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王太后誕生会

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 今日は曾祖母ユリア王太后の誕生日だ。王宮に親戚一同が集まる。

 なんとパーシヴァル様もいらっしゃるみたい。


 ユリア王太后は、パーシヴァル様の祖国ガリアの王女、親戚にあたるのだ。
 それにパーシヴァル様のお母様は先々代のランス国王の血をひいていてランスの王位継承権もお持ちなのだ。
 ランスの士官学校に滞在中の今、ランス王族が集まる席にはお越しになる。


 楽しみだわ。

 士官学校の軍服を探していると、ざわめきとため息が女性陣から漏れた。

 王太子殿下かしら?父の兄に当たる王太子殿下は、魔力も強くカリスマ性に溢れたダンディな人で女性にモテモテなのだ。

 しかし、姪の私からいわせれば早く結婚して、お世継ぎをもうけて欲しい。
 じゃないと、お世継ぎ問題が起こるから。

 父は身体が弱く魔力が無いから王位継承することはないが。
 残り二人の王子はほんの僅かな魔力しか持たないのに威張り散らして嫌な人達だ。

 思慮深く理知的な父と違って浅慮で短気な癇癪持ちだ。そして、この二人は何かにつけて常に争っている。王太子が世継ぎを残さないまま、万が一の事があれば国は真っ二つに別れて争うことになるだろう。


 あちらからひときわ長身のスーツの男性がやってきた。王太子殿下とは違った。しかし、何か人を惹き付ける魅力があった。

 ぼーっと見てると。


「ちっ、パーシヴァル様だけなのね。ジャン様を連れてこないなんて、パーシヴァル様ったら気がきかないわ。チッ。」

 妹よ。舌打ちしたね。淑女失格ですわよ。ジャンは、王族ではないのだ。立ち入れる訳がないではないか。


「スーツなんて、珍しいですわね。お姉様。」


 なんと、パーシヴァル様。本日はスーツなのね。

 一分の隙もなくビシッと決めた姿に見惚れて固まる。あまりの麗しさにため息が漏れた。

 髪は全てを後ろにながして固めてある。いつもの硬派な軍人のイメージから一転して、危険な大人のダークな色気が漂っていた。私は心の中で彼をブラックパーシヴァル様と名付けた。


 ダンディな色男で知られる王太子殿下をも凌ぐ程、女性陣の目を釘付けにしていた。

 ミランダが私の手をぐいっと掴んで、パーシヴァル様の元へずんずん向かっていく。

 パーシヴァル様がこちらを見て破顔した。

 あぁ、尊みの極み。

「パーシヴァル様、今日はジャン様はどうされたの?」

「ジャンは、寮にいるよ。レディ・ミランダにこれを渡してくれって。」

 パーシヴァル様の胸ポケットから、小さなキャンディの袋が出てきた。
 推しの胸ポケットで温められたキャンディ、欲しい…。ミランダよ。一つくれない?

 ミランダが無情にも首を振った。
ミランダのいじわる。

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