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第九話「潜入捜査!今日から学生?」
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「私書いてない!」「書いてたよ!このサイトに...私のことビッシリとね!」――
「おはようございまーす!」呑気に出勤するとみんなが美子に駆け寄った。「昨日、大丈夫だった!?」「聞いたよ!襲われたって...」「俺が離れなきゃ...」小島、山口、柚斗だった。「だ、大丈夫でしたよ?あの後...水蓮寺さんが来てくれて...」そう話そうとしたら水蓮寺がやってきた。いつものように奥のソファに寝転ぶと目を閉じた。「え、水蓮寺さんが!?」「はい...助けてくれて」「うっそぉ~!?水蓮寺さん...ほんとですか!?」小島が聞きに行くと水蓮寺はうっすらと目を開けて「...あぁ、たまたま通り掛かったからな」そう言うとまた目を閉じた。「たまたまかぁ...なんだ」何故かガッカリしたように小島が席に戻るといつの間にいたのか駒澤が「そう言えば昨日、水蓮寺さん慌てて帰っていったけど...何かあったのかな?」と聞いた。水蓮寺は「別に...」と言うと寝返りを打ち後ろを向いた。それを聞いていた小島はまた嬉しそうな顔に戻り「やっぱり...心配だったんですね」そう呟いた。美子もそれを聞いて少し水蓮寺のことを見直した。そこへ栗田警視総監がやってきた。最近よく来るなぁと三課のほとんどが思っていただろう...。きっとそう思っていないのは駒澤だけだ。「け、警視総監!!!」「おはよう、今日は君たちに事件を任せたいんだけど...いいかな?」「事件?」「若葉高校である事件が起こっているらしい...」そう話すと学校の資料を見せた。
[若葉高校]風紀が厳しくも、楽しくアットホームな環境で勉強ができる。と書いてあった。しかし裏を見ると乱暴な字で【そんなのは嘘!何がアットホームだ!裏サイトがあるのを私は知っている!そしてその裏サイトには生徒にとっても先生にとっても色んな知られてはいけない情報が書いてあるんだ!】そう書かれてあった。「これ...ただ事じゃないですよね」「と、言うわけで...この裏サイトを調べて欲しいんですよね、ただ先生方も生徒にも知られてはいけないので...潜入捜査という形でお願いできるかな?」栗田はそう言うと美子と柚斗を指さした。「君たちには生徒になってもらいます。そして...」次は水蓮寺と小島を指さした。
「君たちは先生だね、お願いできるね?」「...は、はい」「もちろん、校長と教頭だけには知らせてあるから心配ないよ?急遽来た新米先生と転校生ということになっているからね」そう言うと栗田は満足気に出て行った。「そ、そんな...潜入捜査って...」「あ、生徒ってことは私たち制服着れるんだ!」何故か美子は舞い上がってワクワクしているようだった。水蓮寺はそんな様子を見るとため息ひとつ漏らして立ち上がった。「じゃ、行くぞ」一言言うと小島も柚斗も美子もついて行った。駒澤はもちろん、山口と崎沼は今回はお留守番だった。
―――「と、言うわけで今日からこのクラスの一員になる古屋美子さんと滝野柚斗さんだ」「よ、よろしくお願いします」「よろしくです」二人はもうクラスの一員になってしまった...。みんなは疑うこともせずに受け入れたのだった。そして職員室でもそれは同じだった。「新任教師です、小島さんには科学担当を...水蓮寺さんには保健医担当をお願いしています」教頭が紹介すると...やはり注目は水蓮寺にいった。それもそのはず...水蓮寺は保健医だったため白衣を着ているのだから...。それを着た時に美子も写真に納めていいかと散々言っていた。そして小島は言うまでもない、科学に関してはピカイチだった。水蓮寺と小島は挨拶を終えると校長室に呼び出された。
「水蓮寺さんに小島さん...今回は本当にありがとうございます...」「いえ、仕事ですので...それよりもあまりここで会話をしすぎるのも不自然なために怪しまれそうです...」水蓮寺はそう言うと小島から何かを受け取った。「これは、小型トランシーバーです」そう言って渡すと小島が自慢げに口を開いた。「トランシーバーと言っても報告やボタンなどいりません!ただ耳につけているだけで周りの会話などが我々の耳に入ってくるという優れものです!」「これを校長と教頭のみ付けて頂いて...あとは俺達が何とかしますので」そして校長と教頭は小型トランシーバーを付けることにした。
その頃教室では...大変だった。「古屋さんってどこから来たの?」「転校って何度もしてる?」「美子ちゃんって呼んでいい?」などの質問攻めにあっていた。「あぁ...えっと...その...」困ったような表情はしていたが内心満更でもなかった。こんなにモテたのは初めてだったからだ。そんな様子を見ていた柚斗もまた女子から質問攻めにあっていたのは言うまでもない。そこへ水蓮寺が入ってきた。もちろん...白衣を着た高身長のイケメンが入ってきたのでクラス内は騒がしくなった。「え、だれ?」「ほら...新しく来た保健医じゃない?」「えーやば!かっこいい!」そんな会話の中、水蓮寺は気にもせず美子の元へ行くと「古屋、ちょっと来い」そう言うと美子を引っ張って行ってしまった。「え...す、水蓮寺さ...ッ!?」美子の腕を引きながら歩くと柚斗の方を見て「お前も来い」と一言言った。「ったく...俺も腕引っ張ってくれよな」と冗談っぽく言うと柚斗も教室を出て行った。
空き教室に行くと水蓮寺は二人に小型トランシーバーを渡した。「小島が作った小型トランシーバーだ、付けててもバレないから二人ともこれを付けろ」「トランシーバー?」「これで生徒とかの会話を勝手に録音して小島の元に送信されるし、俺たちからの指示も勝手に入るようになってる」「わかりました、付けておきます」二人は小型トランシーバーを付けると空き教室を出た。自分たちの教室に戻るとみんなが注目していた。「さっきの人って新しく来た保健医だよね!?」「なんで!?二人知り合いなの?」またもや質問攻めにあった。「え...あ...知り合いっていうか...あの」「新しいもの同士、少しだけ話すようになっただけだよ」美子が困っていると柚斗がフォローを入れてくれた。「ふーん...なるほどねぇ」そんな話をしていると先生が入ってきて授業が始まった。
授業中、付けていたトランシーバーからは水蓮寺と小島の会話が聞こえていた。《...やっぱり先生方の中にいるんでしょうか...》《いや、生徒に裏サイトを作った犯人がいる可能性もある...》裏サイトを開設した犯人をとりあえず見つけるようだ...。美子と柚斗はその会話を聴きながら授業を受けていた。
授業が終わると...美子は女の子に柚斗は男の子に裏サイトのことを聞いた。「裏サイト?あー...あれね、私は利用したことないけど見ることは出来るから見てみるけど...結構酷いよ?」「え...ど、どんなふうに?」するとその子は携帯で裏サイトを見せてくれた。「ほら...書き込んでる人は誰か分かんないけど...やばくない?」【何か隣のクラスに転校生来たみたいだよー可愛い子とイケメンらしい】【やばくねー?】【先生も新しい人来たんでしょ?何かおかしくない?】【このサイトのことバレて警察だったりして?】などともう美子たちのことが書かれていた。しかも...バレそう...。同じく柚斗も男子生徒の携帯で裏サイトを見ていた。「男、女関係なく匿名で書き込めるから...誰が書いてるかなんて全く分からないんだ」「全く...か...この裏サイトの入り方なんだけど...教えて欲しいんだけど...」柚斗は男子生徒に裏サイトのパスコードを教えて貰いログインすることに成功した。次の授業中...柚斗は水蓮寺にそのパスコードを送信した。【水蓮寺さん、裏サイトのパスコードを手に入れました。[wakaba-kodo_ura]】送信すると水蓮寺はすぐに携帯を見た。「...なるほどな...小島、これのサイトの解析できるか?」「...んーやってみる」そう言うと小島はパソコンで裏サイトに入り込むと解析を始めた。
やっと全ての授業が終わると水蓮寺たちは一度署へ戻った。「んー...難しいな...」小島は裏サイトの解析に悩んでいた。すると戻ってきた柚斗がパソコンを覗き込んだ。「あ、それ...俺なら出来ますよ?」「え...?」「ちょっと...いいですか?」柚斗は小島から変わるとパソコンを器用に操作して解析を簡単に終わらせた。「す、凄い...」「なるほど...分かりましたよ」その声に水蓮寺は柚斗に近づいた。「どうだった...」「裏サイトは生徒によって作られたようですね...恐らく生徒会」裏サイトの開設のアクセス解析をすると生徒会室のパソコンからのアクセスだと分かった。「生徒会か...二人は明日、生徒会に顔を出してみろ」「は、はい!」「了解です...じゃ、もう帰りますね」そう言うと柚斗は帰った。美子と水蓮寺も帰り支度をすると署をあとにした。
「水蓮寺さん、どうして裏サイトなんて作られたんでしょうか...」「ま、色々あるんだろ...先生も生徒も関係なしで匿名で悪口言えるしな」美子と水蓮寺は帰りながら推理をしていた。「悪口なんて...そんなに悪い学校には見えませんでしたけど...」「転校一日目のお前には分からないことだってあるだろ...たくさんな」「んー...そんなものですか...」家に着くと水蓮寺と別れ、それぞれ自分の家に入った。
家に入ると今日一日のことを思い返した。「やっぱ...私って若く見えるのかな...学生に違和感なかったし...えへへ...」鏡で自分を見ながらニヤニヤしている姿はとてもじゃないけど気味が悪かった。
次の日もまた学校へ行った。「おはよう」「あ!古屋さんおはよー!」「よ、古屋」柚斗はもう来ているようだ。「今日も授業ダルいなぁ...」美子はクラスの女の子と話していた。昨日サイトのことを教えてくれた子だった。「あ、あのさ...あれから裏サイトのことどうなった?」「ん?あー、あれさ何か書き込めなくなってて...よく分かんなくなったんだよね」携帯の裏サイトを見せてもらうと確かに裏サイトにログインが出来なくなっていた。「これって...担任の先生に見つかって消されたとかじゃなくて?」「んー、それはないと思う!だって担任もグルだし」すると付けていた小型トランシーバーから指示があった《サイトがログイン不可能になったのは小島だ。今ハッキングしているから一時的にログイン出来ないようにしている。だからそっちでは何とか誤魔化しておいてくれ》「なるほど...」裏サイトに入り込むと小島はハッキングされたことがバレないように一時的に誰もログイン出来ないように設定したのだ。美子と柚斗は顔を見合わせると頷いた。「ん?何がなるほどなの?」「あ、えっと...担任の先生も裏サイトのこと知ってるんだなぁって思って」「うん、なんかねー担任がサイト作ったっていう噂もあるんだよね」そこで新たな情報が出た。「え...担任の先生がサイトを?でも何のために?」「んー...分かんないけどうちのクラスの担任って前の学校でやらかしちゃったみたいでさ...」そこまで話すとチャイムが鳴ってしまい、女子生徒は「また後で!」と言って自分の席に戻ってしまった。もちろんその会話を小型トランシーバーを通して水蓮寺も聞いていた。《古屋、さっきの話の続き...必ずそいつから聞き出せ。何としてもだ...次の休み時間だ》もちろんこちらから返事は出来ないので聞くだけだった。
授業が終わると真っ先にさっきの女子生徒の元へ向かった。「わっ...どうしたの?古屋さん」「あのさ、さっきの話の続き...すっごい気になるから話して欲しいなぁって...」そう言うと女子生徒は屋上へ行く扉の前まで美子を連れてきた。「...実はうちの担任、前の学校で一部の生徒に暴力振るってたらしいの」「え...それって体罰?」「んーでも暴力うけた生徒は授業態度が悪い訳でもなくて...」「それじゃあ完全に暴力じゃない...!」「でもね、後で分かったのが...その一部の生徒たちは裏サイトっていうサイトでその担任の悪口を言ってたんだってさ...それで」―――裏サイトは匿名で書けるから誰が書いたか特定は出来ないはず。しかしその一部の生徒は書いたことがバレた。そして体罰を受けていた。何故わかったのか...それはやはり裏サイトの設立者だからではないか、設立者であれば裏サイトにログインの際に打ち込まないといけない少しの個人情報によって書き込み主が特定される。ということから今回の裏サイトももしかしたら担任の先生が作ったものではないかと言われているそうだ。―――美子は放課後柚斗と一緒に今回用意された教室へ行くと水蓮寺にその事を報告したのだった。「なるほどな...その噂が本当かどうかは崎沼と山口に前の学校に行ってもらい調べてもらう」「水蓮寺さん、アズミンの方はどんな感じですか?」「小島か、もう少し掛かりそうだな...誤魔化しは頼む」「「はい」」一時報告が終わると美子と柚斗は帰った。
家に帰るとすぐに水蓮寺から電話がかかってきた。「はい、水蓮寺さん?」《古屋、滝野とすぐに三課に来い!今すぐだ》「え...は...」それだけ伝えるとすぐに電話を切られてしまった。美子は着替える前だったのですぐに家を出た。
途中で柚斗と会い、共に三課へ向かったのだった。「もぉ...水蓮寺さん、いきなり過ぎますよ」三課では小島と水蓮寺がいた。「何か分かったんですか?」デスクに近づくとパソコンには裏サイトの画面が出ていた。小島はパソコンを操作してある画面を出した。裏サイトのログイン元だった。「確か美子ちゃん、クラスでは担任が作ったっていう噂が出てるのよね?」「あ、はい...そうやって言ってた」「それがビンゴなのよ...ビンゴなんだけど...なんていうか...」小島は言葉を選びながら話そうとするもなかなか言葉が出てこなかった。「...前の学校で体罰をしていたっていう噂だったが、それは違った」言葉を濁していた小島に代わって水蓮寺が話し出した。「山口と崎沼が調べてくれて分かったんだが...その担任の...武田は前の学校で女子生徒にレイプをした...それがきっかけで学校に居ずらくなった武田は裏サイトを作り出した」「え、どうしてですか?」「学校側にはまだレイプのことはバレていなかった...だがその女子生徒が不登校になり、その原因がいつバレるかと恐れていた武田は裏サイトでどこまでバレているのかを調べようとした...」――武田が裏サイトを作ったのはレイプ事件があってから一週間後だった。その女子生徒はレイプされた後、当然不登校になり...しかし親にも友達にも言っていないのか学校側には全くバレていなかった。しかしいつかはバレる...そう思った武田はバレる瞬間を食い止めようと裏サイトを作り出した。毎日裏サイトを監視していればレイプの話題が出た時にその話題を出した生徒に話を聞きに行ける。そして阻止することが出来る...と。だがそんなレイプの話は全く出ず、むしろただの武田の悪口を書く生徒が出てきたのだった。それに腹を立てた武田はその書いた生徒たちに体罰をしたのだった。その体罰がバレてしまい武田は学校を辞めさせられ、この若葉高校に来たのだった。そしてまた...裏サイトを設立した。―――「え、つまり...」「あぁ、裏サイトが立ち上げられたということは...武田は何かしらの事件をこの学校ですでに起こしている可能性がある」水蓮寺は話し終えると席を立った。「...とりあえず明日、俺から武田に話を聞く。お前達は絶対に何もするな」そう言い残すと三課をあとにした。「私たちに出来ることって...」「水蓮寺さんの言ったように手は出しちゃダメ。滝野と美子ちゃんは生徒として潜入してるんだから...武田にバレたら大変だし、美子ちゃんなんてターゲットにされる可能性があるんだよ?」小島は美子の手をとると「絶対に...何もしないで」そう言った。「...分かりました。生徒のみんなに危害がないようにだけ見守っておきます」そして三人もそれぞれ帰ったのだった。
次の日、学校へ行くといつも美子に話しかけてくれていた女の子がいなかった。朝、学校へ来ていたそうなのだが...途中でいなくなってしまったそうだ。「いなくなった...?」他の女子生徒に聞くと武田に呼び出されて出て行ったっきり戻ってこないそうだ。それを聞いた美子は教室を飛び出した。「...古屋!?」それを見た柚斗は美子を追いかけた。もちろん小型トランシーバーでその会話を聞いていた水蓮寺も武田を探しに行った。
学校を探し回るも彼女の姿も武田の姿も見当たらなかった。「...どこにいるの...?」すると後ろから水蓮寺がやってきた。「古屋...見つかったか?」「...水蓮寺さん!それが見つからなくて...」「空き教室は見てみたが...いなかった。門のところには監視カメラを付けているから外に出ている可能性はない」そう言うと水蓮寺は何かを考えた。すると後を追いかけてきていた柚斗が「おい!教室に武田が来たぞ!」「「え...」」水蓮寺と美子は顔を見合わせると慌てて教室に行く。すると...ホントに教室にいた。武田は何もなかったかのように授業を始めようとしている。変に思った柚斗は「...もしかして何かあった?」「それが...あの子が行方不明になったの」事情を説明していると水蓮寺が教室に入っていった。武田は驚きつつも「なんだ...新任の先生か。なにかご用ですか?」そう言うと水蓮寺は武田の胸ぐらを掴んだ。「ちょ...水蓮寺さん!?」美子と柚斗も教室に入るとクラスがざわついた。「な、なんなんですか!?」「お前...ここでも問題起こすつもりか...」「はぁ?」「...さっさと言え。女子生徒を一人この学校のどこかに監禁してるんだろ...」武田は顔色を変えて「...それは」「早く言え...どこなんだ」「り、理科準備室だ...」そう言うと美子と柚斗は理科準備室に走った。「なんでだ...」「は...?お前ここで全てを話していいのか?話していいなら話すが...」「ちょ...待ってくれ!!...やめてくれ...」武田は水蓮寺の腕を掴んで止めた。水蓮寺は武田を連れて教室を出た。そして美子と柚斗は理科準備室にいた女子生徒を助け出すことが出来た。もちろん...クラスだけでなく学校中の人たちに警察だとバレてしまったが...。
そしてその後、事情を知っていた校長と教頭により学校中に説明がいき...武田は横浜県警によって逮捕された。もちろん三課ではなく一課が受け持つことになったが...。
いつもの日常に戻った三課のみんなだったが...美子は少しだけ残念そうだった。「あーあ...もう少しだけ学生したかったな」机にうつ伏せて呟いているとコツンと頭を叩かれた。「痛っ...何するんですか!」「...お前、制服着てチヤホヤされたかっただけだろ」水蓮寺はそうやって呆れた顔をした。「なっ...そんなわけじゃないです!」「お前はアイツにチヤホヤされてるからいいだろ...」そう言うと三課の入口を指す。そこを見ると安井が覗いていた。「あ...」「何があったかは聞かないでおくが...話くらいしてやったらどうだ...」そう言うと水蓮寺は奥のソファに行ってしまった。美子は少し考えたが...安井の元へ向かった。
少し場所を移動すると美子が先に口を開いた。「...あ、あの」「...なんや?」「この間の...その...」あの夜のキスのことを尋ねようとしたら安井が少し顔を赤くしながら「あ、あれな...その...俺、美子ちゃんのこと好きやねん」「え...?」「もう気づいてるかもしれへんけど...一目惚れやってん...でもその...無理に付き合ってとは言わん...」安井は精一杯美子を困らせないように言葉を選んで喋っていた。「...安井刑事...」「美子ちゃんにとって今、何が一番大事かは分かっとるから...伝えれただけでスッキリしとる」「...すみません」「謝るんやなくて...俺はありがとうが聞きたいな」そう言うと安井は少しだけ寂しそうに笑った。「...ありがとうございます。好きになってくれて...」美子は頭を軽く下げると笑った。安井は美子の頭を撫でると「ま、もし俺の事好きになることがあったらいつでも受け付けんで!」なんて冗談っぽく言うと美子の前から去っていった。
水蓮寺は三課に戻ってきた美子と目が合うと何故か優しい目をして笑った。
そして一課に戻ってきた安井を新堂がいつものようにからかうのではなく、慰めに行ったのは言うまでもない。
「そろそろ真相に気づいた頃だろう...アイツと同じ目に合わせないとな...古屋美子」
「おはようございまーす!」呑気に出勤するとみんなが美子に駆け寄った。「昨日、大丈夫だった!?」「聞いたよ!襲われたって...」「俺が離れなきゃ...」小島、山口、柚斗だった。「だ、大丈夫でしたよ?あの後...水蓮寺さんが来てくれて...」そう話そうとしたら水蓮寺がやってきた。いつものように奥のソファに寝転ぶと目を閉じた。「え、水蓮寺さんが!?」「はい...助けてくれて」「うっそぉ~!?水蓮寺さん...ほんとですか!?」小島が聞きに行くと水蓮寺はうっすらと目を開けて「...あぁ、たまたま通り掛かったからな」そう言うとまた目を閉じた。「たまたまかぁ...なんだ」何故かガッカリしたように小島が席に戻るといつの間にいたのか駒澤が「そう言えば昨日、水蓮寺さん慌てて帰っていったけど...何かあったのかな?」と聞いた。水蓮寺は「別に...」と言うと寝返りを打ち後ろを向いた。それを聞いていた小島はまた嬉しそうな顔に戻り「やっぱり...心配だったんですね」そう呟いた。美子もそれを聞いて少し水蓮寺のことを見直した。そこへ栗田警視総監がやってきた。最近よく来るなぁと三課のほとんどが思っていただろう...。きっとそう思っていないのは駒澤だけだ。「け、警視総監!!!」「おはよう、今日は君たちに事件を任せたいんだけど...いいかな?」「事件?」「若葉高校である事件が起こっているらしい...」そう話すと学校の資料を見せた。
[若葉高校]風紀が厳しくも、楽しくアットホームな環境で勉強ができる。と書いてあった。しかし裏を見ると乱暴な字で【そんなのは嘘!何がアットホームだ!裏サイトがあるのを私は知っている!そしてその裏サイトには生徒にとっても先生にとっても色んな知られてはいけない情報が書いてあるんだ!】そう書かれてあった。「これ...ただ事じゃないですよね」「と、言うわけで...この裏サイトを調べて欲しいんですよね、ただ先生方も生徒にも知られてはいけないので...潜入捜査という形でお願いできるかな?」栗田はそう言うと美子と柚斗を指さした。「君たちには生徒になってもらいます。そして...」次は水蓮寺と小島を指さした。
「君たちは先生だね、お願いできるね?」「...は、はい」「もちろん、校長と教頭だけには知らせてあるから心配ないよ?急遽来た新米先生と転校生ということになっているからね」そう言うと栗田は満足気に出て行った。「そ、そんな...潜入捜査って...」「あ、生徒ってことは私たち制服着れるんだ!」何故か美子は舞い上がってワクワクしているようだった。水蓮寺はそんな様子を見るとため息ひとつ漏らして立ち上がった。「じゃ、行くぞ」一言言うと小島も柚斗も美子もついて行った。駒澤はもちろん、山口と崎沼は今回はお留守番だった。
―――「と、言うわけで今日からこのクラスの一員になる古屋美子さんと滝野柚斗さんだ」「よ、よろしくお願いします」「よろしくです」二人はもうクラスの一員になってしまった...。みんなは疑うこともせずに受け入れたのだった。そして職員室でもそれは同じだった。「新任教師です、小島さんには科学担当を...水蓮寺さんには保健医担当をお願いしています」教頭が紹介すると...やはり注目は水蓮寺にいった。それもそのはず...水蓮寺は保健医だったため白衣を着ているのだから...。それを着た時に美子も写真に納めていいかと散々言っていた。そして小島は言うまでもない、科学に関してはピカイチだった。水蓮寺と小島は挨拶を終えると校長室に呼び出された。
「水蓮寺さんに小島さん...今回は本当にありがとうございます...」「いえ、仕事ですので...それよりもあまりここで会話をしすぎるのも不自然なために怪しまれそうです...」水蓮寺はそう言うと小島から何かを受け取った。「これは、小型トランシーバーです」そう言って渡すと小島が自慢げに口を開いた。「トランシーバーと言っても報告やボタンなどいりません!ただ耳につけているだけで周りの会話などが我々の耳に入ってくるという優れものです!」「これを校長と教頭のみ付けて頂いて...あとは俺達が何とかしますので」そして校長と教頭は小型トランシーバーを付けることにした。
その頃教室では...大変だった。「古屋さんってどこから来たの?」「転校って何度もしてる?」「美子ちゃんって呼んでいい?」などの質問攻めにあっていた。「あぁ...えっと...その...」困ったような表情はしていたが内心満更でもなかった。こんなにモテたのは初めてだったからだ。そんな様子を見ていた柚斗もまた女子から質問攻めにあっていたのは言うまでもない。そこへ水蓮寺が入ってきた。もちろん...白衣を着た高身長のイケメンが入ってきたのでクラス内は騒がしくなった。「え、だれ?」「ほら...新しく来た保健医じゃない?」「えーやば!かっこいい!」そんな会話の中、水蓮寺は気にもせず美子の元へ行くと「古屋、ちょっと来い」そう言うと美子を引っ張って行ってしまった。「え...す、水蓮寺さ...ッ!?」美子の腕を引きながら歩くと柚斗の方を見て「お前も来い」と一言言った。「ったく...俺も腕引っ張ってくれよな」と冗談っぽく言うと柚斗も教室を出て行った。
空き教室に行くと水蓮寺は二人に小型トランシーバーを渡した。「小島が作った小型トランシーバーだ、付けててもバレないから二人ともこれを付けろ」「トランシーバー?」「これで生徒とかの会話を勝手に録音して小島の元に送信されるし、俺たちからの指示も勝手に入るようになってる」「わかりました、付けておきます」二人は小型トランシーバーを付けると空き教室を出た。自分たちの教室に戻るとみんなが注目していた。「さっきの人って新しく来た保健医だよね!?」「なんで!?二人知り合いなの?」またもや質問攻めにあった。「え...あ...知り合いっていうか...あの」「新しいもの同士、少しだけ話すようになっただけだよ」美子が困っていると柚斗がフォローを入れてくれた。「ふーん...なるほどねぇ」そんな話をしていると先生が入ってきて授業が始まった。
授業中、付けていたトランシーバーからは水蓮寺と小島の会話が聞こえていた。《...やっぱり先生方の中にいるんでしょうか...》《いや、生徒に裏サイトを作った犯人がいる可能性もある...》裏サイトを開設した犯人をとりあえず見つけるようだ...。美子と柚斗はその会話を聴きながら授業を受けていた。
授業が終わると...美子は女の子に柚斗は男の子に裏サイトのことを聞いた。「裏サイト?あー...あれね、私は利用したことないけど見ることは出来るから見てみるけど...結構酷いよ?」「え...ど、どんなふうに?」するとその子は携帯で裏サイトを見せてくれた。「ほら...書き込んでる人は誰か分かんないけど...やばくない?」【何か隣のクラスに転校生来たみたいだよー可愛い子とイケメンらしい】【やばくねー?】【先生も新しい人来たんでしょ?何かおかしくない?】【このサイトのことバレて警察だったりして?】などともう美子たちのことが書かれていた。しかも...バレそう...。同じく柚斗も男子生徒の携帯で裏サイトを見ていた。「男、女関係なく匿名で書き込めるから...誰が書いてるかなんて全く分からないんだ」「全く...か...この裏サイトの入り方なんだけど...教えて欲しいんだけど...」柚斗は男子生徒に裏サイトのパスコードを教えて貰いログインすることに成功した。次の授業中...柚斗は水蓮寺にそのパスコードを送信した。【水蓮寺さん、裏サイトのパスコードを手に入れました。[wakaba-kodo_ura]】送信すると水蓮寺はすぐに携帯を見た。「...なるほどな...小島、これのサイトの解析できるか?」「...んーやってみる」そう言うと小島はパソコンで裏サイトに入り込むと解析を始めた。
やっと全ての授業が終わると水蓮寺たちは一度署へ戻った。「んー...難しいな...」小島は裏サイトの解析に悩んでいた。すると戻ってきた柚斗がパソコンを覗き込んだ。「あ、それ...俺なら出来ますよ?」「え...?」「ちょっと...いいですか?」柚斗は小島から変わるとパソコンを器用に操作して解析を簡単に終わらせた。「す、凄い...」「なるほど...分かりましたよ」その声に水蓮寺は柚斗に近づいた。「どうだった...」「裏サイトは生徒によって作られたようですね...恐らく生徒会」裏サイトの開設のアクセス解析をすると生徒会室のパソコンからのアクセスだと分かった。「生徒会か...二人は明日、生徒会に顔を出してみろ」「は、はい!」「了解です...じゃ、もう帰りますね」そう言うと柚斗は帰った。美子と水蓮寺も帰り支度をすると署をあとにした。
「水蓮寺さん、どうして裏サイトなんて作られたんでしょうか...」「ま、色々あるんだろ...先生も生徒も関係なしで匿名で悪口言えるしな」美子と水蓮寺は帰りながら推理をしていた。「悪口なんて...そんなに悪い学校には見えませんでしたけど...」「転校一日目のお前には分からないことだってあるだろ...たくさんな」「んー...そんなものですか...」家に着くと水蓮寺と別れ、それぞれ自分の家に入った。
家に入ると今日一日のことを思い返した。「やっぱ...私って若く見えるのかな...学生に違和感なかったし...えへへ...」鏡で自分を見ながらニヤニヤしている姿はとてもじゃないけど気味が悪かった。
次の日もまた学校へ行った。「おはよう」「あ!古屋さんおはよー!」「よ、古屋」柚斗はもう来ているようだ。「今日も授業ダルいなぁ...」美子はクラスの女の子と話していた。昨日サイトのことを教えてくれた子だった。「あ、あのさ...あれから裏サイトのことどうなった?」「ん?あー、あれさ何か書き込めなくなってて...よく分かんなくなったんだよね」携帯の裏サイトを見せてもらうと確かに裏サイトにログインが出来なくなっていた。「これって...担任の先生に見つかって消されたとかじゃなくて?」「んー、それはないと思う!だって担任もグルだし」すると付けていた小型トランシーバーから指示があった《サイトがログイン不可能になったのは小島だ。今ハッキングしているから一時的にログイン出来ないようにしている。だからそっちでは何とか誤魔化しておいてくれ》「なるほど...」裏サイトに入り込むと小島はハッキングされたことがバレないように一時的に誰もログイン出来ないように設定したのだ。美子と柚斗は顔を見合わせると頷いた。「ん?何がなるほどなの?」「あ、えっと...担任の先生も裏サイトのこと知ってるんだなぁって思って」「うん、なんかねー担任がサイト作ったっていう噂もあるんだよね」そこで新たな情報が出た。「え...担任の先生がサイトを?でも何のために?」「んー...分かんないけどうちのクラスの担任って前の学校でやらかしちゃったみたいでさ...」そこまで話すとチャイムが鳴ってしまい、女子生徒は「また後で!」と言って自分の席に戻ってしまった。もちろんその会話を小型トランシーバーを通して水蓮寺も聞いていた。《古屋、さっきの話の続き...必ずそいつから聞き出せ。何としてもだ...次の休み時間だ》もちろんこちらから返事は出来ないので聞くだけだった。
授業が終わると真っ先にさっきの女子生徒の元へ向かった。「わっ...どうしたの?古屋さん」「あのさ、さっきの話の続き...すっごい気になるから話して欲しいなぁって...」そう言うと女子生徒は屋上へ行く扉の前まで美子を連れてきた。「...実はうちの担任、前の学校で一部の生徒に暴力振るってたらしいの」「え...それって体罰?」「んーでも暴力うけた生徒は授業態度が悪い訳でもなくて...」「それじゃあ完全に暴力じゃない...!」「でもね、後で分かったのが...その一部の生徒たちは裏サイトっていうサイトでその担任の悪口を言ってたんだってさ...それで」―――裏サイトは匿名で書けるから誰が書いたか特定は出来ないはず。しかしその一部の生徒は書いたことがバレた。そして体罰を受けていた。何故わかったのか...それはやはり裏サイトの設立者だからではないか、設立者であれば裏サイトにログインの際に打ち込まないといけない少しの個人情報によって書き込み主が特定される。ということから今回の裏サイトももしかしたら担任の先生が作ったものではないかと言われているそうだ。―――美子は放課後柚斗と一緒に今回用意された教室へ行くと水蓮寺にその事を報告したのだった。「なるほどな...その噂が本当かどうかは崎沼と山口に前の学校に行ってもらい調べてもらう」「水蓮寺さん、アズミンの方はどんな感じですか?」「小島か、もう少し掛かりそうだな...誤魔化しは頼む」「「はい」」一時報告が終わると美子と柚斗は帰った。
家に帰るとすぐに水蓮寺から電話がかかってきた。「はい、水蓮寺さん?」《古屋、滝野とすぐに三課に来い!今すぐだ》「え...は...」それだけ伝えるとすぐに電話を切られてしまった。美子は着替える前だったのですぐに家を出た。
途中で柚斗と会い、共に三課へ向かったのだった。「もぉ...水蓮寺さん、いきなり過ぎますよ」三課では小島と水蓮寺がいた。「何か分かったんですか?」デスクに近づくとパソコンには裏サイトの画面が出ていた。小島はパソコンを操作してある画面を出した。裏サイトのログイン元だった。「確か美子ちゃん、クラスでは担任が作ったっていう噂が出てるのよね?」「あ、はい...そうやって言ってた」「それがビンゴなのよ...ビンゴなんだけど...なんていうか...」小島は言葉を選びながら話そうとするもなかなか言葉が出てこなかった。「...前の学校で体罰をしていたっていう噂だったが、それは違った」言葉を濁していた小島に代わって水蓮寺が話し出した。「山口と崎沼が調べてくれて分かったんだが...その担任の...武田は前の学校で女子生徒にレイプをした...それがきっかけで学校に居ずらくなった武田は裏サイトを作り出した」「え、どうしてですか?」「学校側にはまだレイプのことはバレていなかった...だがその女子生徒が不登校になり、その原因がいつバレるかと恐れていた武田は裏サイトでどこまでバレているのかを調べようとした...」――武田が裏サイトを作ったのはレイプ事件があってから一週間後だった。その女子生徒はレイプされた後、当然不登校になり...しかし親にも友達にも言っていないのか学校側には全くバレていなかった。しかしいつかはバレる...そう思った武田はバレる瞬間を食い止めようと裏サイトを作り出した。毎日裏サイトを監視していればレイプの話題が出た時にその話題を出した生徒に話を聞きに行ける。そして阻止することが出来る...と。だがそんなレイプの話は全く出ず、むしろただの武田の悪口を書く生徒が出てきたのだった。それに腹を立てた武田はその書いた生徒たちに体罰をしたのだった。その体罰がバレてしまい武田は学校を辞めさせられ、この若葉高校に来たのだった。そしてまた...裏サイトを設立した。―――「え、つまり...」「あぁ、裏サイトが立ち上げられたということは...武田は何かしらの事件をこの学校ですでに起こしている可能性がある」水蓮寺は話し終えると席を立った。「...とりあえず明日、俺から武田に話を聞く。お前達は絶対に何もするな」そう言い残すと三課をあとにした。「私たちに出来ることって...」「水蓮寺さんの言ったように手は出しちゃダメ。滝野と美子ちゃんは生徒として潜入してるんだから...武田にバレたら大変だし、美子ちゃんなんてターゲットにされる可能性があるんだよ?」小島は美子の手をとると「絶対に...何もしないで」そう言った。「...分かりました。生徒のみんなに危害がないようにだけ見守っておきます」そして三人もそれぞれ帰ったのだった。
次の日、学校へ行くといつも美子に話しかけてくれていた女の子がいなかった。朝、学校へ来ていたそうなのだが...途中でいなくなってしまったそうだ。「いなくなった...?」他の女子生徒に聞くと武田に呼び出されて出て行ったっきり戻ってこないそうだ。それを聞いた美子は教室を飛び出した。「...古屋!?」それを見た柚斗は美子を追いかけた。もちろん小型トランシーバーでその会話を聞いていた水蓮寺も武田を探しに行った。
学校を探し回るも彼女の姿も武田の姿も見当たらなかった。「...どこにいるの...?」すると後ろから水蓮寺がやってきた。「古屋...見つかったか?」「...水蓮寺さん!それが見つからなくて...」「空き教室は見てみたが...いなかった。門のところには監視カメラを付けているから外に出ている可能性はない」そう言うと水蓮寺は何かを考えた。すると後を追いかけてきていた柚斗が「おい!教室に武田が来たぞ!」「「え...」」水蓮寺と美子は顔を見合わせると慌てて教室に行く。すると...ホントに教室にいた。武田は何もなかったかのように授業を始めようとしている。変に思った柚斗は「...もしかして何かあった?」「それが...あの子が行方不明になったの」事情を説明していると水蓮寺が教室に入っていった。武田は驚きつつも「なんだ...新任の先生か。なにかご用ですか?」そう言うと水蓮寺は武田の胸ぐらを掴んだ。「ちょ...水蓮寺さん!?」美子と柚斗も教室に入るとクラスがざわついた。「な、なんなんですか!?」「お前...ここでも問題起こすつもりか...」「はぁ?」「...さっさと言え。女子生徒を一人この学校のどこかに監禁してるんだろ...」武田は顔色を変えて「...それは」「早く言え...どこなんだ」「り、理科準備室だ...」そう言うと美子と柚斗は理科準備室に走った。「なんでだ...」「は...?お前ここで全てを話していいのか?話していいなら話すが...」「ちょ...待ってくれ!!...やめてくれ...」武田は水蓮寺の腕を掴んで止めた。水蓮寺は武田を連れて教室を出た。そして美子と柚斗は理科準備室にいた女子生徒を助け出すことが出来た。もちろん...クラスだけでなく学校中の人たちに警察だとバレてしまったが...。
そしてその後、事情を知っていた校長と教頭により学校中に説明がいき...武田は横浜県警によって逮捕された。もちろん三課ではなく一課が受け持つことになったが...。
いつもの日常に戻った三課のみんなだったが...美子は少しだけ残念そうだった。「あーあ...もう少しだけ学生したかったな」机にうつ伏せて呟いているとコツンと頭を叩かれた。「痛っ...何するんですか!」「...お前、制服着てチヤホヤされたかっただけだろ」水蓮寺はそうやって呆れた顔をした。「なっ...そんなわけじゃないです!」「お前はアイツにチヤホヤされてるからいいだろ...」そう言うと三課の入口を指す。そこを見ると安井が覗いていた。「あ...」「何があったかは聞かないでおくが...話くらいしてやったらどうだ...」そう言うと水蓮寺は奥のソファに行ってしまった。美子は少し考えたが...安井の元へ向かった。
少し場所を移動すると美子が先に口を開いた。「...あ、あの」「...なんや?」「この間の...その...」あの夜のキスのことを尋ねようとしたら安井が少し顔を赤くしながら「あ、あれな...その...俺、美子ちゃんのこと好きやねん」「え...?」「もう気づいてるかもしれへんけど...一目惚れやってん...でもその...無理に付き合ってとは言わん...」安井は精一杯美子を困らせないように言葉を選んで喋っていた。「...安井刑事...」「美子ちゃんにとって今、何が一番大事かは分かっとるから...伝えれただけでスッキリしとる」「...すみません」「謝るんやなくて...俺はありがとうが聞きたいな」そう言うと安井は少しだけ寂しそうに笑った。「...ありがとうございます。好きになってくれて...」美子は頭を軽く下げると笑った。安井は美子の頭を撫でると「ま、もし俺の事好きになることがあったらいつでも受け付けんで!」なんて冗談っぽく言うと美子の前から去っていった。
水蓮寺は三課に戻ってきた美子と目が合うと何故か優しい目をして笑った。
そして一課に戻ってきた安井を新堂がいつものようにからかうのではなく、慰めに行ったのは言うまでもない。
「そろそろ真相に気づいた頃だろう...アイツと同じ目に合わせないとな...古屋美子」
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