ。俺はD以上しか認めない」「は!?胸って...えっ!?」戸惑っていると嫌な笑みを浮かべて「...まぁ、その様子じゃせいぜいBってとこだろ...仕方ないから今回だけは連れて行ってやる...」そう言うとさっさと歩いていってしまった。
「え...えっ!?...な、なんなの!あの人!ちょっと待ってください!」苛立つ気持ちを抑えつつ、後を追いかける。

――現場に着くと水蓮寺の後をついて[KEEP_OUT]と書かれた黄色いテープをくぐる美子。意外とこれに憧れを持っていた。遺体のそばに行くと青いビニールが被せられていたが、水蓮寺はそれをめくった。「...っゔ...!」すると遺体を見た美子は吐き気を催して後ろを向いた。
「お前...したい無理なのか。情けな...」そう言いながら水蓮寺は遺体を調べ出す。ホントに情けない...でも、今は仕方ない...。そう思いながら美子は後ろを向いて吐いた。

すると...他の刑事がやってきた。「なんや水蓮寺、お前また来たんか。この事件は一課が担当やって言うてるやろ」関西弁を話す刑事がやってきた。「安井さん、水蓮寺さんに何を言ってもダメですよ。もう事件に取り憑かれてるんですから」「おぅ、まぁそやな。って...なんやお前、新人か?こんなとこで吐いて現場汚すなよ」そう声をかけてきたので美子は涙目になりながら振り向いた。「...ッす、すみません...」「...!!」そんな美子の姿を見るなり安井と呼ばれた関西弁の刑事は息を飲んだ。「ん?安井さん?どうかしましたか?安井さーん?」「おい、行くぞ」「...ッ!?あ、待ってください!」美子は二人の刑事に軽く頭を下げると水蓮寺の後を追って走っていった。

――聞き込みに来た水蓮寺と美子は事件現場から少し離れた商店街に来た。「待ってください!水蓮寺さん...!聞き込みですよね!」「あぁ、お前さ...」「はい?あの、古屋です。古屋美子です!」「古屋か...」水蓮寺は何かを思い出すかのように空を見た。美子は不思議そうに首を傾げたが、またすぐに前を向いて歩いた。

商店街で聞き込みをしていると向かいから派手めの女の人が歩いてきて、途中で歩みを止めると...こちらをジッと見てきた。「...?誰なんでしょうか...あのひッ...」美子が喋っている途中で水蓮寺は美子の手を引き走り出した。すると、派手め女子もそれに気づいて走って追いかけてきた。「やっぱり光だ!待ちなさい光!」派手め女子は水蓮寺の下の名前を呼びながら走って追いかけてきた。
少し走ると水蓮寺は諦めたのか走るのをやめた。「はぁ...はぁ...ッ水蓮寺...さんッ?」「光!どうして逃げるのよ!」「はぁ...お前とはもう終わったって言っただろ...ついてくるな」冷たく言い放った水蓮寺だったが、派手め女子は怒ったように「なによ!あんたにまだアレ、返してもらってないんだから!遊びだったならいいよ!でもアレだけは返してもらわないと!責任取ってよね!」「アレ...?」美子が再び首を傾げていると「もう分かるだろ...彼女がいるんだ。邪魔をしないでくれ」そう言いながら水蓮寺は美子の肩を抱く。「は...?え?」「その子、ほんとに彼女なの?」戸惑いを隠せない美子は水蓮寺と派手め女子を交互に見る。「...あぁ、今証明してやるよ」そう言うと美子の顎を持ち上げ軽くキスをした。「ッ...!?」「...むかつく!もう知らない!いいわよ!」派手め女子は怒りながら帰って行った。美子は水蓮寺を突き飛ばすと、唖然としていた。「...なっ...なっ...ッ」「はっ...キスもしたことないのか。無経験女子め...」そう言ってニヤリと笑うと歩いていってしまった。
残された美子は...顔を赤くしつつ怒りが込み上げてきて...「ッ...!なんなの!あの人!」と叫んだ声は商店街全てに届いた。

――署に戻ってきた美子は勢いよくドアを開けた。その音に驚く三課の人達「な、なに...どうしたの?」びっくりして近づいてくる駒澤に美子は怒りを隠せないまま「わたし...あの人嫌いです!あの人の下では働きたくありません!」「あの人...?あぁ、水蓮寺くんのこと?」「はい、もうあの人...だいっっ嫌いです!!!...お疲れ様でした!」そう叫ぶとまた勢いよくドアを開けて出ていった。
残されたメンバーは「...あれ、何かされたな」と様子を見ながら呟く柚斗。「多分、酷いこと言われたんだろうね」「あぁ、あのカップ数とかねー」顔を合わせぬまま会話をするのは小島杏実と山口真白。

――「ほんっと嫌な人!さいあく!」イライラを隠さずブツブツ言いながら帰り道を歩く美子。「デリカシーがなさすぎ!いや、まずあれセクハラで訴えられるでしょ!キスだよ!キス!」『はっ...キスもしたことないのか。無経験女子め...』水蓮寺にキスをされた瞬間が脳裏によぎる。「あぁぁ...もう!思い出したくもない!」イライラしていると暗闇で後ろから足音が聞こえたかと思うとすぐに美子を追い越していく。何故か美子もそれに合わせて早歩きになる。前を歩く人は途中で曲がることも無く美子と同じマンションに着いた。同じマンションの人だったのかと思いながら部屋の前に着くとその人は隣の人だった。何気なく隣の人の顔を見ると...「え...」「あぁ?...お前か」そこにいたのは...「す、水蓮寺さん!?」隣にいたのは水蓮寺だった。「えっ!?部屋...隣だったんですか!?」「うるさい...お前、道で騒いでると通報されるぞ...」「なっ...!?」美子は言い返そうかと思った...「あと...お前さっきも思ったけど、キス下手。彼氏いたことないだろ...」また嫌な笑みを浮かべると部屋に入っていった。
「...ッ!?あの人...」美子も部屋に入り、ドアの鍵を閉めると玄関にしゃがみ込んだ。「待って...あの人が隣なんて...それにこれからずっとあの人と相棒...?考えられない...ッ嘘でしょ...これからどうなるの...?」

――美子の刑事生活は史上最悪な形で幕を開けるのだった。
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