聖女に異世界へ飛ばされた 【完結】

もち米

文字の大きさ
28 / 61
2

にじゅうなな

しおりを挟む




魔物?アークに言われてよく見てみるも、どう見ても小さな女の子にしか見えない。

なんて考えているうちに、ものすごい衝撃が襲い後方へ飛ばされた。

いたいなんて考えられないくらいには、思い切り背中を打ちつけ地面に転がった。


「ルナ!!!!!!!」

アークが自分の名を呼んでいるが、いつものように軽口が聞けない。
声が出ない。肺か肋骨か。どこか負傷した可能性が高い。

「おい、ルナしっかりしろ!治癒魔法かけられるか?私は無理だぞ!」

私の肩を揺するアーク。
私はわかっていると言いたいが言えず、仕方なく心の中で治癒魔法詠唱を行う。

ーー我が身を治し、癒したまえ

するとみるみるうちに、傷や痛みが引き「あー、」と声も出せるように。

「ルナ!心配してぞ!大丈夫か?」

「大丈夫だから、黙ってて。あれってなんの魔物だ?」

「あれか?幻惑を使う魔物だ。対象が最も攻撃しづらい姿に変化すると言われている。因みに私は家族だったな。」

お前もそうか?と問われたが、何も答えなかった。私が見たのはただの女の子だったからだ。

攻撃しづらい、私の中では家族よりも少女なのだろうか?と考え込んでいると、ぐいと肩を掴まれる。

「アーク…」

「考えるのは後だ!もう攻撃が来るぞ!」

そう言ってアークは私を自分の背に隠し、攻撃態勢を取る。
その姿に目を見張った。

何故、なんて、野暮なことは言わない。
おそらく、私を守ろうとしているのだろう。

いつもは、アランがエド様が前に立っていた。


ーー下がっていてください。ルミナスお嬢様。


ーー君は下がってて。ここは私が引き受ける。


2人の顔を思い出して、目の奥が熱くなった。なんで、今、思い出す。なぜ、今、2人の顔が。

私は目の前の逞しい背中を見て、目元を擦る。泣いている場合でも膝をついてる場合でもない。


私は、エド様の隣に立ちこの国を支える王妃になる為、身に付けたものがたくさんある。


魔術や剣術、それから魔法。
私は思い切り手をかざし、「風よ、悪きものを吹き飛ばせ!!!!」と強く言えば、目の前のもの全てが吹き飛んだ。

「る、ルナ?!?!」

「黙っていろ!口に砂が入るぞ!」

「うえっ?!」

あなたたち2人が今まで守ってきてくれたから、私は今こうして五体満足でいられる。
貴方たちが守ってくれたように、私も貴方たちに恥じぬように、大切な仲間を守りたい。

私は目の前の砂埃がなくなり、視界がクリアになってきた頃、さらに魔法を発動させる。

万が一のために。常に最悪の状況を考え、相手を下に見ず、己が目で息をしてないことを確認しなければならない。

それが、戦いの場にいる者の覚悟だ。と父様に教わった。



「ひどい、なんで、ひどいわ、貴方。なんで、貴方には私が映るの?」


砂埃の晴れた視界から現れたのはやはり普通の女の子。
可愛い恐らく12歳頃の女の子である。

その子が私の頃を見ながらひどいと連呼する。


「普通は、そこの男みたいに、自分にとって大切な人が映るの。誰だって大切な人だったら殺せないでしょ?なのに、あなたおかしい、ひどい、大切な人がいないのね」

「大切な人はいる。がしかし、私の属性がそうさせないのだろう。」

「ふぅん、ふぅん、ふぅーん。じゃあ、貴方の大切な人に魔法をかければいんだわ。そして、貴方の家族を殺すの。素敵、すてき、ステキね。貴方は家族も大切な人も守れず絶望するの。すてき、すてきね」


魔物の幻惑魔法、操作魔法は光属性の私には効かないのだと冷静になると理解できた。

女の子にそれを言えば、狂ったように言葉を吐き出す。

それは壊れたおもちゃのようだった。


「おおい、ルナ!大丈夫かって、おおっ!なんだこいつ、不気味だな…!」

遠くに飛ばされていたアークがようやく私の隣に来て、女の子を直視する。
どうやら女の子は幻惑魔法を使ってないようで、アークにも私と同じものが見えるようだった。

アークは私の肩を掴み、「あいつ生きてるのか?」と問う。


「いや、分からない。なにせ、このような魔物と対峙するのは初めてだからな…アークは?」

「私も初めてだ。というか、そもそもダンジョン自体が初めてだ!!!!」


背中を剃り胸を張るアークに、思わずため息が出る。


別に自慢することではないと思うのだけど。

そんな私たちの様子を見て女の子は苛立ち力を暴走させた。それはかつての聖女マリアのように。



「うるさい、なんで、お前にもお前にも効かない!!!!!!大切な人を殺せない!!!!!お前らはここで死ぬ!!」

とっさに身構えるも防御魔法は発動できず、体制が崩れる。


待って、こういう時ってあまりいい展開になったことがないような…と思った時には遅く、私の視界は暗転した。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

処理中です...