聖女に異世界へ飛ばされた 【完結】

もち米

文字の大きさ
21 / 61
2

にじゅう

しおりを挟む




「あ、おきましたね…良かったわ」

目が覚めると目の前に優しいシスターが目の下に隈を作って、私の顔を覗き込んでいた。

私は数秒固まっていたが、その様子にシスターは気づかず再び話し出す。


「貴方が流れ者の騎士だって聞いたもので、あの人が…でも、貴方お強いのですね。」

「え、」

「だって、ほら、あの人は魔力を使いすぎて今も眠ったまま。」

シスターはクスクスと笑いながら扉の方を指差す。

そこには、昨日夢の中で見たはずのうるさい騎士がいた。あれ、あれは夢じゃなかったのね。

私はまじまじその騎士を見る。
シスターは私の平気な姿に安心したのか、ふうと一息ついたのち、私は休みます。また後で。と部屋を出て行った。

私は軽くて頭を下げるものの、願わくばこの扉にいる騎士も連れて行って欲しかった。


「さて、昨日のが夢じゃないなら、ここはエドワード様の治める予定の国、エステレラ王国って事ね。」

エステレラ王国、それは私が住む国の名前。
魔法も精霊もーーー人間も豊かな国。

他国に負けない技術を持ちながらそれを独占せず、いろんな国に技術を教えている。

私はそんな国に剣を捧げる、騎士になる予定の伯爵令嬢になりたかった王妃なのよね。

エドワード様は好きよ、お慕いしてるわ。
もちろん、国も民も好き。

でも、本当はお父様のように剣を奮い国の為に戦う騎士になりたかった。

女の私には無理な事だけれど。




「聖女、マリア。」

「その名を口にするな。」


声の方へと視線を向ければ、うるさい騎士が目を覚ましていた。

私はなんの話だと聞いた。
ここにいる私は伯爵令嬢のルミナスではない。

流れ者の騎士、ルナだ。


「そんな、汚らわしい名前をこの国で口にするな。死にたくなればな。」

「…なるほど、この国にとって聖女は悪の象徴なのか?」

私がそう聞けば、騎士は眉間のシワを寄せ唸るようにこう言った。

「アレは、アレは聖女ではない。魔女だ。古に伝わる魔女が復活したのだ。」

「魔女?魔女は森から出ない掟のはずでは?」

「むむ、貴様流れ者のくせに詳しいな…まさか、スパイか!!!!!」


くわっと目を見開かせる騎士に私は口元をヒクヒクさせながらも、道中で聞いただけだ。と答える。

すると、奴は単純にも納得したようで続きを話してくれた。



「その魔女ではない。本来魔女は森の中から出ないことを約束する代わりにこの国に住むことが許されている。」

「それは、知っているが…その魔女ではないっていうのは?」

「だから言ったろう?古の魔女だと。何十年も前にもそのような魔女が生まれたんだ。そして、1人の少女を異世界へ飛ばしてしまった。その魔女はその時の魔力暴走で死んだ。しかし、また生まれたんだ。そして、そいつは生まれ変わりだった。」


生まれ変わり?
何十年も前の魔女の魂がまた復活したということ?

「そして、そいつは今度はうまく過ごした。聖女マリアとして民や我々王に仕えるものたちの信用を得た。


それに気づかなかった我々は、ルミナス様を失うという悲劇に会う。ーーーーそれが3ヶ月前の話だ。」




「3ヶ月前?」


騎士の話を真剣に聞いていたが最後の一言で全てが飛んでいってしまった。

この男今、3ヶ月前に私が失われたと言った。それはつまり、私が異世界へ飛ばされた時のこと。

「そうだ、3ヶ月にエドワード様の婚約者であるルミナス様は聖女マリアによって異世界へと飛ばされた。」

「嘘だ…」

「嘘ではない。私はあの日いたのだから。あの後のエドワード様は本当に見ていられなかった。今は立ち直って、2ヶ月後に迫る王位継承式の為に頑張っておられる。」


本当に強いお方だよ。と付け加えて騎士は笑った。

でも、私は笑えなかった。
あの日から、3ヶ月が経っている?
私は異世界で3日ほどしか滞在しなかったはず。なのに、この世界では3ヶ月経っている。どういうこと?時間の流れが違ってこと?

でも、シャルン叔母様は年相応の姿見だったわ。

…転移失敗が何か関係してるの?


グルグルと頭を素早く回転させるも、全く答えは見つからなかった。


「…それで、聖女マリアはどうなった?」

「ああ、姿を消した。死んでいないのは確かだ。」


「そうか…その因みに、エドワード殿下には婚約者はいるのだろうか?」










騎士は私がなぜそんなことを聞くのかわからないというふうな顔をしたが、素直に教えてくれた。






「ああ、婚約者かわからないが、いつも金髪の美しい顔立ちの女の人を連れている。もしかしたら、その方と添い遂げるのかもしれんな。」











しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

処理中です...