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亡命

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パーシヴァル様達とお茶を楽しんでいると、国王であるお祖父様に私達家族が呼ばれた。

 お祖母様が力なくぐったりされている。


「王太子が出兵を拒否し亡命した。次期国王をアンドリューお前に任せたい。」


「お父様、私は魔力も無く身体が弱い。そう思われたから、早々に臣籍降下されたのでは?若く魔力持ちの健康な二人の王子がいる。私でなくとも。」


父が珍しくお祖父様に抵抗した。しかし、お祖父様は力なく首を振った。


「王子達は二人とも浅慮で忍耐も効かない。この難局は乗り切れん。議会も軍に豊富な人脈を持つアンドリューを推すと。」


「しかし、私にも娘が二人しかいません。」


「エスメラルダは健康で、幼くして威厳があり、沈着冷静であった。しかも魔力が開花した今、次期女王にふさわしいとあの宰相も認めておる。そして、お前の妻イライザもしっかりした女性だ。社交界を見事に牛耳っておる。」

 え?私、魔力ないよ。あったらスクショ魔法開発するもの。


「しかし、父上。」


 先程のパーシヴァル様達との話し合いで、父はイスパニアと魔力において圧倒的な差があることを憂いておられた。

 この状況を打破する為に、王太子の魔力が頼りであったのに。

 王太子め、こんな苦しい状況で逃げ出すなんて…。


 私は、怒りを押し殺し手元のカップを持った。


パリン

 乾いた音がして、割れたカップから零れた紅茶が氷柱となって固まっていた。

 なんか芸術的だわ。はしたないけど。

何て言うか、食品サンプルみたいね。


 あら?皆さん固まってます?

もしかして、これが魔力なのかしら?

 私、本当に魔力持ちでしたのね。



 この世界は、やはり漫画の世界だったみたいだ。

 氷の女王路線が確定した私は、パーシヴァル様に振られて今世も独身確定か。

 はは、仕方ない。王太子め覚えてろ、いつか氷漬けにしてやるからな。


 しかし、漫画の世界なら女王エスメラルダは、難局を見事乗り切り我が国を繁栄に導く。

 パーシヴァル様に振られる以外は幸せな一生なのだ。


 絶望するのは止めよう。当初の目的通り棺に入れる推しグッズ収集に努めよう!でも、一応。


「お父様、お母様。弟を産んでくださらない?」


暗い雰囲気だった、その場が和んだ。


「善処するよ。ね、イライザ。」


父上が苦笑しながら、母の手をとった。


深刻に受け止めていても、どうにもならない。出来る事を一つづつやりながら前へ進めばいいじゃないか。


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